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2026年7月28日 (火)

映画パンフ大百科

 私は、子供の頃から怪獣映画などの映画パンフレットを買うのが楽しみでした。特に、洋画「特攻大作戦」のパンフレットで「黒澤明」の名前を知ったこともあって、いまに至るまで気に入った映画のパンフレットは鑑賞後に購入しているのですが、配給会社の事情なのか、どうも最近、様子がおかしいのです。洋画ではパンフレットを製作していない作品があることや邦画の大作でも封切り後すぐに売り切れてしまっているのです。以前このブログで書いたとおり、しかたなくメルカリなどで中古品をゲットしています。正規の通販ショップはとにかく遅いのです。

 正直、スタッフやキャストなどの作品情報は、ネット検索ですぐにわかる時代ですので、パンフレットを買うファンが少なくなっているのかなあ、とあきらめています。まあ、値段が鑑賞料金並みに、高くなっているのも要因でしょうし、最近のパンフレットは、出演者の写真ばかりで内容があんまりありません。俳優のインタビューより、撮影裏話(表現が古い?)を載せてほしいものです。このネット時代では、映画パンフもオワコン化しているのかと、時代の流れの悲哀を漠然と感じていました。

71cgjifc0hl_sl1200_  そんなときに、「映画パンフ大百科」という本が出版されました。私の知る限り、映画パンフレット(以下、映画パンフという。)について書かれた書籍は記憶にありません。世界初かもしれません(笑)。
 とにかく、無料の宣伝媒体のチラシやポスターなどは分野ごとや海外版のコレクションを集めた出版物が多くあるのに、なぜか映画パンフにはそうしたものが全くなかったのです。”どうせ日陰の趣味よ”とひがんでいた私にとっては、狂喜乱舞の出版物です。6月にはアマゾンで発売予定を確認してすぐに予約注文をして、やっと7月24日に自宅に送付されました。いやあ、待ちかねましたゾ(笑)。

 さて、その期待の書籍なのですが、内容は思った以上に盛りだくさんで、いろいろな気づきをいただきました。
 まず、一番面白かったのが、映画パンフというのは、わが国独自のものであり、海外にはほぼ皆無ということでした。そりゃ、海外コレクションはないわねえ。映画パンフのコレクター歴は長いのに全然知りませんでした。ご丁寧に、映画関係従事者の外国人さんたちの座談会も掲載しています。映画パンフという日本の”ガラパコス世界”が今、逆に注目されているということでしたが、これは本当かな(笑)。

 そして、わが国の映画パンフの戦前からの歴史が面白かった。戦後の50年代から60年代のパンフレットが懐かしい。まあ、映画パンフの購入の動機である、作品を共有したい、作品情報を知りたいという基本的なものでしたからねえ。淀川長治や荻昌弘などの名だたる映画愛好家が寄稿していました。

 しかしながら、時代が変わって、製作・印刷方法が活版印刷から、パソコン上で作成・編集し印刷データまでできるDTPが登場したことにより、一変したといいます。一人の優れたデザイナーや編集者がすべての工程を管理し、オンデマンド印刷が可能となったことに加え、丁度、作家性の強いミニシアターの発達もあって、映画パンフは、その意味合いを”お土産”や”アート化”へ進化(?)したそうです。

 それは、筆者グループが、本の冒頭に掲げた”このパンフがすごい”コーナーに選ばれた映画パンフを観れば一目瞭然です。もはや本の形式をしていないタイプライター型の表紙、本物の包帯を巻いた冊子、レコード盤のような形状とか、ビジュアル的に奇抜なものばかりです。私的には、内容はともかく、買ってもどうやって保存するのか、首をひねるばかりです(笑)。
 なお、筆者たちのコレクションルームの写真が掲載されてますが、もう書棚ではありませんでした。完全な”映画グッズ”保管ケースですねえ。うらやましいなあ(笑)。

 まあ、この本で紹介されている、パンフレットを実際に製作するデザイナーや編集者達は、皆、若く、センスもあって立派な仕事をされているとおもうのですが、あんまり安易な外注ばかりだとそうでないパンフもできるのではないかと心配になります。コストを抑えて、安きに流れやすいのが、人間の性ですから、特に、大手の洋画配給会社さんは寄稿者の選定や内容には十分気を付けておいてほしいものです。そうでないと、映画パンフの未来はそれほど明るいものではないかもしれませんぞ。最近のビジュアルばかりの映画パンフに怒り心頭の昔ながらのコレクターの独り言でした(笑)。 

2026年5月27日 (水)

日本映画の架け橋 ラストサムライ 2393億円の男

Img_20260527_0001  アマゾンで何気なくポチっと買ってしまった「日本映画の架け橋 ラストサムライ 2393億円の男」という本が意外に面白かったので、ご紹介します。内容は、”ワーナーブラザーズ映画”の日本代表を務め、「ハリー・ポッター」、「マトリックス」、「ラストサムライ」、「硫黄島からの手紙」などの映画配給の中心的役割を果たしたウィリアム・アイアトン氏の自叙伝です。

 タイトルの2393億円という稼ぎも、メジャーな作品を扱うのでヒットはある意味当たり前ではないかと思うのですが、宣伝現場の裏事情を読むとそう甘いものではないようです。日本の興収を上げるため、様々な宣伝方法を編み出し、奇抜な手法を打ち出しています。「マトリックス」の際に、東京タワーを緑色の照明にしたのは画期的な宣伝方法だったようです。ハイリスク、ハイリターンの水商売の映画興行の厳しさは大変だなあと思ってしまいます。

20260527_120830-002  アメリカでは盛り上がらなかった「バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲! はシュワちゃんの映画としての宣伝戦略を打って、日本だけが驚くほどの観客を集めたそうです。悪役ですが、秀逸なデザインの扮装が素晴らしいMr.フリーズ(写真の20cm弱のフィギュアをご参照ください。)のファンとしては、うれしいエピソードですねえ。

 さらに、アイアトン氏は、日本に関わる作品には、製作のための資料収集やタイトルへの提案などをワーナー本社に行っていくことも大きな仕事だったようで、まさに”日米映画の架け橋”というのは大げさではありませんねえ。
 加えて、来日するハリウッドの大スターのわがまま行動の数々に呆れるとともに、振り回されるスタッフの苦労には頭が下がります。
 それにしても、クリント・イーストウッドは、”反日”という噂だったのですが、実に人間味のある硬骨漢だったようで、ファンとしては安心しました。硫黄島のロケで、渡辺謙が持参した栗林中将の故郷の水の逸話は感動しましたねえ。うん、敗戦作品としてこれまで敬遠してきた「硫黄島からの手紙」を観てみたいという気になりました。

 余談ですが、来日スターたちは”黒澤明監督に会いたい”という希望が多く、アイアトン氏も海外の映画祭なども含めて何度もお会いしているようですが、スピルバーグ、スコセッシ、イーストウッドが大変な敬意を表される姿を見て、とても軽々しく口が利ける雰囲気ではなかったそうです。ワーナーは「夢」などにも30億用意(興収は3~4億円)して支援したようです。さすが黒澤明ですね、うれしい逸話ですし、黒澤明ファンとして、アイアトンさん、助けてくれてありがとうございました。

 ところで、アイアトン氏の功績は、単なる宣伝や広報活動だけではありませんでした。21世紀になって、ハリウッドの作品を公開するだけではビジネスが立ち行かないと判断して新たな「ローカル・プロダクション戦略」を提案し、100億円規模の現地製作を始めています。
 まず、日本テレビと連携した「デス・ノート」をきっかけに、本格的に製作した「るろうに剣心」で大成功したのです。40本ぐらい作っているそうで、「おっぱバレー」などの失敗もあるようですが、とにかく、ワーナーブラザーズ印の日本映画を通じて、日本映画界の活性化に寄与したことは間違いありません。勝手ながら日本映画ファンとしてお礼を申し上げます。ありがとうございました。

 最後に、”アイアトン”という名字はどこかで聞いたことがあると思ったら、大リーグの大谷翔平選手の通訳のアイアトンさんは、彼の三男だそうです。ちなみに、彼のお父さんは、実は、GHQの職員として来日して、占領終了後もアメリカに帰らず、英文の映画業界誌の会社を始めており、その関係で、ジョン・ウエインなどの海外の映画俳優達が自宅に来ることもあったようで外資系の映画会社とは交流があったそうです。
 なお、「ニューヨーク・タイムス」の記事に”ジャーナリストの立場を利用したCIA”としてお父さんの名が出て、訴訟沙汰までなったそうですが、最終的な真偽のほどわからなかったそうです。戦後の混乱時は、CIAを名乗る芸能プロダクションの社長もいましたからねえ、こわいですねえ(笑)。

 ここで、大スクープがあります。なんと、ゴジラ1954のアメリカ版タイトルのGodzillaは、お父さんが「神にも近い存在感を表現する」ために「God」を加えたスペルを考案したとのことです。この話は東宝の社長も知っているそうですので、まず、間違いないと思ってよさそうです。本書では、お父さんの名前はわからないのですが、いわば、海外市場でのゴジラの恩人ですよねえ。ゴジラファンとして、再度お礼を申し上げます(笑)。誠にありがとうございました。

 このように、様々な映画に関わるエピソ-ドが盛りだくさんの内容です。映画ファンの方は、是非、御一読ください。楽しいですよ。よろしくお願いします。

2026年3月 9日 (月)

横溝正史作品 ベスト10

 Youtubeを眺めていたら、懐かしくも面白いサイトを見つけました。「ゆっくりしていって・・」というのが、売り文句のサイトですが、日ごろから様々なジャンルでユニークな題材を選択しており、今回は「横溝正史作品 ベスト10」という内容でした。

 横溝正史といえば、戦後すぐの探偵小説の巨匠でしたが、その後の社会派と称する推理小説ブームに押されて、一時期は古臭いと忘れさられていたのですが、70年代になって角川書店が文庫版をリバイバル発売、さらに市川崑の映画化で再び大ブームとなり、いまや、押しも押されぬ日本ミステリー界の巨匠になっています。海外にも翻訳されているそうな・・。私の娘などは、もはや”文豪”扱いです。 

 ちなみに、私が横溝正史を知ったのは、70年代のブームで文庫の表紙がおどろおどろしい絵に代わる直前の頃でして、友達のアパートでたまたま手に取って読んだ「悪魔が来りて笛を吹く」の最後のオチに驚愕したことを今でも鮮明に覚えています。なにしろ、それ以来、ミステリーというものに目覚めてしまい、横溝正史はもちろん、古今東西の名作ミステリー物を全部読もうなどと途方もない決意をしたものでした。この辺の経過は、当ブログ(2020.10.13)をご参照ください。
 まあ、結局、それは、アガサ・クリスティに行き着き、ポケットミステリを探し回った(当ブログ2018.1.07参照)のはまた別の話ですが、今では、原点の横溝正史のことさえ忘れていました。私のコレクションの角川文庫も一体どこにあるのやら・・。

 さて、いつものとおり、前置きが長くなりましたが、私も、自分なりの横溝正史作品ベスト10を作ってみました。

 第1位 獄門島・・・なんといっても、やはり日本ならではの俳句殺人ですよ。犯人像もユニークです。
 第2位 悪魔の手毬歌・・・欧米の童謡殺人への挑戦で、手毬唄殺人は素晴らしい。動機も納得です。映画もよかった。
 第3位 悪魔が来りて笛を吹く、・・・・おどろおどろしい横溝世界です。私の読書第1号ですので、思い入れがあります。
 第4位 犬神家の一族・・・・・テレビドラマ「蒼いけものたち(当ブログ2025.3.09参照)でも、市川崑の映画化(当ブログ2020.3.29参照)でも、その原作の力に圧倒されます。 
 第5号 八つ墓村・・・・”たたりじゃー”で有名ですね。少年マガジンの漫画連載もありました。
 第6号 女王蜂・・・・絶世の美女の物語ですが、映画化は見事に失敗しました。その分、割を食っているのではないか?
 第7位 三つ首塔・・・・ミステリというより冒険もののような印象です。記憶が薄れていますが・・(笑)
 第8位 本陣殺人事件・・・金田一耕助のデビュー作です。物理的トリックが好みではないのですが、犯人の動機が秀逸です。

 あれ、10本にあと2本足りません。年のせいか、内容がどうも思い出せないのだ。これは、また、コレクションをひっくり返して、読み返してみる必要がありますなあ。頑張りましょう(笑)。

 ちなみに、ネットでは、私の第6位と第7位以外の6作品は、順位はともかくすべて入っているほか、さらに、第2位に病院坂の首くくりの家(1975)を挙げています。金田一耕助の最後の事件として有名で、映画化もされていますが、今回、読み直してみましたが、文庫の上下2冊は長すぎます。この作品、実は、中断していた作品を1975年に完成させたものであり、作者自身が”くどくなった”ことを反省しているあとがきもありますし、何といっても、自身の作品のトリックを使いまわしているのが残念です。
 また、ネット第5位の「夜歩く」は、夢遊病の物語で、首無し死体など道具立てはなかなか面白いのですが、やっぱりあの有名なアガサ・クリスティのトリックでは興ざめでしたねえ。残念です。
20260309_193238  ネット 第6位の「車井戸は何故軋る」という短編の作品は、実は読んだことがなかったので、古書の単行本を購入して読んでみましたら、これが小品ながらなかなか面白かった。タイトルの意味にはなかなか感心しましたねえ。私の第9位の候補に入れましょうか。
 ネット第8位の「仮面舞踏会」は1974年に書き下ろした作品です。トリックはエラリー・クイーンの名作を知っていれば、やや評価がさがりますねえ。

 こうして並べてみると、首なし死体とか、密室殺人とか、まあ、DNAなど科学的鑑識の存在しない時代の物語なのですねえ。あわせて、戦前の貴族制度や村の因習などが色濃く残り、日本の陰惨な社会の闇を描いているのですが、でも、まあ、そこが良いので、こうして息長く読者がついているのでしょうねえ。

 余談ですが、いまや、地方の古書の大型チェ-ン店舗には、比較的新しい本のリサイクルばかりで、バーコードのない古書がほとんど見当たりませんね。結局、昔の古い書物は、ネット販売の「日本の古本屋」さんを利用せざるをえないのですが、まだまだ説明写真を掲示している店が少ないのが残念です。 古書の状態について、文章で、日焼け、天地小口にシミ、破れあり、と書かれてあっても、まったくイメージがわかりません。高額なものは、こわくてとても購入できません。今回、文庫でも、とんでもなく汚れたものを購入してしまいました。本当に悔しかったなあ(笑)。

 

2026年2月15日 (日)

追悼!! 時代小説家 上田秀人 

 時代小説の作家「上田秀人」さんが昨年3月27日に亡くなっていたそうです。恥ずかしながら、先日、水城聡四郎シリーズの最新作「飛躍」が発売されて初めて知りました。この文庫は、第7巻となるべき”遺稿”と各シリーズの第1話を掲載した傑作選になっています。
 それにしても、日頃ネットでニュースなどは見ているつもりだったのですが、実際はいかに世の中と離れた引きこもり生活を送っていたのか、と痛感しました。ほんと参りましたねえ。ファンとしては誠に痛恨の極みです。ご冥福をお祈りします。

71ut0juahvl_sl1447_  さて、時代小説家上田秀人の代表作といえば、やはり「この文庫書下ろし時代小説が凄い!」の第一位となった「奥祐筆秘帳」であり、この小説が私が上田秀人の名を知った作品でもあります。このことは、当ブログ(2013.12.10参照)に詳しく書いていますので、是非ご覧下さい。なお、奥祐筆シリーズ完結後に連載を始めた「百万石の留守居役」や実質のデビュー作ともいえる「将軍見分役 元八郎」シリーズにも触れています。
 上田氏は、その生涯でかなりな数のシリーズ物の作品を書いていますので、この機会に私のおすすめ6本をまとめてみました。ご参考にしてください。

 まず、第1位は、やはり「奥祐筆秘帳」シリーズですねえ。これは、設定が本当にうまい。奥祐筆となった隣家の用心棒となる若き主人公、そして、その剣術の師、さらに強力な敵役など、魅力がいっぱいです。

 次は、「竜門の衛」から始まる「将軍家見分役 元八郎」シリーズでしょうか。元同心の親父、元御庭番の嫁さん、途中登場の師匠の師匠が秀逸です。ただ、残念なのは・・いやこれはお読みください。

 第3位は、前述の新刊が出た「水城聡四郎」シリーズですねえ。このシリーズは、当初は「勘定吟味役」シリーズとして始まり、大奥を相手にする「御広敷用人」シリーズ、さらに「巡検譚」シリーズなど、断続的に連綿と続いています。いずれも、剣の使い手の水城聡四郎が主人公で、将軍徳川吉宗の無茶な命令により翻弄される奮闘記です。勝気な町娘出身の妻や剣術一放流の師匠、家臣などが気に入っています。特に、「御広敷用人」シリーズが白眉です。現在「惣目付」シリーズの途中ですが、敵役の伊賀の元頭が逃げのびたままで終わるのが悔しいなあ(笑)

 第4位は「百万石の留守居役」ですねえ。この作品は吉川英治文庫賞を受賞しています。歴史上の人物をからめて、加賀藩の生き残りをかけた幕府との暗闘の中で、権謀術策の城代家老に見込まれた若き主人公の苦悩と活躍を描いています。留守居役という役職に目を付けたところがうまい。剣劇もあるが、舌戦の面白みが素晴らしい。ところで、この小説は、完結しているのか?なんか、中途半端に終わった感があるなあ。

 第5位として、「表御番医師診療録」シリーズが気に入っています。幕府お抱えの医師になる主人公の計算高いながらも医師として筋を通す生き様が魅力です。特に、腕っぷしも強い医師としての活躍が面白いのですが、上司の娘だった嫌みな嫁の存在が少しうっとしいなあ。まあ、我慢してください(笑)。

 最後の6本目は、「日雇い浪人生活録」です。毎日の生活に苦労している人柄の良い貧乏浪人が主人公で、やり手の両替屋の用心棒となるところから始まる物語は、田沼意次の貨幣経済への転換政策の中で、売れっ子芸者で実は女御庭番、しっかり者の女中などがからんで、生活苦に身をつまされるのがなかなか新鮮です。また、主人公の鉄扇の腕がそこそこでのんびりしているところが実に良い。まだ完結していないので、続きが読めないのが、まことに残念です。

 そのほか、闕所物奉行、お鬚、妾屋など様々な職業を題材にした作品がありますが、例えば、禁裏物や町奉行内与力などは、あまりに登場人物のヒトが悪すぎる展開(悪だくみにしても読んでいて気分がめげるのだ!!)が多いので、私は敬遠しています。

 ということで、未読の方は、是非、前述の6本ぐらいはお読みください。いずれも筋立てに理屈があってなかなか面白いですよ。 

 

 

 

 

 

2025年12月20日 (土)

宇宙船談話室

 アマゾンで新刊を眺めていたら、懐かしい雑誌の関連図書を見つけました。1980年1月に創刊してから2005年の119号まで続いた、朝日ソノラマが発行していたSF特撮雑誌「宇宙船」に10回のみ掲載された「宇宙船談話室」を一冊にまとめた書籍です。この雑誌「宇宙船」については、実は私全巻を持っています。以前当ブログ(2008.2.14参照)に書いたように書棚の奥に秘匿しています。まあ、仕舞い込んだまま、取り出し不能になっているといったほうが正確ですが(笑)。ちなみに、休刊以降に復刊された「宇宙船」は内容が戦隊ものなどが中心の全く別ものになってしまっているので、ご留意ください。

 1980年の創刊当時は、こうしたSFや特撮映画関係を真っ当に扱っている書籍自体が珍しく、世間的にも子供だましと思われていた時代だったため、しかも当初は季刊(発売日が不確定)だったので、職場の出入りの書店さんに頼み込んで、中身が見えないように厳重に封をして取り寄せていたことを思い出します。いわゆる世間を欺く”隠れ特撮ファン”(笑)だったのです。

71gz5ohazll_sy425_  今回発売された書籍「宇宙船談話室」とは、いわゆる特撮関係者との対談集なのですが、実は編集長村上実氏自らがインタビュアーをしていたというのですから驚きました。発売当時は、編集長も対談の相手(当時は全く知名度がなかった)も興味がなかったので、まったく読んでいなかったのですが、今回、読んでみると、当時の日本特撮の惨憺たる状況やSF情報がいかに乏しかったかがよくわかります。当時はレンタルビデオなどの過去の作品を見る手段はまだなく、本当に情報がありませんでした。私などは、この雑誌に掲載される情報をむさぼるように読んだ記憶があります。そういや、チャールズ・R・ナイトの恐竜復元画を集めた洋書「恐竜・マンモス・洞窟人」を知ったのは、この雑誌の”本の紹介コーナー”だったような気がします。なお、この書籍を入手するまでの私の汗と涙の物語は、ぜひ、当ブログ(2008.1.19)を読みください。

 そんな情報のない中での新しい雑誌作りですから大変だっと想像しますし、参加した若い人たちが熱意だけで作り上げていったというがひしひしと伝わります。いやあ、大変だったのでしょうねえ。もっとも、この雑誌にかかわったスタッフの皆さんが、いまではそれぞれ功なり遂げて著名人になっているのも頷けます。例えば、日本の特撮映画を体系化した池田憲章さん、レイ・ハリーハウゼンとの交流をはじめ欧米のモンスター映画を紹介した聖咲奇さんなどが有名です。

 なお、この本の最後に、村上実氏と当時のスタッフだった、ライターの中島紳介氏、杉田篤彦氏との対談が、”第11回目の談話室”として掲載されています。まあ、完全に同窓会ですねえ。本当に楽しそうです。その中で、中島氏が”いくら配信で観ることができてもコレクションのLDは捨てられない”という発言には、おもわず拍手しました。いやあ、私もそうなのです。同好の士というのは何とも頼もしい。うん、この本を買ってよかった(笑)。

 ところで、その対談の中で、聖咲奇さんが2025.8.1に73歳で亡くなったことが明かされ、驚きました。このブログでも紹介(2024.8.8)したように、彼の同人誌「怪物園」を継続購入していたので、まことに残念です。そういえば、最近、「怪物園」の続巻が発売されないなあとは思っていましたが、ご冥福をお祈りします。 

2025年4月17日 (木)

ルーカス・ウォーズ

 「ゴジラ-1.0」の山崎貴監督と「平成ガメラ」の特撮監督で「シン・ゴジラ」の樋口真嗣監督がYoutubeの対談か何かで褒めていた、フランスで発売された「ルーカス・ウォーズ」の翻訳本をAmazonで衝動買いをしてしまいました。もともと個人的には「スター・ウォーズ」があまり得意でないのですが、以前ディズニープラスの配信で、画期的な特殊撮影技術を生み出した「ILM」のドキュメンタリー番組を見ており、その破天荒な成り立ちが読み物になっているのは、多分面白いだろうと直感的に思ったのです。

41hpvgccwjl_sy445_sx342_  207頁の縦サイズが30cmはある大型本はすぐに届き、ページを開いて驚愕しました。中身はコミックなのです(笑)。しかも、フランス版仕様なのか、見慣れた日本の漫画のコマ割りや精緻なモノクロの絵ではなく、スケッチ風のストーリーボードのような体裁です。いやあ、これは大失敗だと観念したのですが、5千円弱の価格なので、半分いやいや読み始めました。貧乏性なのです(笑)。

 ところが、ルーカスの少年時代の反抗期や自動車事故のエピソードなど、いつの間にか、上手い絵とストーリーに引き込まれてしまいました。やはり、漫画(絵)の力は恐ろしいものがあります。文字で羅列するより何倍も強烈に頭に入ってきます。

 それにしても、ルーカスという人間はかなり個性的で変わり者です。やはり天才というのは、なかなか社会に馴染めないものなのですねえ。ただ、大学時代に知り合ったコッポラやスピルバーグなどとの交流が運が良かったと言えますし、なにより、後に妻となる、天才編集者マーシア・ルーカス(旧姓グリフィン)の出会いがラッキーでした。無名時代のルーカスは、「アメリカン・グラフィティ」の評価は良かったものの、映画会社からは相手にされなかったのですが、孤立し、落ち込むルーカスを彼女が慰め、尻を叩き、そして、ついに「スター・ウォーズ」の製作が始まります。
 この新しいSFファンタジー映画は、映画会社の上層部の理解が得られず、後にこの作品の大ヒットで20世紀フォックスの社長になるアラン・ラッド一人が後押しをしたようです。とにかく、ルーカスと5年も正式な契約をせず、引き延ばした当時の20世紀フォックスの取締役たちの見る目の無さとそのやり口が面白おかしく描かれます。その愚かな取締役たちの表情がいかにもという絵なので本当に笑えます。中には、試写会の後のアンケートに”クソ映画”と書いた取締役もいたようです。
 実は、大ヒット映画の裏には必ずこうした見る目の無いプロデューサーの壁がある裏話が多いのですが、やっぱり、これはハイリスク・ハイリターンの世界の厳しさゆえに、凡人は手堅さ中心の考え方になるのでしょうねえ。
 もっとも、このSF映画の評価については、出演したアレック・ギネスなどもまったく理解できず、さんざん愚痴を零していたといいますから驚きです。それに、抜擢のハリソン・フォードとキャリー・フィッシャーができていたというのも驚愕です。フランスの本とはいえ、そんなことを暴露して大丈夫ですか?(笑)

 そして、映画が完成したものの、映画会社の方針で、全米でたったの32館の公開というものも笑えます。撮影中は、イギリス撮影所の特有の頑なさや特殊撮影の拠点ILMに帰ってみれば、巨額の予算と日数がかかっているにもかかわらず完成した映像がほとんどなかったというジョン・ダイクストラの野放図ぶり(新技術開発の貢献者にもかかわらず、その後二度とルーカスと仕事してないようです。)に散々苦労させられた挙句のこの結果に、ルーカスはすっかり落ち込んで、ハワイでスピルバーグと遊んでいたのは有名な話です。ところが、ふたを開けるとあっという間に大ヒットなったのですねえ。
 しかも、20世紀フォックスの契約引き延ばしの中で、しっかり続編制作権と商品化権を確保していたルーカスは、その後、ルーカス帝国ともも言える牙城をつくり上げ、めでたし、めでたしとなるのです。

 というのがこの本の内容であり、実に面白いアメリカンドリームの成功物語でした。まあ、ディズニーのお伽噺であれば。このハッピーエンドまででよかったのですが、実は、ルーカスのその後の人生は、なかなか大変なようです。

 これは、ネットの情報なのですが、「スター・ウォーズ」3部作を作った後、大金持ちになって幸せいっぱいの筈なのに、こともあろうにルーカスの一番の理解者、妻のマーシアと離婚するのです。どうやら、原因はマーシアが別の男に走ったためのようですが、おかげでルーカスは自身の帝国でまるでダークサイドに堕ちたような独裁的な支配者になってしまい、例えば、新三部作の”ジャージャー何とか”の登場にはスタッフ全員が反対だったにもかかわらず、鶴の一声で決定し、多くのファンの不評を買い、挙句の果ては、映画づくりにも嫌気がさしたのか、なんと「スター・ウォーズ」製作権をディズニーに売り渡してしまいました。その後の作品群の惨状はご存知のとおりです。
 ただ、願わくば、せめて後年CGを追加して改悪した最初の第3部作のオリジナル版を公開してほしいものです。ルーカスの「原版はない」と言いはる頑な方針から、現在ではオリジナル版を観ることはできないようです。作品の歴史的価値を否定し、観客が最初に観た時の感動を味わえないのは、ファンからすると”たかが原作者”の思い上がりはないでしょうか。・・・アンチ・スターウォーズファンの独り言でした(笑)。

 まあ、人生というのは、お金があっても、成功しても、なかなか難しいことを改めて思います。そんなことまで考えてしまった一冊です。未読の方は、是非ご覧ください。

2025年2月26日 (水)

リドリー・スコットの全仕事

 「リドリー・スコットの全仕事」という286ページの書籍が先月発売されました。著者は、イアン・ネイサンというイギリスの映画ライターで、「エイリアン・コンプリートブック」をはじめ、クエンティン・タランティーノやギレルモ・デルトロに関する解説書などをもう何冊も書いているようです。こうした映画関係の解説書や評伝は、アチラの書籍(翻訳物)が格段に面白い。我が国のモノは、どうも関係者や企業に忖度などが働くようで、きれいごとの褒めることしか書かないのがなんとも物足りないのです。それに比べて、アチラの本は、結構、暴露的なものも含めて人間関係も客観的に記述しているので実に感心します。我が国ではマスコミまでも忖度ばかりなので、まあ、そんな”なあなあ社会”なのでしかたありません(笑)。

 それにしても、リドリー・スコット監督は、2024年12月に「グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声」が公開されたばかりですが、1937年11月生まれといいますから、とっくに80歳を超えています。いやあ、その映画製作に向けた意欲と超人的な体力には恐れ入ります。

71zht3ttjl_sy385_  そして、改めて、これまでのフィルモグラフィーを眺めて見ると、「エイリアン」や「ブレードランナー」の代表作などから、なんとなくSFものが多い作家と思っていたのですが、「グラディエーター」など結構、史劇のものが多いし、犯罪物や戦争物など様々な分野から数多くの作品を監督しています。まあ、当たり外れもありますが、その精力的な活動には恐れ入ります。本人曰く、”大作の次には軽い小品を撮った”ということのようですが、その万能ともいえる才能には、まさしく”サー”の敬称が似合っています。ちなみに、帯を書いた押井守氏は、自著によると敬愛する彼のことは必ずサーを付けて呼んでいるそうです。

 さて、内容は、リドリー・スコットの評伝ともいえる、デビュー作からの作品の解説です。特に、彼の若い時の経歴などはまさに天才と呼ばれるにふさわしい。また、徹底的な取材をもとにした各作品の撮影裏話の充実ぶりは、例えば「ブレードランナー」が公開当時不入りだったことでのリドリー監督の落ち込みや葛藤、そして、その後の爆上がりの再評価で”やっぱり間違っていなかった”と安堵する彼の証言などを盛り込み、人間味をも感じさせる楽しい読み物になっています。
 また、キャスティングの裏話などもふんだんに盛り込まれており、つくづく成功における”人間の運”というモノを感じますねえ。特に、彼の作品から世に出た若手俳優も多く、”若い才能を発掘する監督”ともいわれているそうです。さらに、俳優だけでなく、ドウニ・ヴィルヌーヴなどの新進気鋭の監督にも影響を与えています。ちなみに、彼自身も、その持ち味である自然現象の表現などは、黒澤明の「七人の侍」や「蜘蛛巣城」の影響を受けているとのことで、黒澤明ファンで日本人の私は思わず”低い鼻が高く”なります。・・昔ながらの陳腐な表現ですが、これがぴったりなのです(笑)。

 このように、私の好きな映画制作の裏話がぎっしりと詰まった、本当に楽しい内容で一気に読んでしまいました。近年の評論書では白眉の出来です。映画ファンで、未読の方は、是非、お読みください。もし、まだ見ていないリドリー作品があれば、必ず観たくなるはずです。

2024年4月25日 (木)

アメリカ映画の文化副読本

 先日、買った「アメリカ映画の文化副読本」が予想外に面白かったのでご紹介します。
 アメリカの現実について、都市や社交、教育や信仰、人種と政治、そして職業などの切り口からその生の実態を淡々と記事にしているのですが、著者が実際に選挙活動などで経験したお話なので、彼我の違いに本当に驚きます。

811ejq0qkl_sl1500_ 正直、ハリウッド映画をより深く楽しむための教養というよりは、あまりの文化と制度の違いに、日本以外の世界の過酷さを目の当たりにして、いやあ日本に生まれていて本当に良かった、としみじみ思ったのが読後の感想です。
 まあ、何故、学園映画で、学生たちが廊下でたむろするのか? 何故、いつもパートナーを求めるのか? いままで分かったような気がして見過ごしていたことが、その背景を知って恥ずかしくなりますねえ。いや、まさしく、それほど、日本とは制度が違うのです。ごく一部の裕福な特権階級と昔から変わらぬ頑固な田舎の国なのですねえ。トランプ元大統領が強いはずです。
 かつて、子どものころ、あこがれた理想のアメリカ社会は、全くの”幻想の国”でしたねえ。現実は本当に酷いものです。この本を読んでつくづく思い知りました。
 でも、世の中にはまだまだ欧米の制度をそのまま導入しようとする愚か者がいるのには困ったものですねえ。

 思えば、最近のYoutubeでは、よくアメリカのとんでもない現状、例えば、低所得者対策の結果の万引き横行、ドラッグ解禁の結果のゾンビの街の風景などが紹介されるのですが、それも納得の社会ですねえ。人種問題を抱えた、過酷な競争と格差社会なのです。力のあるものが強者であり、基本的にはアメフトのスター選手とチアリーダーの世界なのです。銃規制も医療保険制度も実現不可能でしょう。束縛を受けずに自由に生きる、それがDNAなのですから、平和ボケした日本人にはとても耐えることはできないように思いますねえ。いやあ、恐るべきアメリカです。
 
 それにしても、子どもが一人で通学して、女性が安心して夜歩ける治安の良さや、ごみのない清潔な社会に、来日した外国人が驚嘆するはずです。どうやら、世界にこんな治安が良く、食べ物がおいしくて、四季のある美しい国はないようです。せめて、いまの日本の良い文化、平和な社会を維持してほしいものですが、外国人の移住を安易に促進し、利権ばかりをむさぼる政治では、それも風前の灯なのかもしれません。悲しい限りですねえ。本当に残念です。

2024年3月 4日 (月)

映画技術入門

 先日「映画技術入門」という書籍が発売されました。内容は、映画史を支えてきた様々な技術と関連する700の作品を一挙紹介する(帯の宣伝文句)というモノです。具体的には、映写機と35mmフィルム、サイレントからトーキー、カラー、現像とプリント、音響、デジタル撮影、そして映画館など、様々な撮影機械や上映設備などの歴史の紹介です。こうしたテクニカルなお話は、以前から様々な専門的な書籍が出版されており、私も何冊か読みましたが、一向に頭に入らずそのまま素通りしています(笑)。

51eyyz9dnel_sy445_sx342_  その点、この本は、”入門”と冠しているだけあって、”分かりやすさ”に工夫をしています。若い女の子の主人公が専門家に関連技術を教わっていくという形式で、親しみやすい漫画とシンプルな図を駆使して大変見やすいのです。しかも、エポックメイキングな作品は写真入りで監督別の経緯なども説明されています。

 正直、スクリーンサイズなどにはあまり関心も無かったのですが、映画を撮影する際に監督がどうしてそのサイズを選んだのかなど、私のお気に入りの作品を通じて、撮影の裏側が垣間見えるような気がして実に楽しい読み物になっていました。そして、映画技術のトリビアもふんだんに盛り込まれており思わず笑います。

 例えば、映画が斜陽となった1970年代に現像技術が安い方法に一斉に切り替えられてしまったという現像の歴史は、”70年代の作品はどれも「くすんだような画面」となっている”という昔から私が抱いていた疑問に答えてくれた気がして、個人的に大変満足しています。
 また、カメラの歴史にも感銘を受けました。やっぱり高額なレンタル費用のかかるカメラは性能が違うようです。日本映画の薄っぺらい画像は、安いカメラの性かな?いやあ、単にカメラだけの問題でなく照明機材などあらゆる面で撮影技術へのアプローチが無くなっているのでしょうねえ。昔の「大映時代劇」の映像の凄さを思い出してほしいものです。

 それにしても、アルフレッド・ヒッチコックやジョン・フォード、そしてスティーブン・スピルバーグの作品ごとの画面サイズや使用カメラの歴史を紹介しているのもわくわくします。作品の流れを通じてそれぞれの作家の生きざまが見れるようです。
 また、ジョージ・ルーカスの映画技術への貢献が映画界にとって実に大きかったことを改めて感じます。スター・ウォーズの作品より、その収益を使ったデジタル撮影技術、さらに上映館の設備までも進歩させたことが凄いとしか、言いようがない。

 ちなみに、B級SF映画製作者のロジャー・コーマンの”スピルバーグやルーカスが技術的にレベルの高いきわもの映画を作ったことで、私たちの映画の魅力は大きく落ち込んだ”という愚痴には思わず吹き出しました。いやあ、まあ、そういうことですよねえ(笑)。

 以上、ほかにもたくさん紹介したいことはありますが、実に楽しい読み物なので、映画ファンなら是非お読みください。

 

2024年1月24日 (水)

エクスプラス大怪獣シリーズオールカラー図鑑 円谷プロ編

 先日、「エクスプラス大怪獣シリーズオールカラー図鑑 円谷プロ編」という本が発売されました。この書籍は、いま怪獣フィギュアを中心に製作・販売している造型メーカーの”エクスプラス”が2003年から発売している”大怪獣シリーズ”のうち、ウルトラマンなどの円谷プロの怪獣フィギュアを一堂に集めたオールカラーの図鑑です。各ページに怪獣1体ごとの正面、側面、背面の写真を並べています。怪獣図鑑であり、かつエクスプラスの商品一覧でもあります。

20240124_124847  この図鑑の序文が個人的に非常に面白かったので、今回ご紹介します。
 実は、私はエクスプラスとは”X-PLUS”の社名表記からアメリカのトイメーカーとばかり思っていた時期があります。私がこの会社のことを知ったのは、10cmほどのチェスピース仕様の初期の昭和ゴジラやレイ・ハリーハウゼンのモンスター達のレジンキットを買っていたからで、特に当ブログ(2007.12.01参照)でも紹介しましたが、レイ・ハリーハウゼンのチェスピースは、かなりな数のシリーズとなっており、商品も英語表記であった(海外への輸出向け商品だった?)し、外国の著作権を多数取得している実績から、うかつにも勝手に外国企業とばかり思い込んでいました。
 その後、徐々に日本語表記の商品、特に前述の「大怪獣シリーズ」でウルトラ怪獣が大量に販売されるようになって、やっと日本の企業だったと気が付きました。何事も思い込みはイケませんねえ(笑)。

 というような私の勝手な思いもあって、このエクスプラスという企業の生い立ちが序文で紹介されていたのは、望外の喜びになりました。この本を買ってよかった(笑)

 その紹介文によると、エクスプラスはもともとはアパレル中心の貿易商社であり、1998年5月1日にTOY事業部がスタートしたそうです。貿易商社であったことから欧米とのライセンス交渉の素地はあったのでしょうが、フィギュアの原型製作やデザインワーク、生産工場などトイのインフラを一から作ったようです。どうやら、最近youtubeの配信で時々顔見世をしている、この雑誌の監修者である岡本”Gee”明彦氏が立役者だったようです。

 最初の商品は、ポリレジン製のスタチューから生産を始めたということですので、私が買い始めたレイ・ハリーハウゼンのチェスピーズ版や30cmクラスのスタチューのことなのでしょう。いやあ、本当に懐かしいものです。

 そして、この図鑑となったソフビ製の”大怪獣シリーズ”の発売第1号が、ウルトラQの全身を棘で覆われた怪獣”ガラモン”だったのですが、この開発に際して、円谷プロから提示された条件が”本当にリアルである”ことだったそうです。まあ、高価である分細かなディテール表現に適しているレジンとは違ってソフビ商品となると、当時はマルサンやブルマァク製に代表されるような、とうてい”棘”の生えている怪獣とは思えないほど丸みのある体型になった子供向けの人形というのが普通の認識だったからなのですが、実際、固い金型から柔らかいソフビを成型するのは至難の業であり、工場と試行錯誤を重ねる中でやっとできたそうです。ちなみに、生産工場は韓国、中国、ベトナム、現在バングラデッシュと変遷しているそうですが、協力したのはどうやら中国の工場だったようです。 

 思えば、当時はまだ私にとって”謎の企業”だったエクスプラスから発売された20cmぐらいのソフビ製”ガラモンには、棘のリアルさとともに、その値段の安さに驚きました。この本の中では”価格が4桁で作れた時代があった”と述懐していますが、私の記憶では4桁の前半だった筈です。当然、その安さゆえに、その後次々と発売される大怪獣シリーズを私も買っていたのですが、何しろ、パッケージが大き過ぎることに加え、ブリスターパッケージで背面紙と接着されているので、一度取り出すと二度としまえないというなんとも置き場に困るものでした。
 おかげで、狭い我が家には全部を飾ることもできず、途中で収集自体を断念したのです。いま、パッケージ未開封のままで壁に飾られて残っているのは、大ダコの「スダール」、巨大巻貝の「ゴーガ」、大ナメクジの「ナメゴン」ぐらいです。そういえば「大魔神」の3部作もそれぞれ残っているのですが、何故か、未開封のパッケージが日焼けで真っ黒に変色している(モノによるのだ)のが悲しい姿です。

 また、この図鑑で、ウルトラQとウルトラマンに登場する怪獣については、全てコンプリート(すべての怪獣のソフビ化を達成)されているということで、ウルトラセブン以降のウルトラ物はまだ道半ばだそうです。
 しかし、改めて、この写真図鑑を見ると、どうもウルトラセブンの後半以降の宇宙人や怪獣のデザインと色使いが、デザイナーや造型師が変わったせいもあるかもしれませんが、一気に幼児向けのおもちゃのような生物感のない大雑把な造形になっていますねえ。そういう観点からも、やっぱり、円谷プロはウルトラQと初代ウルトラマンのものですねえ。

 ところで、ウルトラQとウルトラマンに継続して登場する怪獣をご存知ですか?
 怪獣のぬいぐるみを改造して使い回した例は、「シン・ウルトラマン」のネタにされた、パゴスがネロンガやガボラに改造、そのほか、ペギラはチャンドラーに、ピーターはゲスラに変身。さらに、ガラモンは同じ形で小さなピグモンと設定変更。未来人だったケムール人は、何故か、メフィラス星人の手下の宇宙人役で顔を出します。この辺の原因となった殺人的な撮影現場の話は伝説になっています。こんな製作裏話を描いたTVの「二人のウルトラマン」は面白かったなあ。

20240124_123514 20240124_12353420240114_1153591 20240114_1154431  さて、正解は、海底原人ラゴンです。ウルトラQに登場したラゴンは、同じ海底原人という設定なのですが、水爆実験で巨大化しウルトラマンと戦うのです。いや、ウルトラQの第20話「海底原人ラゴン」はホラー要素も強く、和製半魚人としての名に恥じません。同じ俳優(古谷敏)が着ぐるみに入っている前話の「2020年の挑戦」のケムール人と並ぶ傑作モンスターです。ちなみに、ウルトラQのラゴンは雌で、ウルトラマンの方は雄だそうです。
同じエクスプラスの模型で比較してください。前2枚の写真が大怪獣シリーズの20cmソフビの雌ラゴン(Q版)で、後2枚がシリーズ前の30cmレジン製の雄ラゴン(マン版)です。じっくりご覧ください。違い分かりますか?・・嗚呼、興味が無い?失礼しました。

 最後に、この大怪獣シリーズオールカラー図鑑の続編となるはずの「東宝特撮編」や「大映特撮編」の早期の出版を期待しています。商品数も多いですから楽しみです。
 ついでに、ソフビの大怪獣シリーズ以前のレジン製のエクスプラス商品図鑑も出版してほしいものです。なにしろ、外国版権も数多く獲得し、ディズニーの海底2万哩のノーチラス号の模型までも販売していることから、是非「海外編」もよろしくお願いします。
 さらに、企画面でお願いしたいのは、50年代の有名な宇宙生物画家「エド・カーティア」の宇宙生物(当ブログ2014.2.8参照)のフィギュア化を実現してほしいというものです。あの圧倒的なデザインは立体化すればさらに凄いと思うのですが、いかがでしょうか。

 

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