グレイハウンド
映画「グレイハウンド」は、欧米小説に精通する先輩から頂いた文庫「駆逐艦キーリング」の映画化作品であることから、是非観たいと思っていた作品です。”潜水艦VS駆逐艦の戦い”と聞けば、名作「眼下の敵」を思い出して期待します。どこかの映画評論家が言っていましたが、「潜水艦ものに外れ無し」なのです。でも、これは駆逐艦ものだって?いや「眼下の敵」も、Uボートの艦長のクルト・ユルゲンスの印象が強いものの、ホントの主人公は、駆逐艦の艦長のロバート・ミッチャムですから、駆逐艦は、潜水艦ものに含まれるのです(笑)。
それはともかく、この映画は、2020年に公開されるはずだったのですが、コロナ禍の影響で、公開が延期され、その後、アップルTVで独占配信されることになったのです。 というわけで、アップルTVの会員でない私は観ることができませんでしたが、先日、オークションで海外版のブルーレイを見つけ、ややプレミアがついていましたが、なんとか入手できました。正直、本当に、日本語字幕が付いているのか、ディスクを再生するまで心配でしたが、杞憂に終わりました(笑)。
さて、その感想ですが、なんといっても、荒れ狂う冬の海を進む駆逐艦のリアルさです。まるでドキュメンタリー映画です。物語は、第二次世界大戦の中、イギリスに物資を運ぶアメリカなどの輸送船をドイツのUボートの攻撃から守る駆逐艦の艦長の50時間の物語です。まず、なによりも驚愕するのは、冬の曇天の中で荒れ狂う波の凄さと凍てつく空気感です。これを見ると、往年の名作「眼下の敵」はまるでスポーツ戦争映画(これはこれで大好きなのですが・・・)ですねえ。撮影技術等の進歩のおかげか、映像のリアルさが雲泥の差です。いやあ、この映像だけで観る価値はあります。
そして、駆逐艦の内部も乗組員を含めて、映画「Uボート」並みに、全部が実にリアルに描写されます。駆逐艦艦長を演じるトム・ハンクスの終始鎮痛な表情よりも一緒に乗っている海軍兵士たちの何とも言えない表情や行動が気になります。多分、これは、新任艦長に対する不安感なのでしょうか? この辺は、これから原作を読んで確認したいと思います。映画の前に原作は読まないのだ(笑)。
戦いは、燃料の問題からアメリカからの航空機の援護が無くなり、次の援護がイギリスから来るまでの50時間の間に、ドイツのUボートがいやらしくも何隻も群れになって追いかけてくるのです。そう、まるで羊の群れを追う群狼という構図です。
しかも、敵Uボートの内部事情は全く描かれず、海上や海中の潜水艦の姿を映すだけなので、姿の見えないインディアンの襲撃を描いた西部劇「レッドムーン」のようにスリルがじわじわと忍び寄ります。
そうした状況の中で、トム・ハンクス演じる艦長は、敵潜水艦の行動を予測し、攻撃を回避しながら、反撃をしかけます。浮上する敵を見つけるには大西洋はあまりに広いと思うのと同時に、こんな過酷な状況の中で戦争を行うという理不尽さとむなしさを強く感じますねえ。トム・ハンクスだけにあの「プライベート・ライアン」の上陸作戦の狂気さを思い出させます。観客にこんな気持ちにさせることは、まさしく演出の勝利かもしれません。いやあ、参りました。
ともかくも、映画は、輸送船や護衛艦も失いながら、危機を何度も乗り越えて友軍に出会うところで幕を閉じます。徹頭徹尾、潜水艦との戦闘を描いた物語でした。ソニー・ピクチャーが配給権を放棄したのは、多分大ヒットしないと踏んだんでしょうねえ。確かに、地味ですし、いろいろ考えさせられましたが、戦闘シーンは手に汗握って面白かったですよ。未見の方は是非ご覧ください。
これから、原作小説を読むつもりですが、なんとこの小説は1955年に発売されたものであり、今回、映画化にあわせて、新訳で発売された小説でした。もっとも、映画が公開されなくて、出版元は少し当てがはずれたのはないでしょうか(笑)。




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