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2025年12月20日 (土)

宇宙船談話室

 アマゾンで新刊を眺めていたら、懐かしい雑誌の関連図書を見つけました。1980年1月に創刊してから2005年の119号まで続いた、朝日ソノラマが発行していたSF特撮雑誌「宇宙船」に10回のみ掲載された「宇宙船談話室」を一冊にまとめた書籍です。この雑誌「宇宙船」については、実は私全巻を持っています。以前当ブログ(2008.2.14参照)に書いたように書棚の奥に秘匿しています。まあ、仕舞い込んだまま、取り出し不能になっているといったほうが正確ですが(笑)。ちなみに、休刊以降に復刊された「宇宙船」は内容が戦隊ものなどが中心の全く別ものになってしまっているので、ご留意ください。

 1980年の創刊当時は、こうしたSFや特撮映画関係を真っ当に扱っている書籍自体が珍しく、世間的にも子供だましと思われていた時代だったため、しかも当初は季刊(発売日が不確定)だったので、職場の出入りの書店さんに頼み込んで、中身が見えないように厳重に封をして取り寄せていたことを思い出します。いわゆる世間を欺く”隠れ特撮ファン”(笑)だったのです。

71gz5ohazll_sy425_  今回発売された書籍「宇宙船談話室」とは、いわゆる特撮関係者との対談集なのですが、実は編集長村上実氏自らがインタビュアーをしていたというのですから驚きました。発売当時は、編集長も対談の相手(当時は全く知名度がなかった)も興味がなかったので、まったく読んでいなかったのですが、今回、読んでみると、当時の日本特撮の惨憺たる状況やSF情報がいかに乏しかったかがよくわかります。当時はレンタルビデオなどの過去の作品を見る手段はまだなく、本当に情報がありませんでした。私などは、この雑誌に掲載される情報をむさぼるように読んだ記憶があります。そういや、チャールズ・R・ナイトの恐竜復元画を集めた洋書「恐竜・マンモス・洞窟人」を知ったのは、この雑誌の”本の紹介コーナー”だったような気がします。なお、この書籍を入手するまでの私の汗と涙の物語は、ぜひ、当ブログ(2008.1.19)を読みください。

 そんな情報のない中での新しい雑誌作りですから大変だっと想像しますし、参加した若い人たちが熱意だけで作り上げていったというがひしひしと伝わります。いやあ、大変だったのでしょうねえ。もっとも、この雑誌にかかわったスタッフの皆さんが、いまではそれぞれ功なり遂げて著名人になっているのも頷けます。例えば、日本の特撮映画を体系化した池田憲章さん、レイ・ハリーハウゼンとの交流をはじめ欧米のモンスター映画を紹介した聖咲奇さんなどが有名です。

 なお、この本の最後に、村上実氏と当時のスタッフだった、ライターの中島紳介氏、杉田篤彦氏との対談が、”第11回目の談話室”として掲載されています。まあ、完全に同窓会ですねえ。本当に楽しそうです。その中で、中島氏が”いくら配信で観ることができてもコレクションのLDは捨てられない”という発言には、おもわず拍手しました。いやあ、私もそうなのです。同好の士というのは何とも頼もしい。うん、この本を買ってよかった(笑)。

 ところで、その対談の中で、聖咲奇さんが2025.8.1に73歳で亡くなったことが明かされ、驚きました。このブログでも紹介(2024.8.8)したように、彼の同人誌「怪物園」を継続購入していたので、まことに残念です。そういえば、最近、「怪物園」の続巻が発売されないなあとは思っていましたが、ご冥福をお祈りします。 

2025年4月17日 (木)

ルーカス・ウォーズ

 「ゴジラ-1.0」の山崎貴監督と「平成ガメラ」の特撮監督で「シン・ゴジラ」の樋口真嗣監督がYoutubeの対談か何かで褒めていた、フランスで発売された「ルーカス・ウォーズ」の翻訳本をAmazonで衝動買いをしてしまいました。もともと個人的には「スター・ウォーズ」があまり得意でないのですが、以前ディズニープラスの配信で、画期的な特殊撮影技術を生み出した「ILM」のドキュメンタリー番組を見ており、その破天荒な成り立ちが読み物になっているのは、多分面白いだろうと直感的に思ったのです。

41hpvgccwjl_sy445_sx342_  207頁の縦サイズが30cmはある大型本はすぐに届き、ページを開いて驚愕しました。中身はコミックなのです(笑)。しかも、フランス版仕様なのか、見慣れた日本の漫画のコマ割りや精緻なモノクロの絵ではなく、スケッチ風のストーリーボードのような体裁です。いやあ、これは大失敗だと観念したのですが、5千円弱の価格なので、半分いやいや読み始めました。貧乏性なのです(笑)。

 ところが、ルーカスの少年時代の反抗期や自動車事故のエピソードなど、いつの間にか、上手い絵とストーリーに引き込まれてしまいました。やはり、漫画(絵)の力は恐ろしいものがあります。文字で羅列するより何倍も強烈に頭に入ってきます。

 それにしても、ルーカスという人間はかなり個性的で変わり者です。やはり天才というのは、なかなか社会に馴染めないものなのですねえ。ただ、大学時代に知り合ったコッポラやスピルバーグなどとの交流が運が良かったと言えますし、なにより、後に妻となる、天才編集者マーシア・ルーカス(旧姓グリフィン)の出会いがラッキーでした。無名時代のルーカスは、「アメリカン・グラフィティ」の評価は良かったものの、映画会社からは相手にされなかったのですが、孤立し、落ち込むルーカスを彼女が慰め、尻を叩き、そして、ついに「スター・ウォーズ」の製作が始まります。
 この新しいSFファンタジー映画は、映画会社の上層部の理解が得られず、後にこの作品の大ヒットで20世紀フォックスの社長になるアラン・ラッド一人が後押しをしたようです。とにかく、ルーカスと5年も正式な契約をせず、引き延ばした当時の20世紀フォックスの取締役たちの見る目の無さとそのやり口が面白おかしく描かれます。その愚かな取締役たちの表情がいかにもという絵なので本当に笑えます。中には、試写会の後のアンケートに”クソ映画”と書いた取締役もいたようです。
 実は、大ヒット映画の裏には必ずこうした見る目の無いプロデューサーの壁がある裏話が多いのですが、やっぱり、これはハイリスク・ハイリターンの世界の厳しさゆえに、凡人は手堅さ中心の考え方になるのでしょうねえ。
 もっとも、このSF映画の評価については、出演したアレック・ギネスなどもまったく理解できず、さんざん愚痴を零していたといいますから驚きです。それに、抜擢のハリソン・フォードとキャリー・フィッシャーができていたというのも驚愕です。フランスの本とはいえ、そんなことを暴露して大丈夫ですか?(笑)

 そして、映画が完成したものの、映画会社の方針で、全米でたったの32館の公開というものも笑えます。撮影中は、イギリス撮影所の特有の頑なさや特殊撮影の拠点ILMに帰ってみれば、巨額の予算と日数がかかっているにもかかわらず完成した映像がほとんどなかったというジョン・ダイクストラの野放図ぶり(新技術開発の貢献者にもかかわらず、その後二度とルーカスと仕事してないようです。)に散々苦労させられた挙句のこの結果に、ルーカスはすっかり落ち込んで、ハワイでスピルバーグと遊んでいたのは有名な話です。ところが、ふたを開けるとあっという間に大ヒットなったのですねえ。
 しかも、20世紀フォックスの契約引き延ばしの中で、しっかり続編制作権と商品化権を確保していたルーカスは、その後、ルーカス帝国ともも言える牙城をつくり上げ、めでたし、めでたしとなるのです。

 というのがこの本の内容であり、実に面白いアメリカンドリームの成功物語でした。まあ、ディズニーのお伽噺であれば。このハッピーエンドまででよかったのですが、実は、ルーカスのその後の人生は、なかなか大変なようです。

 これは、ネットの情報なのですが、「スター・ウォーズ」3部作を作った後、大金持ちになって幸せいっぱいの筈なのに、こともあろうにルーカスの一番の理解者、妻のマーシアと離婚するのです。どうやら、原因はマーシアが別の男に走ったためのようですが、おかげでルーカスは自身の帝国でまるでダークサイドに堕ちたような独裁的な支配者になってしまい、例えば、新三部作の”ジャージャー何とか”の登場にはスタッフ全員が反対だったにもかかわらず、鶴の一声で決定し、多くのファンの不評を買い、挙句の果ては、映画づくりにも嫌気がさしたのか、なんと「スター・ウォーズ」製作権をディズニーに売り渡してしまいました。その後の作品群の惨状はご存知のとおりです。
 ただ、願わくば、せめて後年CGを追加して改悪した最初の第3部作のオリジナル版を公開してほしいものです。ルーカスの「原版はない」と言いはる頑な方針から、現在ではオリジナル版を観ることはできないようです。作品の歴史的価値を否定し、観客が最初に観た時の感動を味わえないのは、ファンからすると”たかが原作者”の思い上がりはないでしょうか。・・・アンチ・スターウォーズファンの独り言でした(笑)。

 まあ、人生というのは、お金があっても、成功しても、なかなか難しいことを改めて思います。そんなことまで考えてしまった一冊です。未読の方は、是非ご覧ください。

2025年2月26日 (水)

リドリー・スコットの全仕事

 「リドリー・スコットの全仕事」という286ページの書籍が先月発売されました。著者は、イアン・ネイサンというイギリスの映画ライターで、「エイリアン・コンプリートブック」をはじめ、クエンティン・タランティーノやギレルモ・デルトロに関する解説書などをもう何冊も書いているようです。こうした映画関係の解説書や評伝は、アチラの書籍(翻訳物)が格段に面白い。我が国のモノは、どうも関係者や企業に忖度などが働くようで、きれいごとの褒めることしか書かないのがなんとも物足りないのです。それに比べて、アチラの本は、結構、暴露的なものも含めて人間関係も客観的に記述しているので実に感心します。我が国ではマスコミまでも忖度ばかりなので、まあ、そんな”なあなあ社会”なのでしかたありません(笑)。

 それにしても、リドリー・スコット監督は、2024年12月に「グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声」が公開されたばかりですが、1937年11月生まれといいますから、とっくに80歳を超えています。いやあ、その映画製作に向けた意欲と超人的な体力には恐れ入ります。

71zht3ttjl_sy385_  そして、改めて、これまでのフィルモグラフィーを眺めて見ると、「エイリアン」や「ブレードランナー」の代表作などから、なんとなくSFものが多い作家と思っていたのですが、「グラディエーター」など結構、史劇のものが多いし、犯罪物や戦争物など様々な分野から数多くの作品を監督しています。まあ、当たり外れもありますが、その精力的な活動には恐れ入ります。本人曰く、”大作の次には軽い小品を撮った”ということのようですが、その万能ともいえる才能には、まさしく”サー”の敬称が似合っています。ちなみに、帯を書いた押井守氏は、自著によると敬愛する彼のことは必ずサーを付けて呼んでいるそうです。

 さて、内容は、リドリー・スコットの評伝ともいえる、デビュー作からの作品の解説です。特に、彼の若い時の経歴などはまさに天才と呼ばれるにふさわしい。また、徹底的な取材をもとにした各作品の撮影裏話の充実ぶりは、例えば「ブレードランナー」が公開当時不入りだったことでのリドリー監督の落ち込みや葛藤、そして、その後の爆上がりの再評価で”やっぱり間違っていなかった”と安堵する彼の証言などを盛り込み、人間味をも感じさせる楽しい読み物になっています。
 また、キャスティングの裏話などもふんだんに盛り込まれており、つくづく成功における”人間の運”というモノを感じますねえ。特に、彼の作品から世に出た若手俳優も多く、”若い才能を発掘する監督”ともいわれているそうです。さらに、俳優だけでなく、ドウニ・ヴィルヌーヴなどの新進気鋭の監督にも影響を与えています。ちなみに、彼自身も、その持ち味である自然現象の表現などは、黒澤明の「七人の侍」や「蜘蛛巣城」の影響を受けているとのことで、黒澤明ファンで日本人の私は思わず”低い鼻が高く”なります。・・昔ながらの陳腐な表現ですが、これがぴったりなのです(笑)。

 このように、私の好きな映画制作の裏話がぎっしりと詰まった、本当に楽しい内容で一気に読んでしまいました。近年の評論書では白眉の出来です。映画ファンで、未読の方は、是非、お読みください。もし、まだ見ていないリドリー作品があれば、必ず観たくなるはずです。

2024年4月25日 (木)

アメリカ映画の文化副読本

 先日、買った「アメリカ映画の文化副読本」が予想外に面白かったのでご紹介します。
 アメリカの現実について、都市や社交、教育や信仰、人種と政治、そして職業などの切り口からその生の実態を淡々と記事にしているのですが、著者が実際に選挙活動などで経験したお話なので、彼我の違いに本当に驚きます。

811ejq0qkl_sl1500_ 正直、ハリウッド映画をより深く楽しむための教養というよりは、あまりの文化と制度の違いに、日本以外の世界の過酷さを目の当たりにして、いやあ日本に生まれていて本当に良かった、としみじみ思ったのが読後の感想です。
 まあ、何故、学園映画で、学生たちが廊下でたむろするのか? 何故、いつもパートナーを求めるのか? いままで分かったような気がして見過ごしていたことが、その背景を知って恥ずかしくなりますねえ。いや、まさしく、それほど、日本とは制度が違うのです。ごく一部の裕福な特権階級と昔から変わらぬ頑固な田舎の国なのですねえ。トランプ元大統領が強いはずです。
 かつて、子どものころ、あこがれた理想のアメリカ社会は、全くの”幻想の国”でしたねえ。現実は本当に酷いものです。この本を読んでつくづく思い知りました。
 でも、世の中にはまだまだ欧米の制度をそのまま導入しようとする愚か者がいるのには困ったものですねえ。

 思えば、最近のYoutubeでは、よくアメリカのとんでもない現状、例えば、低所得者対策の結果の万引き横行、ドラッグ解禁の結果のゾンビの街の風景などが紹介されるのですが、それも納得の社会ですねえ。人種問題を抱えた、過酷な競争と格差社会なのです。力のあるものが強者であり、基本的にはアメフトのスター選手とチアリーダーの世界なのです。銃規制も医療保険制度も実現不可能でしょう。束縛を受けずに自由に生きる、それがDNAなのですから、平和ボケした日本人にはとても耐えることはできないように思いますねえ。いやあ、恐るべきアメリカです。
 
 それにしても、子どもが一人で通学して、女性が安心して夜歩ける治安の良さや、ごみのない清潔な社会に、来日した外国人が驚嘆するはずです。どうやら、世界にこんな治安が良く、食べ物がおいしくて、四季のある美しい国はないようです。せめて、いまの日本の良い文化、平和な社会を維持してほしいものですが、外国人の移住を安易に促進し、利権ばかりをむさぼる政治では、それも風前の灯なのかもしれません。悲しい限りですねえ。本当に残念です。

2024年3月 4日 (月)

映画技術入門

 先日「映画技術入門」という書籍が発売されました。内容は、映画史を支えてきた様々な技術と関連する700の作品を一挙紹介する(帯の宣伝文句)というモノです。具体的には、映写機と35mmフィルム、サイレントからトーキー、カラー、現像とプリント、音響、デジタル撮影、そして映画館など、様々な撮影機械や上映設備などの歴史の紹介です。こうしたテクニカルなお話は、以前から様々な専門的な書籍が出版されており、私も何冊か読みましたが、一向に頭に入らずそのまま素通りしています(笑)。

51eyyz9dnel_sy445_sx342_  その点、この本は、”入門”と冠しているだけあって、”分かりやすさ”に工夫をしています。若い女の子の主人公が専門家に関連技術を教わっていくという形式で、親しみやすい漫画とシンプルな図を駆使して大変見やすいのです。しかも、エポックメイキングな作品は写真入りで監督別の経緯なども説明されています。

 正直、スクリーンサイズなどにはあまり関心も無かったのですが、映画を撮影する際に監督がどうしてそのサイズを選んだのかなど、私のお気に入りの作品を通じて、撮影の裏側が垣間見えるような気がして実に楽しい読み物になっていました。そして、映画技術のトリビアもふんだんに盛り込まれており思わず笑います。

 例えば、映画が斜陽となった1970年代に現像技術が安い方法に一斉に切り替えられてしまったという現像の歴史は、”70年代の作品はどれも「くすんだような画面」となっている”という昔から私が抱いていた疑問に答えてくれた気がして、個人的に大変満足しています。
 また、カメラの歴史にも感銘を受けました。やっぱり高額なレンタル費用のかかるカメラは性能が違うようです。日本映画の薄っぺらい画像は、安いカメラの性かな?いやあ、単にカメラだけの問題でなく照明機材などあらゆる面で撮影技術へのアプローチが無くなっているのでしょうねえ。昔の「大映時代劇」の映像の凄さを思い出してほしいものです。

 それにしても、アルフレッド・ヒッチコックやジョン・フォード、そしてスティーブン・スピルバーグの作品ごとの画面サイズや使用カメラの歴史を紹介しているのもわくわくします。作品の流れを通じてそれぞれの作家の生きざまが見れるようです。
 また、ジョージ・ルーカスの映画技術への貢献が映画界にとって実に大きかったことを改めて感じます。スター・ウォーズの作品より、その収益を使ったデジタル撮影技術、さらに上映館の設備までも進歩させたことが凄いとしか、言いようがない。

 ちなみに、B級SF映画製作者のロジャー・コーマンの”スピルバーグやルーカスが技術的にレベルの高いきわもの映画を作ったことで、私たちの映画の魅力は大きく落ち込んだ”という愚痴には思わず吹き出しました。いやあ、まあ、そういうことですよねえ(笑)。

 以上、ほかにもたくさん紹介したいことはありますが、実に楽しい読み物なので、映画ファンなら是非お読みください。

 

2024年1月24日 (水)

エクスプラス大怪獣シリーズオールカラー図鑑 円谷プロ編

 先日、「エクスプラス大怪獣シリーズオールカラー図鑑 円谷プロ編」という本が発売されました。この書籍は、いま怪獣フィギュアを中心に製作・販売している造型メーカーの”エクスプラス”が2003年から発売している”大怪獣シリーズ”のうち、ウルトラマンなどの円谷プロの怪獣フィギュアを一堂に集めたオールカラーの図鑑です。各ページに怪獣1体ごとの正面、側面、背面の写真を並べています。怪獣図鑑であり、かつエクスプラスの商品一覧でもあります。

20240124_124847  この図鑑の序文が個人的に非常に面白かったので、今回ご紹介します。
 実は、私はエクスプラスとは”X-PLUS”の社名表記からアメリカのトイメーカーとばかり思っていた時期があります。私がこの会社のことを知ったのは、10cmほどのチェスピース仕様の初期の昭和ゴジラやレイ・ハリーハウゼンのモンスター達のレジンキットを買っていたからで、特に当ブログ(2007.12.01参照)でも紹介しましたが、レイ・ハリーハウゼンのチェスピースは、かなりな数のシリーズとなっており、商品も英語表記であった(海外への輸出向け商品だった?)し、外国の著作権を多数取得している実績から、うかつにも勝手に外国企業とばかり思い込んでいました。
 その後、徐々に日本語表記の商品、特に前述の「大怪獣シリーズ」でウルトラ怪獣が大量に販売されるようになって、やっと日本の企業だったと気が付きました。何事も思い込みはイケませんねえ(笑)。

 というような私の勝手な思いもあって、このエクスプラスという企業の生い立ちが序文で紹介されていたのは、望外の喜びになりました。この本を買ってよかった(笑)

 その紹介文によると、エクスプラスはもともとはアパレル中心の貿易商社であり、1998年5月1日にTOY事業部がスタートしたそうです。貿易商社であったことから欧米とのライセンス交渉の素地はあったのでしょうが、フィギュアの原型製作やデザインワーク、生産工場などトイのインフラを一から作ったようです。どうやら、最近youtubeの配信で時々顔見世をしている、この雑誌の監修者である岡本”Gee”明彦氏が立役者だったようです。

 最初の商品は、ポリレジン製のスタチューから生産を始めたということですので、私が買い始めたレイ・ハリーハウゼンのチェスピーズ版や30cmクラスのスタチューのことなのでしょう。いやあ、本当に懐かしいものです。

 そして、この図鑑となったソフビ製の”大怪獣シリーズ”の発売第1号が、ウルトラQの全身を棘で覆われた怪獣”ガラモン”だったのですが、この開発に際して、円谷プロから提示された条件が”本当にリアルである”ことだったそうです。まあ、高価である分細かなディテール表現に適しているレジンとは違ってソフビ商品となると、当時はマルサンやブルマァク製に代表されるような、とうてい”棘”の生えている怪獣とは思えないほど丸みのある体型になった子供向けの人形というのが普通の認識だったからなのですが、実際、固い金型から柔らかいソフビを成型するのは至難の業であり、工場と試行錯誤を重ねる中でやっとできたそうです。ちなみに、生産工場は韓国、中国、ベトナム、現在バングラデッシュと変遷しているそうですが、協力したのはどうやら中国の工場だったようです。 

 思えば、当時はまだ私にとって”謎の企業”だったエクスプラスから発売された20cmぐらいのソフビ製”ガラモンには、棘のリアルさとともに、その値段の安さに驚きました。この本の中では”価格が4桁で作れた時代があった”と述懐していますが、私の記憶では4桁の前半だった筈です。当然、その安さゆえに、その後次々と発売される大怪獣シリーズを私も買っていたのですが、何しろ、パッケージが大き過ぎることに加え、ブリスターパッケージで背面紙と接着されているので、一度取り出すと二度としまえないというなんとも置き場に困るものでした。
 おかげで、狭い我が家には全部を飾ることもできず、途中で収集自体を断念したのです。いま、パッケージ未開封のままで壁に飾られて残っているのは、大ダコの「スダール」、巨大巻貝の「ゴーガ」、大ナメクジの「ナメゴン」ぐらいです。そういえば「大魔神」の3部作もそれぞれ残っているのですが、何故か、未開封のパッケージが日焼けで真っ黒に変色している(モノによるのだ)のが悲しい姿です。

 また、この図鑑で、ウルトラQとウルトラマンに登場する怪獣については、全てコンプリート(すべての怪獣のソフビ化を達成)されているということで、ウルトラセブン以降のウルトラ物はまだ道半ばだそうです。
 しかし、改めて、この写真図鑑を見ると、どうもウルトラセブンの後半以降の宇宙人や怪獣のデザインと色使いが、デザイナーや造型師が変わったせいもあるかもしれませんが、一気に幼児向けのおもちゃのような生物感のない大雑把な造形になっていますねえ。そういう観点からも、やっぱり、円谷プロはウルトラQと初代ウルトラマンのものですねえ。

 ところで、ウルトラQとウルトラマンに継続して登場する怪獣をご存知ですか?
 怪獣のぬいぐるみを改造して使い回した例は、「シン・ウルトラマン」のネタにされた、パゴスがネロンガやガボラに改造、そのほか、ペギラはチャンドラーに、ピーターはゲスラに変身。さらに、ガラモンは同じ形で小さなピグモンと設定変更。未来人だったケムール人は、何故か、メフィラス星人の手下の宇宙人役で顔を出します。この辺の原因となった殺人的な撮影現場の話は伝説になっています。こんな製作裏話を描いたTVの「二人のウルトラマン」は面白かったなあ。

20240124_123514 20240124_12353420240114_1153591 20240114_1154431  さて、正解は、海底原人ラゴンです。ウルトラQに登場したラゴンは、同じ海底原人という設定なのですが、水爆実験で巨大化しウルトラマンと戦うのです。いや、ウルトラQの第20話「海底原人ラゴン」はホラー要素も強く、和製半魚人としての名に恥じません。同じ俳優(古谷敏)が着ぐるみに入っている前話の「2020年の挑戦」のケムール人と並ぶ傑作モンスターです。ちなみに、ウルトラQのラゴンは雌で、ウルトラマンの方は雄だそうです。
同じエクスプラスの模型で比較してください。前2枚の写真が大怪獣シリーズの20cmソフビの雌ラゴン(Q版)で、後2枚がシリーズ前の30cmレジン製の雄ラゴン(マン版)です。じっくりご覧ください。違い分かりますか?・・嗚呼、興味が無い?失礼しました。

 最後に、この大怪獣シリーズオールカラー図鑑の続編となるはずの「東宝特撮編」や「大映特撮編」の早期の出版を期待しています。商品数も多いですから楽しみです。
 ついでに、ソフビの大怪獣シリーズ以前のレジン製のエクスプラス商品図鑑も出版してほしいものです。なにしろ、外国版権も数多く獲得し、ディズニーの海底2万哩のノーチラス号の模型までも販売していることから、是非「海外編」もよろしくお願いします。
 さらに、企画面でお願いしたいのは、50年代の有名な宇宙生物画家「エド・カーティア」の宇宙生物(当ブログ2014.2.8参照)のフィギュア化を実現してほしいというものです。あの圧倒的なデザインは立体化すればさらに凄いと思うのですが、いかがでしょうか。

 

2023年10月 9日 (月)

スクリーン・アーカイブズ

 創刊75年超を記念して、近代映画社の映画雑誌「スクリーン」の過去の記事を、テーマごとに復刻した特集本「スクリーン・アーカイブズ」が発売されていたことをつい最近偶然知りました。

 実は、月刊の映画雑誌「スクリーン」は、私の若い頃(中学校や高校時代かな?)の洋画の唯一の情報源でした。まあ、キネマ旬報は高尚な芸術作品が中心でミーハーには小難しいので敬遠していましたし、ライバル紙の「ロードショー」はまだ発刊されていない時期のお話です。
 新作の公開に合わせた様々な記事がを読むのが楽しみでしたし、その中で引用される過去の名作と言われる作品の紹介も勉強になりました。外国人俳優たちの大型写真や人気順位の発表もありましたねえ。女優の人気第1位が、オードリー・ヘップバーンで、男優がゲイリー・クーパーだった時の記憶が残っています。当時は、ビデオもなく、テレビ放送や名画座のリバイバルも少ない時代でしたので、名作「ローマの休日」を知らなかったので、”何故こんなあんまり美人じゃない人が一番人気なのか”と内心不思議でしたねえ。もちろん、その後「ローマの休日」を名画座で観た瞬間、一目ぼれです。我ながら単純です。そして、いつまでたっても、やっぱりご贔屓ナンバー1です。ちなみに、先日発売された4K Ultra HD「ローマの休日」を購入しました。これで、ビデオ、LD.DVD、BD,HDと揃いました。もっともデッキ(ハード)がないので、現在視聴できるのはDVDとBDだけです(笑)。いやあ、馬鹿ですねえ、しかし懐かしい思い出です。

20231009_145019  ということで、この「スクリーン・アーカイブズ」なるものを出版元から通販で購入してみました。まずご紹介するのは、オードリー・ヘプバーン特集の3冊です。どうやら、この本は正式には”アーカイブズ”ではなく、その前身の”復刻特別編集”というもののようですが、サイズがB5版なのに驚きました。1950年代の頃は、雑誌はこのサイズだったのかもしれません。しかし、それ以上にびっくりしたのは、元の印刷物を複写したせいか、なんとも文字も写真も印刷が不鮮明なことです。文字がかすれているところもあります。まあ、一種の同人誌のイメージですねえ。オンデマンド印刷で販売部数も少なく、一般流通に乗っていないことも同人誌に似ています。
 とはいうものの、それぞれの紹介記事がなんとも懐かしいというか、書き手が双葉十四郎、深沢哲也、荻昌弘など有名どころの映画評論家達なのです。文章が軽妙で読みやすく、作品の宣伝的なヨイショも微笑ましいものです。若い頃の新作へのドキドキ感が思い出されます。
 なにしろ、今の時点では名作という評価が定まった作品も、公開当時はさまざまな見方があります。後から紹介する「2001年宇宙の旅」などはその評価がまったく高くありませんし、ヘップバーンに至っては、”あんまり美人じゃない”などと失礼極まりないことをそのまま書かれています。クラシックな容姿が美人というのが当時の通り相場だったのでしょうね。まあ、そんなふうに公開当時の雰囲気が見事に記録されているのには感心しました。まさに”アーカイブズ”としての価値があります。

20231009_145043 20231009_144933 20231009_145214 20231009_145338  そして、ヒッチコック特集、ショーン・コネリーの007特集、クリント・イーストウッドの特集(第1号)などは、実に面白かった。「007は二度死ぬ」の日本ロケの裏話や来日時のインタビュー記事などは、上品なゴシップ調で本当に楽しいものです。前述したスタンリー・キューブリック特集での「2001年宇宙の旅」に対するSF作家の星新一の”良くわからない内容”という率直な感想が時代を表しています。貴重な証言ですよねえ。

 しかし、買ってよかったと思ったのは上記の特集号まででして、ジェームス・キャメロン、ティム・バートンなどの特集号になると、なんか記事がまるで面白くないのです。ご丁寧な挿絵の図解まであるのですが、SFに興味が全く無さそうな女性記者が自分のことばかりを引用して文章を書き連ねた記事などは誰が読むのでしょうか、SF映画ファンを軽視しているのか、とさえ思いました。思えば、この頃はもう既に雑誌「スクリーン」は斜陽だったのでしょうねえ。そして、やっぱり本物の「スクリーン」も1950年代から1960年代が一番輝いている時代だったのだ(笑)。・・・懐かしい時代でした。

2023年7月26日 (水)

東宝時代劇映画桜花爛漫

71q6i7axwfl  先日「東宝時代劇映画桜花爛漫」という1945年から1971年までの東宝の時代劇映画を解説した書籍が出版されました。大映時代劇と言うのはよく聞きますが、東宝はどちらかというとサラリーマン物や特撮物がメインのような会社であり、やや意外な気もしましたが、考えてみれば、黒澤明時代劇は東宝で製作あるいは公開されていますので、そういう意味では日本の最高峰の時代劇作品を有する映画会社ということになります。

 そして、この本が戦後から1971年までの期間の作品に絞っているのは、どうやら70年以降の劇画を原作とする「子連れ狼」などの作品は、それまでの東宝時代劇とは明らかに作風が異なるという判断だそうです。まあ、劇画映画ブームは時代劇が衰退した後に出現した作品群ですから、一言で言えば、時代が違うということなのでしょうねえ。私としては「子連れ狼」や東宝公開の座頭市作品も好きなので、できたら併せて掲載してほしかったなあ。でも、やっぱり大映の監督の作品はまずいか(笑)。それに、後で述べますが、時代劇の巨匠の最後の2つの作品で”一つの時代”を閉めるというのはグッドアイデアです(笑)。

 さて、この本では、この27年間の時代劇映画(風刺や喜劇等は除外)として59の映画を取り上げています。内訳をみると、稲垣浩監督作品がなんと26作、黒澤明監督が8作、岡本喜八監督が5作、谷口千吉監督が3作、あとは1~2作の監督が15人です。そのなかには、小林正樹、伊藤大輔、内田吐夢、五社英雄など巨匠や有名監督の名もありますが、ほとんどは東宝所属の職人監督たちの作品でした。

 つまり、黒澤明監督は別格として、東宝時代劇の半数近くが稲垣浩監督作品なのです。稲垣浩監督と言えば、三船敏郎主演の宮本武蔵」でアカデミー名誉賞(現在は国際長編映画賞)を受賞しています。この評価のおかげでしょうか、稲垣監督は時代劇の巨匠として次々と時代劇映画を生み出しています。「戦国無頼」、「柳生武芸帖」、「ある剣豪の生涯」、「暴れ豪右衛門」、「風林火山」、「待ち伏せ」などがあります。最後の2作品を除いてはVHSもDVDもなく、私の若い頃は幻の作品でした。最近になってやっとDVD化されて観ることができました。

 その鑑賞結果というと、どうも作品の出来に”?マーク”がつくのです。若い頃から観たかった作品なのですが、どの作品も正直あんまり面白くありません。まあ、リアルタイムで観た彼の晩年の作品、三船敏郎、石原裕次郎、中村錦之助、勝新太郎という大スターが集まった「待ち伏せ」が本当につまらなかったのは承知していますが、往年の有名な作品も、セットなどはやたら立派ですが、内容があまりにもお粗末でした。本書の解説でも、”演出が時々冗長になる癖(?)”などと控えめに(笑)批判しています。こうなると、黒澤時代劇を除いて、東宝時代劇のあまり高くない評価の一端を担っているのは間違いないですねえ。それに肝心な「宮本武蔵」も後年内田吐夢の宮本武蔵5部作で影が薄くなりました。このことは本書でもさりげなく指摘しています。でも、東宝は最後まで監督として重用したのですが、何故なのかな?黒澤明とは対立した感のある東宝プロデューサーたちとの人間関係が良かったのかな? 不思議ですねえ。

 しかしながら、本書は、私のご贔屓の監督さん、例えば岡本喜八監督の「戦国野郎」「大菩薩峠」「斬る」、映画原理主義者として中抜きなど決してしない演出姿勢を貫き、過去に独立プロダクションを倒産に追い込んだ実績(三船プロも大変だったらしい)のある巨匠小林正樹監督の「上意討ち」、フジテレビとの提携で鳴り物入りの五社英雄作品「御用金」などの詳しい作品紹介があって、実に楽しい読み物になっています。

 そして、最後は、前述したとおり、「飢餓海峡」の上映時間問題で東映を退社した時代劇の巨匠内田吐夢監督が、自身の代表作中村錦之助版宮本武蔵5部作の番外編「真剣勝負」を、巨匠小林正樹監督が俳優座と提携して「いのち・ぼうにふろう」を東宝で公開して時代劇大作が終焉したと結んでいます。実際、この2作品はリアルタイムで観ていましたが、あんまり面白くはありませんでした。特に「いのち・ぼうにふろう」は、「切腹」や「上意討ち」の小林正樹監督作品でモノクロの映像や主演の仲代達矢のニヒルさが実にカッコ良かった(お気入りのキャラクター)ものの、勝新太郎のゲスト出演という期待があまりに大きかったせいか、活劇としては拍子抜けでした。カツシンも他社にせっかく出演したらなら暴れてほしかった(笑)。

 以上、いろいろ不満も書きましたが、総じて実に楽しい書籍でした。通常あまり話題にされない作品についても丁寧な解説がなされているほか、「柳生武芸帖」で”何故、鶴田浩二が三船敏郎よりタイトル順が先なのか?”の理由が判明するなど、面白い裏話も散りばめられており、大変満足しています。時代劇映画に興味のある方は是非ご覧ください。お勧めの一冊です。
 なお、このブログでは、黒澤明作品について、特にこの時期の黒澤時代劇はアクション活劇の頂点と言ってよい程の作品ばかりですが、あえて記述を割愛しておりますので、よろしくご理解お願いします。黒澤時代劇を未見の若い方は是非ご覧ください。必見ですゾ。

2023年2月28日 (火)

アメリカ映画に見る黒人ステレオタイプ

 今更ながらですが、アマゾン通販では、地方の大学関係者の出版物も入手できるので便利です。「アメリカ映画に見る黒人ステレオタイプ」も、富山大学出版会が発行した富山大学の人文学教授の著作でした。アメリカの黒人差別のルーツなどを映画の中から検証しているのですが、取り上げた作品が面白そうなので、ポチっと買ってしまいました。なにしろ、著者が現役の大学教授なので安心して読ませてもらいました。最近の大学ではこういった視点からの授業もあるようで、羨ましい限りです。

51gogfc6il_sy344_bo1204203200_  さて、この本によると、白人から見た黒人のタイプには、①トム、②マミー、③クーン等、④ムラトー、⑤バックの類型があるそうです。例えば、①のトムというのは、言うまでもなくアメリカ文学の名作「アンクルトムの小屋」の現状に満足している人の良いトムじいさんのことであり、「招かれざる客」の名優シドニー・ポワチエには黒人側からすれば現在の”トム”という見方があったのは有名なお話です。
 ②のマミーは、「風とともに去りぬ」に登場する太った乳母が有名で、自分の子供より主人の子を優先するという、いずれも白人に都合の良い存在だそうです。
 ③のクーン等とは、SFファンタジー映画「フィフスエレメント」に出てくる奇抜な衣装を着て口先だけの無責任なタレントのような、おバカキャラだそうです。つまり白人が優越感をもつことのできるタイプなのです。
 そして、④のムラトーがより悲惨な立場なのですが、奴隷制度の中の混血児で、白人男性を性的に誘惑する悪い黒人女のことだそうです。陵辱した白人男は悪くなくて誘惑した黒人女が悪いという身勝手な理屈です。黒人で初めてアカデミー主演女優賞を獲ったハル・ベリーの演技に批判があるのは、まさにこの”ムラトー”そのものというわけなのです。
 最後の⑤バックというのは、身体的にも性的にも白人男性を圧倒する黒人男性なのですが、映画ではラストに身を亡ぼすというパターンだそうです。もっとも一時期はブラック・ヒーロー映画のブームもありましたが、すぐに消えました・・・。

 こうした黒人のステレオタイプは、南北戦争後、奴隷解放を行った直後から、黒人に復讐されるかもしれないという白人側の恐怖、妄想から、映画「国民の創生」で生まれ、白人が黒塗りで演じたおバカキャラが登場するテレビ番組を通じて、アメリカ社会に静かに深く浸透していったといいます。
 その例として、挙げるのが「スター・ウォ-ズ」なのですから、少し笑いました。第1作(3部)では、猿人のチューバッカがトムであり、第4作(1部)のおバカキャラのジャージャーなんとかのカエル男がまさにクーンだというのです。多分ジョージ・ルーカスは無意識にそうしたキャラを使ったのだろう(もっともこのキャラは不人気で安心してください。)といい、無残に殺される宇宙人を演じるのは総じて黒人系俳優で、白人俳優役は実際の死ぬシーンを映すことは少ないというのも、ハリウッドSF映画の常識だそうです。ホントかどうか、興味にある方は是非お確かめください。

 それにしても、この本を読むとアメリカ社会の黒人差別は本当に酷いものと改めて感じます。しかも、奴隷解放直後から、黒人差別を助長するプロパガンダが行われ、隔離政策は無くなっても、依然として現在も差別は続いているのです。昔の映画では遠い未来の筈だった黒人大統領が出現(起こることのない未来という裏設定)しても現実社会はまだまだです。突然黒人というだけで殺されるかもしれないアメリカ社会は怖いですねえ。

 ところで、以前から私の疑問だった「ブラックパンサー」への高い評価は、どうやら原作漫画にあった伝統的なトムやマミー、クーンなどのイメージを覆したキャラクターの設定だったようです。そりゃ、差別の実態も知らないぬるま湯社会の日本人にはわかりませんわねえ。もっとも、青人種の「アバター」への高い評価はやっぱりよく分かりません。根底には有色人差別、白人の傲慢さがにじみ出ているのように感じるのですが、気のせいですか?
 ちなみに、直近の「スターウォーズ」では、主役級の黒人を特殊メイクなしで登場させたりしましたが、全然面白くなかった・・・これはまた別の話ですねえ(笑)。まあ、ポリコレ的人種平等主義は勘弁してほしい。なによりその物語性からキャスティングをしてほしいものです。

 

2023年2月10日 (金)

アメリカ流転の1950ー2010s

 祥伝社発売の単行本「アメリカ流転の1950ー2010s」は、アメリカの世相を当時公開された映画の視点から”ばっさり”と切り取った、実に面白い読み物でした。内容は、7章に分かれており、理想の50s、闘争の60s、幻想の70s、葛藤の80s、喪失の90s、不信の2000s、分断の10sと区切り、それぞれ「赤い河」、「ローマの休日」、「アラバマ物語」、「スター・ウォーズ」、「愛と青春の旅だち」、「ミッション・インポッシブル」、「ブラックホーク・ダウン」、「アメリカン・スナイパー」など、誰でも知っているような作品、しかも単なる娯楽映画のような作品まで含めて、その当時の社会情勢や大衆の心理を”ざっくり”と説明しています。

51byfbfmdl_sy291_bo1204203200_ql40_ml2_  この本で取り上げた作品は、いずれも大ヒットした映画であり、それは同時に当時の社会を反映し、大衆の心をつかんだ作品ということが言え、それゆえに、その作品から時代が求めたものが良くわかるという論法です。まあ、単なるSF活劇などは、少し深読みすぎではないか、という気も若干しますが、とにかくアメリカ史のやたら通俗的な読み物としてはなんとも面白いのです。特に、何故、その作品がアメリカでヒットしたのか、その背景をわかりやすく説明してくれるのが興味深いですねえ。赤狩り、黒人差別、銃社会などアメリカという巨大な国の複雑さと影の深さには、能天気な日本人にはどうにもついていけない気がします。
 丁度、同時期に読んだ「キリスト教で読み解く世界の映画」で、欧米の映画作品、いや、欧米人の考え方や常識の中に溶け込んだ宗教の影響なども知らないことだらけでしたので、改めて我が国のガラパゴス化にある種の幸せを感じました(笑)。それにしても、幼い頃憧れだった”アメリカ”の実態には改めて”隣の芝生”という現実の悲哀を感じざるを得ませんでしたねえ。悲しいことです。

51vtk1jlm8l_sy291_bo1204203200_ql40_ml2_  是非、未読の方はご一読をお勧めしたいと思ったのですが、実は、この本はNHKが以前BSで放送した「世界サブカルチャー史 欲望の系譜」のアメリカ編を書籍化したものだそうです。最近、テレビをほとんど観ていないので、全く知りませんでした。いやあ残念です。現在は、その”フランス編”を放映中だそうです。それも先日見逃しました。夜11時のBS放送はついつい忘れるのです(笑)。
 当然、映画のお話には映像がある方が絶対面白くなるので、機会があればそちらを観ることをお勧めします。なんだかんだ言っても、やっぱり映画は映像あってのお話ですよね。私も頑張ってNHKのオリジナル放送を見ることにしましょう。

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