インディ・ジョーンズと運命のダイヤル
冒険アクション映画の金字塔のシリーズ最新作「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」には、あまり期待していませんでした。なにしろ、主演のハリソン・フォードが80歳と高齢であり、しかも、監督はスティーヴン・スピルバーグではないのですから・・。でも、第2作目に登場する昆虫の標本(当ブログ2022.10.15参照)を買ってしまったほどのお気に入りのシリーズなのです、公開初日の初回上映に劇場に足を運びました(笑)。意外なことに金曜日とはいえ、平日の午前中にもかかわらず場内は結構観客で埋まっていました。まあ、ほとんどが私と似たり寄ったりのじいさん(笑)が多かったのは、多分、若い頃リアルタイムで映画を楽しんだ往年の娯楽アクション映画ファンなのでしょう。なんか上映前に館内の一体感が盛り上がったような気がしました(笑)。
さて、肝心な出来映えなのですが、うれしいことに予想外に面白かったのです。
まずは冒頭、若き日のハリソン・フォードがナチスドイツ軍と”ロンギヌスの槍”を巡ってのアクションシーンに感激しました。なにしろ、若い頃のハリソン・フォードが出ずっぱりで、しかも疾走する軍用列車の上で派手な格闘まで行うのですが、ほとんど違和感がないのです。CG技術によりあれだけ長い時間の撮影が可能なら、もう全編そのままの若い姿でやってほしいとまで思いましたねえ。
ちなみに、パンフレットによると、40年前に撮影してルーカス・フィルムに保管してあった膨大なフィルムの中からAI技術を活用して撮影素材を選んだそうです。さすが数々の映画技術を革新してきたルーカス・フィルムだけのことはあります。でも、そのうち、AIにより脚本家だけでなく俳優も不要になる時代が目の前に来ていることを実感します。
本編のお話は、その25年後、月面着陸に成功した後の1969年のアメリカが最初の舞台となります。晴れやかで未来への希望にあふれる宇宙飛行士たちを称えるパレードの日がインディの70歳で大学教授を引退する日なのですが、その対比が実に見事ですし、さらに息子(2008年の4作目に登場)を戦争でなくし妻とも離婚して、すっかり頑なになってしまった老人の姿には、かつての栄光や功績はみる影もありません。まさに”終わった人”なのです。いやあ、身につまされます(笑)。
そして、そこに登場するのが、友人の大学教授の娘でインディが名付け親となったヘレナ・ショウです。フィービー・ウォーラー=ブリッジという名前のやけに背の高そうな女優さんが演じます。最初は、いかにも典型的なヒロインらしく優しげなのですが、インディを騙して、今回のお宝アルキメデスが発明したという”アンティキティラ”を奪い取るのです。彼女は、インディを手玉に取る一方、マフィアの息子に結婚詐欺を行うようなとんでもないダーティ・ヒロインなのです。個人的には彼女にはあまり感情移入ができませんでしたねえ、後半までは(笑)。
それにしても、こんな詐欺師的なヒロインは見たことない(面白い作品限定で)と思っていたら、パンフレットによるとプレストン・スタージェス監督の1941年公開「レディ・イブ」のヒロインがモデルとか。言われてみれば、ハリウッド黄金期のスクリューボール・コメディのヒロインは、とんでもない性格の設定が多かったような気がします。うん、すっかり忘れていました。本当に”温故知新”が大事なのですねえ。でも、昔はセリフが中心なのであんなに女性が行動的で乱暴(笑)ではありませんでした。そういう意味ではやっぱり世の中は確実に進歩しているのだ。
また、今回の悪役も私のご贔屓、マッツ・ミケルセンが演じています。役柄は、ドイツナチスでロケットを開発し、戦後はアメリカのNASAで活躍したブラウン博士がモデルだそうです。やっぱり戦争中のナチス協力者と言うのはどうあっても評判が悪いようですねえ。
映画では、タイムトラベルが可能と言われる”アンティキィティラ”の発見に執念を燃やしているのですが、その目的が一ひねりしてあり実に面白かった。しかも、このタイムトラベルを実現させる方法がとんでもなく秀逸でした。良く考え出したものです。「ザ・フラッシュ」は見習うべきでした。それにしても、”アンティキィティラ”の役割が要なのですが、ラストは、本当に懐かしのTVドラマ「タイムトンネル」を彷彿させてくれて懐かしさいっぱいです。ちなみに、今回の作品は、ヒーローの老年期ということもあって、”時間”が初めからテーマだった(パンフレットの記載)といいます。監督に「ローガン」で老いたミュータントの物語を監督したジェームス・マンゴールドを選んだ製作陣の慧眼だったのかもしれません。
このタイムトラベルした時点で評価は”二重丸”でしたが、さらに、最後の”一発”で”三重丸”と言う評価になりました。いや、驚きましたネ(笑)。ちなみに80歳のアクションは今時の荒唐無稽な大作アクション作品とは違って派手さは無いですが、ノスタルジックな味わいがあって及第点(〇)と思います。
余談ですが、シリーズお楽しみである”大量の有害生物”は、巨大ウナギとムカデでした。・・ここは少し期待はずれでしたが、まあ、アルキメデスの腕時計のオチに敬意を表して大目に見ましょう(笑)。あと、アントニオ・バンデラスの扱いが可哀想でしたねえ、最近は役に恵まれないのかな?。
なお、今回購入したパンフレットには、結構撮影の裏話がしっかり記載されていて良かったのですが、驚くことに、日本語のタイトル表示がどこにもありません(多分)。英語のままの原題のみが記されています。さらに表紙も最近流行なのか、スタイリッシュすぎで何のパンプレットなのかが一見ではよく分かりません。これは日本の営業サイドの弱体化なのでしょうか、なんか少し心配になります。面白い映画なのでヒットすればよいのですが・・・。応援(笑)としてチラシ(両面)を載せましたのでご覧ください。
未見の皆さん、80歳のハリソン・フォードがアクションに体を張って頑張っていますし、90歳のジョン・ウィリアムズの音楽も現役です。特に最近はあまり劇場に行っていないというお年寄りの方、”いくつになっても冒険はできる”という気持ち(笑)で、是非、みんなで劇場に足を運んで応援しましょう。
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