ザ・フラッシュ
最近のアメコミ映画はマーベル、DCスタジオ双方とも軒並み興行収入が悪いようです。まあ、私が最近見た「アントマン&ワスプ」、「ブラックアダム」、「ブラックパンサー」、「ソー/ラブ&サンダー」など全く面白くなかったのです。特に、DC作品は、主演俳優がころころ変わるなど統一感が無くて、ファンの支持を失っているようです。どうやら「ザ・フラッシュ」は、作品そのものの評価は一定高いものの、そういう意味で興行成績は世界的に伸び悩んでいるようです。一説には製作費を回収できない”大爆死”という状況らしいのです。
ストーリーは、父親の妻殺しの冤罪を晴らすため、過去に遡って母親を救おうとする俊足ヒーロー”フラッシュ”の物語です。予告編によると、ティム・バートン監督の「バットマン」で初めて大人向けのバットマンを演じたマイケル・キートンが再演するということで、私としては劇場に足を運ばざるを得ませんでした。もっとも、あの悪人顔が癖になるヘンリー・カヴィルが出演しない(彼はスーパーマン役を下ろされたようです)のが少し気に入りませんが、代わりに若いスーパーガールが登場するようでそこは期待していました(笑)。
ただ、どんな方法で過去に遡るのか?加えて、アメコミ界隈で現在大流行中の”マルチバース”(パラレルワールド)世界が舞台となるようで、安易な設定になるのではないかと危惧していました。
それに、主演のエズラ・ミラーが住居侵入や窃盗、暴行などの不祥事を引き起こしており、とにかく印象が悪いですわねえ。でも、意外に自閉症的な主人公の役柄には似合っていたので、鑑賞中はそれほど気になりませんでした。まあ、役者の良しあしに私生活は関係ありません。特に”不倫”などは関係ないですねえ。・・これはまた違う話でした(笑)。
さて、映画の感想ですが、とにかくCGをはじめ金がかかっていることは分かります。冒頭のギャングとバットマンモービルのカー・アクションは迫力もあり、見ごたえがあります。ただ、崩壊する高層ビルから何人もの赤ん坊が放り出されるシーンは、CGであり、しかも必ず助けられる結末と分かっていても、あんまり気分が良いものではありません。日本人の感覚では”やりすぎで悪趣味”と思うのはおかしいのかな?
そして、過去へ遡る方法は、やっぱりというか、予想どおりというか、ただひたすら超高速で走って時空を超えるという荒業でしたが、映像表現が凝っていましたので、クリストファー・リーブ主演の「スーパーマン」のように地球の自転を逆回転にするというドン引き技ではなかったのが救いでした。
さらに、期待の”パラレルワールド”に登場する人物達には驚きました。現実世界では主人公フラッシュと「ジャスティス・リーグ」で共演した現バットマンのベン・アフレック、ワンダー・ウーマンのガル・ガドット、そしてヘンリー・カヴェルのスーパーマンもアクアマンも意外な形で登場します。しかし、今回の異世界には、スーパーマンが初代俳優から次々と登場し、さらには、実際の映画製作が中止となった某有名俳優までスーパーマンの姿で現れます。いくらなんでも、これはやりすぎです。第一、スーツが似合っていない(笑)。ついでにいうと、バットマン役者も集合します。もっとも、ダークナイト・シリーズのクリスチャン・ベールは登場しません。多分いまや巨匠のクリストファー・ノーラン監督には了承が得られなかったのでしょう(笑)。
とにかく、過去作品の主演者をCG製も含めかき集めて出演させています。多分、これまでのシリーズの主演者のオールスターをやりたかったのでしょうが、「スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム」のような衝撃はありません。なにしろ一人を除いて本編物語にかかわらない単なる顔見世程度にとどまっており、完全な二番煎じなのです。
そして、この映画でも最も残念だったのがラストでした。主人公の馬鹿さ加減はともかくも、タイムパラックスを解消しようと悪戦苦闘した結果があのラストでは、カタルシスどころか、一つのパラレルワールドを滅亡に導くという最悪のシナリオです。後味はひどく悪いですねえ。製作陣は、なんとも感じなかったのでしょうか? 冒頭の赤ん坊の扱いと同じようなデリカシーの無さを感じます。
一方で、生意気で計算高そうな黒人のヒロイン、ラテン系の弱すぎるスーパーガールなど、ポリコレには十分な気を使っています。しかし、ここでも、観客に共感できる人物設定にはなっておらず、単に有色人種を配役しているだけのような気がします。なんか、大事なところが抜かっているのです。まあ、この作品に限らず、いまのハリウッド(特にディズニー)はなんかおかしいですねえ。いや、アメリカ全体の混迷を象徴しているような気もしますが、せめて娯楽映画は心から楽しめるものにしてほしいものです。どうかよろしくお願いします(笑)。
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