ゴールデンカムイ
漫画原作を実写化した映画「ゴールデンカムイ」について、私自身は原作漫画を全く知らなかったのですが、娘が原作漫画の大ファンだったなので、久しぶりに親子二人で観に行きました。なお、女房殿はすぐに寝てしまうのでお留守番です(笑)。
さて、この映画は、youtubeなどでは”原作へのリスペクトが高く、キャストや各エピソードの再現度が凄まじいと原作ファンに好評なのです。まあ、大体、これまでの漫画実写映画は、原作に興味もない有名監督が好き勝手に改変して原作ファンの大顰蹙を買って自滅するというパターンが多かったですからねえ。いいかげん映画会社も学んだのでしょうか。
調べてみると、漫画の実写化で例外的に評価の高い「キングダム」と同じ製作プロダクションであり、主演も同じ山崎賢人さんです。すっかり漫画映画化の立役者です。縁起を担いだのかな(笑)?。
当初、主人公”不死身の杉元”を演じるには、体格的に線が細いと原作ファンから不評だったようですが、いざ公開すると一転して大好評なのです。どうやらかなり体を鍛えて作ったらしい。実際、銭湯で傷だらけの裸を見せるシーンがあるのですが、筋肉もりもりに仕上げています。その役者根性は立派です。「キングダム」の大沢たかおに刺激を受けたのではとも思います。それに加えて、漫画原作を読むと、その前歴や人となりの設定などから元からキャスティングは正解ではなかったかともと思えます。
内容は、日露戦争で”不死身の杉元”と呼ばれた主人公がアイヌの少女と一緒に、黄金の隠し場所の地図を体に入れ墨した24人の脱走死刑囚を追うなかで、クーデターをもくろむ陸軍最強と言われた第七師団や元新撰組の土方歳三らのグループとの三つ巴の戦いをするというストーリーです。原作漫画は、全31巻で完結しているのですが、今回の映画の内容は、3巻、4巻ぐらいまでのエピソードで、まあ、”序章”と言うところです。
まず、冒頭の日露戦争の203高地の突撃シーンがなかなか見ごたえがあります。犬ぞりシーンなども手に汗を握りました。「キングダム」もそうでしたが、最近の邦画アクションのレベルは確実にあがっており、本場ハリウッドと遜色はないと思えます。いつから邦画のアクションが変わったのか、どなたか詳しい方がいれば教えてほしいものです。この映画の久保茂昭監督は、ミュージック・ビデオで有名で映画としては「HiGH&LOW」シリーズで名を成した人のようで、大したものです、感心しました。
撮影には北海道ロケを敢行し、その美しい大自然と大規模(に見える映像)なセット等には、本当に日本映画らしからぬスケール感があって見応えがあります。明治時代の小樽の街やアイヌの部落のリアル感には圧倒されます。また、パンフレットによると衣装や小道具も本物志向で入念な準備等を行っており、とにかく”コスプレに見えないように”配慮したといいます。そのおかげで、本当にリアルな明治の北海道の映像が出来上がっています。最近の女性向けのコスプレ映画の製作陣は”爪の垢”でも飲んでほしいものです。
そして、極めつけは、登場人物の原作イメージの忠実な再現です。実は、原作ファンの娘はコミック全巻を持っており、映画鑑賞後、娘から借りて一気に読んだのですが、漫画を読んでいる最中に先ほど映画でみた俳優達の姿やシーンが被ります。よく言われるコマから抜け出てきたような、ということの逆でした。まあ、それだけよく実写化できている証左です。
俳優では、最大の敵である第七旅団のリーダーである鶴見中尉を演じた玉木宏が目立ちます。戦争で吹き飛ばされた頭蓋骨の前頭部を覆うホーロー製の額当てなどの不気味な姿をリアルに再現した特殊メイクで、漫画の動きを実際の演技で実体化したその怪演はアカデミー賞ものです。その他の登場人物も、双子の兄弟をはじめ、実によく原作の雰囲気を伝えています。ここでは、そのうち一人だけ”脱獄王”を演じた矢本悠馬を特筆します。実際の漫画の”絵”とは役者の”見た目”は若干違いますが、役者の動きやセリフの中で生き生きとリアルにイメージが再現されます。ふんどし一丁で牢屋の窓からの侵入するシーンは絶品です。そう、これが本当の実写化というモノですねえ。これはキャスティングの見事さと俳優の熱演を褒めたいですねえ。
以上、実に面白い映画でした。最後に、続編への登場が予定される人物たちの映像も流れます。はやく続編を決定してほしいものです。しかし、映画鑑賞後、原作漫画を読んだと言いましたが、とにかく登場する人物のキャラクターが”とんでもなさ”すぎます。映画「サイコ」や「羊たちの沈黙」ばりの変態野郎や女郎たちがわんさか出て来ます。予算とは別の意味でとても映像化できないのではないかとも思えます。どう料理するか、監督や製作陣の原作愛に期待しましょう。
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