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2025年3月28日 (金)

血槍富士

 久しぶりに内田吐夢監督の1955年公開の名作「血槍富士」を観ました。丁度、安売り中のDVDをネットで購入したのです。この作品は、東映お決まりのチャンチャンバラバラの舞踏のような殺陣ではなく、技も何も知らない”下郎”が主君の仇を討つために、力任せに槍を振り回す最後の大立ち回りが有名です。

91afocnw8ql__ac_sx300_sy300_ql70_ml2_  しかし、今回改めて思ったのは、いまや失われた日本の田畑や街道などの原風景が見事に映像として記録されていることをはじめ、宿屋の大部屋などのセットが実にリアルに見えること、さらには演じている役者さん達の立ち居振る舞いがあたかも当時の庶民を再現したかのような姿に見えることに感心しました。

 物語は、酒を飲まなければ心優しい武士のご主人様と槍持ちと荷物持ちの2人の下郎が江戸に向かう道中で、それぞれの事情を抱えた人間模様が淡々と描かれます。盗人騒ぎや身売りなどのエピソードが徐々に明かされるものの、実にのんびりとしたコミカルな雰囲気です。あんな富士山の書割を背景にした大名行列のてんやわんやのシーンがあったのですねえ、すっかり忘れていました(笑)。内田監督としては封建社会の身分制度を揶揄しているのでしょうねえ。

 また、演じる登場人物についても、”下郎”役の片岡千恵蔵は、あの顔の大きさと体躯の存在感がなんとも適役に思えます。それに、ご主人様も、素面と酒乱ぶりの落差は、チャップリン映画で観た登場人物のようでもあります(笑)。加えてもう一人の荷物持ちの”下郎”を演じる名優の加東大介はさすがですし、吉田義男や新藤英太郎などの東映専属俳優たちもそれぞれ柄に合った役をしっかり演じています。そして、名前は知りませんが、旅芸人の親子、一人で逞しく生きている孤児、”鼻が笑っている”3人の商人が実に良い味を出しています。

 結果としては、DVDで1時間35分を一気に観てしまいました。家庭内で早回しなどせずに鑑賞できるのは、やはり名作の名作たる所以ですよねえ。ただ、最後の立ち回りは、後年の作品のように斬る音や突き刺さることもなく、今となってはもの足りない気もしますが、酒樽の酒が流れ出て泥だらけになった地面で転げまわりながら戦う姿は、当時としては、画期的な演出だったのでしょう。未見の方は、是非、歴史的な評価を考慮しつつご覧ください。

2025年3月25日 (火)

レンフィールド

 映画「レンフィールド」は、昆虫を好んで食べる、吸血鬼ドラキュラの下僕”レンフィールド”を主人公としたホラーコメディです。いまネットフリックスで無料配信されており、たまたま観たら、私好みで実に面白かったのでご紹介します。

 ストーリーは、現代のニューオリンズ(吸血鬼伝説が実際にあるところらしい)で、ドラキュラのパワハラに疲れ果てたレンフィールドが集団セラピーを受けているという設定がもう笑えます。なにしろ、見た目は気弱な善良な青年なのですが、実は、もう何世紀もの間、ご主人様のドラキュラに人間を生贄にしてささげてきた極悪人なのですよ(笑)。しかも、これまでの映画のような精神病患者タイプではなく、不死身で、しかも昆虫を食べると超人的なパワーを発揮するというスーパーマンです。

61a8sabpol_ac_sx342_  そのレンフィールドに扮するのは、ニコラス・ホルトというどっかで見たような若手俳優さん(XMENのビースト役)ですが、この映画の本当の主役は、なんといっても、最悪の上司(?)の吸血鬼ドラキュラを演じるニコラス・ケイジでした。いやあ、念願の役柄だったのか、本当に喜々として暴虐なドラキュラを演じています。

 ちなみに、この二人の最初の出会いの回想シーンは、ベラ・ルゴシが演じたドラキュラ映画「魔人ドラキュラ」そっくりのセットであり、ゴテゴテの白塗りのメークアップなども良く似せています。大げさな身振りやセリフなどは、多分、ベラ・ルゴシ特有のルーマニアなまりの英語や演技に似せているのではないかと思っています。さすがハリウッドらしく、元祖のドラキュラ映画へのリスペクトが素晴らしいのだ。

 また、物語の後半、100年前に教会の討伐隊によってボロボロの状態にされたドラキュラが回復し暴れ回る場面は、CG技術の進歩のおかげで、これまでのドラキュラ映画では観たこともないほど素早く動き、文字通りちぎっては投げ、ちぎっては投げというあまりに荒唐無稽でもう笑うしかないというアクションを披露するのですが、ケイジの顔の形がルゴシの四角顔ではなく面長なので、何気に私のお気に入りのクリストファ-・リーにも似ているのがうれしい(笑)。

 実は、鑑賞後、アマゾンで廉価版のさらに47%引きというブルーレイを購入して、その特典映像を確認すると、思ったとおり、ニコラス・ケイジへのインタビューなどの撮影裏話がてんこ盛りでした。
 ニコラス・ケイジによると、演技は、版権の問題でドラキュラの名前が使用できなかった最初の吸血鬼映画「ノスフェラトゥ」のオルロック伯爵を演じたマックス・シュレックを念頭に置いたとのことでした。このサイレント映画はDVDを所有していますが、とにかくその禿げ頭の怪奇な姿が有名です。さらに、当然ながら、ベラ・ルゴシにも敬意を表し、そして、彼の叔父さんがクリストファー・リーに似ている処から、リーの演技も参考にしたようです。加えて、”映画「卒業」のミセスの声も”と付け加えたのは意味不明ですが、いやあ、どれだけ研究しているんですか(笑)。

 結局、スプラッタ満載のゴア・アクション映画ですが、漫画チックなので残酷味はなく、ただただ、そのくだらなさに笑ってください。私、こういう映画は大好きなのです。ただ、現在のハリウッド基準か資金のせいか、ヒロイン役が中国人というのは、あんまり必然性を感じませんねえ。それにしても、アメリカという国は自分の悩みを他人に聞いてもらうという精神療法が本当に好きですなあ。私などが一種の洗脳ではないかと思うのは古臭いんでしょう、きっと。文化の違いというのか、よく分かりませんが、ただドラキュラの血を飲むと吸血鬼になるんじゃなかったのかな?あのハッピーエンドのラストが心配です(笑)。

2025年3月 9日 (日)

蒼いけものたち

 昭和のテレビドラマをDVD化する”昭和の名作ライブラリー”の第152集として「蒼いけものたち」が先日発売されました。このテレビドラマは、日本テレビの”火曜日の女”シリーズ(火曜サスペンス劇場の前身)として、1970年8月から9月にかけて全6回で放映されました。当時は、まったく推理小説などに興味はなかったのですが、親戚のお姉さんが物凄くハマっていたのと、子ども心にゴムの仮面をつけた男や沢村貞子のオバさんが物凄くこわかった上、ストーリーがとても面白かったような記憶が断片的に残ってます。ちなみに、主演が”若大将”の2代目ヒロインの酒井和歌子だったことは覚えています(笑)。

 そして、このテレビドラマが実は横溝正史の「犬神家の一族」が原作で、名脚本家の佐々木守が時代を現在(ベトナム戦争当時)に移し、その頃はもう過去のモノとなっていた探偵小説の金田一耕助を登場させず、6週のドラマに仕立て直された作品と気が付いたのが、友人の影響で推理小説に目覚めた、随分後のことでした。

 その後、角川書店が忘れられていた”横溝正史”フェアを大々的に始め、その結果、1976年の市川崑監督の「犬神家の一族」で角川映画として公開されるのですが、この映画に登場したゴムの仮面に、最初、髪が無いことにものすごく違和感があったことを記憶しています。
 そうなのです、テレビドラマの「蒼いけものたち」に登場するゴム仮面の男には、髪がしっかりあった(笑)のです。やはり、最初に刷り込まれたイメージが強いのですねえ。もっとも、映画鑑賞後は、石坂浩二扮する金田一耕助の登場や終戦直後の風物を美しくも忠実に描き出した市川崑の手腕は見事であり、マスクも含めてすっかり市川崑映画に塗り替えられました(笑)。

81szpkg5hel_ac_sl1500_  さて、前置きはこのくらいにして、この「蒼いけものたち」は、こどもの頃の断片的な面白さしか覚えていないので、今回、かなり高額なのですが、ディスク2枚の全6話セットのDVDを購入しました。しかし何故、日本の製品は海外物と比べて高いのかねえ。スパイ大作戦など7ディスクセットで4千円程度ですぞ。国内の高い税金にあわせているのかな(笑)。
 肝心の内容は、さすが佐々木守の作品です。実にうまくまとめられています。突然、巨額の遺産(当時の4億円は現在ではいくらぐらいかな?)をもらうことになる、ちいさな弟と二人暮らしの主人公を酒井和歌子が初々しく演じています。まあ、赤の他人が財産をもらうことへの逡巡もしっかり描き、しかしまだ小さい弟の将来を考えて犠牲になろうと決断するなど、結構、主人公の揺れ動く心を細かく描写します。
 また、結婚相手候補となる3人の母親の違う息子たちは、それぞれ戦場カメラマン、蝶学者(演じる大出俊が若い)、大手企業のサラリーマンなのですが、意外に人間的に良い人という設定なので、少し気の毒になります。
 一方、3人の母親たちというと、沢村貞子はもとより千石則子の演技が強烈です。いやあ、当時は嫁いびりドラマなんかが全盛でした?毒に当てられます(笑)。そして、名前は知りませんが当時はよく見かけた俳優さんの演じる刑事も酷いですねえ。昭和のドラマは人権無視も甚だしいなあ(笑)。また、お手伝いさん役のひし美百合子さんが体当たり演技です。うん、いつもながら頑張っています(笑)。

 そして、主人公を助ける弁護士に当時「サインはV」で大ブレイクした中山仁です。ストーリー展開が上手いせいか、立場上仕方がないとは思うものの、もう少し果敢にヒロインにアタックしてほしいと見ていてイライラします(笑)。事件がすべて終わった後、酒井和歌子が硬い表情のまま中山仁の待つ車に歩いてくるシーンは、まるで「第3の男」のラストシーンのようです。・・・ほめ過ぎかな(笑)。まあ、そういうシュチュエーションになったのは、怒られても、攫われても、死体を見ても平気で昆虫採集に夢中になる主人公の弟のおかげですが、昭和の子供像というのはあんなにメンタルが強いのが当たり前かな?改めて不思議に思いますねえ。

 以上、今回、改めてこのテレビドラマを見直したのですが、全6話を一気に観てしまいました。まあ、細かなことで気になる点はありますが、全体としては予想以上に面白かったのです。本当にうまくドラマ化していました。さすが佐々木守脚本と感心しました。懐かしい方は、是非、DVDを覧ください。少々お高いですが(笑)

 

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