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2023年7月26日 (水)

東宝時代劇映画桜花爛漫

71q6i7axwfl  先日「東宝時代劇映画桜花爛漫」という1945年から1971年までの東宝の時代劇映画を解説した書籍が出版されました。大映時代劇と言うのはよく聞きますが、東宝はどちらかというとサラリーマン物や特撮物がメインのような会社であり、やや意外な気もしましたが、考えてみれば、黒澤明時代劇は東宝で製作あるいは公開されていますので、そういう意味では日本の最高峰の時代劇作品を有する映画会社ということになります。

 そして、この本が戦後から1971年までの期間の作品に絞っているのは、どうやら70年以降の劇画を原作とする「子連れ狼」などの作品は、それまでの東宝時代劇とは明らかに作風が異なるという判断だそうです。まあ、劇画映画ブームは時代劇が衰退した後に出現した作品群ですから、一言で言えば、時代が違うということなのでしょうねえ。私としては「子連れ狼」や東宝公開の座頭市作品も好きなので、できたら併せて掲載してほしかったなあ。でも、やっぱり大映の監督の作品はまずいか(笑)。それに、後で述べますが、時代劇の巨匠の最後の2つの作品で”一つの時代”を閉めるというのはグッドアイデアです(笑)。

 さて、この本では、この27年間の時代劇映画(風刺や喜劇等は除外)として59の映画を取り上げています。内訳をみると、稲垣浩監督作品がなんと26作、黒澤明監督が8作、岡本喜八監督が5作、谷口千吉監督が3作、あとは1~2作の監督が15人です。そのなかには、小林正樹、伊藤大輔、内田吐夢、五社英雄など巨匠や有名監督の名もありますが、ほとんどは東宝所属の職人監督たちの作品でした。

 つまり、黒澤明監督は別格として、東宝時代劇の半数近くが稲垣浩監督作品なのです。稲垣浩監督と言えば、三船敏郎主演の宮本武蔵」でアカデミー名誉賞(現在は国際長編映画賞)を受賞しています。この評価のおかげでしょうか、稲垣監督は時代劇の巨匠として次々と時代劇映画を生み出しています。「戦国無頼」、「柳生武芸帖」、「ある剣豪の生涯」、「暴れ豪右衛門」、「風林火山」、「待ち伏せ」などがあります。最後の2作品を除いてはVHSもDVDもなく、私の若い頃は幻の作品でした。最近になってやっとDVD化されて観ることができました。

 その鑑賞結果というと、どうも作品の出来に”?マーク”がつくのです。若い頃から観たかった作品なのですが、どの作品も正直あんまり面白くありません。まあ、リアルタイムで観た彼の晩年の作品、三船敏郎、石原裕次郎、中村錦之助、勝新太郎という大スターが集まった「待ち伏せ」が本当につまらなかったのは承知していますが、往年の有名な作品も、セットなどはやたら立派ですが、内容があまりにもお粗末でした。本書の解説でも、”演出が時々冗長になる癖(?)”などと控えめに(笑)批判しています。こうなると、黒澤時代劇を除いて、東宝時代劇のあまり高くない評価の一端を担っているのは間違いないですねえ。それに肝心な「宮本武蔵」も後年内田吐夢の宮本武蔵5部作で影が薄くなりました。このことは本書でもさりげなく指摘しています。でも、東宝は最後まで監督として重用したのですが、何故なのかな?黒澤明とは対立した感のある東宝プロデューサーたちとの人間関係が良かったのかな? 不思議ですねえ。

 しかしながら、本書は、私のご贔屓の監督さん、例えば岡本喜八監督の「戦国野郎」「大菩薩峠」「斬る」、映画原理主義者として中抜きなど決してしない演出姿勢を貫き、過去に独立プロダクションを倒産に追い込んだ実績(三船プロも大変だったらしい)のある巨匠小林正樹監督の「上意討ち」、フジテレビとの提携で鳴り物入りの五社英雄作品「御用金」などの詳しい作品紹介があって、実に楽しい読み物になっています。

 そして、最後は、前述したとおり、「飢餓海峡」の上映時間問題で東映を退社した時代劇の巨匠内田吐夢監督が、自身の代表作中村錦之助版宮本武蔵5部作の番外編「真剣勝負」を、巨匠小林正樹監督が俳優座と提携して「いのち・ぼうにふろう」を東宝で公開して時代劇大作が終焉したと結んでいます。実際、この2作品はリアルタイムで観ていましたが、あんまり面白くはありませんでした。特に「いのち・ぼうにふろう」は、「切腹」や「上意討ち」の小林正樹監督作品でモノクロの映像や主演の仲代達矢のニヒルさが実にカッコ良かった(お気入りのキャラクター)ものの、勝新太郎のゲスト出演という期待があまりに大きかったせいか、活劇としては拍子抜けでした。カツシンも他社にせっかく出演したらなら暴れてほしかった(笑)。

 以上、いろいろ不満も書きましたが、総じて実に楽しい書籍でした。通常あまり話題にされない作品についても丁寧な解説がなされているほか、「柳生武芸帖」で”何故、鶴田浩二が三船敏郎よりタイトル順が先なのか?”の理由が判明するなど、面白い裏話も散りばめられており、大変満足しています。時代劇映画に興味のある方は是非ご覧ください。お勧めの一冊です。
 なお、このブログでは、黒澤明作品について、特にこの時期の黒澤時代劇はアクション活劇の頂点と言ってよい程の作品ばかりですが、あえて記述を割愛しておりますので、よろしくご理解お願いします。黒澤時代劇を未見の若い方は是非ご覧ください。必見ですゾ。

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