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2017年11月 6日 (月)

IT(イット)

 土曜の夜のお楽しみを台無しにしたアメコミ映画のお口直しに、少し、劇場に行くのをためらっていたホラー映画「IT(イット)」を日曜日の午前中に観て来ました。
 
 前後編2冊揃いの分厚い原作も読みました。細かな日常生活を積み重ね、リアルな恐怖を描く描写があちらでは評価されてたようですが、日本語の文章では退屈でどうにもなじめませんでした。さらに、ITの正体に至っては、とても馬鹿馬鹿しくて誠に興ざめでした。以前に、一度、映画(TV?)化されたものの、原作どおり忠実に再現されたITの正体は、やはり噴飯物でした。当時の映像技術では無理と思った記憶があります。
 
 ところで、余談ですが、”IT”とは、サイレント時代には、肉体派女優のことをIT(あれ)女優と呼んでいたそうです。あれとそれとはどう違うのか、どなたか教えてほしいものです。
 ちなみに、映画に登場するピエロは、欧米では、実際に起こったピエロの姿をした連続殺人鬼のせいで、いまやお笑いのシンボルではなく、恐怖の的になっているそうです。
 ちなみに、余談ですが、本来、道化役は、漫才のボケとツッコミの2人コンビであり、”ピエロ”とはボケ役の呼び名で、今回の映画に登場する姿は、ツッコミ役の”クラウン”というそうです。これはパンフの受け売りです。
 
Photo  さて、今回の作品は、結論からいうと、ホラー版スタンドバイ・ミーとでもいうようなお話であり、ITの正体も原作とは全く違う、映画オリジナルですので、ご安心ください。
 映画は、雨の降る田舎町から始まります。この冒頭の雨降りのシーンが白眉です。これからの行方を暗示するかのように陰鬱でしかし美しい映像です。
 かつて、黒澤明は、「羅生門」で墨を混ぜた雨を降らせて、雨粒をスクリーンに映し出したそうですが、カメラの性能が格段に進歩したとはいえ、あれだけ広範囲のエリアで雨降りの情景を描きだしたのは見事です。
 
 黄色い雨合羽を着た主人公の弟が、住宅街の側溝に流した折り紙の舟を追いかけて行くシーンは、華麗なカメラワークを通じて、予想される悲惨な運命を美しくも哀しく表現します。
 側溝の穴に近づくなという観客の願いもむなしく、彼はのぞき込み、お約束どおりペニーワイズ(ピエロの名)に襲われます。なお、R15+ですが、このシーン以外は、存外、物理的なショックは控えめですので、ご安心ください。
 それにしても、明るい青空や豊かな自然の中で、うわべは美しい街並みのあるアメリカの田舎町の閉塞感を描いています。思春期の子供たちそれぞれが、かなりハードな悩むを抱え、屈折し、恐怖と不安に耐えているのを浮き彫りにします。
 なにしろ、少年たちの演技がともかく上手いし、恐怖が実体化する不安感をよく表現しています。ただ、怪物に立ち向かう少年たちの蛮勇は、少し無理があるかもしれませんが、まあ、いわばそれが青春です(笑)。
 
 結局、超常現象を産む怪物ITより、大人の心に巣食う闇が数倍恐ろしい気がします。いやあ、トランプ大統領の支持基盤である普通の白人層をどうしても想起してしまいます。こわい、こわいなあ。
 未見の方は、どうか、映画をご覧ください。いろいろな気づきがある稀有なホラー映画です。それにしても、怪物が人間じゃないので、恐怖も楽しいエンターテイメントに仕上がっています。どうか安心して観てください。
 なお、エンドロールでは、第一章と表示されましたので、今後の第二章の続編がいまから楽しみです。
 
 

マイティ・ソー バトルロイヤル

 楽しい土曜の夜に、本当にしょうもない映画「マイティ・ソー バトルロイヤル」を観てしまいました。
 
 実は、何を隠そう、最近のマーベル印の映画は、巨額(多分)の資金を掛けた豪華なCG映像、意外と深い意味がありそうなストーリー、結構な大スターの出演などの理由で、すっかり私のお気に入りのシリーズになっていたのです。
 以前のアメコミ嫌いの私は一体何処に行ったのでしょう、多分、年のせいと思いますのでお許しください(笑)。
 
 さて、今回は、ケイト・ブランシェットがゲスト出演するというので、大いに期待していました。ところがどうしたことでしょう。あまりに単純でお馬鹿なストーリーだったのです。
 
 まず、北欧神話の神オーディンの第一子であり、ギリシャ神話のゼウスの妻ヘラとたまたま同じの名を持つ死の神(この設定も無理がある)をブランシェットが演じるのですが、登場するやいなや、弟のソーの必殺武器のハンマーを握りつぶした上に、異世界まで吹き飛ばします。そして最後には、なんと神の国アスガルドまで破壊するという物語です。いやはや何のひねりもない、大味なストーリーです。
 
 そして、それ以上に情けなかったのが、神の国などの異世界の造形・デザインの手抜きのような、安直さです。
 定評のあったCG技術も、原色系のセットや小道具などの美術の粗末さとあいまって、ファンタジーに欠かせない、異世界としてのリアルさやセンスオブワンダーが全く感じられないのです。チープで出来損ないのデザインのおもちゃ箱です。いやあ、これには参りました。
 
 どうやら、ソーとハルク(緑色の大男)のグラディエーター姿の戦いを見せたかっただけ、という製作陣の意図が透けて見えます。スタンリーさん、大丈夫ですか?少し、クロヒョウやら、魔術師やら、生産過剰ではありませんか?今後の品質を心配しますゾ。もっとも、アメコミの世界そのままと言えるかもしれません。多分、意外に評価の高い理由は、そうしたアメコミファンの声なのでしょう。
 
 まあ、故淀川長治氏の「どんな映画にも、一つは良いところがある」という言に因めば、どんな立派な神の国も、国づくりの過程では、他民族の征服、殺戮と略奪の歴史がある。そもそも国とはそういうものであり、当事者が君子のようにふるまっても説得力はない。そして、王国は、必然的に滅びるのだ・・・という寓話なら、その点だけは買えます。 
 
 なお、買うといえば、この映画のパンフレットを、魔が差したのか、映画を見る前に買ってしまいました。そこも残念でした(笑)。
 ちなみに、翌日曜日の午前中に、口直しに別の映画を観に行きましたが、これが予想以上に傑作で・・・これはまた別のお話です。
 終わり。
 

2017年10月29日 (日)

ブレードランナー 2049

 カルト的人気を誇るリドリー・スコット監督のSF映画の傑作「ブレードランナー」の続編が製作されたと聞いて、大変心配していました。
 30年もたって、何故、いまごろ続編を作るのか、しかも、あの「エイリアン」シリーズでさえ、スコット監督自身が作った最新作は全く異次元(?)に行ってしまいました(笑)。
 実際には、リドリー・スコットは製作にまわり、私にはどうにも理解できない「メッセージ」のドゥニ・ヴェルヌーヴが監督とのことで、正直どうなるのか、不安を消すことができませんでした。
 というのも、私、このオリジナルの「ブレードランナー」が大のお気に入りなのです。
 公開当時、劇場で観た時のインパクトが忘れらません。あの暗い世界を象徴するような音楽、雨降りの中のネオンにかすむ悪夢のような未来都市、さらにライトの光源がリアルなスピナー(空飛ぶ車)など、当時の特撮技術の粋を集めた圧倒的なイメージでした。
 そして、それ以上に、ショーン・ヤング演じる”レイチェル”です。いかにも、理想の特別の人造人間という形でした。いやあ、ハリソン・フォード演じるブレードランナーのデッカードでなくても一目ぼれします。
_new この大事な作品を、スコット監督は、こともあろうに、ビデオテープ(LD)をはじめDVD化するたびに、異なるバージョンを出すのです。ディレクターカット版はもちろん、ファイナル版まで、何度手を加えるのでしょう。買う方も大変です(笑)。 ちなみに、私は、ハッピーエンドで終わった劇場版が一番好きなのです。
 
 ということで、私としては、何故、いまさら続編を作るのか、大いに疑問でしたが、それは、全くの杞憂でした。
 
 結論からいうと、誠に見事な続編です。30年後に続編を作る理由も意義もしっかりした”メッセージ”があります。いやあ、この監督を見直しました。手のひらを大きくひっくり返します。お見事。
 映像は、もうCG技術を使って誠に申し分ありませんし、よくオリジナルの雰囲気を再現しています。とりわけ、巨大な宣伝ネオンが、フォログラムに代わり、エロチックなセンスも抜群です。「ゴースト・・」とは一線を画す出来です。
 しかし、それだけではありません。時代設定、登場人物、ストーリー展開が素晴らしいのです。逃亡レプリカント(人造人間)を追う主人公のブレードランナー(警官)も、やはり、戦闘用レプリカントで、仲間から”人もどき”と差別されながらの行動をハードボイルタッチで追います。
 その過程で、今、我々が直面する様々なテーマ、例えば、AIとの恋愛なども描かれます。このAIジョイの純情が切ないのですが、なにより、オリジナルのテーマが人造人間の人権、と寿命だったのが、続編では一挙に拡大します。ここは、ネタバレになりますので、やっぱり、劇場でご覧ください。続編の意義にもつながりますゾ。本当に脚本がうまい。
 
 最後に、あの人のサプライズな登場もうれしい。最新のCG技術に乾杯しましょう。ここも、是非、劇場でご覧ください。
  いやあ、続編はかくあるべきです。
  SF映画続編史上3番目の傑作(笑)が誕生しました、というぐらいに私は大いに贔屓にします。
  ちなみに、1番、2番の作品は、①ターミネーター2、②エイリアン2です。
 

2017年10月22日 (日)

アトミック・ブロンド

  シャーリーズ・セロン主演の「アトミック・ブロンド」は、宣伝文句のとおりのスタイリッシュ・スパイアクションでした。
 色彩を落とした映像や斜めに傾くカメラワーク、主演のドクターX(笑)のような美脚を見せつけるためのだけの衣装など、あまりに過剰なスタイリッシュさ(笑)に、なんとも感情移入ができず、しかも、ただただ大音量で画面と関係なく勝手に流れるBGM、さらに、決めても決めてもなかなか相手が倒れない、長回しの、ホントに痛そうな格闘シーンを眺めていました。
 
 ちなみに、BGMはデビット・ボーイなどのロック系の有名な曲らしく、好きな人には最高(そういうユーザーの声が多いよう)かもしれませんが、映画は、かの黒澤明が宣ったように映像と音楽は掛け算、融合芸術なのです。完全に遊離しているように感じたのは、私だけなのでしょうか。歳のせいか、劇場設備のせいか?とにかく音量で耳が痛いのです。
_new  さて、時代は、冷戦時、東西ドイツのベルリンの壁の崩壊前夜なのですが、西側スパイのリストや二重スパイの正体を巡って、セロン扮する女007(宣伝文句)スパイが大活躍する物語かと思ったら、スタイリッシュな映像とは正反対のやたら深刻なお話でした。
 
 007映画の魅力のユーモアも何もなく、セロンも裸の大サービスはするものの、無口で、格闘跡、傷だらけな無残絵なのです。この手の好きな人はいいが、私はどうも閉口します。見てて気が滅入りました。
 それに、目玉の格闘シーンも、長回しで見事な”階段落ち”のスタントには感心したものの、大男と殴り合うセロンの姿は痛々しくて見ていられません。
 もっと、スカッとしたアクションを観たいのです。リアルさの追求かもしれませんが、しまりのない、だらだらした格闘は見苦しい。鼻血も嫌悪感です。
 これまでの出演作を観たら、多分アクションが好きなんだろうなと思われるセロンも、「マッドマックス」後遺症(笑)は判る気がしますが、やはり年齢的にそろそろ、この手のリアル指向の格闘技映画は限界かなあと、思わざるを得ません。
 それにしても、「キングスマン」や「ザ・マミー」で圧倒的な存在感を示した、ソフィア・ブテラとくんずほぐれつの大格闘を期待していたら、それがベットの上とは意外でした。いやあ、この辺は、007映画の伝統を踏襲した(笑)のかなあ。第一、ブテラを、ボンドガールのような新人スパイに設定するのも脚本のミス。まず、女殺し屋にしてほしかった(笑)。
 まあ、ストーリーが回想による説明で右往左往するため、最後に仕掛けたどんでん返しなどは、劇中の伏線がまったくわからないので、なんの感動もありませんでした。・・・これは脚本と監督が悪い。まあ、最後のセロンの笑顔が救いです。
 
 ということで、今回は、パンフレットも買うこともありませんでしたので、ブログには、チラシを掲載しました。以上です。
 
 
 
 
 
 

2017年10月15日 (日)

猿の惑星 聖戦記

  あの名作「猿の惑星」のリブート版(最近、リメイクではなく、再創造というらしい)の第3部作の完結編「猿の惑星 聖戦記」は、予想をはるかに超える傑作です。
 猿の惑星と化する過程の猿と人間の間の大規模な戦争物(核もある?)とばかり思いこんでいましたが、・・・そういう大合戦は前作「新世紀」で既に終わっていたんですねえ。・・・人類は絶滅危惧種になっていたんです(笑)。
_new  この作品は、なにより、第1作目の世界につなぐための、数々の小技(イブが良い)をはじめ、猿の主人公シーザーと人間の大佐の対立を軸にした練に練った脚本が素晴らしい。
 そして、もはや知能を持った本物の猿としか思えないほど進歩した撮影技術、そのパフォーマンス・キャプチャーを生かした、シーザー役のアンディ・サーキス(ゴラムやキングコング役者)の名演につきます。アカデミー賞の声も挙がってるとか、さもありなんですが、こうなると、これからの俳優は、あまり外見は重視されなくなる時代が来るかもしれません。やっぱり、要は、声と身体能力と感性ですか。
 
 さて、内容については、もうここで、あれこれご紹介する気にもなりません。まずは、是非、ご覧になってください。なぜ、猿の惑星になったのか、なぜ、人間はしゃべれなくなったのか、オリジナル版への回答です。
 
 シーザーの怒りや敵役の大佐の行動すら、なかなか考えさせられます。意表をつく展開もうまい。女の子も収容所の舞台も良いねえ。映像がリアルな上に、観客向けのさまざまな隠し味が仕込まれている気までします。
 某「ありえん」映画とは、雲泥の差です。いやあ、大したものでした。本当に大満足です。ごちそうさまでした。

2017年10月 1日 (日)

亜人

 映画「亜人」は、予想外に面白い活劇でした。冒頭から始まる銃撃戦は、「邦画もハリウッドの水準に達した」と感心するほどのテンションの高さです。しかも、これが全編続くのですから正直驚きました。いやあ、立派。
 
_new_2   アクションシーンの迫力の理由としては、まず、銃器の小道具の性能があがったこと。往年の東宝アクション映画と比べて一目瞭然。本物っぽく見えます。・・ベニヤのセットも(笑)。
 次に、格闘の殺陣師も、国際化しているのでしょうねえ、リアルです。
 加えて、CGなどの映像加工技術の進歩でしょうねえ、いや、TV出身の本広克行監督の演出を褒めるべきでしょうか。なかなか上手いです。
 
 しかし、それ以上に、なんといっても、主演の二人の俳優の身体能力の高さと頑張りを評価したいと思います。
 佐藤健は、時代劇「るろうに剣心」3部作で、その殺陣のうまさを証明していますし、今回、敵役を演じた綾野剛もアクション力が凄い。しかも、タランティ-ノ映画に登場しそうな、饒舌な悪役を見事な滑舌で演じ切り、その演技力も見事でした。
 
 この二人は、若手登竜門と呼ばれる仮面ライダー番組出演者ですか?(笑)。
 やっぱり、主演を張る俳優たるものの条件として、身体能力の高さと声の良さは必須ですね。改めて思いました。極論言えば、顔より声です。声優の時代だ(笑)。今回、ほんとに綾野剛を見直しました。
 この映画、ストーリーもなかなか面白い。あの”お守り”の設定にも驚きましたが、それもこれも、現在も連載中という同名の原作漫画の面白さなのでしょうねえ。
 
 内容は、死んでもすぐに体が再生するミュータント「亜人」と人間との戦いですが、人体実験のうらみから人間を滅ぼそうとする亜人とそれを防ごうとする亜人の、死ねない者同士の戦いを描いています。
 原作を端折っているせいか、関係者の人間関係が今一つわかりませんが、20年間、毎日殺されて生き返される人体実験の非道さと国の冷酷さは良く描けています。なにしろ、すぐに生き返るのですが、殺されるときの痛みは通常という設定ですから、これは痛い(苦)。
 
 しかし、不死身、再生、超人というテーマは、大体が少年時代の願望ですが、いまや、ドラゴンボールをはじめ、様々な設定での漫画が多数ありますし、ハリウッドでの映画化も含めて、実写化も多い。さすがにクール・ジャパン、それだけ日本の漫画の質が高いと誇りたいのですが、世界が幼児化に向かっている証左かもと、なにしろ現実世界が漫画よりマンガチックになってきているような気がして、手放しでは喜べません。(年寄りの杞憂か?)
 
 それはさておき、この映画を未見の方は、是非、日本の現代SFアクションのレベルを鑑賞する映画として是非ご覧ください。十二分に楽しめます。
 

2017年9月23日 (土)

パニック・イン・テキサスタワー

 随分昔、テレビで放映されていたある狙撃犯の物語に忘れられないシーンがあります。
 それは、アメリカの大学構内にある高い塔の上から、無差別に多数の人を狙撃している犯人を捕らえるべく、警官が銃を構えて回廊の縁に沿って進んで行く場面なのですが、警官の脂汗を流しながらの悲壮な表情や姿に、とてつもなくリアルな緊張感と迫力があったのです。・・・しかし、それから40年という経過の中で、作品名もすっかり忘れていました。
91dukl7dlml_sy550_  さて、今回、1975年製作の「パニック・イン・テキサスタワー」という映画が初めてDVDにパッケージ化されました。
 そのDVDの宣伝文句が「1966年に実際に起こったテキサスタワー乱射事件を映像化した伝説のTVムービー」とあり、嗚呼、これは、前述の私の記憶に断片的に残っている作品だと直感しました。
 早速、購入して、視聴しましたが、間違いありません。まさに、あの白昼の悪夢が描かれています。
 今見直しても、塔の上の演出は静かな迫力に満ちています。
 しかし、それ以上に、忘れていた部分も多くありました。
 
 まず驚いたのが、犯人役が若き日のカート・ラッセルなのです。彼が狙撃事件を起こす前に母と妻を殺すシーンなどは、直接の殺害の描写はないのですが、その無表情が恐ろしい。
 また、主演のメキシコ人の警察官に対する人種差別や大量の銃や弾丸を簡単に販売する銃規制の甘さなどを静かに批判している演出も素晴らしい。 
 やはり、映画の面白さは、お金や大スターではなく、演出ですねえ、改めて思いました。
 いやあ、これは地味ですが、やっぱり傑作です。
 それにしても、最後に字幕に犯人の動機を頭の中の腫瘍のせいにする説明があったのは、製作の70年代との時代の流れを感じさせます。
  未見の方は、是非、ご覧ください。

2017年9月17日 (日)

エイリアン コヴェナント

 名匠リドリー・スコット監督はどうしたんだろうと、思わず考え込んでしまいました。エイリアンシリーズの最新作「エイリアン コヴェナント」を観ての感想です。
 
_new  新たなシリーズとして「エイリアン プロメテウス」から始まった3部作の第2作目です。前回から続きの物語で、第1作に登場した、いわくありげなアンドロイドも出ますが、まったく新味がありません。
 
 出ることがわかっている幽霊を見るような、新登場の白いエイリアン(ネオモーフと呼称するらしい。)は、とんがり頭のノッペラボーでろくでもないデザインであり、しかも幼虫にすらならず、瞬時に大きくなるご都合主義の生態です。
 
 もっとも、真打のお馴染みのエイリアン(これも、今回からゼノモーフと新たに呼ぶらしい。)すらも、CG製でやたらピョンピョン跳ねたり、四つ足で走ったりと、まったく貫録がなく、重みもありません。あの第1作の2本足で立ち、突然闇から現れて襲い掛かる恐怖の象徴の姿は片りんもありません。
 
 ・・・本当に、スコット監督はどうしちゃったのだろう。別に、A級SF芸術映画を撮ってほしいのではありません。なんか、晩年の黒澤明監督を思い出しました。
 観客はセンス・オブ・ワンダーが楽しめるSF映画を撮ってほしいのです。しかも、あの人類創造者たるエンジニアの母星があんな非文明国だったとは、あの最後もひどいですが、別の意味で驚かされました。情けなくなりました。しかも、エイリアンの誕生の秘密がアレとは、ますます悲しくなりました。
 
 さらに、この手の映画に不可欠なのは、魅力的なモンスターと美女です。今回のヒロインは、旬の女優さんらしいですが、人妻役だったせいか、なんか所帯じみたオバさん風(失礼!!)な雰囲気で、どうにも役に向いていません。
 
 もう一つ、おまけに、前回も非常に気になりましたが、未知の惑星に、無防備に素顔を晒してそのまま降り立たないでください。O157じゃないですが、未知のウイルスの存在など当たり前と素人でもわかります。汚染されて当然です。
 まあ、このシリーズ全体を通じてのテーマが指揮官の無能ということかもしれませんが、科学的常識がない脚本もひどいなあ。
 
 最後に、ダメ押しでの突っ込みです。この映画は、第1作のエイリアンの20年前らしいですが、装備は、あの映画と比べて100年は先のような気がします。
 正直、映画の鑑賞中は、あの初代エイリアンの時代よりも、ずっと後の話のような気がしていました(笑)。もっとも、そうなら、エイリアン誕生の秘密は成り立ちませんわなあ(笑)。
  でも、良く考えると、あの初代エイリアンの遺棄船とエンジニアは化石化していたような・・・。
 
 さてさて、それにしても、第3部もあるのかなあ?・・・観たくないなあ。別の意味で怖いなあ(笑)。

2017年9月10日 (日)

ダンケルク

 評論家にも観客にも評判の高い、クリストファー・ノーラン監督の「ダンケルク」を観て来ました。・・・これは、「映画」なのか、その評価に困っています。
_new  全編、わずか106分ですが、ものすごい音量のサウンドが流れます。
 
 まず、「防波堤」という説明文字が出るものの、一切の説明がなく、ともかく、若い頼りなさそうな兵士の体験だけをカメラが追いますので、ダンケルク海岸エリアの主人公は、この兵士ということがわかりました。
 しかし、この主人公は、なんとしても帰還したいという強い思いから、もう一人の行きずりの兵士とともに、あの手この手で帰還船にもぐり込みますが、その都度、文字通り水の泡になります。もちろん、極限の状況の中、生きて帰ろうという行動を貶しはしませんが、やっぱりどうにも狡い気がして、共感できないような変な展開です。 
 
 一方、救援側の視点として、「海」の説明文字が出て、イギリス本土の民間船のオーナーが息子とその友達を連れて、民間救援隊としてダンケルクに向かう場面が描かれます。このさえない船長がなかなかの英雄です。このおっさんは実に上手い。そして、その息子が傷病兵に言った「大丈夫」という言葉には正直一寸感動しました。意外なオチもいい。総じて、このエリアは気に入っています。
 
 さらに、イギリス空軍がわずか3機でダンケルクに出撃します。「空」という場面説明がありますように、このエリアの主人公は、最後に素晴らしい活躍をするパイロットで、トム・ハーディが演じていますが、操縦席でほとんどマスクをしており、バットマンの悪役と同じく、やっぱり素顔が見れません(笑)。
 
 それにしても、ドイツ軍機との空中戦は、リアル過ぎて、ほとんどどうなっているのか、全くわかりません。風防越しの視界と爆音のサウンドで、臨場感だけがむなしく高まります。
 映画は、この「防波堤」「海」「空」のそれぞれの立場から交互に物語が語られるのですが、時系列には描いていないため、かなりトリッキーな構成となっています。
 
 結局、同じ場面を違う角度で繰り返し見せられ、、最後にはそれが一つの姿につながりますが、この演出がそれほど凄いのでしょうか?効果的?どうも、腑におちません。
 最近、単純なアメコミ映画ばかり見ていたので、鑑賞眼が老いたのかな?、いや逆の幼児化かな?(笑)。
 でも、正直、こんな激しい音響効果とハッタリの編集ではなく、昔のハリウッド黄金時代の映画は、もっと繊細で心に訴えるようなつくりをしてたような気がします。
 
 そういえば、あのアカデミー賞の受賞作「ラ・ラ・ランド」のラストのアレも、別の人生を一瞬で走馬灯のように見せるのは実にトリッキーな演出ですねえ。・・・関係ないか(笑)。
 
 以上、正直なところ、遊園地のアトラクションの映像のような気がしました。まあ、イギリスの愛国心、戦意高揚には良いPR映画でしょう。故チャーチルも見たかったのではないでしょうか。個人的には、この作品が世評のような「傑作」というような高い評価はできなかったなあ。
 もっとも、CGを使わず、実際の現場で、本物の飛行機を飛ばして、フィルムで撮影したという監督の姿勢は、誠に素晴らしいし、高く、そして大きく評価したい。

2017年8月27日 (日)

ワンダーウーマン

  「バットマンVSスーパーマン」に前振りなしで登場したワンダーウーマンの誕生編がこの「ワンダーウーマン」です。
 元来、アメコミには全く興味がなかったので、スーパーマン並に強い、この女ヒーローの素姓を全く知らなかったのですが、結局、ギリシャ神話の神ゼウスの隠し子だったのですねえ。SFと神話が融合化しています。
 
_new  そういえば、アメコミの世界には、こうした神話由来のスーパーヒーローが結構多いのです。実のところ、欧米社会では、キリストなどの絶対神以外の神様は、神と言っても全知全能でもなく、非情に人間臭い、いわばパワーや能力が人類以上というだけの超人や宇宙人の類なのですねえ。
 そのおかげ(?)で、神話の神様が当たり前のようにSF世界のスーパーマンやバットマンと同じ世界に馴染んでいるのかもしれません。
 
 この映画は、こうしたトンデモナイ設定の超人を、ほんとうにリアルに、というと可笑しな気がしますが、実に上手に描いています。
 
 時代は、第一次世界大戦のころまで遡りますが、あのコスプレの様な衣装にもかかわらず、精緻に再現した悲惨な塹壕の戦場や戦火の町並みなどに、すんなり溶け込んでおり、違和感は全くありません。
 泥だらけのマントなどをうまく使っているのですが、この手腕、この映画美術は尋常ではありません。女性監督ということですが、凄いと感心するばかりです。 
 最近のハリウッド映画は、CGのおかげもあって過去の時代の雰囲気を本当にリアルに再現していますが、その中でも重厚感、臨場感は抜群です。要はセンスなのでしょうねえ。あの記念写真の映像がそれをよく象徴しています。やっぱり、お金の掛け方が違うのでしょうねえ。
 
 さて、物語は、意外なラスボスの登場も含め、ほぼ予想通りなのですが、主演のガル・ガレットが結構面白い。初めて見た男の感想やアイスクリームの出会いなどのコミカルで楽しい会話は、脚本の勝利かもしれません。
 また、銃弾も跳ね返し、塔よりも高く飛ぶ、アメコミ・アクションの見せ場もさすがですが、それ以上に、この映画は戦争の悲惨さ、戦場の残酷さをよく浮き彫りにしています。この辺の演出も非凡です。
 アメコミと侮るなかれ、なかなか良いぢぁないか。・・・最近、こればかり(笑)。 
 いやあ、ほんとに面白かったです。次作もこの女性監督で期待したいですねえ。

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