ジュラシック・ワールド/新たなる支配者
「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」は、恐竜映画のエポックメイキング作品である「ジュラシック・パーク」の後継シリーズ「ジュラシック・ワールド」3部作の完結編です。
恐竜マニアで「ジュラシック・パーク」第1作と第2作をこよなく愛する私にとって、この新しい”ワールド”シリーズは、どうも今一つ盛り上がりません。新シリーズの第1作の新しい”恐竜ランド”は、オリジナルの第1作の焼き直しであり、進歩したCG技術で架空の恐竜を創り出しても、あんまり面白くありません。まあ、海生爬虫類のモササウルスをデビューさせた(笑)のが数少ない評価できる点です。
2作目はさらに悲しくなりました。当ブログ(2018.7.17参照)では、”普通の映画”になったと嘆いています(笑)。火山の噴火で島の恐竜が全滅するのを助けようとするお話ですが、やっぱり架空の恐竜が興をそぎますし、クローン人間まで登場し、最後は生き残りの恐竜を世界に放つことで幕を閉じますが、一体、この始末をどうするんだ、と驚いた記憶が蘇ります。完全な続編ありきの中継ぎでしたねえ。
そして、この最終作につながるのですが、冒頭で、世界中のいたるところに恐竜が出没している映像が流れます。ここで、雪原を歩く恐竜、荒野を疾走する群れなどは実に素晴らしい景色です。かつてNHKのドキュメンタリー特集で雪の中の恐竜CGを見た経験が無かったら、もっと感動していたかもしれないと少し残念です(笑)。お約束のモササウルスの獰猛振りも一場面挿入されています。
どうやら前作以降闇ブローカーが暗躍して恐竜の密売が横行する一方、公的には唯一”バイオシン”というバイオ関係の大企業が恐竜の保護エリアを管理しているという設定です。まあ、ここが今回の新たな”ジュラシック・パーク”になります。このうさんくさい大企業のCEOがあのスティーブ・ジョブズにそっくりなのです。思わず笑いました。ライバル会社ゆかりの人を相手に”ユニバーサル”もなんか人が悪いですよねえ(笑)。
また、世界中に穀倉地帯を食い荒らす巨大なイナゴの大軍が発生するなど、世界の終わりが近づいているエピソードが唐突に描かれます。聖書の影響か、大陸では身近なのか、とにかく欧米人は終末となるとこの虫のお話が好きです。でも、イナゴは恐竜じゃないですよ(笑)。
さらに、今回の映画の目玉として新シリーズの主人公クリス・ブラットとブライス・ハワード、そしてクローン人間の子役に加え、オリジナルの3人の科学者、サム・ニール、ジェフ・ゴールドプラム、そして女植物学者ローラ・ダーンが勢ぞろいします。最近、こういうオールスター映画が流行っていますが、・・私は好きです(笑)。みんな元気そうでうれしい限りです。
ストーリーは、オートバイと恐竜、密猟者との銃撃戦など、アクションも満載ですが、それはまあ映画を観ていただく(笑)として、やはり、この映画の一番のお楽しみの恐竜の紹介をしたいと思います。ティラノサウルス、ヴェロキラプトルなどいつもの常連ではなく新顔を中心にお話します。
何分、完結編ということで、登場する恐竜の種類もかなり増えています。なお、今回は、架空の恐竜は登場しませんので、ご安心ください。もっとも、この映画での恐竜の復元像自体が学説と随分違うというご意見の若い人もいるように聞いていますが、カエルの遺伝子を使ったというオリジナルの設定もありますし、映画の恐竜はカッコ良いので細かいことは言わないように(笑)。
実は、前作のブログ(2018.7.17参照)の中で”悪役恐竜は羽毛恐竜にしたら良い”などと書いていましたが、今回、そのことが現実のものとなります。ピロサウルスというそうで、凍った湖の上で、クリスらに襲いかかります。黒く見える羽を広げながら威嚇する姿は、なかなか悪役ぽくて感心しました。NHKの赤と青色の安手の羽毛恐竜のデザインとは雲泥の差です。しかも、氷の下を猛スピードで泳ぐのです。この演出には驚き、感心しました。確かに水鳥は水中を泳げるのですから、この意外な設定にも納得です。旧シリーズ3作目の霧の中いざり寄って来る”プテラノドン”の恐怖の再現です。座布団1枚です。
そして、いつかは登場するだろうと思っていた、最大の翼竜ケツァルコアトルスも貨物飛行機を襲い、爪で機体を引き裂きます。しかし、これはいくらなんでもやりすぎです。あの骨格でそんな力はありえない、などと思ってしまいます。でも、話の都合上、飛行機が墜落しなければなりませんので、これも仕方がありません(笑)。
また、巨大な3本爪をもつ草食恐竜テリジノサウルスも最後は物凄い力を発揮するのですが、ここは少し演出過多です。旧シリーズ第3作目でティラノサウルスを圧倒した魚食い恐竜バリオニクスの嘘臭さの二の舞ですねえ。
加えて、おなじみティラノサウルスのライバルとして登場するのが、世界最大の肉食恐竜と言われるギガノトサウルスです。なんか、デザインも架空の復元図のような気がしますが、本来、ティラノサウルスは噛む力など類をみないほど強力なので、やっぱり役不足ですねえ。
逆に、懐かしかったのが、背中に帆を立てたデメトロドンです。懐かしいジュール・ベルヌの原作を映画化した「地底探検」に登場する、生きた本物のオオトカゲに背ビレをくっつけた特撮へのオマージュとのことです。うれしい限りです。座布団1枚差し上げます。
そして、トリは、オリジナル第1作のエリマキ恐竜ディロフォサウルスです。これは、学説には無いエリマキを震わせ、毒液を吹いて、遺伝子サンプルをスプレー缶に隠して盗み出した太っちょの産業スパイを殺したことで有名ですが、今回そのスプレー缶まで再登場するのです。いやあ、30年ぶりの伏線回収ですか?お疲れさまでした。
そのほか、クローン人間の生みの親のエピソードには泣かされますし、最終的に、恐竜と共存する世界という終わり方も案外よかったと思います。思えば、前作まで恐竜を閉じ込めてメデタシ、メデタシという考え方は、なんとも狭い了見でしたねえ。世界はこんなに広いのですから(笑)。でも、市場に配慮してか、あの諸悪の根源の中国人科学者の扱いがどうも甘いような気がします。
以上、細かなことをいろいろ言いましたが、恐竜映画として十分楽しめました。新シリーズの中では最高の出来です。未見の方は是非ご覧ください。
ところで、全く映画とは無関係の余談なのですが、チェコの恐竜復元画家ブリアンなどの復元図の原画展が来年3月から兵庫県立美術館で開催されるそうです。この展覧会は、全国を巡回するのでしょうか? 是非、そうなってほしいなあ。関係者の皆様の取り組みに期待したいところです。恐竜ファンとしては、とにかく懐かしさで一杯なのです。当時の古い学説に基づく復元図なので、是非、美術品として楽しんでください。
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