グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声
リドリー・スコット監督の史劇の傑作「グラディエーター」の続編が「グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声」です。前作は、「ベン・ハー」や「十戒」などの巨費を投じて作られたスペクタクル史劇をCG技術を駆使して現代に蘇らせたエポックメイキング的な作品でした。主演のラッセル・クロウは、アカデミー賞の主演男優賞をとり、作品賞を含めて5部門を獲得しています。いやあ、クロウ演じる将軍マキシマスのかっこよさをはじめ、円形競技場コロセウムの巨大さと剣闘士の闘いの迫力には驚きました。
さて、その十数年後の物語という続編で、闘技場で散ったマキシマスの子が主人公ということなのですが、前作では、確か妻とともに処刑されたはず、という記憶があったせいか、ポール・メスカルが演じる主人公の素姓がいまいちわからず、その正体が分かる中盤までは、どうも落ち着きませんでした。ここではネタバレはしませんが、さすが、リドリー・スコット監督ですねえ、後出しのような気がしますが、実にうまく正当な続編の物語を作り上げています。これは感心しました。
それにしても、冒頭、アフリカの海岸要塞都市に攻め込むローマ帝国のガレー船団の映像は、あの史劇の金字塔である「ベン・ハー」の名シーンをCGでよりリアルに、そしてスケールをパワーアップさせており、素晴らしい迫力でした。ここは文句なし(笑)です。
その一方、円形競技場での剣闘士の戦いは、前作の”戦車との攻防”や”トラ”を超えようと、マントヒヒや巨大なサイなどを登場させるなど工夫は認めますが、円形競技場の中に海水を入れて人造の海を作り、ガレー船の合戦を再現するのは、いくらなんでもやりすぎです。古代の競技場施設の構造では、2隻の船を浮かべるだけの量の海水を溜めることはあまりに絵空事にすぎるような気がします。その上、生きたサメを何頭も泳がせるなど噴飯ものです。ここのシーンでドン引きして、一気にさめました。・・・残念です。
それでも、前皇帝の姉役のコニー・ニールセンはあいかわらず美しく、双子の皇帝はその狂気さを熱演しますが、なにより驚いたのが、今作の影の主役ともいうべき存在がデンゼル・ワシントン演じる剣闘士団のオーナーでした。ワシントンの俳優としての格などから、前作のオリバー・リードのような儲け役と思い込んでいましたから、まさか、まさかの展開で、正直、こんな役をワシントンが引き受けたことが信じられませんでした。・・・面白かったけど(笑)。でも、指輪を無意識に回す仕草はイコライザー役が抜けていない(笑)という気もします。
以上のように、いろいろ突っ込みどころもありますが、総体的にはなかなか面白く出来た、久しぶりの史劇大作でした。史劇ファンの方は、是非大スクリーンでご覧ください。
なお、この映画は劇場パンフレットが販売されていませんでした。どうも最近パンフを作らない作品が増えている気がするので、パンフレット・コレクターとしては少々心配しています。どうか、映画制作会社におかれましては、少々高くてもいいですから、せめてパンフレットの発売は止めないでください。パンフレットは、ポップコーンと同じように映画とセットの劇場文化(笑)なのです。お願いします。ちなみに掲載写真は2つ折りの宣伝チラシです。
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