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2023年2月28日 (火)

アメリカ映画に見る黒人ステレオタイプ

 今更ながらですが、アマゾン通販では、地方の大学関係者の出版物も入手できるので便利です。「アメリカ映画に見る黒人ステレオタイプ」も、富山大学出版会が発行した富山大学の人文学教授の著作でした。アメリカの黒人差別のルーツなどを映画の中から検証しているのですが、取り上げた作品が面白そうなので、ポチっと買ってしまいました。なにしろ、著者が現役の大学教授なので安心して読ませてもらいました。最近の大学ではこういった視点からの授業もあるようで、羨ましい限りです。

51gogfc6il_sy344_bo1204203200_  さて、この本によると、白人から見た黒人のタイプには、①トム、②マミー、③クーン等、④ムラトー、⑤バックの類型があるそうです。例えば、①のトムというのは、言うまでもなくアメリカ文学の名作「アンクルトムの小屋」の現状に満足している人の良いトムじいさんのことであり、「招かれざる客」の名優シドニー・ポワチエには黒人側からすれば現在の”トム”という見方があったのは有名なお話です。
 ②のマミーは、「風とともに去りぬ」に登場する太った乳母が有名で、自分の子供より主人の子を優先するという、いずれも白人に都合の良い存在だそうです。
 ③のクーン等とは、SFファンタジー映画「フィフスエレメント」に出てくる奇抜な衣装を着て口先だけの無責任なタレントのような、おバカキャラだそうです。つまり白人が優越感をもつことのできるタイプなのです。
 そして、④のムラトーがより悲惨な立場なのですが、奴隷制度の中の混血児で、白人男性を性的に誘惑する悪い黒人女のことだそうです。陵辱した白人男は悪くなくて誘惑した黒人女が悪いという身勝手な理屈です。黒人で初めてアカデミー主演女優賞を獲ったハル・ベリーの演技に批判があるのは、まさにこの”ムラトー”そのものというわけなのです。
 最後の⑤バックというのは、身体的にも性的にも白人男性を圧倒する黒人男性なのですが、映画ではラストに身を亡ぼすというパターンだそうです。もっとも一時期はブラック・ヒーロー映画のブームもありましたが、すぐに消えました・・・。

 こうした黒人のステレオタイプは、南北戦争後、奴隷解放を行った直後から、黒人に復讐されるかもしれないという白人側の恐怖、妄想から、映画「国民の創生」で生まれ、白人が黒塗りで演じたおバカキャラが登場するテレビ番組を通じて、アメリカ社会に静かに深く浸透していったといいます。
 その例として、挙げるのが「スター・ウォ-ズ」なのですから、少し笑いました。第1作(3部)では、猿人のチューバッカがトムであり、第4作(1部)のおバカキャラのジャージャーなんとかのカエル男がまさにクーンだというのです。多分ジョージ・ルーカスは無意識にそうしたキャラを使ったのだろう(もっともこのキャラは不人気で安心してください。)といい、無残に殺される宇宙人を演じるのは総じて黒人系俳優で、白人俳優役は実際の死ぬシーンを映すことは少ないというのも、ハリウッドSF映画の常識だそうです。ホントかどうか、興味にある方は是非お確かめください。

 それにしても、この本を読むとアメリカ社会の黒人差別は本当に酷いものと改めて感じます。しかも、奴隷解放直後から、黒人差別を助長するプロパガンダが行われ、隔離政策は無くなっても、依然として現在も差別は続いているのです。昔の映画では遠い未来の筈だった黒人大統領が出現(起こることのない未来という裏設定)しても現実社会はまだまだです。突然黒人というだけで殺されるかもしれないアメリカ社会は怖いですねえ。

 ところで、以前から私の疑問だった「ブラックパンサー」への高い評価は、どうやら原作漫画にあった伝統的なトムやマミー、クーンなどのイメージを覆したキャラクターの設定だったようです。そりゃ、差別の実態も知らないぬるま湯社会の日本人にはわかりませんわねえ。もっとも、青人種の「アバター」への高い評価はやっぱりよく分かりません。根底には有色人差別、白人の傲慢さがにじみ出ているのように感じるのですが、気のせいですか?
 ちなみに、直近の「スターウォーズ」では、主役級の黒人を特殊メイクなしで登場させたりしましたが、全然面白くなかった・・・これはまた別の話ですねえ(笑)。まあ、ポリコレ的人種平等主義は勘弁してほしい。なによりその物語性からキャスティングをしてほしいものです。

 

2023年2月23日 (木)

RRR

 初めて劇場でインド映画を観ました。いま大ヒット中の「RRR(アールアールアール)」です。テレビCMで観たトラなどの猛獣と一緒に暴れ回る二人の男の予告編が気に入ったのです。結構、レビューなども評判も良いので、痛快なアクション映画として足を運びました。

Img_20230223_0001  お話は、1920年代、イギリスの苛烈な植民地支配にあえぐインドで、僅か硬貨2枚で連れ去られた少女を助けようとする森の民のビームと英国政府に仕える警察官ラーマの2人の男の物語です。

 開幕早々、少女を連れ去る総督の妻、インド人の命には弾丸1発の価値もないと撲殺させる総督、この2人を通じて、当時のイギリスの植民地支配のひどさ、人種差別意識に基づく白人の傲慢さと残虐さが見事に表現されています。特に、あの妻役の白人女の憎たらしさは強烈でした。

 この作品は、神話を題材にした、いわば2人のヒーロー物語なのですが、圧政に苦しむ群衆が押し寄せる中、警察官のラーマが無理難題な命令を実行するために、単身で暴徒の中に飛び込むシーンには問答無用で圧倒されました。その群衆の人数の多さ、延々と続く乱闘の力技など、いやはやCG製のアメコミヒーローとはまったく次元が違うド迫力です。往年の黒澤明作品をも上回るとさえ思いました。いやあ、これが活劇です。お見事でした。
 結果、このシーンで圧倒されてしまい、その後の突飛であまりなご都合主義のストーリーなども全く気になりません(笑)。二人が出会い、親友になり、そして総督邸襲撃時に、お互いの立場が分かって戦うことになる。このあたりまでが前半です。
 この映画は3時間の長丁場であり、後半は、出世を目指す警察官ラーマの過酷な生い立ちやその秘めた目的が描かれることになります。そして、その後も、予想を超える怒涛の展開(肩車殺陣など誰が思いつく?)が続きます。是非、劇場でご覧ください。とにかく、二人の男の神がかった(?)活躍が楽しめます。加えて、ラーマの許嫁のシータ役の女優さんが美人でした(笑)。

 エンドロールにはインド映画の定番の出演者によるミュージカルがあります。もっとも、劇中の公開むち打ち刑での独唱はやりすぎかな?いや、群衆を動かすのは歌なのです(笑)。これこそインド映画の神髄かも知れません。未見の方は是非劇場でご確認ください。

2023年2月19日 (日)

THE FIRST SLAM DUNK

 前回、予告したように映画「THE FIRST SLAM DUNK」の感想です。
 事前情報のとおり、ストーリーは連載漫画のクライマックスというべき高校バスケ界の絶対王者”山王”との試合を描いたものでした。もっとも、冒頭の沖縄での”りょーちん”の幼い頃のエピソードはなかなか重いものがあって、原作漫画の女マネージャーに一目ぼれのナンパ男”りょーちん”とはいささかイメージが合わない気がします。

 今回の映画化は、バスケ経験者の原作者がバスケットボールのリアルな”山王戦”を描きたいと、脚本、監督まで行い、キャプチャーモ―ションをさらにーコマ一コマ、ドローイングしたというだけあって、試合中の選手のポーズやボールの動きのリアルさは鳥肌が立つほど凄い。その昔「指輪物語」のアニメ化に当たって、実写を絵でなぞって完成させようと試みて失敗したという逸話がありますが、今回、まさに、CG技術を使ってそれを実現させたということになります。
 YouTubeの動画に登場した有名CGアニメーターの解説によれば、モーションキャプチャーの3D作画そのままでは平坦になるので、例えば、横顔の半分をデフォルメして作画するなどして原作劇画の絵を再現し、リアルさと迫力を出しているとのこと。いやあ、監督した漫画家原作者の執念を感じます。別の動画でも、映画プロデューサーがテレビアニメのDVDーBOX以来、20年越しのプロジェクトであり、何本ものテスト版を経て、やっと原作者の了解を得たといいます。もっとも、その後も監督のこだわりと執念のためか完成までにかなりの紆余曲折があったようです。
 ついでにいうと、公開1週間前になってテレビ版の声優全員を交代していたことが判明し、テレビシリーズの(声優)ファンから猛烈な反発があって、YouTubeでも相当批判されていましたねえ。いまの時代、声優の人気は大変なものであることを改めて再認識しました。

 現時点でのこの作品の興行収入は100億円を突破しており、もう東映さんは笑いが止まらないでしょうねえ。評判も公開前とは一変して絶賛の嵐のような状況です。その結果、私も劇場に足を運んだのですが、ひたすらリアルでハードな”山王戦”を楽しみました。原作漫画をうまく料理していますし、本物のバスケットボールの試合を観戦するような画の迫力に、力が入り過ぎたのか、観終われば首が回らなくなりました(笑)。

 これまでの日本のアニメは、その資金もなく、手間を省くためか、一枚の静止画をうまく使った演出などを駆使して迫力を出していましたが、この作品は、そうした裏技が一切ありません。ほぼ実写のような映像で描かれています。そのため、ここぞの時のスローモーションやアップが実に効果的です。この辺が、識者の言う”画期的な技法”なのかもしれません。でもまあ、CGとはいえ、資金も時間も相当にかかるので、マネする人はいるのですかねえ。 
 結果として、この作品はバスケットボールというスポーツの試合をリアルに堪能できる演出で、まさにバスケットボールを愛する原作者が見せたかった熱血スポーツアニメとなりました。

 ただ、観終わってみれば、原作にあったギャグシーンが一切ありません。劇画調から✕顔の漫画絵になるコマなど入る余地が無かったのでしょう。男”桜木花道”が主演でないのですから、まあ当然といえば当然ですが、往年の原作漫画ファンとしては少し不満ですねえ。
 ただ、タイトルに冠した「THE FIRST」のとおり初めてスラムダンクに接する若い人たち向けとすれば、その戦略は大正解でした。一世を風靡した漫画の連載が1990年から1996年ともう1/4世紀も前のことですから、若い人は知らないでしょう。この映画からまた原作を知ってもらったらイイかもしれません。インターハイまでの既存のアニメの売り上げもあるかもしれませんし、スラムダンクの人気も再燃するかもしれません。そう考えると、この映画は大成功だったのでしょう。やっぱり、製作陣の志の高さの違いでしょうか、同じ会社でも、お手軽な実写映画とは雲泥の差になりました(笑)。

2023年2月15日 (水)

ワールドツアー上映「鬼滅の刃」上弦集結そして刀鍛冶の里へ

「鬼滅の刃」とは、ご存じのとおりテレビアニメで原作漫画の人気に火が付き、空前の販売部数をたたき出すとともに、テレビアニメのそのままの続編を「無限列車編」として劇場版アニメを制作して、400億円以上の興行収入をあげて歴代第一位の偉業を達成しています。そして、その続きを「遊郭編」としてテレビアニメで放送しました。

 現在は、4月から新たに続編が「刀鍛冶の里編」としてテレビ放送されるのですが、突然、この2月に”ワールドツアー上映「鬼滅の刃」上弦集結そして刀鍛冶の里へ”と銘打ち、既に放映済の「遊郭編」の10話と最終話の11話、そして、4月からテレビで放送する予定の「刀鍛冶の里編」の第1話を映画で先行上映する試みが実施されました。

 まあ、映像に凝っているせいか、アニメ制作に時間がかかっているので、以前の人気をつなぎとめ、さらに新シリーズへの足掛かりにしようとするプロモーションの一環なのでしょう。しかも単にテレビアニメの3話をつなげただけの作品なので映画製作費用はまったく掛からないのですから製作側からすれば一石二鳥でこんなおいしい話はないのでしょうが、随分観客をなめた話だなと、映画ファンの私などはやや冷ややかに眺めていました。

Img_20230214_0001  ところが、ふたを開ければ、公開直後の金土日の3日間で10億円を超える興行収入を挙げたのです。正直魂消ました。現在2週目にして20億円を突破し、既に製作費20億円をかけた鳴り物入りの東映時代劇の興行収入を追い抜いているのです。短期決戦とはいえ凄い人気ぶりです。
 今回の仕掛け人は笑いが止まらないのでしょうねえ。前回「無限列車編」のそのままの続編を映画化したときも驚きましたが、今回の挑戦にはさらに驚きました。本当に頭の良い仕掛け人が居ますねえ。どこの誰でしょう?どなたか知っている方は教えてください。これは本当に新たなビジネスモデルになります。

 多分これから同じようなことを行う者が続出するでしょうが、今回の成功は、なんといっても「鬼滅の刃」の絶対的な人気があって、しかもテレビアニメ用の映像が映画の大画面で見ても遜色がないほど作り込まれていることが、この破天荒な試みを成功させた大きな要素なのでしょう。

 思えば、映画の「無限列車編」で走る列車の上で戦う鬼の巨大な姿などは大画面でこそ映えるので、劇場で鑑賞した際、”嗚呼、この絵のために映画化したのか”などと思ってしまいました。逆に「遊郭編」でのラスト上弦の鬼とのチャンバラは、ホントに迫力ある絵を描いていたので、テレビ画面を観ながら”これを映画の大画面で見たなら良かったのに”と感じたことを思い出しました。案外、この辺が製作現場からしたら映画化の動機付けなのかもしれません。

 しかも、今回はこれまで謎だった(私、原作漫画を全く見ていませんので)上弦の鬼が”無限城”に集結するエピソードが見所というのも、無残による”下弦の鬼へのパワハラシーン”の再現かと期待も大きくなります。Youtubeなどの感想動画を眺めても、CG映像の凄さなどに好意的な意見が多くあり、やっぱり手抜きのない仕事は大画面で見たくなりました。まあ、ミーハーの私としては、結局4月放送まで待つことはできないのだ。こらえ性もないし、しかも”6本観たら1本ただ”の特典があったので、節操もなく観て来ました(笑)。感想としては、やっぱりきちんとした丁寧な作画とCG技術は凄いなあと感心したことにつきます。

 ちなみに、写真の冊子は、入場時に無料で配布されたものです。20ページぐらいの劇場パンフレットのような仕様です。なんか随分得した気分になりました。うん、やっぱり今回の仕掛け人は凄腕ですねえ、観客の心をつかむのが実に上手いです。脱帽です。

 なお、余談ですが、こうしたアニメ技術については、現在公開中の「スラムダンク」が画期的と噂されてます。実は、私この原作漫画の大ファンでして、テレビアニメは見ていないのですが、連載当時はリアルタイムで愛読していましたし、単行本も揃っています。しかも、今回の映画のストーリーが最高の山場となった”山王戦”と言うのですから、どうにも、観たくて仕方がなくなりました。まあ、最近は動画配信でアニメ作品も数多く見ている(余談ですが、異世界モノでエバラなど食品メーカーと連携して実際の商品を劇中に登場させるアニメには感心しました。)ので、実写作品との”心の垣根”も随分低くなりました・・・。「スラムダンク」の感想をこうご期待ください。

2023年2月11日 (土)

忠治旅日記

 サイレント映画の金字塔と評される1927年(昭和2年)に製作された「忠治旅日記」は、オリジナルネガやフィルムが消失し、長らく「幻の映画」となっていましたが、1991年12月に広島県の民家から発見された35mmフィルムを基に2011年東京国立近代美術館フィルムセンターでデジタル復元したものが今回国立映画アーカイブの協力によりブルーレイとして発売されました。

61hdylezfl_ac_sx342_  この作品は、1959年キネマ旬報社の「日本映画60年を代表する最高作品ベストテン」で第1位を取り、有名な映画評論家の佐藤忠男氏は、ソ連映画史の「戦艦ポチョムキン」、アメリカ映画史の「イントレランス」に匹敵する地位を占めるなどと絶賛のコメントをしているそうです。
 つまり、私の子供の頃から幻の名作として名高く、一度は見たかった作品だったのです。
 もっとも、映画の草創期に製作されたものであり、監督の伊藤大輔氏は”移動大好き”と言われるほどの移動撮影の巧みな人らしく、この作品でも、移動撮影、表現主義的技法、激しい立ち回り、字幕の巧妙な使用などが従来にない時代劇と高く評価されているのです。まあ、歌舞伎の様式美の延長線上の作品の多い当時の映画の中では、高い評価だったのかもしれません。もっとも、私には「イントレランス」のブルーレイを観たものの、あまりの退屈さに途中で中断した悲しい経験があり、現在の作品に慣れた”私の鑑賞眼”には歴史的な価値はほぼ無意味であり、正直、見たまま、感じたまましか評価できないのです。脳内変換は無理(笑)なのだ。

 今回の「忠治旅日記」の復元は全編111分で、第1部「甲州殺陣篇」第2部「信州血笑篇」第3部「御用篇」のうち、第2部の一部と第3部ということです。まず驚いたのは、オリジナル染色の赤と青の画面です。実に観難いのですが、当時の観客は一種のカラー版として喜んでいたのでしょうかねえ、全くわかりません。そして、”表現主義的技法”なのでしょうか、役者の演技が実に大げさです。”アヤヤ、オヨヨ”おじさんこと大河内傳次郎(バロン吉元の漫画「どん亀野郎」の表現)も若いのですが、歌舞伎の”睨み”の見得をこれでもかと連発します。この辺も歌舞伎の素養のないせいかなかなか馴染めません。リアルで迫力ある殺陣というのもただただ激しく動くだけで、その場で飛び上がる歌舞伎特有の殺陣を小技的に入れて来ます。まだまだ歌舞伎の呪縛が及んでいるのかな?・・・チャンバラ映画史的には黒澤明の「用心棒」や「椿三十郎」まで続くのかもしれません(笑)。

 さらに驚いたのが、忠治の妻お品の大きなカツラです。自頭が大きいのか、良くわかりませんが、とにかくデカいのです。昔はこんな日本髪があったのかなあと、正直疑問でした。造り酒屋の大きな桶の干場も驚きです。多分、ロケなのでしょうが、昔はああいう風景が普通に見ることができたのでしょうねえ。一方、場所が上州のせいか、松林のある街道筋などの現在では全く見ることのできない景色がなかったのは残念でした。

 しかし、一番驚いたのがストーリーなのです。主人公の国定忠治は途中で中風のため半身が不随になり、戸板で手下に運ばれ、逃げ回るという展開なのです。いやあ、これには驚嘆しました。忠治は白目で睨むだけの演技に終始します。いやはや驚きのあまり、倍速にもせず、最後まで見てしまいました(笑)。ほぼ100年経過しても、最後まで観ることができるという意味では、これはやはり”名作”なのかもしれません。まあ、とにかく長年気になっていた作品が観ることができたことに感謝しましょう。国立フィルムセンター様ありがとうございます。あとできれば、忠治が落ち目でなく元気な第1部「甲州殺陣篇」を観てみたいと思うのは欲張りでしょうか。もっとも、次の復元では、オリジナル染色ではなく普通のモノクロでお願いします(笑)。

2023年2月10日 (金)

アメリカ流転の1950ー2010s

 祥伝社発売の単行本「アメリカ流転の1950ー2010s」は、アメリカの世相を当時公開された映画の視点から”ばっさり”と切り取った、実に面白い読み物でした。内容は、7章に分かれており、理想の50s、闘争の60s、幻想の70s、葛藤の80s、喪失の90s、不信の2000s、分断の10sと区切り、それぞれ「赤い河」、「ローマの休日」、「アラバマ物語」、「スター・ウォーズ」、「愛と青春の旅だち」、「ミッション・インポッシブル」、「ブラックホーク・ダウン」、「アメリカン・スナイパー」など、誰でも知っているような作品、しかも単なる娯楽映画のような作品まで含めて、その当時の社会情勢や大衆の心理を”ざっくり”と説明しています。

51byfbfmdl_sy291_bo1204203200_ql40_ml2_  この本で取り上げた作品は、いずれも大ヒットした映画であり、それは同時に当時の社会を反映し、大衆の心をつかんだ作品ということが言え、それゆえに、その作品から時代が求めたものが良くわかるという論法です。まあ、単なるSF活劇などは、少し深読みすぎではないか、という気も若干しますが、とにかくアメリカ史のやたら通俗的な読み物としてはなんとも面白いのです。特に、何故、その作品がアメリカでヒットしたのか、その背景をわかりやすく説明してくれるのが興味深いですねえ。赤狩り、黒人差別、銃社会などアメリカという巨大な国の複雑さと影の深さには、能天気な日本人にはどうにもついていけない気がします。
 丁度、同時期に読んだ「キリスト教で読み解く世界の映画」で、欧米の映画作品、いや、欧米人の考え方や常識の中に溶け込んだ宗教の影響なども知らないことだらけでしたので、改めて我が国のガラパゴス化にある種の幸せを感じました(笑)。それにしても、幼い頃憧れだった”アメリカ”の実態には改めて”隣の芝生”という現実の悲哀を感じざるを得ませんでしたねえ。悲しいことです。

51vtk1jlm8l_sy291_bo1204203200_ql40_ml2_  是非、未読の方はご一読をお勧めしたいと思ったのですが、実は、この本はNHKが以前BSで放送した「世界サブカルチャー史 欲望の系譜」のアメリカ編を書籍化したものだそうです。最近、テレビをほとんど観ていないので、全く知りませんでした。いやあ残念です。現在は、その”フランス編”を放映中だそうです。それも先日見逃しました。夜11時のBS放送はついつい忘れるのです(笑)。
 当然、映画のお話には映像がある方が絶対面白くなるので、機会があればそちらを観ることをお勧めします。なんだかんだ言っても、やっぱり映画は映像あってのお話ですよね。私も頑張ってNHKのオリジナル放送を見ることにしましょう。

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