最近はほとんどテレビを観なくなり、代わりにYouTubeや動画配信ばかり眺めています。なかでも、YouTubeは、いろいろな動画が本当に興味がつきません。動画配信ディズニープラスのドキュメンタリーによる「YouTube」の歴史が実に勉強になりましたが、正直言えば、もっと前に見たかったなあ。遅かりし由良助(笑)です。
そんな中で、主に映画関係の動画を漁っているのですが、外国人ユーチューバーによる時代劇トップテンという動画が目につきました。ホントに外国人は”サムライ”が好きですねえ。選出している映画は、主に黒澤時代劇など時代劇の名作として概ね妥当なもの(三船敏郎の宮本武蔵は例外)でしたが、実は私が未見の一作品がありました。
それが「小川の辺」という東山紀之主演の藤沢周平原作の映画です。もちろん作品名は知っていましたが、軽~く無視していた作品です。しかし、外国人が実際に観て注目したことが日本人の時代劇ファンを自負する私としては少しショックだったので、動画配信サービスのレンタルを探してみましたが、どうも見つかりません。動画配信はこれが欠点ですねえ。で、結局、DVDを買いました。
さて、内容は、ご存知、東北にある架空の海坂藩の物語です。東山が扮する藩士が脱藩した妹の夫を上意討ちするものですが、いかにも”藤沢周平もの”の映画化作品らしく、丁寧で静かな作品になっています。しかし、面白いかと言えばなんとも微妙です。”字幕”で観る外国人から見れば、武士の生きざまらしいお話かもしれませんが、どうも日本人には違和感があります。原作小説はこんな印象だったのか、よく覚えていませんが、文章での物語とはなんか違う気がします。
映画の違和感はやはり演技者にあります。まず、主演の東山紀友の演技が硬すぎてぎごちない感がします。まあ、今時の俳優に”武士”の雰囲気を持たすというのは正直難しいのでしょう。全般的になんか形だけの振る舞いに見えます。妻の尾野真千子との旅立ちの際の寝床の別れのシーンなどはその最たるものです。ことが終わった後(多分)の”妻の手”の表現より、ここは今時の作品らしく、静かな愛の行為でも描いたらどうでしょうか。正当時代劇としては画期的な作品になったかもしれません(笑)。というのは冗談にしても、全般的に演出が型にはまった感が強くてどうも観客の心に響かないような気がします。
もっとも、武士というものが、対面、外面、メンツを保つためだけに生きているということを描いたものなら、それはそれなのですが、どうも違うのではないでしょうか。殿様や上司の在り様は、身分制度を批判しているとも言えますが・・・。それにしても、家来だけに捜索させて一人宿屋で待つのも違和感ですねえ。武士は黙って・・辛抱なのです(笑)。
そして、この物語の肝ともいえる妹役の菊池凛子がどうもミスマッチです。ハリウッド仕込みの演技が時代劇に似合わないのです。上半身を脱いで幼馴染に迫る覚悟はさすがですが、意地っ張りで勝ち気な妹であり夫に尽くす健気な妻という設定にもかかわらず、どうも感情移入できせん。その理由の一つに設定が東山の妹役なのに随分年上に見えるほか、とても勝地涼くんの幼馴染には見えないのです。うーん、やっぱり違和感です。
また、風景としては外国人受けする、日本(東北)の美しい野山を映し出して素晴らしい映像なのですが、クライマックスの”小川のほとり”の小屋がみすぼらしいのです。ほんとにセット感が強すぎて違和感があります。逃避行した夫婦二人の生活感がまるでセットに反映されていません。ここはただの小屋ではいけないのです。そういう意味ではやっぱり昔の”大映”の美術が凄かったのでしょう。もういまの日本ではセットも、俳優さんも、漫画の映画化ではない正統”時代劇”を創り出すには無理があるのかもしれません。やっぱり、人も物も時代が変わり過ぎたのでしょう。ちなみに、殺陣も普通のアクションでした。このあたりが漫画実写化の「るろうに剣心」とは違っており、残念です。
なお、主人公の父親役の藤竜也はさすがです。隠居役をなんとも思わせぶりに演じており、単なる終活シーンをなんかあるのではないかとまで勘繰ってしまいました。・・・紛らわしい(笑)。
最近のコメント