フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン
映画「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」は、1969年のアポロ11号の月面着陸を描いたロマンティック・コメディです。1960年代にヒットした同名のポップソングの中の”私を月に連れてって、言い換えて言うと手をつないで”という歌詞がモチーフになっているようで、60年代のロマンティック・コメディの再現でもあるようです。
主人公は、スカーレット・ヨハンソン演じる目的のためには手段を択ばない凄腕の広告ウーマンのケリーと、チャニング・テイタム演じる堅物のNASAの発射責任者コールなのですが、生まれも育ちも性格も全く違う二人は当初反発しあうものの、様々な困難を乗り越える中で、惹かれ合っていくという典型的な恋愛物語ですが、とにかく口八丁手八丁で破天荒な行動をするケリーとNASAに人生を掛けている一本気なコールの掛け合いが笑えます。次々と発生するトラブルもコミカルに描かれます。実に脚本がうまいと思えますし、何故かたびたび登場するクロネコもラストに良い仕事をします(笑)。
そして、当時、国民の人気や議会の支持が今一つだったアポロ計画の大々的なPRを画策し、ケリーを強引にNASAに送り込んだのが、大統領の側近モーなのですが、そのモーを演じたのが「ナチュラル・ボーン・キラーズ」のウッディ・ハレルソンなのですが、ニクソン大統領の影の側近として盗聴をはじめ汚れ仕事はなんでもやるという強面の半面、憎めない面も見せるという実に適役の演技を披露します。
後半、月面着陸の成功を不安視したモーの脅迫じみた提案から、秘密のスタジオでフェイクの月面着陸の映像を撮るという馬鹿馬鹿しい暴挙が始まり、様々なドタバタを通じて、果たして追い詰められたケリーはどうするのか、厳重な監視の中でテレビ放送に本物の映像を流すことができるのかなどという、やっぱりコメディタッチのサスペンスも生まれます。肩の力を抜いて楽しんでください。
それにしても、劇場の大画面で見るケープ・ケネディのロケット発射基地の映像は雄大ですねえ。青い空も広い敷地も、人々の服装も、60年代の懐かしいアメリカ映画を彷彿させます。多分、観客がそう感じるような演出をしているのだと思いますが、昔憧れたアメリカの風景です。でも、考えてみれば、当時はベトナム戦争中でもあり、黒人差別もあからさまな時代だったのです。映画「ドリーム」をみれば、黒人差別の実態がよくわかります。そういう意味では、昔は隠されていたものが見えはじめただけのことかもしれません。
それからいうと、今作でNASAのメインともいえる発射管理センターに黒人管制官がいるのは史実に反しているのかもしれませんが、いまのハリウッド映画の基準から言えば、どうしても必要なことなのだ!!なお、1995年公開の傑作「アポロ13号」ではどうでしたでしょうか、気になる方はご確認ください。
ちなみに、パンフレットによると、”人類は月面に到達していない”という都市伝説は、きっかけはキリスト教原理主義団体「地球平面協会」であり、それに”ベトナム戦争から目をそらすため”という陰謀論が加わり、さらに1968年のキューブリックの「2001年宇宙の旅」のあまりにリアルな映像の衝撃によって”1970年代になって”キューブリックが秘密のスタジオでフェイク映像を撮影した”ということになったらしいのです。そういえば、映画の中で”監督をキューブリックに頼もうか”などというセリフがありましたねえ。まことに笑えます。でも、1972年のアポロ17号以降、半世紀以上人類は月に行っていません。これがどうにも不思議ですよねえ、最近正式に実在を認めたというUFOの基地でもあるんでしょうか、気になります(笑)。火星を目指すという”アルテミス計画”なるものに期待しましょう。
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