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2025年4月29日 (火)

グレイハウンド

 映画「グレイハウンド」は、欧米小説に精通する先輩から頂いた文庫「駆逐艦キーリング」の映画化作品であることから、是非観たいと思っていた作品です。”潜水艦VS駆逐艦の戦い”と聞けば、名作「眼下の敵」を思い出して期待します。どこかの映画評論家が言っていましたが、「潜水艦ものに外れ無し」なのです。でも、これは駆逐艦ものだって?いや「眼下の敵」も、Uボートの艦長のクルト・ユルゲンスの印象が強いものの、ホントの主人公は、駆逐艦の艦長のロバート・ミッチャムですから、駆逐艦は、潜水艦ものに含まれるのです(笑)。

Img_20250429_0001  それはともかく、この映画は、2020年に公開されるはずだったのですが、コロナ禍の影響で、公開が延期され、その後、アップルTVで独占配信されることになったのです。 というわけで、アップルTVの会員でない私は観ることができませんでしたが、先日、オークションで海外版のブルーレイを見つけ、ややプレミアがついていましたが、なんとか入手できました。正直、本当に、日本語字幕が付いているのか、ディスクを再生するまで心配でしたが、杞憂に終わりました(笑)。

 さて、その感想ですが、なんといっても、荒れ狂う冬の海を進む駆逐艦のリアルさです。まるでドキュメンタリー映画です。物語は、第二次世界大戦の中、イギリスに物資を運ぶアメリカなどの輸送船をドイツのUボートの攻撃から守る駆逐艦の艦長の50時間の物語です。まず、なによりも驚愕するのは、冬の曇天の中で荒れ狂う波の凄さと凍てつく空気感です。これを見ると、往年の名作「眼下の敵」はまるでスポーツ戦争映画(これはこれで大好きなのですが・・・)ですねえ。撮影技術等の進歩のおかげか、映像のリアルさが雲泥の差です。いやあ、この映像だけで観る価値はあります。
 そして、駆逐艦の内部も乗組員を含めて、映画「Uボート」並みに、全部が実にリアルに描写されます。駆逐艦艦長を演じるトム・ハンクスの終始鎮痛な表情よりも一緒に乗っている海軍兵士たちの何とも言えない表情や行動が気になります。多分、これは、新任艦長に対する不安感なのでしょうか? この辺は、これから原作を読んで確認したいと思います。映画の前に原作は読まないのだ(笑)。

 戦いは、燃料の問題からアメリカからの航空機の援護が無くなり、次の援護がイギリスから来るまでの50時間の間に、ドイツのUボートがいやらしくも何隻も群れになって追いかけてくるのです。そう、まるで羊の群れを追う群狼という構図です。
 しかも、敵Uボートの内部事情は全く描かれず、海上や海中の潜水艦の姿を映すだけなので、姿の見えないインディアンの襲撃を描いた西部劇「レッドムーン」のようにスリルがじわじわと忍び寄ります。
  そうした状況の中で、トム・ハンクス演じる艦長は、敵潜水艦の行動を予測し、攻撃を回避しながら、反撃をしかけます。浮上する敵を見つけるには大西洋はあまりに広いと思うのと同時に、こんな過酷な状況の中で戦争を行うという理不尽さとむなしさを強く感じますねえ。トム・ハンクスだけにあの「プライベート・ライアン」の上陸作戦の狂気さを思い出させます。観客にこんな気持ちにさせることは、まさしく演出の勝利かもしれません。いやあ、参りました。
 ともかくも、映画は、輸送船や護衛艦も失いながら、危機を何度も乗り越えて友軍に出会うところで幕を閉じます。徹頭徹尾、潜水艦との戦闘を描いた物語でした。ソニー・ピクチャーが配給権を放棄したのは、多分大ヒットしないと踏んだんでしょうねえ。確かに、地味ですし、いろいろ考えさせられましたが、戦闘シーンは手に汗握って面白かったですよ。未見の方は是非ご覧ください。

Img_20250429_0002  これから、原作小説を読むつもりですが、なんとこの小説は1955年に発売されたものであり、今回、映画化にあわせて、新訳で発売された小説でした。もっとも、映画が公開されなくて、出版元は少し当てがはずれたのはないでしょうか(笑)。

2025年4月17日 (木)

ルーカス・ウォーズ

 「ゴジラ-1.0」の山崎貴監督と「平成ガメラ」の特撮監督で「シン・ゴジラ」の樋口真嗣監督がYoutubeの対談か何かで褒めていた、フランスで発売された「ルーカス・ウォーズ」の翻訳本をAmazonで衝動買いをしてしまいました。もともと個人的には「スター・ウォーズ」があまり得意でないのですが、以前ディズニープラスの配信で、画期的な特殊撮影技術を生み出した「ILM」のドキュメンタリー番組を見ており、その破天荒な成り立ちが読み物になっているのは、多分面白いだろうと直感的に思ったのです。

41hpvgccwjl_sy445_sx342_  207頁の縦サイズが30cmはある大型本はすぐに届き、ページを開いて驚愕しました。中身はコミックなのです(笑)。しかも、フランス版仕様なのか、見慣れた日本の漫画のコマ割りや精緻なモノクロの絵ではなく、スケッチ風のストーリーボードのような体裁です。いやあ、これは大失敗だと観念したのですが、5千円弱の価格なので、半分いやいや読み始めました。貧乏性なのです(笑)。

 ところが、ルーカスの少年時代の反抗期や自動車事故のエピソードなど、いつの間にか、上手い絵とストーリーに引き込まれてしまいました。やはり、漫画(絵)の力は恐ろしいものがあります。文字で羅列するより何倍も強烈に頭に入ってきます。

 それにしても、ルーカスという人間はかなり個性的で変わり者です。やはり天才というのは、なかなか社会に馴染めないものなのですねえ。ただ、大学時代に知り合ったコッポラやスピルバーグなどとの交流が運が良かったと言えますし、なにより、後に妻となる、天才編集者マーシア・ルーカス(旧姓グリフィン)の出会いがラッキーでした。無名時代のルーカスは、「アメリカン・グラフィティ」の評価は良かったものの、映画会社からは相手にされなかったのですが、孤立し、落ち込むルーカスを彼女が慰め、尻を叩き、そして、ついに「スター・ウォーズ」の製作が始まります。
 この新しいSFファンタジー映画は、映画会社の上層部の理解が得られず、後にこの作品の大ヒットで20世紀フォックスの社長になるアラン・ラッド一人が後押しをしたようです。とにかく、ルーカスと5年も正式な契約をせず、引き延ばした当時の20世紀フォックスの取締役たちの見る目の無さとそのやり口が面白おかしく描かれます。その愚かな取締役たちの表情がいかにもという絵なので本当に笑えます。中には、試写会の後のアンケートに”クソ映画”と書いた取締役もいたようです。
 実は、大ヒット映画の裏には必ずこうした見る目の無いプロデューサーの壁がある裏話が多いのですが、やっぱり、これはハイリスク・ハイリターンの世界の厳しさゆえに、凡人は手堅さ中心の考え方になるのでしょうねえ。
 もっとも、このSF映画の評価については、出演したアレック・ギネスなどもまったく理解できず、さんざん愚痴を零していたといいますから驚きです。それに、抜擢のハリソン・フォードとキャリー・フィッシャーができていたというのも驚愕です。フランスの本とはいえ、そんなことを暴露して大丈夫ですか?(笑)

 そして、映画が完成したものの、映画会社の方針で、全米でたったの32館の公開というものも笑えます。撮影中は、イギリス撮影所の特有の頑なさや特殊撮影の拠点ILMに帰ってみれば、巨額の予算と日数がかかっているにもかかわらず完成した映像がほとんどなかったというジョン・ダイクストラの野放図ぶり(新技術開発の貢献者にもかかわらず、その後二度とルーカスと仕事してないようです。)に散々苦労させられた挙句のこの結果に、ルーカスはすっかり落ち込んで、ハワイでスピルバーグと遊んでいたのは有名な話です。ところが、ふたを開けるとあっという間に大ヒットなったのですねえ。
 しかも、20世紀フォックスの契約引き延ばしの中で、しっかり続編制作権と商品化権を確保していたルーカスは、その後、ルーカス帝国ともも言える牙城をつくり上げ、めでたし、めでたしとなるのです。

 というのがこの本の内容であり、実に面白いアメリカンドリームの成功物語でした。まあ、ディズニーのお伽噺であれば。このハッピーエンドまででよかったのですが、実は、ルーカスのその後の人生は、なかなか大変なようです。

 これは、ネットの情報なのですが、「スター・ウォーズ」3部作を作った後、大金持ちになって幸せいっぱいの筈なのに、こともあろうにルーカスの一番の理解者、妻のマーシアと離婚するのです。どうやら、原因はマーシアが別の男に走ったためのようですが、おかげでルーカスは自身の帝国でまるでダークサイドに堕ちたような独裁的な支配者になってしまい、例えば、新三部作の”ジャージャー何とか”の登場にはスタッフ全員が反対だったにもかかわらず、鶴の一声で決定し、多くのファンの不評を買い、挙句の果ては、映画づくりにも嫌気がさしたのか、なんと「スター・ウォーズ」製作権をディズニーに売り渡してしまいました。その後の作品群の惨状はご存知のとおりです。
 ただ、願わくば、せめて後年CGを追加して改悪した最初の第3部作のオリジナル版を公開してほしいものです。ルーカスの「原版はない」と言いはる頑な方針から、現在ではオリジナル版を観ることはできないようです。作品の歴史的価値を否定し、観客が最初に観た時の感動を味わえないのは、ファンからすると”たかが原作者”の思い上がりはないでしょうか。・・・アンチ・スターウォーズファンの独り言でした(笑)。

 まあ、人生というのは、お金があっても、成功しても、なかなか難しいことを改めて思います。そんなことまで考えてしまった一冊です。未読の方は、是非ご覧ください。

2025年4月13日 (日)

20世紀最高の映画100作品

 アマゾンで「20世紀最高の映画100作品」という本が以前から気になっていましたが、定価が5千円弱もしたので、 買うことをためらっていたら、売り切れてしまいました。そうなると、是が非でもほしくなるのが人情ですよねえ(笑)。ところが、他の書店のショッピングサイトを見ても、取り寄せ扱いとなっていましたので、おもわず、アマゾンに出品されていた状態”良い”という古書を購入しました。渋っていた定価より千円もプレミアがついていました。まあ、仕方ないと思ったのですが、届いた商品は、帯がありませんでした。これも、アマゾンのレビュー覧に”翻訳家の戸田奈津子氏による絶品の帯がついてなかった”という苦情が載っていましたので、”一人じゃなかった”と諦めました(笑)。

61g7yy9tmzl_sl1280_  しかし、本の内容は予想以上に素晴らしいものでした。全米映画撮影監督協会(こういうカメラマンの協会があるらしい。)が協会創設100周年を記念して、20世紀(1927年から1999年)の映画の芸術と技術における画期的な100本の映画とベストテンを発表し、その100本の映画リストを公開したのです。

 この100作品の撮影カメラマンにスポットをあて、撮影秘話や今だから話せるエピソードを紹介した(宣伝文句から)ものが本書です。著者は、古澤利夫という方で、20世紀フォックス日本支社で宣伝本部長を務めた人らしく、様々な映画宣伝関係の賞も受賞されているそうです。あちらの業界に精通されている方なのでしょうねえ。

 この本のページ数は432ページもある大型本で、各作品ごとに、ストーリーの概略をはじめ、撮影技術の見どころなどを詳しく説明しています。
 有名どころでは「アラビアのロレンス」の砂漠の蜃気楼のシーンなどは、私などの素人は単に風景を撮影したものだと思っていましたが、実は物凄い忍耐と努力の結晶だったことが分かります。撮影隊の足跡消しの苦労などはわかりません(笑)。そのほか、名作という作品はやはりほとんど入っていますし、一見、素人にはまるでわからない照明のエピソードの作品までもあります。

 こうした撮影裏話に目が無い私にとっては、けっこう字も小さく文章も多いので、なかなか読了するに時間がかかりましたが、読書中は至福の時間でした。高買いでも帯が無くても買ってよかったなあ、と思いましたねえ。
 もっとも、多くのカメラマンの異国風の名前はなじみがないせいか、なかなか覚えられません(笑)。そして、名キャメラマンの中には、撮影所のモギリからのし上がってきた経歴の人も意外に多いですねえ。こういう出世話はハリウッドの底力が感じられます。

 そんな中で、本書には日本から2つの作品が選ばれています。「羅生門」と「七人の侍」です。いずれも黒澤明監督作品です。まず、「羅生門」は、名匠宮川一夫です。森の中での鏡を活用した照明、太陽を真正面から撮影したエピソードなどは昔から有名ですし、「七人の侍」では、複数台のカメラによる撮影手法が評価されています。いやあ、さすが”世界のクロサワ”映画だけのことはあります。撮影技術面からもハリウッドに評価されているのですねえ。

 それにしても、それぞれの作品に共通しているのは、当然ながら、”選考基準”にある技術的な革新性です。どの作品も、監督のイメージに沿う映像を創り出すために、わざわざレンズやカメラ等の開発を行っているところは、さすがハリウッドだと感心します。
 まあ、我が国では、黒澤明などの巨匠作品以外は、そのまま撮影するだけというのは言いすぎですかねえ。昔の大映などの作品では、結構凝った映像のために撮影に様々な工夫を凝らしたというような逸話が残っていますが、結果的には倒産しましたからねえ。いまや、そんな話はあまり聞きません。

 いや、先日のNHKのプロジェクトXで「ゴジラ-1.0」のCG処理など創意工夫を重ねている撮影技術が紹介されていましたので、単に私が知らないだけで、どの撮影現場でもたゆまない技術革新や創意工夫が積み重ねられているのなら、うれしい限りです。そういえば、最近の時代劇などでは結構リアルな映像も多くなっています。できたら、そうした日本映画の映像技術の一般向けの本なども出版してほしいなあ。よろしくお願いします(笑)。

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