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2024年2月24日 (土)

透明人間

 以前から気になっていた映画「透明人間」のスチールブック版ブルーレイ中古品を購入しました。透明人間というとHG・ウェルズのSF小説の古典を原作にして「カサブランカ」の風見鶏の警察署長を演じた名優クローズ・レインズの主演で1933年に映画化した「透明人間」によって、フランケンシュタインの怪物やドラキュラ、狼男、ミイラ男と並ぶユニバーサル映画の古典的な看板モンスターの1柱となっています。その後も、何度も再映画化されており、最近の主な作品では、2000年公開のケビン・ベーコン主演の映画「インビジブル」が印象に残ります。CGを使って透明化の過程を延々と見せるなど、いかにもポール・バーホーベン監督らしいグロシーンが有名です。全然、面白くなかったけれど・・(笑)

 それにしても、”透明人間”という存在は、考えてみれば、薬を飲んで透明になるものの、実は全裸で行動しなければならないという大きなハンディがあり、正直、”覗き”ぐらしか役に立たないのではないか、という気にもなりますし、くわえて、最近のユニバーサル・スタジオが古典のモンスター達を今世に復活させたいとして企てた大プロジェクトは、トム・クルーズを主演に迎えた「ミイラ男」が大コケをしてしまい、立ち消えになって現在に至っています。

 こうしたことが、私が2020年公開の「透明人間」を敬遠していた背景ですが、もう3年も経過しましたので、今回、思い切って観てみることにしました。決して”円盤が安かったから”という理由ではありません(笑)。

Img_20240223_0001  さて、映画は、夜中の3時ごろ、豪邸のベッドから女がこっそり抜け出すところから始まります。男は眠ったままであり、まったく訳がわからないものの、なかなかどきどきします。床の犬のエサ皿を含めてペットには注意しましょう。決して良いことはありません(笑)。
 結局、天才科学者で大富豪の夫のモラハラから逃げ出す女のお話なのです。
 主演はエリザベス・モスという女優さんで有名な演技派だそうです。さすが、夫の影におびえる姿は、目の下のクマのメイクアップもあって鬼気迫る演技です。逃亡した友人宅で”部屋に透明人間が居る”という彼女の訴えは、もはや精神病を病んでいるとしか思えないほどの尋常ならざる迫力があります。
 もっとも、観客の立場からすると、私などは吐く息も白くなる寒い中、透明人間が家の内外を全裸で徘徊していることを想像して、ややシラケていたのですが、いやあ、今作の透明化の方法に愕然としました。嗚呼、これが21世紀型なのかと、一寸、感動しました。それに、病院で顔に包帯を巻いた患者さんの姿を見せるなど、オリジナル作品へのオマージュもあって非常に好感が持てます。

 そして、主人公を追い詰める夫の病的な手口が徐々に明らかになるにつれ、本当に鳥肌が立ちます。頭が良い人間の狂気さはとんでもないと改めて教えてくれます。自殺を偽装した夫は、財産管理者である兄を使って、40万ドルの遺産を餌に主人公を追い詰めます。主人公も必死に抵抗しますが、事態はどんどん悪くなります。逃亡先の友人(警官)とその娘にも嫌われ、頼みの綱の主人公の妹とも仲たがいを仕組まれます。その後、さらなる非情な罠にはめられて半狂乱となった彼女は、精神病院に措置入院させられます。もう万事休すとなった病室から、主人公の反撃が始まります。なんかアルフレッド・ヒッチコックのドラマを思い出しました。

 しかし、反撃開始からもなかなか話が一転二転、さらにとんでもない展開となって一体どうなるんだと思わせて、衝撃のラストを迎えます。ああいうオチは倫理上問題は無いのか? でも、あれだけやられたらしかたないよねえ。ダーティ・ハリー以降、赦されます(笑)。
 なんとも、大変疲れましたが、映画としては大変よくできていました。まあ、しいて欲を言えば、劇中で主人公が富豪で天才科学者である夫に問いかける”何故、私なんかにこだわるのか”というセリフではないですが、”玉の輿”という設定にはやっぱり”絶世の美女”が前提です。ここがやっぱり凡夫には不満ですねえ(笑)。

2024年1月28日 (日)

ゴールデンカムイ

 漫画原作を実写化した映画「ゴールデンカムイ」について、私自身は原作漫画を全く知らなかったのですが、娘が原作漫画の大ファンだったなので、久しぶりに親子二人で観に行きました。なお、女房殿はすぐに寝てしまうのでお留守番です(笑)。

 Img_20240127_0001 さて、この映画は、youtubeなどでは”原作へのリスペクトが高く、キャストや各エピソードの再現度が凄まじいと原作ファンに好評なのです。まあ、大体、これまでの漫画実写映画は、原作に興味もない有名監督が好き勝手に改変して原作ファンの大顰蹙を買って自滅するというパターンが多かったですからねえ。いいかげん映画会社も学んだのでしょうか。
 調べてみると、漫画の実写化で例外的に評価の高い「キングダム」と同じ製作プロダクションであり、主演も同じ山崎賢人さんです。すっかり漫画映画化の立役者です。縁起を担いだのかな(笑)?。
 当初、主人公”不死身の杉元”を演じるには、体格的に線が細いと原作ファンから不評だったようですが、いざ公開すると一転して大好評なのです。どうやらかなり体を鍛えて作ったらしい。実際、銭湯で傷だらけの裸を見せるシーンがあるのですが、筋肉もりもりに仕上げています。その役者根性は立派です。「キングダム」の大沢たかおに刺激を受けたのではとも思います。それに加えて、漫画原作を読むと、その前歴や人となりの設定などから元からキャスティングは正解ではなかったかともと思えます。

 内容は、日露戦争で”不死身の杉元”と呼ばれた主人公がアイヌの少女と一緒に、黄金の隠し場所の地図を体に入れ墨した24人の脱走死刑囚を追うなかで、クーデターをもくろむ陸軍最強と言われた第七師団や元新撰組の土方歳三らのグループとの三つ巴の戦いをするというストーリーです。原作漫画は、全31巻で完結しているのですが、今回の映画の内容は、3巻、4巻ぐらいまでのエピソードで、まあ、”序章”と言うところです。

 まず、冒頭の日露戦争の203高地の突撃シーンがなかなか見ごたえがあります。犬ぞりシーンなども手に汗を握りました。「キングダム」もそうでしたが、最近の邦画アクションのレベルは確実にあがっており、本場ハリウッドと遜色はないと思えます。いつから邦画のアクションが変わったのか、どなたか詳しい方がいれば教えてほしいものです。この映画の久保茂昭監督は、ミュージック・ビデオで有名で映画としては「HiGH&LOW」シリーズで名を成した人のようで、大したものです、感心しました。

 撮影には北海道ロケを敢行し、その美しい大自然と大規模(に見える映像)なセット等には、本当に日本映画らしからぬスケール感があって見応えがあります。明治時代の小樽の街やアイヌの部落のリアル感には圧倒されます。また、パンフレットによると衣装や小道具も本物志向で入念な準備等を行っており、とにかく”コスプレに見えないように”配慮したといいます。そのおかげで、本当にリアルな明治の北海道の映像が出来上がっています。最近の女性向けのコスプレ映画の製作陣は”爪の垢”でも飲んでほしいものです。

 そして、極めつけは、登場人物の原作イメージの忠実な再現です。実は、原作ファンの娘はコミック全巻を持っており、映画鑑賞後、娘から借りて一気に読んだのですが、漫画を読んでいる最中に先ほど映画でみた俳優達の姿やシーンが被ります。よく言われるコマから抜け出てきたような、ということの逆でした。まあ、それだけよく実写化できている証左です。
 俳優では、最大の敵である第七旅団のリーダーである鶴見中尉を演じた玉木宏が目立ちます。戦争で吹き飛ばされた頭蓋骨の前頭部を覆うホーロー製の額当てなどの不気味な姿をリアルに再現した特殊メイクで、漫画の動きを実際の演技で実体化したその怪演はアカデミー賞ものです。その他の登場人物も、双子の兄弟をはじめ、実によく原作の雰囲気を伝えています。ここでは、そのうち一人だけ”脱獄王”を演じた矢本悠馬を特筆します。実際の漫画の”絵”とは役者の”見た目”は若干違いますが、役者の動きやセリフの中で生き生きとリアルにイメージが再現されます。ふんどし一丁で牢屋の窓からの侵入するシーンは絶品です。そう、これが本当の実写化というモノですねえ。これはキャスティングの見事さと俳優の熱演を褒めたいですねえ。

 以上、実に面白い映画でした。最後に、続編への登場が予定される人物たちの映像も流れます。はやく続編を決定してほしいものです。しかし、映画鑑賞後、原作漫画を読んだと言いましたが、とにかく登場する人物のキャラクターが”とんでもなさ”すぎます。映画「サイコ」や「羊たちの沈黙」ばりの変態野郎や女郎たちがわんさか出て来ます。予算とは別の意味でとても映像化できないのではないかとも思えます。どう料理するか、監督や製作陣の原作愛に期待しましょう。

2024年1月26日 (金)

ジャニー・ギター

 最近購入した映画音楽のCD(当ブログ2023.12.31参照)を聴いていて、西部劇の名曲「ジャニー・ギター」が主題歌となっている映画を観たとが無いことに気がつきました。いまやスタンダードとなっているほどの名曲なのですが、私の学生時代では、この曲が使われた映画「大砂塵」については、”なんとも出来が悪い西部劇”という評価が一般的であったため、私の好きなジャンルである西部劇なのに、これまで一度も見る機会を得ようとはしませんでした。

818vrzgqdvl__ac_sx300_sy300_ql70_ml2_   でも、今回、映画音楽を聴き直したことを契機に一念発起し、西部劇「大砂塵」のブルーレイをアマゾンで探してみました。ところが残念なことに、DVDもブルーレイも既に絶版です。プレミア商品は高額で手が出ませんしねえ。
 ただ、現在この作品は再評価もされており、最近”復刻シネマライブラリー”でブルーレイが少数再版されていたようです。そこでヤフーオークションを調べてみると、比較的安価な中古品が出品されていましたので、即ゲットしました。

 さて、作品の感想の前に、日本語タイトルの「大砂塵」という由来は、主人公らしいギターを背負った男が現れる冒頭にいかにも西部らしい砂塵が舞うことからなのですが、まあ、それだけなのです(笑)。
 劇中でその男は”ジョニー・ギター”と名乗り、それが本来の原題のタイトル「ジョニー・ギター」となっています。
 でも、主題歌は”ジャニー・ギター”なので、若干カタカナ表記が違うのですが、そのあたりのことは、ブルーレイの特典の小冊子には何の説明もありません。どなたか知っている方は教えてください。
 実は、復刻ライブラリーのブルーレイ特典の小冊子の解説がなかなか面白く、毎回楽しみにしているのです。この作品についても、後で詳しく説明しますが、当時の評価とその後の再評価、そして、この作品の製作の背景が実に興味深いのです。

 内容にもどりますと、男は砂塵の中、荒野にある一件の酒場(町中にないのだ!)にたどり着きます。其の酒場の外観は、西部劇らしくない邸宅で、何故か後期スターウォーズに出てくる異世界の酒場を思い出させました。どうでも良いですが、これは多分真似していますよねえ(笑)。

 以下、小冊子の小ネタを交えて説明すると、この酒場の女オーナーを演じたのが、戦前からのスター女優のジョーン・クロフォードなのですが、この映画撮影時はもう50歳近い年齢だそうで、黒髪で目をぎょろぎょろさせて威嚇します。顔も大きく、とても美人のヒロインというイメージではありません。日本人の私には全然感情移入できません。こわいのです(笑)。

 物語は、その酒場の女オーナーと鉄道の敷設の利権にからむ地主たちとの争いなのですが、敵対する地主側の有力者が駅馬車強盗に兄を殺された妹という設定です。その女地主を演じるのは、当時ラジオ俳優からいきなりアカデミー助演賞を獲ったという演技派女優です。小柄でいかにも田舎娘というイメージなのですが、女オーナーの男友達への複雑な感情から、段々その狂気の行動を見せてくるのはさすがです。この人も怖いのです。

 しかも、男どもは大勢いるのに結局はこの女二人の戦いであり、西部劇の常連脇役のウォード・ボンド(顔見たらわかる)、まだ無名のアーネスト・ボーグナイン(痩せているので最初別人かと思った)、「駅馬車」の曲者役者ジョン・キャラダインなどが顔を揃えているのですが、なんとも影が薄いですねえ。みんな地主の小娘に唆されてリンチなどするのですから。まあ、いかにもアメリカの無法地帯という感じですが、それ以上に、なんともやりきれない展開が続くのは、どうやら当時のハリウッドの赤狩りの影響があるとのことです。監督も脚本家も巻き込まれたそうで、その感覚が作品に色濃く反映されているようです。いやあ、アメリカという社会は、今も昔もときどき”極端”に走りますねえ。

 そして、肝心な主演の筈のヒーローの男優さんがさらに一段と影が薄いのです。ギターしか持っていないものの、実は昔は凄腕のガンマンだったという設定もなんとも見せ場がありません。しかも、その持っていたギターも劇中ではほんと少しのさわりしか演奏せず、お目当ての主題歌「ジャニー・ギター」は、劇中では短いフレーズを2回しか披露されないのです。結局、この名曲はエンドロールでやっと全編披露され、それが大ヒット曲になるのですから、この曲の持つインパクトはそれだけ大きかったのでしょう。ただ、本編によるものではなかったというのがなんとも悲しいですねえ。

 ちなみに、ブルーレイ特典の小冊子によると、ジョーン・クロフォードはその後、あの老醜虐待スリラー映画「何がジェーンに起こったか?」に主演し、敵対する娘の役者も「エクソシスト」で悪魔の吹き替えを行ったそうです。まさしく”化け物対決”だったのです(笑)。なお、私は「何がジェーンに・・・」は見ていません。ストーリーを聞くだけで悍ましくて観る気は全くありません。

 また、当時この作品を"思わせぶりな気張った演出は苦笑。・・物々しき愚作と言うべき(中略)"と評したのは、双葉十三郎氏だったそうです。私は、この映画評論家について50年代からSF映画を正当に評価していた数少ない評論家として贔屓にしていた(評論全集も持っています。)のですが、どうやら海外作品のSFは褒めるものの、初代「ゴジラ」を貶していたようですので、どうやら”このジャンルはこうあるべき”という固定観念があったのではと少し幻滅を感じ始めています。
 確かに、この映画はいわゆる”西部劇”と言う感じの作品ではないですが、少なくても自宅でBDを一度も早送りにせず最後まで通して一気に観ることができましたので、愚作というほどのものではないと思います。
 実際、後年、フランソワ・トリュフォーなどが”ウエスタンの「美女と野獣」”と評価し、その後日本でも評価の見直しがなされたと聞いています。でも、和田誠氏が”男にはたばことコーヒーがあればよい”という劇中セリフを高く評価しているのは、すこし違うのかなと思いますねえ。だって、ラストは女とよりを戻すのですから(笑)

 そして、最後に一番驚いたのが、この作品が名作「カサブランカ」を元ネタにしているという脚本家の告白です。いやあ、男女逆転劇ですか?、でも、まったく別のものになってますよ(笑)。興味ある方は一度ご覧ください。

 

2024年1月20日 (土)

翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~

Img_20240120_0001  私は何故に映画「翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~」を劇場で観ることにしたのだろうと、かなり反省しています。まあ、第1作が面白かったような記憶がかすかにあったことや実は小学校時代からの友人が滋賀県に住んでいるのでその話のネタにしようと思ったことが気の迷いを生み、丁度”6本観たら1本無料”とい無料制度が使えたことから、封切りの最終日のナイトショーに滑り込みました。きっと魔が差したのですね。

 それにしても、前作も観た(2019.4.25当ブログ)のですから、ギャグのレベルはわかっているつもりでしたが、その斜め下を行く自虐ネタの設定ととんでもない展開にはついていけませんでした。実は、改めて第1作目のブログを読み返すと”この映画のギャグが性に合わない”というのが当時の感想でした。まったく早く読めよ(笑)。
 そして、冒頭の二階堂ふみとGACKTの絡みからもうドン引きです。特にGACKTの演技(?)には全く笑えません。しかも、今回は何故か関西が舞台で、その理由は”海なし県の埼玉に海を作るための白砂を獲りに和歌山に出向く”というストーリーなのです。笑えそうな設定なのに、演出のせいか全然笑えません。困りました。
 自虐ネタも、大阪の傲慢、京都の嫌味、神戸の蔑みはなんとなくわかりますが、げじげじの滋賀(ナンバープレートの”滋”の漢字の形の一部が”げじげじ”に似てるためということだが、正直そうは見えない)、シカばかり住む奈良、未開の地の和歌山などは、当事者でなければその面白みは分からないのですねえ。
 とにかく、全編を通じて、学芸会的な演技やむさくるしい衣装や陳腐なセットにあきれるばかりで、セリフの中の世相ネタのギャグにも反応できず、全く笑えませんでした。本当に途中で退席したかったなあ。
 まあ、大阪の”粉”文化や甲子園・通天閣のネタは、頭では面白いという気もしますが、なんとも中途半端なのです。唯一、滋賀の”リゾートビーチ”の追想が面白かったなあ。
 役者さんでは、大阪府知事役の片岡愛之助と滋賀のオスカルを演じた杏の大げさな熱演がもったい(笑)ないのだ。まあ、あの山村紅葉演じる京都のオバハンには笑えました、まるで”地”ですから(笑)。
 なお、埼玉県在住でこの”お伽噺”のラジオ放送を聞いている、滋賀県出身の主婦を演じた和久井映見のコミカル演技はさすがにプロでした。ほっとしますねえ。

 最初に反省しているように、本当につまらぬ映画を観てしまったのだ。公開当初の”前作を超えた”などという高評価のレビューは何処に行ったのか、だれか教えてください。やっぱり続編にそうそう傑作は無いのです(笑)。

2024年1月19日 (金)

ゴジラ-1.0/C

 映画「ゴジラ-1.0/c」は”ゴジラ/マイナスワン、マイナスカラー”と読むようで、いわゆるゴジラ-1.0のモノクロ版を観て来ました。同じ映画を同じ公開期間中に2回劇場で観るというのは個人的には初めてでした。気に入った作品は、後からゆっくり自宅でDVD等を見直すというのが、私の流儀です。
 しかし、初代ゴジラをオマージュしたモノクロ版というのは面白い企画ですし、実際、同じ期間に公開したというのは東宝でも初めてのようです。海外では興収1億ドルを超えたようですが、我が国ではまだ53億円で、まだまだ「シンゴジラ」の80億円という記録に届いていないための一種のテコ入れ策なのかもしれませんが、海外ではとっくにシンゴジラの記録を凌駕しているので、そんなに頑張らなくても、とも思ったものの、公開後の評判が若者中心に意外に良いようなので、私もカラー版で見逃した”首のあざ”を確認したかったこともあって、劇場に足を運びました。

 それにしても、正直、若者を中心にモノクロ版がこれほど評価が良いとは思いませんでした。カラー版よりモノクロ版の評価レビュー点が高いのです。個別のレビューなんか見ても、”白黒映画は、ローマの休日しか見たことがなかったが、リアルで実に良かった”などと、これまでモノクロ映画を敬遠していた若者たちがモノクロ映画に新鮮さを感じているようです。
 まあ、映画ファンの私から言うと”日本人なら「七人の侍」ぐらい見てほしい”と思うのですが、まあ、年寄りの要らぬお説教なのでしょうねえ。ちなみに「白黒」ではなく「モノクロ」とやたら言葉にこだわる年配者(多分)の声もありましたが、これも私と同類なのでしょう(笑)。

 さて、今回のモノクロ版の印象は、戦後のセットから色が無くなったせいで、人間ドラマに集中できました。特に、空襲で焼け野原となったと自宅のバラックなどのシーンは、カラー版では、背景のがれきシーンを観て、”いやあ、実によくできた映像だ”などと感心して、そのことに気を取られていたのか、隣のおばはんの「特攻に行ったのでは・・」というセリフを聞き逃していました。うん、これで話がつながります。(2023.11.8ブログ参照)
 どうやら、カラー版では精緻なセットやCG合成の素晴らしい映像ばかりに気をとられていた気がします。背景に余計な目線を使わない分、主人公の演技に集中できましたねえ。逆に言うと、戦後の生活シーンが実にリアルに感じられるのです。うん、黒澤映画の影響かもしれませんが、”戦後もの”にはモノクロ版がよく似合います。そういう意味では実に拾いものでした。

 ただ、今回のモノクロ化には単なる機械的な転換ではなく、様々なこだわりのある工夫をしたと言うことですが、個人的には冒頭の大戸島の青空はもう少し抜けてほしかった。最初だけにやや暗く感じたのは私だけでしょうか?それとも、これも演出かな? 
 ゴジラなどの特撮シーンなどは全く文句はありません。全体的にカラー版とは全然違う印象となっています。
 そして、前回見抜かっていた、最後の”首のあざ”もしっかり確認できたので、大満足でした。未見の方は是非ご覧ください。ただし、まず最初はカラー版からどうぞ。

Img_20240119_0001  おまけですが、モノクロ版入場者への特典となった両面印刷の厚紙”ボード”をご紹介します。まあ、無料の販促品ですねえ。モノクロ版の劇場パンフレットは販売されていないので、できればモノクロ版仕様のボードにしてほしかったなあ。それが残念でした。ちなみに、写真は海外向けのバージョンです。写真にはありませんが、この裏面には日本向けのバージョンが印刷されています。

 

2024年1月16日 (火)

アクアマン/失われた王国

 2018年に大ヒットしたDCアメコミ映画「アクアマン」の続編がついに公開されました。第1作が傑作だったせいか、あるいはアメコミ映画の乱立に嫌気がさしたのか、全米では評判が悪いようです。まあ、最近のマーベル、いやディズニーのせいでロクでもない作品しかないので、現在のアメコミ映画の惨状は当然なのかもしれませんが、ここは、ヒットメーカーのジェームズ・ワン監督の手腕を信じて、劇場に足を運びました。

Img_20240116_0001  結論から言うと、世評ほどひどいものではありません。まあ、1作目が傑作過ぎたので期待が高かったかもしれませんが、普通に楽しめましたねえ。
 ストーリーは、大西洋の”どこか”やサハラ砂漠など世界各地を巡るものの、テーマが子育ての大変さと兄弟の仲直りという、身近でややこじんまりとした内容になっており、その分損をしている印象です。しかも、失われた王国の”ラスボス”は、竜頭蛇尾、羊頭狗肉と言ってよいほどの見かけ倒しな有様で、これが作品の”小物感”に拍車をかけています(笑)。ついでにいうと、最終の環境破壊エネルギーで巨大化したモンスターが跳ねるだけのバッタではなんともインパクトが薄いですなあ。

 しかしながら、この映画の最大の”売り”は、主演のジェイソン・モモア演じる主人公の”男ぶり”なのです。細かなことなど気にしない大雑把な態度やどんなピンチでも動ぜず軽口をたたく大男の行動は、いまや失われた古き良き時代の”男のヒーロー”を思い出させます。さらに、野心家ではあるが、常識的(?)な弟との対比がさらにその魅力を倍増させています。ただ、あの昆虫食のギャグは日本人にはいただけませんねえ、あれでどれだけファンを逃したのか、不安でなりません。

 さらに、このシリーズの魅力は、登場する架空のマシンのデザインが楽しいのです。前作のブラックマンタの大目玉の戦闘服は傑作であり、今回は、敵の潜航艇”タコ型モービル”のデザインに感心しました。このマシンは、複数の足で物をつかみ、さらにプロペラのように回転して推進力を得るという万能マシンなのですが、触手のような足をドンと地面に突き立てたシーンは、私のお気に入りのスパイダーマン第2作に登場する”ドク・オック”の触手を彷彿させてくれて、大満足でした。うん、個人的にはこのシーンだけで劇場に行った甲斐はありました。

 ただ、惜しむらくは、アトランチック王国の代表者評議会メンバーや海底の海賊のモンスターなどのデザインが、後期のスター・ウォーズの悪いところばかりを真似したような陳腐なものになっており、多分、監督のオマージュだとはおもいますが、なんとも私には不満でしたねえ。

 以上いろいろ苦言も呈しましたが、普通に楽しめる作品です。最後に、極悪非道な悪役のブラック・マンタの”意地”に少し感心して終わります。まあ、小品だけに当ブログも短くしました(笑)。

2023年11月30日 (木)

 北野武監督の新作時代劇「首」は、間違いなく画期的な作品です。なにしろ、映画やテレビで長い間きれいごとで描いてきた戦国武将の英雄譚を赤裸々にリアルに描いてみせた作品なのです。さすが、”天才たけし”です。目の付け所が全然違います。思えば、北野版「座頭市」で、CG技術をつかって斬られた斬口を見せるという極めてリアルな殺陣もお見事でした(世間ではあんまり評価されていませんが、この殺陣も斬新でした。)。
 考えてみれば、戦いで何千人もの人間を殺し、捕えた者達の首をはねたという史実が実際どうであったか等は、少し考えればその比類ない残虐性はわかることなのですが、天下統一とか歴史的な意義からすっかりその辺は目をつむっていたのですねえ。しかも、衆道などの性癖も当時の一般的な習俗として定着していたことは明らかなのですが、誰もはっきりあんまり描かなかったですねえ。

Img_20231129_0001  正直にいうと、この作品は劇場に行くのが少し億劫でした。往年の大映時代劇の血の噴出などの様式美的な殺陣は結構好きなのですが、グロい死体の映像などは大の苦手なのです。今回はタイトルからして「首」じゃないですか!、一時はパスしようかとさえ思っていました。
 ただ、YouTubeなどでは、”コメディ時代劇”あるいは”コント映画?”ではないかなどと言う感想もありましたし、どうやらグロさにも一定の節度がある感じでしたので、思い切って観て来ました。

 そして、その感想なのですが、少し訳の分からない箇所(信長の手紙?)がありましたが、作品としては”見て損はない作品”だと思います。

 まず、冒頭の合戦後の川辺のシーンも首なし死体に群がる沢蟹を描いているのですが、さほど気色が悪くなるほどの”絵”ではなく、逆に”戦国”という時代の雰囲気を観客に一気に伝えるという場面となっています。また、一族郎党の斬首刑も女子供のシーンはなく、節度があって安心しました。
 戦闘シーンについては、敵と味方の色分けなど黒澤明作品を彷彿させるほどの迫力があり、いやあ大したものだと感心しました。パンフレットによると、既存の殺陣師の”いかにも”という殺陣を嫌って、たけしが自ら演出したらしい。このへんがやっぱり非凡なのですねえ。

 そして主演者も、いつもの常連役者に加え、芸達者のくせ者揃いです。たけし監督作品にはみんな出演したがるそうですねえ。まあ、海外でも評価が高いですから当たり前かもしれませんが、今回は自ら売り込んだキム兄が抜け忍の芸人、曽呂利新左衛門役で良い味を出しています。あのとぼけた独り言には思わず笑いました。

 それにしても、狂気の信長役でハッチャけた加瀬亮、真面目な明智光秀役の西島秀俊、そして荒木村重役でいつもながらの遠藤憲一は、衆道三角関係もご苦労さまでした。最近の風潮か、平気で男同士の濡れ場を見せるのが多くなりましたが、いろいろな意味で役者は大変ですねえ。まあ、観ている方もよく頑張りました(笑)。

 また、千利休役の岸部一徳は相変わらずの存在感で、どんぴしゃりの適役でした。一方、黒人侍の弥助登場には「イエローモンキー」のセリフとともに驚きました。

 さらに、今回、その演技のうまさを見直したのが、黒田官兵衛を演じた浅野忠信でした。ビートたけし扮する羽柴秀吉と大森南朋の羽柴秀長(秀吉の弟)とのやりとりは、まるで漫才トリオのような雰囲気で何度か吹き出しました。どうやらアドリブでのセリフが多くて現場は大変だったようですが、コメディタッチの中でもいかにも軍師らしい立ちい振る舞いもさりげなく表現されていました。ハリウッド俳優は伊達ではありませんねえ。

 あと、ワンシーンだけなのに印象的だったのは、無茶苦茶な安国寺恵瓊の六平直政、切腹に時間がかかる清水宗治役の荒川良々は、いつもながら笑えました。蛇足ながら、家康の影武者作戦はやりすぎです(笑)。

 観終わってみれば、「自分は百姓だ」という秀吉からの視点で、大将首をめざす手柄、衆道を好む武家の習わしなど当時の社会常識を蹴り飛ばすという構図になっていることにも感心しました。さすが、”天才たけし”の見方は、一味違うと感心しました。未見の方は是非ごらんください。ただ、女優さんは柴田理恵ぐらいであとは男ばかりの”むさい映画”であることはくれぐれもご承知おきください(笑)。

2023年11月10日 (金)

ボクらを作った映画たち

 ネットフリックスで、面白いドキュメンタリー番組を見つけました。「ボクらを作った映画たち」という、大ヒットした映画のメイキングの物語なのです。まさに、私の興味のど真ん中の企画です。しかも、取り上げた作品も私のお気に入りのものが多いのです。既に、3シーズン目を迎えてるのですが、主なタイトルを紹介しましょう。

 第1シーズン:ダイ・ハード、ゴーストバスターズほか、第2シーズン:フォレストガンプ/一期一会、ジュラシック・パーク、プリティ・ウーマン、バック・トゥ・ザ・フューチャーほか、第3シーズン:ナイトメア・ビフォア・クリスマス(例外的にヒットしなかったが、後年アイコン化したモデルアニメーション作品)、星の王子ニューヨークに行く、エイリアン2、ロボコップ、ハロウィンほか、です。どれも大ヒットした有名な作品ばかりです。

 そして、いずれの映画の作品もその製作の裏側はもう大変です。観客として脳天気に笑っていた、これらの有名な作品の大半が、実は監督や俳優などのスタッフ達がまだ無名の時代の作品であり、実際、その作品の大ヒットによってメジャーになった人ばかりです。まあ、会社からすれば、海のものとも山のものとも思えないリスクの大きな賭けという認識なのでしょうねえ。

 番組は、基本的にハリウッドの映画会社の大物プロデューサーの理不尽な命令との戦いを当時のスタッフ達の証言を基に、コメディタッチで描かれますが、これは成功したからこその笑い話であり、その製作当時の現場は、当事者にすればまさに阿鼻叫喚の地獄だったのでしょう。もちろん、現場でもスタッフ間の争い、俳優と監督とのいさかいなど、様々なトラブルが生じます。「エイリアン2」の無名の監督(ジェームス・キャメロン)とイギリスの特撮スタジオの現場チーフの対立は、ストライキにまで発展した有名なお話(当ブログでもメイキング本の紹介)なのですが、当事者が実名で証言する映像には感心します。まあ、何時間もかけてスモークを焚いていざ撮影というスタジオに、おばちゃんが”お茶の時間”と言って紅茶セットを運んできたら、キャメロンでなくても怒り心頭でしょうねえ。こうしたエピソードがてんこ盛りなのです。

 それにしても、ハリウッドのプロデューサーがいかに予算を削減するかだけに終始し、なんと作品を見る目がないのか、ということを思い知らされます。会社側は常に予算削減や公開日の前倒しなど無理難題を要求し、それを無名のスタッフ達が努力や熱意で乗り越えて完成させるというのは実に物語的に面白いのですが、正直、一つの作品が完成するのは、もう”奇跡”としか思えません。神様の気まぐれで傑作が出来上がる気がします。まあ、”創作”というのは大なり小なり大変ですが、ハイリスク・ハイリターンの映画製作では想像以上に凄まじい。携わった人の人生までも変わってしまいます。

 それにしても、会社の製作トップの人たちは一体どんな経歴なのでしょうねえ。なんか上級社会の地縁、血縁の人達のような気がします。ある映画会社の”女帝”と呼ばれたトップは、まるで女優顔負けのポートレートで紹介されます。もっとも、当時の頑張ったスタップたちは実名で誇らしげに顔を出して証言していますが、当時作品をぶち壊そうとしかしなかったようなプロデューサーは顔写真だけの紹介(笑)でした。ちなみに、キャメロン監督にことごとく逆らった現場チーフは写真だけです。でも、後世までこんな形で先見性の無さを記録されるとなかなか辛いものがありますねえ。まあ、革新性のあるものは凡人にはなかなか理解できませんわねえ。それにしても、映画監督をしようとする人間はやっぱりいろいろな意味で”非凡”ですねえ。これはつくづく痛感しました。

Img_20231110_0001  以上、どの回もあっと驚く逸話ばかりです。しかも、いずれもエポックメイキングな作品ばかりです。映画製作の裏話に興味のある方は是非、ご覧ください。実は血みどろスプラッター映画が嫌いな私は、有名な「ハロウィン」を観ていなかったのですが、映画の配給係が一念発起して映画造りをはじめ、学校卒業したばかりの経験の少ない若者(ジョン・カーペンター)が監督して仲間内で作ったということは知りませんでした。しかも、出資者を説得した”血が一滴も出ない”というコンセプトも初めて聞きました。ジェイミー・リー・カーティスのデビュー作でもありますので、今回、BDを買いました(笑)。若者たちばかりのアットホームな撮影現場を想像しながら観てみましょう。いやあ、映画って本当に面白いものですねえ(笑)。

2023年11月 8日 (水)

ゴジラ-1.0

 令和5年11月3日(金)の朝9時、「ゴジラ-1.0」の初日、初回上映を観るため、映画館への入場、チケット発券、さらには劇場パンフレット購入の長い行列に順次並びました。子供の頃、良い席をとるために朝早くから映画館の前で並んでいたことを思い出しました。それにしても、いまやチケットはネット予約済みなのに、発券のために列に並ぶのは本当になんとかならないものでしょうか。まあ、祝日とはいえ、映画館がこれほど混むのは久しぶりだと思います。それだけ前人気があったのでしょう。ネットで調べると前日にはもう満席状態だったので、当日券に並んでいる人たちはどうするのでしょうねえ。他人事ながら気になります。
 加えて、グッズ売り場の混雑も大変です。ゴジラのトイなどを抱えた、いかにもオタク風の若い人達が大手を振って行列に並んでいるのは、私などの”往年の隠れ特撮ファン”には感慨深いものがあります。いやあ、うらやましい(笑)。

Img_20231103_0001  さて、肝心なこの最新ゴジラ映画の感想ですが、その前に、YouTubeでの評判をご紹介します。総じて評判が良いのです。人間ドラマと怪獣が融合した稀な傑作という評価が大半を占めているようです。驚いたことに、あの辛口の”元祖オタク”の岡田斗司夫氏も97点という高評価なのです。世界市場に打って出ることのできる作品で、「シン・ゴジラ」を抜いたとまで言います。さらに「永遠のゼロ」の原作者も興奮冷めやらぬ口調の大絶賛でした。その他アメコミなどを中心にとんでもコメントするオタクの面々さえも過去の「ドラえもん」などの時の悪口雑言とは一転して、山崎貴監督の大復権です。
 実際、金曜日から日曜日までの3日間の興行収入が10億4千万円といいますから、大ヒットは間違いない出来となっています。おめでとうございます。

 正直、CG技術はハリウッド映画と遜色のない出来となっています。限られた予算で最高の仕上がりといってもよいのでしょう。パンフレットによると「三丁目の夕日」に登場した数分間のゴジラのCGにはとてつもない時間と労力がかかってしまい、本編CGはとても無理と当時は断念していたのが、やっと機器やソフトの進歩でハリウッドの尻尾が見えたとの山崎貴監督の証言があります。個人的に言えば、海上でゴジラが機雷回収船を追ってくるシーンや日本海軍の駆逐艦を襲うなどは、鳥肌が立つほどの映像となっています。波をCGで製作したというこの場面だけでも見る価値があります。実際に船での撮影もあいまって「ジョーズ」並みに臨場感を盛り上げます。

 そして、やっぱり時代設定が絶妙でしたねえ。初代ゴジラより前の終戦直前から終戦直後というまさに0となった時期なのです。まだ、自衛隊もなく、しかも、戦勝国によって賠償艦として確保されていた日本海軍の無傷の駆逐艦等を引っ張りだすとはお見事です。加えて、試作機の幻の戦闘機を使ったアイディアも素晴らしい。さすが「永遠のゼロ」などで軍用兵器マニアぶりを発揮した経験が生かされています。ついでに言えば、木製漁船改良の機雷回収船も実に良い。あの”わだつみ作戦”は無理がありますが・・(笑)。まあ、欲を言えば、”46cm砲弾”だけでなく、戦艦大和とゴジラの戦いを見たかった(笑)

 また、敗戦直後の東京の風景なども見事です。まさしく「三丁目の夕日」のノウハウを発展させて、造り上げた世界はまったく違和感はありません。本当に過去を再現する手法の集大成と言ってもいいかもしれませんね。

 ただ少し気になったのが、各方面で絶賛されている人間ドラマの部分です。個人的には少し物足りません。神木隆之介が演じる元特攻隊員が主人公なのですが、あまりに自分の心情をセリフで説明するのが少し気に入らないし、隣のおばさんの安藤サクラの再開時の”恥知らず”的なセリフの意図やヒロインの浜辺美波の、ゴジラの口の高さから落とされたり、爆風で吹っ飛ばされても生きている不死身ぶりがなんとも不可解でした。もっとも、このエピソードにはオタクYouTuber達が”ゴジラ細胞”等々の裏設定があると主張されているようですが、普通そんなのは気が付きませんし、鑑賞中はなんとも違和感一杯でしたねえ。-1.0ですよ(笑)。

 とはいっても、吉岡秀隆扮する元海軍の技術将校のセリフとして”装甲のない飛行機、兵站を軽視して餓死を招く作戦、そして特攻”など、人命を軽視する日本軍の作戦を厳しく糾弾するのには感動しました。ちなみに名機と言われるゼロ戦なども軽量化して機動力が上がっただけという見方もあります。悲しいですねえ。もっとも、当時飛行機に脱出装置を実用化していたのはドイツ軍だけだったそうです。

 最後は、今回のゴジラそのものの評価です。CG技術の進歩によりその動きなどは実に生々しく描写されています。とりわけ、獲物を見つけると目の色を変えたように猛然と追いかけてくるシーンは巨大な生物感溢れる”怖いゴジラ”を造り上げています。お見事です。しかも、爆弾等で破損した皮膚等が再生する設定も素晴らしい。なんでもかんでも跳ね返す”平成ゴジラ(GMK以外)”とは一味違います。”弱くなった”のではなく”リアルになった”のです(笑)。
 ただ、惜しむらくは、その体型です。実は観る前から、ボディビルダーのような人間的な胸板と馬鹿みたいに背の高い背中の棘がデザイン的にどうにも気に入りませんでした。怪獣のデザインの魅力は、異形のものであるべきです。この辺の勘違いは、平成ゴジラのデザインの流れでしょうねえ。まあ、背びれについては、今回新たなギミックの使用があるので容認するとしても、やっぱり、あの胸板は暑苦しい(笑)。

 以上、ながなが、いろいろと苦言を呈しましたが、総体としては、私も”傑作”と思います。是非、多くの人たちに観ていただいて、前人未到の実写版怪獣映画で、興行収入100億円を突破したいものです。一部に、山崎貴監督の作品を”良いとこ取りの寄せ集め映画”などという中傷めいた意見を言う人もいますが、スピルバーグ監督などもヒッチコックなどの過去の様々な作品から学んでオマージュしていますし、最近のアクション映画は、無声映画のキートンの映画を再現しようとまでしています。まさしく”良いとこ取り”ですよねえ。温故知新はどんな分野でも当たり前です。こんな中傷は無視して、どんどん取り入れて見事なエンターテメントを期待しています。このあと、復活したゴジラ細胞はどうなるのか、続編をはやくつくってほしいものです。

 余談ですが、パンフレットを見ると、様々なゴジラグッズを販売する”ゴジラ・ストア”なるものがあって、この作品の撮影の裏側を網羅した「The Record of G-1.0」という公式大型書籍が2024年3月に発売されるとのことです。ゴジラ細胞という設定が本当にあるのか、どうしても知りたくなって、高額な価格に目をつぶって、清水の舞台から飛び降りました。・・・鑑賞直後の気分高揚なせるわざだったのかも、と少し後悔しています(笑)。

 

2023年10月29日 (日)

ザ・クリエイター/創造者

 久しぶりに本格的なSF大作を観ました。「ローグ・ワン/スターウォーズシリーズ」の監督という紹介よりは「GODILLA/ゴジラ」の監督と言ってほしい、ギャレス・エドワード監督の新作「ザ・クリエイター/創造者」です。さすが私のご贔屓の監督さんだけのことはあります。やっぱり、アメコミ映画とは一味違って、なかなか考えさせられてしかも実に面白かったのです。

Img_20231029_0001  物語は、アメリカを模した白人の国が、ニューアジア(架空の東南アジア地域)で現地の人間と共存して生活しているAI達を、核爆発を起こした犯人として、空飛ぶ強大な要塞を用いて撲滅させようとしている中、引退した片腕片足の元モグラ(潜入捜査官)の黒人主人公が、新しい最終兵器の開発者である謎の科学者を捕えようと再びアジアに潜入するところから始まります。

 とにかく、アジア地域で平和に暮らしているAIやアジア人に対して、ロスアンゼルスでの核爆発をAIのテロと決めつけて、圧倒的な武力で殲滅しようというアメリカを模した国の姿は、いやおうなく現実の米国社会の人種差別、インディアン政策、ベトナム戦争、イラン戦争など過去の黒歴史に加え、現実の中東情勢の危うさまでも彷彿させるのです。しかも、公開がAI反対で米脚本家組合のストライキのさなかという皮肉もあります。タイミング的にも、内容的にも、アメリカでの興行収入が伸び悩んでいるという噂は仕方のないことかもしれません。

 それにしても、この映画を観てつくづく思ったのは、西洋と東洋の思想の違いです。日本などでは、鉄腕アトムの頃から、いや実際は昔話の付喪神の時代から、物に魂が宿ることが当たり前のように感じているのですが、西洋では、神と契約した人間(白人かも?)以外の存在を認めません。だから、過去の映画でも、ロボットはろくでもないモンスターのように描かれます。自然のあらゆるところに神が宿る東洋と唯一絶対神のいる世界の違いかもしれません。

 正直、人間のようにうめき声をあげるロボットたちを冷酷に圧殺できるのは、最近まで奴隷制度を持っていた人種だけでしょう。いやあ、”針供養”などをする日本人にはとても無理ですねえ。もっとも、こうした理不尽さを鋭く描いたのは英国人の監督ですから、やはり西洋文明は恐ろしい。もっとも、この監督さんには、少年の頃に親と東南アジアを旅行した時の経験がかなりの影響を与えているようで、日本を含めて、アジアの文化には相当造形が深いようです。特に、最後のエンドロールのバックに虫の声を流していたのには驚愕しました。虫の音を楽しむのは日本人くらいで、特に、西洋人には虫の音は聞こえない(俗説?)そうなのですが、西洋人には肩こりが無いとおなじくデマかな(笑)。そういえば、タイトルには「ゴジラ」と同じように、縦書きの日本語もあしらっていたのですが、これは日本公開バージョンということなのでしょうか。パンフレットには何も書かれたいなかったのですが・・。

 余談になりますが、先日ネットフリックスで放送が開始されたアニメ漫画シリーズ「PLUTO/プルートウ」を2日間で観終えました。この作品は手塚治虫の「鉄腕アトム」のエピソード「世界最大のロボット」を浦沢直樹が、イラン戦争等をモチーフにリメイクしたロボット漫画のアニメ化なのです。さすが、手塚治虫漫画文化大賞を2度受賞した唯一の漫画家というだけあって、実に面白く、すっかりはまってしまいました。そして、テーマである”ロボットとは、人間とは何かと考えさせる”、いかにも鉄腕アトムを生んだ日本の物語です。もっとも、主人公は、白人型のロボット刑事なのですが、ここでも戦争の陰謀が大国のエゴであることが描かれます。ただ、主人公の鼻は、もっと恰好のよい形にしてほしかった。「YAWARA」の脇役とおなじかぎ鼻だ・・・本当に余計なことでした(笑)。

Img_20231029_0002  最後に、パンフレットに書いていたメイキングのエピソードなのですが、東南アジアのロケ地では、ソニーの高感度の軽量カメラを使って撮影クルーも少人数で撮影したため、ハリウッド大作映画の製作とは思われなかったようです。おかげで製作費も安く上がり、今後のハリウッド映画の新たな製作の方向になるのかもしれません。さすが、俳優2人と手持ちカメラで南米を回って撮影した「モンスター/地球外生命体」で名をあげたギャレス・エドワード監督です。そして、いかにポスト・プロダクション(CG画像合成等)の出来栄えが作品の優劣を決めるかを証明しています。あの東南アジアの風景にマッチした巨大な空想的建造物のリアルさと見事さには驚嘆します。未来兵器での銃撃戦も鳥肌物でした。とりわけ、あの悲しいロボット爆弾と冷酷無比な女隊長は特筆ものです。
 いやあ、SFアクション映画でこれだけ考えさせられた作品は久々でした。どうも御馳走様でした。 

 

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