リドリー・スコットの全仕事
「リドリー・スコットの全仕事」という286ページの書籍が先月発売されました。著者は、イアン・ネイサンというイギリスの映画ライターで、「エイリアン・コンプリートブック」をはじめ、クエンティン・タランティーノやギレルモ・デルトロに関する解説書などをもう何冊も書いているようです。こうした映画関係の解説書や評伝は、アチラの書籍(翻訳物)が格段に面白い。我が国のモノは、どうも関係者や企業に忖度などが働くようで、きれいごとの褒めることしか書かないのがなんとも物足りないのです。それに比べて、アチラの本は、結構、暴露的なものも含めて人間関係も客観的に記述しているので実に感心します。我が国ではマスコミまでも忖度ばかりなので、まあ、そんな”なあなあ社会”なのでしかたありません(笑)。
それにしても、リドリー・スコット監督は、2024年12月に「グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声」が公開されたばかりですが、1937年11月生まれといいますから、とっくに80歳を超えています。いやあ、その映画製作に向けた意欲と超人的な体力には恐れ入ります。
そして、改めて、これまでのフィルモグラフィーを眺めて見ると、「エイリアン」や「ブレードランナー」の代表作などから、なんとなくSFものが多い作家と思っていたのですが、「グラディエーター」など結構、史劇のものが多いし、犯罪物や戦争物など様々な分野から数多くの作品を監督しています。まあ、当たり外れもありますが、その精力的な活動には恐れ入ります。本人曰く、”大作の次には軽い小品を撮った”ということのようですが、その万能ともいえる才能には、まさしく”サー”の敬称が似合っています。ちなみに、帯を書いた押井守氏は、自著によると敬愛する彼のことは必ずサーを付けて呼んでいるそうです。
さて、内容は、リドリー・スコットの評伝ともいえる、デビュー作からの作品の解説です。特に、彼の若い時の経歴などはまさに天才と呼ばれるにふさわしい。また、徹底的な取材をもとにした各作品の撮影裏話の充実ぶりは、例えば「ブレードランナー」が公開当時不入りだったことでのリドリー監督の落ち込みや葛藤、そして、その後の爆上がりの再評価で”やっぱり間違っていなかった”と安堵する彼の証言などを盛り込み、人間味をも感じさせる楽しい読み物になっています。
また、キャスティングの裏話などもふんだんに盛り込まれており、つくづく成功における”人間の運”というモノを感じますねえ。特に、彼の作品から世に出た若手俳優も多く、”若い才能を発掘する監督”ともいわれているそうです。さらに、俳優だけでなく、ドウニ・ヴィルヌーヴなどの新進気鋭の監督にも影響を与えています。ちなみに、彼自身も、その持ち味である自然現象の表現などは、黒澤明の「七人の侍」や「蜘蛛巣城」の影響を受けているとのことで、黒澤明ファンで日本人の私は思わず”低い鼻が高く”なります。・・昔ながらの陳腐な表現ですが、これがぴったりなのです(笑)。
このように、私の好きな映画制作の裏話がぎっしりと詰まった、本当に楽しい内容で一気に読んでしまいました。近年の評論書では白眉の出来です。映画ファンで、未読の方は、是非、お読みください。もし、まだ見ていないリドリー作品があれば、必ず観たくなるはずです。





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