はたらく細胞
映画「はたらく細胞」は、当初映画館で観るつもりはありませんでしたが、予想以上の大ヒット、興収は55億円にも達しているようで、白血球に扮した佐藤健のアクションが「るろうに剣心」を超える迫力などというネットの評判に、ミーハーな私はおもわず劇場に足を運びました(笑)。
さて、この作品は、人間の体の細胞の働きを擬人化した漫画が原作で、アニメにもなっているようです。前述のとおり外部からの細菌等を撃退する”白血球”役に佐藤健が扮しており、その全身白塗りで作業服姿のビジュアルが、帽子に付いている早押しクイズのアイテムのような病原菌探知機(デザインへの楽屋落ちのセリフが笑えますが・・。)を含めて、最初に私が観るのを躊躇していた理由なのですが、まあ、映画を観ているうちに慣れてしまい、そう気にはなりませんでした。しかし、ダサいですよねえ(笑)。
そして、期待したアクションは、お馴染みの「るろうの剣心」での壁走りなどを披露するものの、相手が病原菌で仮面ライダーでの敵怪人のようないでたちの上、攻撃も触手やらなにやらで攻撃するので、なんかリアリティがなくて迫力が減殺されるような印象でした。うん、まあ、頑張っているねえ、という感じですか。
また、身体中の細胞に酸素を運ぶ”赤血球”役として永野芽郁が共演しており、あいかわらずのドジな役柄が適役ですねえ。この作品は、人間の様々な細胞の役割を擬人化することによって、わかりやすく体の仕組みを解説する内容ですから、他の配役も、集団で行動する”キラー細胞”役に山本耕史、一匹オオカミの”NK細胞”役に仲里依紗、”ヘルパーT細胞”役に染谷將太が扮し、劇中、それぞれの役割の詳しい説明もありましたが、まあ、映画が終わればすっかり忘れてしまいました(笑)。
さらに、そうした細胞で作られている現実の人間役として、妻をなくして自堕落となったトラック運転手役の阿部サダヲ、その娘で医者志望の女子高生役を芦田愛菜が演じています。酒とタバコなどでボロボロになった親父の体の中がさびれた飲み屋街のようになっている一方、しっかり者の娘の体の中は、これは佐藤や永野の細胞たちが存在する世界ですが、西洋風の美しいお城という設定が面白い。
中盤、トラック運転中に下痢となった阿部サダヲがトイレを我慢して四苦八苦する場面は、抱腹絶倒の演技で阿部サダヲの本領発揮でした。「十一人の賊軍」の非情な城代家老よりずっと良いのだ。笑いました。
物語は終盤に向けて、親孝行の娘が白血病に侵されてしまい、そのきれいな細胞の王国は、徐々に崩壊していくのです。”抗がん剤がきかない”とか”放射線治療は味方の細胞を殺していく”という説明や映像はある意味で、なかなか衝撃です。なお、親父の方の酒やたばこの影響でデストピアみたいになったセットや映像にも他人事に思えず心が痛みました(笑)。皆さん、健康に留意しましょう。
それにしても、与えられた使命を懸命に果たす”細胞”たちを擬人化したら、なんともブラック企業の典型ですよねえ。使命を果たすことが生きがいという細胞たち、出来不出来があるが、皆その目的のために何の疑問も持たず一所懸命なのだ。これは、なにかの寓話なのかな?擬人化した途端、なんかやりきれない思いがするのは私だけだろうか。まあ、人間の身体を健康にするという大義名分のためには”個々の細胞のことなど知ったことか!!”という話でもあるまいし、とは思うものの、なんとなく異和感があります。まあ、異常だと糾弾され、廃棄されることに反発して、白血病を引き起こす”白血球”のガキには哀れさまでも感じました。いやあ、擬人化もほどほどにせんといかんねえ(笑)。
ラストは、これまでの”細胞”の世界は滅び、骨髄移植で天使が降臨するのですが、移植された骨髄細胞役(天使)を白人の子役にしたのは、結局、骨髄の適合者が外国人だったというオチでしょうか。ひょっとしたら、国内の骨髄バンクへの登録者数が少ないことを指摘しているのかな?まさかね。
以上、細かなことをいろいろ並べましたが、様々な細胞のはたらきをアクションたっぷりで分かりやすく描いており、擬人化による異和感が残ったものの、退屈することもなく楽しめましたので、これはこれで良かったのだ。個人的にも、”6本観たら1本ただ”というポイントが使えたので満足です(笑)。
最近のコメント