ルーカス・ウォーズ
「ゴジラ-1.0」の山崎貴監督と「平成ガメラ」の特撮監督で「シン・ゴジラ」の樋口真嗣監督がYoutubeの対談か何かで褒めていた、フランスで発売された「ルーカス・ウォーズ」の翻訳本をAmazonで衝動買いをしてしまいました。もともと個人的には「スター・ウォーズ」があまり得意でないのですが、以前ディズニープラスの配信で、画期的な特殊撮影技術を生み出した「ILM」のドキュメンタリー番組を見ており、その破天荒な成り立ちが読み物になっているのは、多分面白いだろうと直感的に思ったのです。
207頁の縦サイズが30cmはある大型本はすぐに届き、ページを開いて驚愕しました。中身はコミックなのです(笑)。しかも、フランス版仕様なのか、見慣れた日本の漫画のコマ割りや精緻なモノクロの絵ではなく、スケッチ風のストーリーボードのような体裁です。いやあ、これは大失敗だと観念したのですが、5千円弱の価格なので、半分いやいや読み始めました。貧乏性なのです(笑)。
ところが、ルーカスの少年時代の反抗期や自動車事故のエピソードなど、いつの間にか、上手い絵とストーリーに引き込まれてしまいました。やはり、漫画(絵)の力は恐ろしいものがあります。文字で羅列するより何倍も強烈に頭に入ってきます。
それにしても、ルーカスという人間はかなり個性的で変わり者です。やはり天才というのは、なかなか社会に馴染めないものなのですねえ。ただ、大学時代に知り合ったコッポラやスピルバーグなどとの交流が運が良かったと言えますし、なにより、後に妻となる、天才編集者マーシア・ルーカス(旧姓グリフィン)の出会いがラッキーでした。無名時代のルーカスは、「アメリカン・グラフィティ」の評価は良かったものの、映画会社からは相手にされなかったのですが、孤立し、落ち込むルーカスを彼女が慰め、尻を叩き、そして、ついに「スター・ウォーズ」の製作が始まります。
この新しいSFファンタジー映画は、映画会社の上層部の理解が得られず、後にこの作品の大ヒットで20世紀フォックスの社長になるアラン・ラッド一人が後押しをしたようです。とにかく、ルーカスと5年も正式な契約をせず、引き延ばした当時の20世紀フォックスの取締役たちの見る目の無さとそのやり口が面白おかしく描かれます。その愚かな取締役たちの表情がいかにもという絵なので本当に笑えます。中には、試写会の後のアンケートに”クソ映画”と書いた取締役もいたようです。
実は、大ヒット映画の裏には必ずこうした見る目の無いプロデューサーの壁がある裏話が多いのですが、やっぱり、これはハイリスク・ハイリターンの世界の厳しさゆえに、凡人は手堅さ中心の考え方になるのでしょうねえ。
もっとも、このSF映画の評価については、出演したアレック・ギネスなどもまったく理解できず、さんざん愚痴を零していたといいますから驚きです。それに、抜擢のハリソン・フォードとキャリー・フィッシャーができていたというのも驚愕です。フランスの本とはいえ、そんなことを暴露して大丈夫ですか?(笑)
そして、映画が完成したものの、映画会社の方針で、全米でたったの32館の公開というものも笑えます。撮影中は、イギリス撮影所の特有の頑なさや特殊撮影の拠点ILMに帰ってみれば、巨額の予算と日数がかかっているにもかかわらず完成した映像がほとんどなかったというジョン・ダイクストラの野放図ぶり(新技術開発の貢献者にもかかわらず、その後二度とルーカスと仕事してないようです。)に散々苦労させられた挙句のこの結果に、ルーカスはすっかり落ち込んで、ハワイでスピルバーグと遊んでいたのは有名な話です。ところが、ふたを開けるとあっという間に大ヒットなったのですねえ。
しかも、20世紀フォックスの契約引き延ばしの中で、しっかり続編制作権と商品化権を確保していたルーカスは、その後、ルーカス帝国ともも言える牙城をつくり上げ、めでたし、めでたしとなるのです。
というのがこの本の内容であり、実に面白いアメリカンドリームの成功物語でした。まあ、ディズニーのお伽噺であれば。このハッピーエンドまででよかったのですが、実は、ルーカスのその後の人生は、なかなか大変なようです。
これは、ネットの情報なのですが、「スター・ウォーズ」3部作を作った後、大金持ちになって幸せいっぱいの筈なのに、こともあろうにルーカスの一番の理解者、妻のマーシアと離婚するのです。どうやら、原因はマーシアが別の男に走ったためのようですが、おかげでルーカスは自身の帝国でまるでダークサイドに堕ちたような独裁的な支配者になってしまい、例えば、新三部作の”ジャージャー何とか”の登場にはスタッフ全員が反対だったにもかかわらず、鶴の一声で決定し、多くのファンの不評を買い、挙句の果ては、映画づくりにも嫌気がさしたのか、なんと「スター・ウォーズ」製作権をディズニーに売り渡してしまいました。その後の作品群の惨状はご存知のとおりです。
ただ、願わくば、せめて後年CGを追加して改悪した最初の第3部作のオリジナル版を公開してほしいものです。ルーカスの「原版はない」と言いはる頑な方針から、現在ではオリジナル版を観ることはできないようです。作品の歴史的価値を否定し、観客が最初に観た時の感動を味わえないのは、ファンからすると”たかが原作者”の思い上がりはないでしょうか。・・・アンチ・スターウォーズファンの独り言でした(笑)。
まあ、人生というのは、お金があっても、成功しても、なかなか難しいことを改めて思います。そんなことまで考えてしまった一冊です。未読の方は、是非ご覧ください。
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