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2024年3月 4日 (月)

映画技術入門

 先日「映画技術入門」という書籍が発売されました。内容は、映画史を支えてきた様々な技術と関連する700の作品を一挙紹介する(帯の宣伝文句)というモノです。具体的には、映写機と35mmフィルム、サイレントからトーキー、カラー、現像とプリント、音響、デジタル撮影、そして映画館など、様々な撮影機械や上映設備などの歴史の紹介です。こうしたテクニカルなお話は、以前から様々な専門的な書籍が出版されており、私も何冊か読みましたが、一向に頭に入らずそのまま素通りしています(笑)。

51eyyz9dnel_sy445_sx342_  その点、この本は、”入門”と冠しているだけあって、”分かりやすさ”に工夫をしています。若い女の子の主人公が専門家に関連技術を教わっていくという形式で、親しみやすい漫画とシンプルな図を駆使して大変見やすいのです。しかも、エポックメイキングな作品は写真入りで監督別の経緯なども説明されています。

 正直、スクリーンサイズなどにはあまり関心も無かったのですが、映画を撮影する際に監督がどうしてそのサイズを選んだのかなど、私のお気に入りの作品を通じて、撮影の裏側が垣間見えるような気がして実に楽しい読み物になっていました。そして、映画技術のトリビアもふんだんに盛り込まれており思わず笑います。

 例えば、映画が斜陽となった1970年代に現像技術が安い方法に一斉に切り替えられてしまったという現像の歴史は、”70年代の作品はどれも「くすんだような画面」となっている”という昔から私が抱いていた疑問に答えてくれた気がして、個人的に大変満足しています。
 また、カメラの歴史にも感銘を受けました。やっぱり高額なレンタル費用のかかるカメラは性能が違うようです。日本映画の薄っぺらい画像は、安いカメラの性かな?いやあ、単にカメラだけの問題でなく照明機材などあらゆる面で撮影技術へのアプローチが無くなっているのでしょうねえ。昔の「大映時代劇」の映像の凄さを思い出してほしいものです。

 それにしても、アルフレッド・ヒッチコックやジョン・フォード、そしてスティーブン・スピルバーグの作品ごとの画面サイズや使用カメラの歴史を紹介しているのもわくわくします。作品の流れを通じてそれぞれの作家の生きざまが見れるようです。
 また、ジョージ・ルーカスの映画技術への貢献が映画界にとって実に大きかったことを改めて感じます。スター・ウォーズの作品より、その収益を使ったデジタル撮影技術、さらに上映館の設備までも進歩させたことが凄いとしか、言いようがない。

 ちなみに、B級SF映画製作者のロジャー・コーマンの”スピルバーグやルーカスが技術的にレベルの高いきわもの映画を作ったことで、私たちの映画の魅力は大きく落ち込んだ”という愚痴には思わず吹き出しました。いやあ、まあ、そういうことですよねえ(笑)。

 以上、ほかにもたくさん紹介したいことはありますが、実に楽しい読み物なので、映画ファンなら是非お読みください。

 

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