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2024年9月 8日 (日)

エイリアン:ロムルス

 エイリアンシリーズの最新作「エイリアン:ロムルス」は、開幕早々、宇宙に漂う宇宙船の内部が、もう第1作「エイリアン」の貨物船ノストロモ号の雰囲気にそっくりなのです。ブラウン管のようなモニター、点滅するボタン、タッチパネルではなく、全部がプッシュ型のスイッチなのです。音響も当時のまま?です。オールドファンとしては、いきなりテンションがマックス(笑)です。

Img_20240908_0001  鑑賞後、パンフレットを読むと、時代設定も第1作の「エイリアン」と第2作目の「エイリアン2」の中間に設定し、極力、第1作目の雰囲気の再現に努め、しかもCGではなく、全部が本物らしく稼働する宇宙船のセットを作り上げたそうです。もちろん、エイリアンなども工夫を凝らし、昔ながらの特撮技術も生かしているようで、すべては監督の実物志向のたまものであり、俳優たちも実感を持って演技ができたそうです。

 この懐かしもリアルな世界を造り上げたフェド・アルバレス監督は、脚本、監督、製作を兼ねた「ドント・ブリーズ」で大ヒットを飛ばして、今回の大作に抜擢されたようで、入植地の話にしたいというのも監督自身の提案らしい。実は「ドント・ブリーズ」は配信でちょこっと観たのですが、なかなかの強烈なホラー物で途中で正視するのをやめたので、今度はしっかり見てみましょう。でも今作でもあったが、狭い通路を這いまわるのは、出演者でなくても怖いなあ(笑)。

 それにしても、ウェイランド・ユタニ社が開発している惑星の入植地の状況は、まさしくブレードランナー風の”旧式の未来”という悪夢そのものであり、汚れた作業服を着た鉱山労働者たちが籠にカナリアらしき鳥を入れて歩いているアナログの世界には思わず笑いました。そんな悲惨な入植地から抜け出そうと廃船となった宇宙ステーションから冬眠装置を盗み出そうとする6人の若者(うちひとりはアンドロイドですが)の物語です。そう、まさしく「ドント・プリーズ」の恐怖のじいさんをエイリアンに換えたホラー映画なのです。怖いはずですねえ(笑)。

 エイリアン自体は、フェイズハガー、チェストバスター、ビッグチャップではないゼノモーフ(この呼び方は個人的には好きではないのですが)と従来の造形をブラッシュアップして好感がもてるのですが、欠点が1点、最後のアレは、どうも生理的に受け付けません。だれかが”ハリーポッターの悪役”と呼んだそうですが、そういえばそんな気もしますが、どうもデザインがエイリアンの世界観に合わない気がします。
 ついでに、疑問をひとつ、冒頭で回収された残骸はノストロモ号であり、その最後で宇宙空間に飛ばされたビッグチャップ1匹の回収ではなかったのか?何故、あんなにフェイスハガーがあったのか、不思議でなりません。どなたが知っている方は教えてください。

 でも、まあ、全体としては、フェイスハガーが蜘蛛の子のように飛び掛かって来たり、無重力の中で、エイリアンの体液を避けながら脱出するシーンなど、見せ場がたくさんありますし、なにより第1作のアレが登場したことが衝撃でした。いやあ、コレにはまったく参りました。ここで完全にとどめを刺されました。第3作目以降はどうも感心しない作品ばかりでしたし、リドリー・スコットの新作もイマイチでしたので、エイリアンファンとしては大満足でした。見事なエイリアン映画をありがとうございました。

2024年8月29日 (木)

フォールガイ

Img_20240829_0003  映画撮影のスタントマンの物語と聞いて、期待が大きかったのかもしれません。映画「フォールガイ」は正直あんまり面白くなかったのです。特に、映画の前半、落下スタントの事故が原因で姿をくらましていたライアン・コリンズ扮するすご腕のスタントマンが、元恋人でいまや助手からいきなり監督に抜擢されたエミリー・ブラント演じる新人監督との再開シーンも、どうも盛り上がりません。エミリー監督による”公私混同”の火だるまスタントの報復リテイクも、唐突な宇宙人役のエキストラの一発ギャグも完全にスベリますし、回転数が新記録らしい車のアクションシーンもまるで笑えません。楽屋落ちのような画面の分割演出も、うっとおしいだけです。いきなり日本刀を振り回す白人女や黒人豹頭の売人の登場も意味わかりません。どうやら、この監督さんがスタント出身らしいのですが、アクション以外の演出がなんとも冴えません。

 前半終わって、”いやあ、これどうするの?”と思っていたら、徐々に陰謀(敵がいたのか!)の正体が分かり始め、定番のごっつい傭兵団が登場し、タフな格闘や大型車両の曲芸アクションシーンが展開され始めて、やっと本領発揮です。さすがにアクションはいろいろ工夫がみられて感心しました。まあ、前半のグダグダ演出が無ければ、もっと面白さが倍増していたと思うと、本当に残念でした。
 でも、何故、”携帯電話”をあのプロデューサー志望の女中国人が持っていたのか、観終わった後ではストーリーまでも分からなくなっていました。困ったものです(笑)。

 それにしても、ハリウッドの女性プロデューサーというのは、皆ああいう口八丁で人の話を聞かない強引な感じなのですかねえ。なんか、現在、アメリカで一番有名なSFファンタジー映画をぶっ壊したと物凄く評判の悪い女性プロデューサーを彷彿させるイメージなのかな(知らんけど)。まあ、今回は、主演の二人がなんか影が薄かったような気がしますし、逆にこの女プロデューサーの印象が強いのは演じた女優さんを褒めるべきなのでしょう。まあ、最後にジェイソン・モモアが飛び入り(?)出演したのは笑いました。お疲れさまでした。以上です。

2024年8月18日 (日)

アウターリミッツ

Img_20240721_00011  知る人ぞ知るSF映画評論家の聖咲奇氏が「聖咲奇の怪物園」という同人誌を発行して、フランケンシュタインの怪物や半魚人などの往年のモンスター達を紹介しています。彼の収集したコレクションや裏話が懐かしくも楽しい読み物になっています。個人的には長年の懸案課題だった半魚人の体色問題が、撮影当時取材に来たLIFE社のカラー写真を証拠として掲げた記事によって、やっと解決を見たような気がしています。

 そうした中で、テレビSF映画シリーズ「アウターリミッツ」の特集がありました。
 アウターリミッツとは、ウルトラQの原型ともいえるアメリカのテレビシリーズで、有名な「ミステリーゾーン」よりモンスター系に力を入れた作品でした。ただ、残念なことに、ウルトラQと同じように、当時私が住んでいた地方では放映されなかった上、このブログでも紹介(2006.8.27)した大伴昌司氏の名著キネマ旬報社の「世界怪獣怪物大全集」の表紙の中央に登場モンスターの写真が掲載されていたこともあって、ともかく観てみたいという思いを拗らせたものでした。そんな記憶を思い出して、無性に見たくなりました。

Img_20240713_00014 Img_20240720_00013  そこで、販売されている映像媒体を調べてみると、3000セット限定生産のDVDボックスが、1シーズンの2巻、第2シーズンの1巻という全3巻しか販売されていないようなのです。しかもオークションなどを見るとやたらプレミアがついており、なかなか手が出ません、と思っていたら、定価より安く出品された奇特な方が居て、第1シーズンボックス2巻を即購入です。

 さて、第1シーズンの第1巻は、前述の「世界怪獣怪物大全集」に掲載されたモンスター達のオンパレードです。第1話のネガ反転宇宙人も味がありましたし、第3話の人造宇宙人は、まさしく同著の表紙の中心に掲載された奴です。そして、第5話が、ナポレオンソロのイリアこと、デヴィット・マッカラムの若き日の6本指の未来人なのでした。これも同著で頭でっかちの特殊メイク(写真だけ)に感心した奴でした。さらに、13話の太古の魚、第14話の蟻宇宙人なども、同著の写真でしか知らなかったものなのですが、何故か、懐かしさがこみあげて来ます。

 もちろん、当時の1話完結のテレビドラマですから、造形の稚拙さ、唐突なラストになるドラマとしての物足りなさは多少ありますが、まあ、いいぢゃありませんか(笑)。しかも、出演俳優もドナルド・プレゼンスやマーティン・ランドーなど有名どころも登場しますので、それなりに頑張っているようです。ただ、どうも、どの作品にも登場するワイフ(妻)や恋人の態度が、愛ゆえか?皆わがままのように見えて、SFドラマのテンポを乱す(笑)のは、いかにもアメリカの家庭を反映した作品なのでしょう。思えば、あちらでは夫婦や恋人などの人間関係を描かないとドラマではない、幼稚だと評価されるという(岡田斗司夫先生の談)のが、こんなところにも反映されているのでしょうか。

 次に、第1シーズンの第2弾ボックスですが、第19話から32話まであるのですが、どうもモンスターのデザインが冴えませんし、物語もあまり面白くありませんでしたねえ。いったん打ち切りになったのもうなずける内容でした。
 そこで、第2シーズンをおさめた第3弾をどうしようかと悩んだのですが、実は、この第3弾のボックスは、プレミアがついてやたら高いのです。その理由を調べてみたら、この第2シーズンは、「ターミネーター」の元ネタになった話など、実に傑作な物語が多いとの評価なのです。こうなると、仕方がありません。またも清水の舞台からジャンプしました(笑)。

Img_20240712_00012  その第2シーズンですが、脚本家のハーラン・エリスンが「ターミネーター」を盗作として訴え、勝訴した第33話「38世紀から来た兵士」は、確かに、未来から兵士がやってくるお話ですが、その未来兵士のアイディアだけであり、そもそも全く違う話のあの名作「ターミ―ネーター」に勝訴したというのは、なかなか理解できせん。アメリカの訴訟制度が変なのかなあ?そのほか、傑作と言われる第37話ガラスの手を持つ男、トレマーズの元ネタのような、第39話火星!その恐るべき敵、第41話のロボット法廷に立つ”I,Robot”、そして、ロバート・デュバル主演の第43話見知らぬ宇宙の相続人、ユニークなデザインの第44話宇宙からの使者など、後年のSF映画の元ネタのような作品も多く見られました。このあたりが傑作といわれる所以でしょうか。

 うん、これで一応満足ラインを超えました。まあ、あんまり子供のころの記憶や妄想にこだわらない方が幸せですよね(笑)。

2024年8月14日 (水)

デッドプール&ウルヴァリン

 いまや、すっかり落ち目のマーベル・スタジオのアメコミ映画ですが、あのお下劣でドギツいギャグの”デッドプール”の第3作であり、しかも、年老いたウルヴァリンが主人公のハードなアメコミ作品「ローガン」を最後にウルヴァリン役を降板したヒュー・ジャックマンが同役で復帰すると聞いて劇場に足を運びました。・・・・それが大失敗でした(笑)。
 もちろん、いつものように、できるだけストーリーなどの情報は目にしなかったので、まさかこんなとんでもない映画だったとは思いもしませんでした。いやあ、全米で第1位の興収をとったなどとはとても信じられません。

Img_20240814_0001  物語は「ローガン」でウルヴァリンが力尽きて埋葬された墓から始まります。デッドプールがウルヴァリンの墓を掘り出しているのです。そして、突然、”時空管理局(こんな名称だったが、間違っていたらごめん。)”の兵士が現れ、デッドプールを捕まえようと襲い掛ります。

 正直、”時空管理”?とは嫌な予感がしましたが、まさに予感的中で、もう徹底して意味不明なストーリーでした。この”時空管理局”に属する一出先機関(基地)の一局長(その基地のボス)が”この世界”を消滅させようとする野望を何故かデッドプール達が阻止するという話なのですが、1950年代のSF映画を思い起こさせるようなチープで陳腐な基地のセットの上、そのボスのなんとも軽くて道化振りが徹底的に興を損ないます。笑わせようという意図は分かりますが、まったく面白くもおかしくもありません。

 しかも、最近こればかりのお馴染み”パラレルワールド”全開で、仲間を死なせて失意の異世界のウルヴァバリンを連れてきたり、”虚無”とかいう禿げ頭の魔女が支配する異世界に追放されたりと、とんでも展開が続きます。
 加えて、マーベルコミックの無名のヒーロー達をこれでもかと登場させます。私ほとんど名前も素姓も知りません。なんかデッドプールが色々説明していたので、アメコミファンには感涙ものかもしれませんが・・。アメコミになじみのない者には全くわかりません(笑)。ただ、”引退したんじゃないの”とデッドプールがからかう、黒人の吸血鬼ハンターが出てきたのには驚きましたが(笑)。とにかく、そうしたヒーロー達をまるで使い捨てのように潰す演出をするのは、何故か、物悲しくなりますねえ。そして、”ホンダ”は大丈夫だろうか、心配になりました。

 まあ、デッドプールお得意の観客向けの、ディズニーやら、20世紀フォックスへの楽屋ネタのジョークなどは一寸笑えましたが、悪趣味な人体破壊アクションやデッドプールとウルヴァリンの不死身比べ格闘などは笑うに笑えません。Xメンの車いすの禿げ頭の血縁という禿げ頭の魔女の無敵さはなんともあきれるばかりですねえ。能力の理屈もなにもないねえ。

 それに、ウルヴァリンが黄色いユニフォームを着るのですが、デッドプールがしきりに”何故、そのユニフォームを着たのか”と問い詰めるシーンがあるのは、どうやら、そのなんともダサい黄色いユニフォームは、漫画原作の有名なウルヴァリン・コスチュームらしく、これまでの映画化ではまったく着ていなかった(デザインがカッコ悪すぎ)ことから、原作漫画ファンへのサービスではないかと想像します。でも、やっぱりダサいユニフォームですよねえ。DCのスーパーマンのように少しぐらいデザインを見直したらよかったのに(笑)。

 まあ、とにかく呆れたまま観終わって、エンドロールの後の映像を見て、さらに疲れました。あんな悪口言っていたら、あの全身カワハギ処刑もしかたないねえ。でも、やっぱり笑えません。

2024年7月27日 (土)

フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン

 映画「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」は、1969年のアポロ11号の月面着陸を描いたロマンティック・コメディです。1960年代にヒットした同名のポップソングの中の”私を月に連れてって、言い換えて言うと手をつないで”という歌詞がモチーフになっているようで、60年代のロマンティック・コメディの再現でもあるようです。
Img_20240727_0001 主人公は、スカーレット・ヨハンソン演じる目的のためには手段を択ばない凄腕の広告ウーマンのケリーと、チャニング・テイタム演じる堅物のNASAの発射責任者コールなのですが、生まれも育ちも性格も全く違う二人は当初反発しあうものの、様々な困難を乗り越える中で、惹かれ合っていくという典型的な恋愛物語ですが、とにかく口八丁手八丁で破天荒な行動をするケリーとNASAに人生を掛けている一本気なコールの掛け合いが笑えます。次々と発生するトラブルもコミカルに描かれます。実に脚本がうまいと思えますし、何故かたびたび登場するクロネコもラストに良い仕事をします(笑)。

 そして、当時、国民の人気や議会の支持が今一つだったアポロ計画の大々的なPRを画策し、ケリーを強引にNASAに送り込んだのが、大統領の側近モーなのですが、そのモーを演じたのが「ナチュラル・ボーン・キラーズ」のウッディ・ハレルソンなのですが、ニクソン大統領の影の側近として盗聴をはじめ汚れ仕事はなんでもやるという強面の半面、憎めない面も見せるという実に適役の演技を披露します。

 後半、月面着陸の成功を不安視したモーの脅迫じみた提案から、秘密のスタジオでフェイクの月面着陸の映像を撮るという馬鹿馬鹿しい暴挙が始まり、様々なドタバタを通じて、果たして追い詰められたケリーはどうするのか、厳重な監視の中でテレビ放送に本物の映像を流すことができるのかなどという、やっぱりコメディタッチのサスペンスも生まれます。肩の力を抜いて楽しんでください。

 それにしても、劇場の大画面で見るケープ・ケネディのロケット発射基地の映像は雄大ですねえ。青い空も広い敷地も、人々の服装も、60年代の懐かしいアメリカ映画を彷彿させます。多分、観客がそう感じるような演出をしているのだと思いますが、昔憧れたアメリカの風景です。でも、考えてみれば、当時はベトナム戦争中でもあり、黒人差別もあからさまな時代だったのです。映画「ドリーム」をみれば、黒人差別の実態がよくわかります。そういう意味では、昔は隠されていたものが見えはじめただけのことかもしれません。
 それからいうと、今作でNASAのメインともいえる発射管理センターに黒人管制官がいるのは史実に反しているのかもしれませんが、いまのハリウッド映画の基準から言えば、どうしても必要なことなのだ!!なお、1995年公開の傑作「アポロ13号」ではどうでしたでしょうか、気になる方はご確認ください。

 ちなみに、パンフレットによると、”人類は月面に到達していない”という都市伝説は、きっかけはキリスト教原理主義団体「地球平面協会」であり、それに”ベトナム戦争から目をそらすため”という陰謀論が加わり、さらに1968年のキューブリックの「2001年宇宙の旅」のあまりにリアルな映像の衝撃によって”1970年代になって”キューブリックが秘密のスタジオでフェイク映像を撮影した”ということになったらしいのです。そういえば、映画の中で”監督をキューブリックに頼もうか”などというセリフがありましたねえ。まことに笑えます。でも、1972年のアポロ17号以降、半世紀以上人類は月に行っていません。これがどうにも不思議ですよねえ、最近正式に実在を認めたというUFOの基地でもあるんでしょうか、気になります(笑)。火星を目指すという”アルテミス計画”なるものに期待しましょう。

2024年7月21日 (日)

キングダム/大将軍の帰還

Img_20240720_00012  「キングダム」シリーズの第4作で最終章という「キングダム/大将軍の帰還」は、”王騎”を演じる大沢たかおが主演の映画でした。主人公”信”役の山崎賢人や”秦王”吉沢亮は今回は完全な脇役ですねえ。そして、いままで謎に満ちていた”王騎”の生涯と帰還を描く物語であり、今回も筋肉を大増量した大沢たかおが渾身の演技を見せます。もともとは漫画原作でまさに絵にかいたような豪傑であるにも変わらず、なんとも個性的な、一歩間違えると珍妙ともいえるような言い回しをする大将軍を実にリアルにかつ格好良く演じた姿はなかなか大したものです。いやあ、本当に感動しました。中国ロケを生かした大規模な戦闘シーンなどより、大沢たかおの迫真の演技に圧倒されました。周囲の俳優達とは見た目のサイズ感までも違うようでしたねえ。

 ちなみに、王騎将軍との因縁のある敵国の趙の”武神”を演じた吉川晃司も筋肉15kg増やして頑張っています(笑)。二人の対決はそれぞれ巨大な矛を自在に振り回し、一種漫画的ではありますが、なかなか見ごたえがありました。うん、全編クライマックスというのはあながち大げさでもないように感じますねえ。いやあ、ハリウッド映画のレベルまで到達したような気になります。さすが、これまでシリーズを牽引し、大作に定評のある佐藤伸介監督の力量なのでしょう、素直に感心します。

 そのほか、王騎の幼馴染役の新木優子が美しい女将軍を初々しく演じて良かった。そして、出番は少なく、いつも王騎の背後にひっそりと控える副官を演じた要潤がその”怪物”ぶりを発揮するシーンに拍手を送りたいと思います。実は、アニメ版の、まるで扇風機のような剣さばきを実写ではどんなに表現するのか、少々危惧していたのですが、なかなかうまく処理しています。敵将の山本耕史の最後の独り言までがこのシーンを支えます。このひと、「シン・ウルトラマン」でも実に絶妙なセリフ回しを披露していますが、やっぱり演技が上手いのでしょうねえ。なかなか記憶に残ります。

Img_20240720_00011  そして敵将と言えば、敵国趙の天才軍師を演じた小栗旬は、出演するにあたって”当初抵抗感があった”というパンフレットの記事もありましたが、基本的に”ラスボス”的な最大の敵役ですから、しかたがありません。でも、ハリウッドゴジラのメカゴジラの操縦者よりは随分良い役(笑)ですよねえ。

 以上のように、今作は大沢たかおをはじめとする俳優陣が頑張った映画というのが総括でした。

 最後に、”最終章”と聞いていたので、この大将軍の帰還でキングダムシリーズが終わりかと思っていたら、どうやら、続編制作もあるようです。まあ、大ヒットのようですし、原作自体まだまだ先が長いので、ドル箱を止める訳もなく、当たり前かもしれません。ただ、今後次々登場する敵将を考えると、演じるに足る日本の俳優の数が足りるのか?少し心配になります(笑)。ともかく次回作も期待しています。佐藤監督さん、頑張ってください。

2024年7月13日 (土)

ドラキュラ/デメテル号最後の航海

Img_20240707_00015-2  ブラム・ストーカー原作の小説「吸血鬼ドラキュラ」の中で、これまで一度も映画化されていない章が第7章「デメテル号船長の航海日記」とのことです。まあ、本筋とは無関係のルーマニアからロンドンまでの船旅のエピソードですから、どの映画でも帆船の出発あるいは英国への漂着シーンのワンカットですましているのは当たり前なのですが、今回の映画化では、その航海中に起こった惨劇を初めて描いた、というのが売りのようです。ドラキュラの物語としては、結末が分かっているので、やや物足りない、一種の添え物的な小品になるのですが、”エイリアン”の宇宙船を帆船に置き換えたホラー映画として楽しんでください。
 まあ、ドラキュラの造形は完全なモンスターですからねえ。廉価版のブルーレイに挿入されているメイキングを見ると、監督が”これまでのドラキュラ映画にはなかったユニークな姿”と自負していましたが、どうみても、あのフランシス・フォード・コッポラの超B級映画「ドラキュラ」の蝙蝠形態にそっくりなのですが、いかがでしょう。
 それにしても、この作品では、当時の港町や帆船のセットのリアルさに感心します。メイキングを見ると、全編CG映像かとおもっていたら、マルタ島の巨大ドックに実物大の帆船を造り上げて、迷路のような船内のセットで撮影を行ったそうです。小品とは言えないほど予想以上にお金がかかっている模様です。全く、最近のハリウッド映画の史劇などのリアルな再現度が半端ありません。特に、衣装や食事風景などセットや小物にも当時の不衛生な生活環境が詳細に反映されているほか、港町の広々した風景などでも、セットとCGが見事に融合した映像には本当に脱帽します。どこか嘘くさい、きれいごとの邦画との埋められない差を感じますねえ。

Img_20240707_00014  ところで、ドラキュラ映画は、ご存知クリストファー・リー主演の英国ハマープロのシリーズが気に入りなのですが、1973年公開のジャック・パランス主演の「狂血鬼ドラキュラ」という作品があり、”ブラム・ストーカーの原作に最も忠実なドラキュラ映画と云われている”という宣伝文句に騙されて、安売りDVDを買ってしまいました。結果、いままで観なかったのが正解でした。大失敗です。まったく観る価値はありません。

 Img_20240712_0001 そのため、公開当時は超B級といわれ、正直あんまり感心しなかった記憶があるコッポラの「ドラキュラ」のDVDを見直したところ、内容をほとんど覚えていなかったせいかもしれませんが、これが予想以上に面白かったのです。特に、吸血鬼に堕ちる前の英雄ドラキュラ公の場面は、影絵的な演出なども相まって素晴らしい。アカデミーの衣装デザイン賞、メイクアップ賞、録音効果賞を受賞したのもうなずける絢爛豪華さです。しかも、よく考えると、ドラキュラをゲイリー・オールドマン、ヘルシング教授をアンソニー・ホプキンズ、ヒロインのミナをウィナ・ライダー、ヒロインの婚約者ジョナサンをキアヌ・リーブスが演じているのです。信じられない豪華メンバーです。

 ただ、ストーリーは、”コッポラらしい”と言えばいいのか、原作とは異なり、吸血鬼となったドラキュラ伯爵の悲しみと愛を描いており、ハマープロ作品のような勧善懲悪ではない描き方の一方で、正義のヘルシング教授の変人ぶりなどが強調されている上に、夫と愛人(?)の間をふらつくヒロインのミナには感情移入できず、なんとも混乱します。
 しかし、このコッポラ作品で、デメテル号に搬入された”土の入った箱50個”の謎も解けたような気がして納得です。どうやら、コッポラ作品がベースになっているのは、最近再評価されているせいなのかな? 実際に再見すると、いろいろ突っ込みどころもあるが、豪華な雰囲気でエロティックでもあり、なかなか面白かった(笑)。以上です。

 

2024年7月 8日 (月)

三島由紀夫の「潮騒」

Img_20240707_0001  最近のセリフばかりで綴られたネットのラノベ小説ばかり読んでいると、無性に美しい日本語の真っ当な小説(笑)を読んで観たくなります。そこで、書棚に積まれた中から1冊、文章のうまさに定評のある三島由紀夫作品の中で、唯一といってよいほどの通俗的な恋愛小説「潮騒」を選びました。学生時代に読んだだけでしたが、久しぶりに読むと、さすがノーベル文学賞候補と言われた作家の華麗な文章表現に感動します。冒頭の舞台となった”歌島”を説明するくだりはその文章表現の巧みさにやっぱり感動します。皆さん、是非、読み返してください。

 この小説についてはあれこれ説明する必要はないと思いますが、ギリシャ神話をモチーフにした、美しい島での”宮田初江”と”久保新治”の素朴な純愛物語です。ハッピーエンドですので、何の心配もなくこの話に没頭できます。いまの目で見直すと、”婚前交渉はご法度”と言う懐かしい掟に微笑ましくも笑えますし、小さな貧しい集落での人々の純朴な暮らしぶりが、いかに日本人が大事なものを失っていったかを改めて思いますねえ。

 さて、この名作は、これまで何度も映画化されています。やっぱり恋愛ものの決定版ということでしょう、それぞれの時代のアイドルが主演となっています。有名なのが、1964年公開の吉永小百合と浜田光夫コンビ、そして1975年の山口百恵と三浦友和コンビの作品でしょう。この二つの作品は今迄観たこともなかったので、この際、観てみることにしました。丁度、安価なDVD等が見つかりました(笑)。実は、1954年に初めて映画化された谷口千吉監督作品について、主演の青山京子(共演は久保明)を三島由紀夫自身が”初江らしい”と褒めた(多分、宣伝だと思うが・・)というので映像媒体を探しましたが、どうやらDVDの発売や配信もないようで残念でした。

Img_20240707_00012  まず、DVDの入手順で山口百恵版を観ましたが、これは正直きつかったねえ。なにしろ、映像で観る動く”百恵ちゃん”が子供ちゃんなのです。まあ、当時は16~17歳ぐらいなのですから当然なのかもしれませんが、グラビアなどではもっと大人びていたような記憶なのです。いま思うと、”激写”の篠山紀信カメラマンの撮影マジック(あのブレが曲者か?)だったのかもしれません。加えて後年”百恵は菩薩”とまで称されたあの歌声も影響しているのかもしれませんが、いやあこの映画の中の姿や演技と記憶のイメージとの乖離には参りました。
 まあ、その分、共演の友和がふんどし姿で頑張っていました(百恵ちゃんが惚れたのも納得)ので、コンビ物の第2弾としては、それなりにヒットしたのでしょうねえ。でも、石段がベコベコ音を立てるセットはあまりにもお粗末でした(笑)。70年代の日本映画界はそんなものだったのでしょうねえ、きっと。

Img_20240707_00013  次に見たのが吉永小百合版です。これは、撮影が65年頃、小説のモデルとなった神島で長期ロケを敢行したということで、なにより当時の漁村の風景がそのまま記録されているところに価値があります。しかも、カラーだった(笑)。
 また、主演の小百合さんも黒塗りで(原作では日焼けで色黒という設定)頑張っています。若い頃の小百合さんはやっぱり可愛いと再発見しました(笑)。
 しかし、共演の浜田光夫が全然”新治”らしくないですねえ。中盤の見せ場である嵐の中の全裸シーンで、アイドルとしての規制がかかるヒロインはともかく、男らしさを見せるはずの光男がふんどしはもちろん胸まで隠すなんて信じられません。友和さんを見習ってほしいものです。時代が逆ですか(笑)。何故か、007のロジャー・ムーアが後年ベッドシーンで胸を隠した逸話を思い出しました。多分貧弱で写せなかったんでしょうねえ。
 しかも、この作品は長期ロケしたはずなのに、結構原作を改変しています。新司と恋敵のどちらが見所があるかを見極めるための航海中の出来事を島での英雄行動に置き換えたりしており、これはもう原作の意図を踏み外した愚策と言う以外はありませんねえ。

 それにしても、両作品に共通するのは、助演陣の役者たちの達者ぶりです。いやあ、昔の役者は実に味がありました。たまには、こうして古い映画を観るのも面白いですねえ。 

2024年7月 6日 (土)

クワイエット・プレイス DAY1

 傑作SFホラー映画「クワイエット・プレイス」の第3弾「クワイエット・プレイス DAY1」は、恐怖のエイリアンが地球に襲来した第1日目を描く物語です。前2作の主人公の家族とは全く別のお話なのです。しかも、襲撃1日目という設定なら、無数のエイリアン達による惨劇パニックを大規模に描けるというメリットもあります。正直、こういう続編もありなのかと感心しました。

Img_20240706_0001   映画は、猫を飼っている黒人女性のニューヨークでの生活描写から始まりますが、なんと彼女はホスピスで終末期医療を受けている余命いくばくもない患者で、絶望の中でマンハッタンにある思い出の店のピザを食べに行くこと以外は、全てをあきらめています。これでは、エイリアンの襲撃から逃れても、彼女は絶対に助からないのです。なんという救いのない、無情な設定なのでしょうか、冒頭から混乱します。

 そして、彼女がマンハッタンに行って、マリオネット劇の観覧中にエイリアンの襲撃が始まります。物凄く頑丈で素早いエイリアン達のアタックで、ビルは倒壊、車が横転、ヘリコプターまで墜落します。もっとも、大半は視界を遮る大量のホコリで全く周囲が見えず、しかも、主人公達を埃だらけの真っ白な姿に換えてしまいます。エイリアンには白人も黒人もないというイメージでしょうか、3.11の事件以降のリアル表現の真骨頂なのでしょうねえ。役者さんも大変です(笑)。

 一方、エイリアンが泳げないことを早々(あまりに早すぎるのでは?疑問が生じますが)に突き止めた政府は、マンハッタンに通じるすべての橋を破壊し、エリアンを隔離したうえで、残った人々に船着き場へ逃げるように誘導します。ただ、主人公は、それらの流れに逆らうように、ハーレムのピザ店を一人目指すのです。その途中で、法律の勉強に渡米したイギリス人の白人青年と遭遇し、猫の導き(?)で行動をともにするようになるのですが、この白人青年の性格が実はよくわかりません。パニックを起こす臆病で幼児のように依存性の高い性格なのに、意外に勇敢な行動もして、二人はエイリアンから逃れ続けます。

 さてさて、この話のオチは一体どうなるのかという観客の疑問の中で、最後は、主人公はついにこれまでの人生を振り返り、音を失った世界で、最も大切だったことを思い出して、意義ある人生の末期を迎えるのです。”ドスン”という衝撃音が印象的ですねえ。うん、この作品は、SFホラーを装った、ホスピスの映画でした。いやあ、こんな作品もあるのですねえ。
 それにしても、劇場パンフレットが販売されておらず、配給元はあんまりヒットを期待していない模様です。これは残念でした。

2024年6月29日 (土)

SISU(シス) 不死身の男

 昨年10月ごろでしょうか、YOUTUBEで、物凄く面白い戦争映画として話題になっていたフィンランド映画「SISU(シス) 不死身の男」という作品がありました。一部の劇場で公開されたようですが、私の住む地方では公開されておらず、しかも、公開終了後は、私が契約していない配信での放映となったので、トム・ハンクスの駆逐艦映画「グレイハウンド」のように、多分もう観ることはないとあきらめていたのですが、今年の2月にブルーレイが6月に発売されることが発表されて、早々に予約して首を長くして待っていた映画です。

71o9kzy2wpl_ac_sl1222_  内容は、第二次世界大戦末期のフィンランドで、”シス”と呼ばれた老兵の物語です。この”シス”という意味は、フィンランド語で”絶対諦めない不屈の魂”というようなニュアンスで、正確には翻訳できない言葉だということです。

 一人の老兵がラップランドの荒野で金塊を掘り当て愛犬とともに移動中に、撤退途中のナチス・ドイツの小隊と遭遇するところから物語が始まります。このドイツ軍は戦車一台にトラック2~3台という構成ながら、慰安用の女性数名を捕虜にして連行しているというなんとも悪逆非道な連中なのです。
 当然、彼らは、一人の年老いたフィンランド人を見逃すはずもなく、後続の兵士が殺そうとするのですが、あっという間に返り討ちです。いやあ、一瞬のナイフさばきは”ランボー”並です。ここからが怒涛のアクションシーンの連続です。
 しかも、偶然、老人が金塊を持ってることを知ったナチスは、目の色を変えて老人を追いかけます。いやあ、地雷原での攻防や水中戦など、老人のゲリラ戦は見事です。

 また、老人が落とした認識票を調べて、相手が妻子を殺された復讐のために、ソ連軍の兵士を300人殺したという元特殊部隊の伝説の兵士だということが分かっても、敗戦後の優雅な生活を夢見てドイツ軍の将校は諦めません。部下のゲスな軍曹たちを使って、あの手この手で追い詰めます。そして、老兵の愛犬を罠に使って、ついに彼をつかまえるのです。そして、彼が不死身かどうか確かめるため、わざわざ縛り首にして看板に吊るすのです。いかにも性悪のくせ者将校という描き方がうまいですねえ。敵役が悪い奴程おもしろいのだ。
 さて、ここはネタバレになりますが、どうしてもふれなくてはなりません。なんと一晩経って老兵は息を吹き返します。”いくらなんでもそれはないだろう”とは一瞬思ったのですが、縛り首刑のように床が割れて落下させる(首の骨が折れるようです)場合は別ですが、普通の縛り首ではあとから息を吹き返す実例もあったそうですので、全くの絵空事ではないようです。
 しかも、今回は、気を失う寸前、足を古釘に突き刺し、体重の軽減を図っています。さすが伝説の特殊部隊の兵士です。しかも、戦闘の度に身体中に傷を負い、しかもその傷を自分で縫ったり、焼いたりする痛々しい場面を繰りかえすので、不死身ぶりもリアルに感じるのです。まあ、ここは”丈夫な体よねえ”と感心して、皆さん大きな気持ちで受け入れましょう(笑)。メイキングを見ると、この主演俳優さんは、60歳を超えているようで、このオファーを受けるのには相当決心がいったとのことです。頑張りましたねえ。最後は、飛行機まで墜落するのですから(笑)。

 それにしても、フィンランドの荒野(ラップランド)の風景が凄まじいですねえ。極限の自然の荒々しさには感動します。メイキングでも、その強風や寒さは尋常ではなかったようです。撮影隊の皆さんもご苦労様でした。

 最後に、捕虜の女たちのリベンジもスカッとしました。是非、未見の方はご覧ください。荒唐無稽で楽しい異色の戦争映画でした。

 

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