教皇選挙
巷で評判が高く、意外にロングランとなっていた映画「教皇選挙」を上映最終日の前日に劇場へ滑り込みました。SF映画が中心の私としてはいつになく真っ当な作品なのですが、謎に満ちたバチカンのコンクラーベの物語は興味深いぢゃありませんか。第一、教会物は名作が多いのだ(笑)。
冒頭、カメラは主人公の筆頭枢機卿(レイフ・コリンズ)の後姿を映し続けて、心臓発作で亡くなった教皇の寝室に辿り着くところから始まります。ここは、”黒澤明の「用心棒」と同じく、すべて主人公の目を通して物語が語られるのだ”という監督の演出意図に気付くべきでした。残念ながらがら私は後で気が付きました。
ちなみに、その寝室で死亡した時刻を聞いた途端、不穏な空気が流れます。側近中の側近である筆頭枢機卿への連絡が遅かったようなのです。レイフ・コリンズの僅かな疑念を表現する演技に感心します。つかみOKです(笑)。
その後、新しい教皇を選ぶコンクラーベが始まるのですが、何百年も前の礼拝堂などの伝統的な建造物の中で、窓が自動的に閉鎖されたり、世界各地から集まった百人を超える枢機卿たちの宿舎の部屋や食堂が割と現代的であり、それがかえって長い歴史の中で時代の変遷に対応してきたことを感じさせられます。
現在、イスラム教との関係やジェンダー問題には、保守派と改革派とのせめぎあいがあるようですが、改革派の有力候補の副枢機卿(スタンリー・トゥッチ)の周りでも”女性の登用”には消極的なのです。
一方で、保守派のイタリアの枢機卿は、イタリア人の教皇復活を掲げ、イスラム教徒との対決を声高らかに主張しますし、アフリカ出身の枢機卿は、史上初の黒人教皇の誕生を狙っています。
しかも、日頃から世俗的で評判の悪い枢機卿(ジョン・リスゴー)も有力な候補者の一人なのです。まさに、現在のカトリック教会を取り巻く情勢を見事に体現する候補者たちなのです。この辺がアカデミー賞の脚色賞をとる上手さなのでしょうね、きっと。
そして、会場が閉鎖される直前に、主人公の予想を超える事態が発生します。集まった枢機卿が一人多いというのです。いやあ、これには観客も驚きますよねえ、普通こんなことが起こるのですか? 全く展開が読めません。
さらに、主人公の苦難は続きます。”評判の悪い枢機卿が教皇の死の直前に失職させられていた”という密告(?)があったのです。いやあ、一体、どうなるのだ、観客のサスペンス感は一気に盛り上がります。 しかしながら、この主人公の探偵役はなかなか動きません。自らの信仰への疑念を抱えているようなのです。一体、どうするんですか?などとやきもきしていたら、今度は、最も票を集めていたアフリカの枢機卿のスキャンダルが明らかになります。次々とコンクラーベの運営に厄災が降りかかるのです。
しかしながら、こうした陰謀の裏にある真相をシスター長(イザベラ・ロッセリーニ)が毅然とした態度で証言します。完全な男性社会の中で、”シスターは目に見えぬ存在ですが、神は目と耳を与えてくださった。”というセリフは一寸感動します。名文句ですねえ。
こうした中で、投票は何度も行われ、最後は、爆弾テロで礼拝堂の天井に穴があき、そこから光が差し込んでくるのは神の啓示かと思ったのですが、・・・なんとも意外な結末を迎え、いかにもジェンダー時代の作品となっています。
余談ですが、あの亀(宗教上の意味があるらしい)は?新しい教皇の名前(無垢?)の意味は? カトリック教の教義に詳しい方、是非、教えてください。どうも、気になって仕方がありません。
以上、ながながと感想を述べましたが、予想以上に面白く、画面から目が離せませんでした。本当に、次に何が起こるかわからない、”はらはらどきどき”のサスペンス映画だったといっても過言ではありません。また、出演者全員の演技に見ほれますし、本物そっくりに作られたセットにも感動しました。アカデミー賞の受賞が”脚色賞”だけだったとは信じられません。この作品はまぎれもなく傑作です。DVDが発売されたら購入してコレクションに加えましょう。


最近のコメント