シン・ゴジラ/品川くん
「ゴジラ-1.0」の興行収入がこの週末で海外分を含めて100億円を超えたらしい。「シン・ゴジラ」が国内80億円を達成したものの、海外ではわずか100万ドルという結果だったので、この時点で、「シン・ゴジラ」を抜いたことになります。
山崎貴監督おめでとうございます。これで上から目線のアンノ野郎さんに一矢報いたのでしょうか(笑)。
もっとも、「シン・ゴジラ」公開時に、”次のゴジラ映画のハードルが高くなった”と山崎貴監督が絶賛したというエピソードがあったそうですから、今回は相当気合が入ったようですねえ。youtubeの対談では、製作に当たって、シン・ゴジラと”真逆”にしたと言います。例えば、シンが”官”ならマイナスは”民”、シンが”陸”ならマイナスは”海”、シンが”ドラマ排除”ならマイナスは”べたべたドラマ”というようにして同じ土俵で戦わないようにしたそうです。
そして、「3丁目の夕日」の戦後風景の再現、「永遠の0」や「アルキメデスの大戦」の軍用兵器のリアルな映像表現など自分の手持ちの手札(得意技)を全部投入したというのです。まさに山崎貴監督のこれまでの集大成と言われる所以です。
さらに、東宝のタブー(?)である初代ゴジラが登場する時代より前の時代に設定したというアイディアも秀逸です。水爆実験によるゴジラ誕生ではなく、その前に行われた原爆実験の影響でマイナスゴジラは”水爆怪獣”ではなく”原爆怪獣”として誕生するのです。加えて、その時期は、連合国に接収された戦艦などをゴジラ戦に投入できるというギリギリの実に絶妙な年なのです。もっとも、史実では1年ほどのズレ(高尾は廃棄済み)があるようですが、まあ誤差の範囲ですねえ(笑)。
ただ、この”時代設定”のアイディア以外は、よくよく考えてみれば、物語自体良くも悪くもこれまでのゴジラの良いとこ取りの集大成、延長線上という印象が強く、戦艦等との戦いのVFXの見事さには驚嘆しますが、革新性という観点では「シン・ゴジラ」の方に軍配が上がります。冒頭の第2形態の”鎌田くん”、第3形態の”品川くん”、さらには第4形態の”鎌倉さん”とゴジラが進化するという発想には本当にあっと驚かされました。文字通りの”変態”ぶりに恐れ入ったのです。
しかも、放射熱線を吐きだす文楽の鬼面のように変形した顔、さらには尻尾の先はいうまでもなく、身体中からまるでハリネズミように放射熱線を放射して、東京中を焼き尽くしたあの強烈な映像は何年経っても忘れられません。
さすがゴジラにそれほど思い入れ等無かった(?)庵野総監督です、完全に”エヴァンゲリオン”節全開の「シン・ゴジラ」で従来のゴジラ映画の伝統をぶち壊してくれました。平成ゴジラの科学理論付けストーリーの詰まらなさをぶった切ったのは痛快でした。
そして、冒頭の山崎貴監督の感想のように、その後ゴジラは日本では誰も作れなくなって、結局ハリウッドに身売りしたほどの”傑作”なのです。
こうした違いが、80億円の「シン・ゴジラ」に比べて「ゴジラ-0.1」が国内で45億円の収益(海外では4000万ドル)にとどまっている理由なのでしょう、きっと。思えば、やっぱり「シン・ゴジラ」は歴史的な名作なのです。
一方で、その後、庵野総監督が思い入れのあるウルトラマンや仮面ライダーを使った”シン”映画のなんと面白くないことか(笑)。人間、あんまり入れ込み過ぎるとロクなことはありませんね(笑)。
それでは、画期的な名作「シン・ゴジラ」に敬意を表して、エクスプラス社の第3形態の”品川くん”(品川に上陸した所以の愛称です)のフィギュアをご紹介します。このモデルは高さ28cm、頭から尾先まで53cmもある大型のフィギュアであり、オークションなどでは最低でも”片手は必要”なほどのプレミアがついており、長年入手できなかったものですが、今回、マイナスゴジラのヒットのせいか、”箱なし””破損有り”のジャンク品が比較的安価に複数出品され、もっとも損傷の少ないモデル(背びれの先端2か所の欠損のみ)を運よく入手できました。
いやあ、これも「ゴジラ-1.0」のヒットのおかげでしょうかねえ、ありがとうございます。今後のさらなる収益の拡大をお祈りしています。
でも、1月公開の”マイナスカラー版”は大丈夫かなあ。初代へのオマージュの発想は面白いものの、モノクロ映画では色をそれなりに感じさせる設計が必要と思われますが、予告編を見る限り、そのまんまのベタな陰影でしたねえ。まあ、ハリウッドに認められたCG技術をもって、これが興収増へのテコ入れになることを期待しています。
« 模型用塗装ブースのリニューアル | トップページ | CD顛末記 »
コメント