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2024年7月27日 (土)

フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン

 映画「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」は、1969年のアポロ11号の月面着陸を描いたロマンティック・コメディです。1960年代にヒットした同名のポップソングの中の”私を月に連れてって、言い換えて言うと手をつないで”という歌詞がモチーフになっているようで、60年代のロマンティック・コメディの再現でもあるようです。
Img_20240727_0001 主人公は、スカーレット・ヨハンソン演じる目的のためには手段を択ばない凄腕の広告ウーマンのケリーと、チャニング・テイタム演じる堅物のNASAの発射責任者コールなのですが、生まれも育ちも性格も全く違う二人は当初反発しあうものの、様々な困難を乗り越える中で、惹かれ合っていくという典型的な恋愛物語ですが、とにかく口八丁手八丁で破天荒な行動をするケリーとNASAに人生を掛けている一本気なコールの掛け合いが笑えます。次々と発生するトラブルもコミカルに描かれます。実に脚本がうまいと思えますし、何故かたびたび登場するクロネコもラストに良い仕事をします(笑)。

 そして、当時、国民の人気や議会の支持が今一つだったアポロ計画の大々的なPRを画策し、ケリーを強引にNASAに送り込んだのが、大統領の側近モーなのですが、そのモーを演じたのが「ナチュラル・ボーン・キラーズ」のウッディ・ハレルソンなのですが、ニクソン大統領の影の側近として盗聴をはじめ汚れ仕事はなんでもやるという強面の半面、憎めない面も見せるという実に適役の演技を披露します。

 後半、月面着陸の成功を不安視したモーの脅迫じみた提案から、秘密のスタジオでフェイクの月面着陸の映像を撮るという馬鹿馬鹿しい暴挙が始まり、様々なドタバタを通じて、果たして追い詰められたケリーはどうするのか、厳重な監視の中でテレビ放送に本物の映像を流すことができるのかなどという、やっぱりコメディタッチのサスペンスも生まれます。肩の力を抜いて楽しんでください。

 それにしても、劇場の大画面で見るケープ・ケネディのロケット発射基地の映像は雄大ですねえ。青い空も広い敷地も、人々の服装も、60年代の懐かしいアメリカ映画を彷彿させます。多分、観客がそう感じるような演出をしているのだと思いますが、昔憧れたアメリカの風景です。でも、考えてみれば、当時はベトナム戦争中でもあり、黒人差別もあからさまな時代だったのです。映画「ドリーム」をみれば、黒人差別の実態がよくわかります。そういう意味では、昔は隠されていたものが見えはじめただけのことかもしれません。
 それからいうと、今作でNASAのメインともいえる発射管理センターに黒人管制官がいるのは史実に反しているのかもしれませんが、いまのハリウッド映画の基準から言えば、どうしても必要なことなのだ!!なお、1995年公開の傑作「アポロ13号」ではどうでしたでしょうか、気になる方はご確認ください。

 ちなみに、パンフレットによると、”人類は月面に到達していない”という都市伝説は、きっかけはキリスト教原理主義団体「地球平面協会」であり、それに”ベトナム戦争から目をそらすため”という陰謀論が加わり、さらに1968年のキューブリックの「2001年宇宙の旅」のあまりにリアルな映像の衝撃によって”1970年代になって”キューブリックが秘密のスタジオでフェイク映像を撮影した”ということになったらしいのです。そういえば、映画の中で”監督をキューブリックに頼もうか”などというセリフがありましたねえ。まことに笑えます。でも、1972年のアポロ17号以降、半世紀以上人類は月に行っていません。これがどうにも不思議ですよねえ、最近正式に実在を認めたというUFOの基地でもあるんでしょうか、気になります(笑)。火星を目指すという”アルテミス計画”なるものに期待しましょう。

2024年7月21日 (日)

キングダム/大将軍の帰還

Img_20240720_00012  「キングダム」シリーズの第4作で最終章という「キングダム/大将軍の帰還」は、”王騎”を演じる大沢たかおが主演の映画でした。主人公”信”役の山崎賢人や”秦王”吉沢亮は今回は完全な脇役ですねえ。そして、いままで謎に満ちていた”王騎”の生涯と帰還を描く物語であり、今回も筋肉を大増量した大沢たかおが渾身の演技を見せます。もともとは漫画原作でまさに絵にかいたような豪傑であるにも変わらず、なんとも個性的な、一歩間違えると珍妙ともいえるような言い回しをする大将軍を実にリアルにかつ格好良く演じた姿はなかなか大したものです。いやあ、本当に感動しました。中国ロケを生かした大規模な戦闘シーンなどより、大沢たかおの迫真の演技に圧倒されました。周囲の俳優達とは見た目のサイズ感までも違うようでしたねえ。

 ちなみに、王騎将軍との因縁のある敵国の趙の”武神”を演じた吉川晃司も筋肉15kg増やして頑張っています(笑)。二人の対決はそれぞれ巨大な矛を自在に振り回し、一種漫画的ではありますが、なかなか見ごたえがありました。うん、全編クライマックスというのはあながち大げさでもないように感じますねえ。いやあ、ハリウッド映画のレベルまで到達したような気になります。さすが、これまでシリーズを牽引し、大作に定評のある佐藤伸介監督の力量なのでしょう、素直に感心します。

 そのほか、王騎の幼馴染役の新木優子が美しい女将軍を初々しく演じて良かった。そして、出番は少なく、いつも王騎の背後にひっそりと控える副官を演じた要潤がその”怪物”ぶりを発揮するシーンに拍手を送りたいと思います。実は、アニメ版の、まるで扇風機のような剣さばきを実写ではどんなに表現するのか、少々危惧していたのですが、なかなかうまく処理しています。敵将の山本耕史の最後の独り言までがこのシーンを支えます。このひと、「シン・ウルトラマン」でも実に絶妙なセリフ回しを披露していますが、やっぱり演技が上手いのでしょうねえ。なかなか記憶に残ります。

Img_20240720_00011  そして敵将と言えば、敵国趙の天才軍師を演じた小栗旬は、出演するにあたって”当初抵抗感があった”というパンフレットの記事もありましたが、基本的に”ラスボス”的な最大の敵役ですから、しかたがありません。でも、ハリウッドゴジラのメカゴジラの操縦者よりは随分良い役(笑)ですよねえ。

 以上のように、今作は大沢たかおをはじめとする俳優陣が頑張った映画というのが総括でした。

 最後に、”最終章”と聞いていたので、この大将軍の帰還でキングダムシリーズが終わりかと思っていたら、どうやら、続編制作もあるようです。まあ、大ヒットのようですし、原作自体まだまだ先が長いので、ドル箱を止める訳もなく、当たり前かもしれません。ただ、今後次々登場する敵将を考えると、演じるに足る日本の俳優の数が足りるのか?少し心配になります(笑)。ともかく次回作も期待しています。佐藤監督さん、頑張ってください。

2024年7月13日 (土)

ドラキュラ/デメテル号最後の航海

Img_20240707_00015-2  ブラム・ストーカー原作の小説「吸血鬼ドラキュラ」の中で、これまで一度も映画化されていない章が第7章「デメテル号船長の航海日記」とのことです。まあ、本筋とは無関係のルーマニアからロンドンまでの船旅のエピソードですから、どの映画でも帆船の出発あるいは英国への漂着シーンのワンカットですましているのは当たり前なのですが、今回の映画化では、その航海中に起こった惨劇を初めて描いた、というのが売りのようです。ドラキュラの物語としては、結末が分かっているので、やや物足りない、一種の添え物的な小品になるのですが、”エイリアン”の宇宙船を帆船に置き換えたホラー映画として楽しんでください。
 まあ、ドラキュラの造形は完全なモンスターですからねえ。廉価版のブルーレイに挿入されているメイキングを見ると、監督が”これまでのドラキュラ映画にはなかったユニークな姿”と自負していましたが、どうみても、あのフランシス・フォード・コッポラの超B級映画「ドラキュラ」の蝙蝠形態にそっくりなのですが、いかがでしょう。
 それにしても、この作品では、当時の港町や帆船のセットのリアルさに感心します。メイキングを見ると、全編CG映像かとおもっていたら、マルタ島の巨大ドックに実物大の帆船を造り上げて、迷路のような船内のセットで撮影を行ったそうです。小品とは言えないほど予想以上にお金がかかっている模様です。全く、最近のハリウッド映画の史劇などのリアルな再現度が半端ありません。特に、衣装や食事風景などセットや小物にも当時の不衛生な生活環境が詳細に反映されているほか、港町の広々した風景などでも、セットとCGが見事に融合した映像には本当に脱帽します。どこか嘘くさい、きれいごとの邦画との埋められない差を感じますねえ。

Img_20240707_00014  ところで、ドラキュラ映画は、ご存知クリストファー・リー主演の英国ハマープロのシリーズが気に入りなのですが、1973年公開のジャック・パランス主演の「狂血鬼ドラキュラ」という作品があり、”ブラム・ストーカーの原作に最も忠実なドラキュラ映画と云われている”という宣伝文句に騙されて、安売りDVDを買ってしまいました。結果、いままで観なかったのが正解でした。大失敗です。まったく観る価値はありません。

 Img_20240712_0001 そのため、公開当時は超B級といわれ、正直あんまり感心しなかった記憶があるコッポラの「ドラキュラ」のDVDを見直したところ、内容をほとんど覚えていなかったせいかもしれませんが、これが予想以上に面白かったのです。特に、吸血鬼に堕ちる前の英雄ドラキュラ公の場面は、影絵的な演出なども相まって素晴らしい。アカデミーの衣装デザイン賞、メイクアップ賞、録音効果賞を受賞したのもうなずける絢爛豪華さです。しかも、よく考えると、ドラキュラをゲイリー・オールドマン、ヘルシング教授をアンソニー・ホプキンズ、ヒロインのミナをウィナ・ライダー、ヒロインの婚約者ジョナサンをキアヌ・リーブスが演じているのです。信じられない豪華メンバーです。

 ただ、ストーリーは、”コッポラらしい”と言えばいいのか、原作とは異なり、吸血鬼となったドラキュラ伯爵の悲しみと愛を描いており、ハマープロ作品のような勧善懲悪ではない描き方の一方で、正義のヘルシング教授の変人ぶりなどが強調されている上に、夫と愛人(?)の間をふらつくヒロインのミナには感情移入できず、なんとも混乱します。
 しかし、このコッポラ作品で、デメテル号に搬入された”土の入った箱50個”の謎も解けたような気がして納得です。どうやら、コッポラ作品がベースになっているのは、最近再評価されているせいなのかな? 実際に再見すると、いろいろ突っ込みどころもあるが、豪華な雰囲気でエロティックでもあり、なかなか面白かった(笑)。以上です。

 

2024年7月 8日 (月)

三島由紀夫の「潮騒」

Img_20240707_0001  最近のセリフばかりで綴られたネットのラノベ小説ばかり読んでいると、無性に美しい日本語の真っ当な小説(笑)を読んで観たくなります。そこで、書棚に積まれた中から1冊、文章のうまさに定評のある三島由紀夫作品の中で、唯一といってよいほどの通俗的な恋愛小説「潮騒」を選びました。学生時代に読んだだけでしたが、久しぶりに読むと、さすがノーベル文学賞候補と言われた作家の華麗な文章表現に感動します。冒頭の舞台となった”歌島”を説明するくだりはその文章表現の巧みさにやっぱり感動します。皆さん、是非、読み返してください。

 この小説についてはあれこれ説明する必要はないと思いますが、ギリシャ神話をモチーフにした、美しい島での”宮田初江”と”久保新治”の素朴な純愛物語です。ハッピーエンドですので、何の心配もなくこの話に没頭できます。いまの目で見直すと、”婚前交渉はご法度”と言う懐かしい掟に微笑ましくも笑えますし、小さな貧しい集落での人々の純朴な暮らしぶりが、いかに日本人が大事なものを失っていったかを改めて思いますねえ。

 さて、この名作は、これまで何度も映画化されています。やっぱり恋愛ものの決定版ということでしょう、それぞれの時代のアイドルが主演となっています。有名なのが、1964年公開の吉永小百合と浜田光夫コンビ、そして1975年の山口百恵と三浦友和コンビの作品でしょう。この二つの作品は今迄観たこともなかったので、この際、観てみることにしました。丁度、安価なDVD等が見つかりました(笑)。実は、1954年に初めて映画化された谷口千吉監督作品について、主演の青山京子(共演は久保明)を三島由紀夫自身が”初江らしい”と褒めた(多分、宣伝だと思うが・・)というので映像媒体を探しましたが、どうやらDVDの発売や配信もないようで残念でした。

Img_20240707_00012  まず、DVDの入手順で山口百恵版を観ましたが、これは正直きつかったねえ。なにしろ、映像で観る動く”百恵ちゃん”が子供ちゃんなのです。まあ、当時は16~17歳ぐらいなのですから当然なのかもしれませんが、グラビアなどではもっと大人びていたような記憶なのです。いま思うと、”激写”の篠山紀信カメラマンの撮影マジック(あのブレが曲者か?)だったのかもしれません。加えて後年”百恵は菩薩”とまで称されたあの歌声も影響しているのかもしれませんが、いやあこの映画の中の姿や演技と記憶のイメージとの乖離には参りました。
 まあ、その分、共演の友和がふんどし姿で頑張っていました(百恵ちゃんが惚れたのも納得)ので、コンビ物の第2弾としては、それなりにヒットしたのでしょうねえ。でも、石段がベコベコ音を立てるセットはあまりにもお粗末でした(笑)。70年代の日本映画界はそんなものだったのでしょうねえ、きっと。

Img_20240707_00013  次に見たのが吉永小百合版です。これは、撮影が65年頃、小説のモデルとなった神島で長期ロケを敢行したということで、なにより当時の漁村の風景がそのまま記録されているところに価値があります。しかも、カラーだった(笑)。
 また、主演の小百合さんも黒塗りで(原作では日焼けで色黒という設定)頑張っています。若い頃の小百合さんはやっぱり可愛いと再発見しました(笑)。
 しかし、共演の浜田光夫が全然”新治”らしくないですねえ。中盤の見せ場である嵐の中の全裸シーンで、アイドルとしての規制がかかるヒロインはともかく、男らしさを見せるはずの光男がふんどしはもちろん胸まで隠すなんて信じられません。友和さんを見習ってほしいものです。時代が逆ですか(笑)。何故か、007のロジャー・ムーアが後年ベッドシーンで胸を隠した逸話を思い出しました。多分貧弱で写せなかったんでしょうねえ。
 しかも、この作品は長期ロケしたはずなのに、結構原作を改変しています。新司と恋敵のどちらが見所があるかを見極めるための航海中の出来事を島での英雄行動に置き換えたりしており、これはもう原作の意図を踏み外した愚策と言う以外はありませんねえ。

 それにしても、両作品に共通するのは、助演陣の役者たちの達者ぶりです。いやあ、昔の役者は実に味がありました。たまには、こうして古い映画を観るのも面白いですねえ。 

2024年7月 6日 (土)

クワイエット・プレイス DAY1

 傑作SFホラー映画「クワイエット・プレイス」の第3弾「クワイエット・プレイス DAY1」は、恐怖のエイリアンが地球に襲来した第1日目を描く物語です。前2作の主人公の家族とは全く別のお話なのです。しかも、襲撃1日目という設定なら、無数のエイリアン達による惨劇パニックを大規模に描けるというメリットもあります。正直、こういう続編もありなのかと感心しました。

Img_20240706_0001   映画は、猫を飼っている黒人女性のニューヨークでの生活描写から始まりますが、なんと彼女はホスピスで終末期医療を受けている余命いくばくもない患者で、絶望の中でマンハッタンにある思い出の店のピザを食べに行くこと以外は、全てをあきらめています。これでは、エイリアンの襲撃から逃れても、彼女は絶対に助からないのです。なんという救いのない、無情な設定なのでしょうか、冒頭から混乱します。

 そして、彼女がマンハッタンに行って、マリオネット劇の観覧中にエイリアンの襲撃が始まります。物凄く頑丈で素早いエイリアン達のアタックで、ビルは倒壊、車が横転、ヘリコプターまで墜落します。もっとも、大半は視界を遮る大量のホコリで全く周囲が見えず、しかも、主人公達を埃だらけの真っ白な姿に換えてしまいます。エイリアンには白人も黒人もないというイメージでしょうか、3.11の事件以降のリアル表現の真骨頂なのでしょうねえ。役者さんも大変です(笑)。

 一方、エイリアンが泳げないことを早々(あまりに早すぎるのでは?疑問が生じますが)に突き止めた政府は、マンハッタンに通じるすべての橋を破壊し、エリアンを隔離したうえで、残った人々に船着き場へ逃げるように誘導します。ただ、主人公は、それらの流れに逆らうように、ハーレムのピザ店を一人目指すのです。その途中で、法律の勉強に渡米したイギリス人の白人青年と遭遇し、猫の導き(?)で行動をともにするようになるのですが、この白人青年の性格が実はよくわかりません。パニックを起こす臆病で幼児のように依存性の高い性格なのに、意外に勇敢な行動もして、二人はエイリアンから逃れ続けます。

 さてさて、この話のオチは一体どうなるのかという観客の疑問の中で、最後は、主人公はついにこれまでの人生を振り返り、音を失った世界で、最も大切だったことを思い出して、意義ある人生の末期を迎えるのです。”ドスン”という衝撃音が印象的ですねえ。うん、この作品は、SFホラーを装った、ホスピスの映画でした。いやあ、こんな作品もあるのですねえ。
 それにしても、劇場パンフレットが販売されておらず、配給元はあんまりヒットを期待していない模様です。これは残念でした。

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