千の顔を持つ男
どうやら今月は劇場で一本も映画を観ない月になりそうです。映画愛好家の友人が”評価する”という、新作「マッドマックス」については、前作「怒りのデス・ロード」の前日譚であり、再び”あの悪夢のような砂漠の世界へ戻る”という気力がどうにも湧かなくて、劇場に足を運びませんでした。ちなみに、決して主演がシャーリーズ・セロンではないからという理由ではありません(笑)。
もちろん、自宅ではあいもかわらず配信や市販のDVDなどでB級SF作品を中心にいろいろと眺めているのですが、予想外に面白かったのが、復刻シネマライブラリーで発売されていたDVD「千の顔を持つ男」でした。
この作品は、無声映画時代、自ら施したメーキャップで様々な怪人を演じて、”千の顔を持つ男”と一世を風靡した怪奇俳優ロン・チャイニーの伝記映画でした。彼が演じた”オペラ座の怪人”や”ノートルダムのせむし男”などは、そのメークキャップが語り草となっており、その伝説的なデザインは、今なおフィギュアとして発売されるなど、クラシック・モンスターの定番となっています。
しかし、”ロン・チャイニー”という役者については、ほとんど何も知らず、逆に、息子が”ロン・チャイニー・ジュニア”として、フランケンシュタインの怪物、ドラキュラ、狼男というユニバーサル・スタジオの3大モンスターをすべて演じたという話の方が有名なほどです。もっとも、今回は知らない分、稀代の俳優の人生を垣間見ることができるドラマとして楽しめました。なにしろ、気の短くなった私が、自宅で倍速モードにもせずに、最後まで一気に鑑賞したのですから、大したものです。
それにしても、ロン・チャイニーが聾唖者の両親のもとに生まれた”コーダ”であり、そのことを知らなかった妊娠した妻と不仲となっていく場面などは、差別の問題をしっかり描いており、とても1957年製作の作品とは思えない内容でした。
そして、子どもの頃からいわれのない差別と闘ってきた主人公は、その経験と才能がハリウッドでの成功を導いたものの、性格はますます頑なになってしまい、観てる方も”もう少し冷静になって”と言いたくなるのですが、実際”本当の役者”というのはあんな”自己中”なのかもしれませんし、第一演じるのが個性派俳優のジェームズ・キャグニーなのですから、しかたがないとも思ってしまいます(笑)。ただ、個人的には、やっぱりあの母親は好きになれません。息子よ、しっかりせいよ(笑)。それにしても後妻さんが良い人で良かったですねえ。懐かしい典型的なハリウッド映画でしたし、なにより、名作「オペラ座の怪人」などの撮影風景をドラマの中で再現するのがうれしかったなあ。
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