ザ・バットマン
バットマンの最新作「ザ・バットマン」をやっと観て来ました。なにしろ上映時間が170分もありますから、年寄りとしては体調に万全を期さなければなりません(笑)。
さて、この映画の感想について結論から言うと、途中で退屈することもなく面白くは観ることができました。ただ、内容的に”バットマン”という超人ヒーロー物かと問われれば、なんか普通の犯罪映画のような印象です。
”リドラー”という名の狂信的な知能犯が変質的な連続殺人を繰り返し、現場に残された”謎”を解いていくと、犯罪のあふれる”ゴッサムシティ”に巣食う、正義面した本当の悪人たちを暴くことにつながっていくというストーリーなのです。
一応、バットマンですからマスクやマントなどの黒いコスチュームを着ていますが、普通に警察の犯罪捜査の現場に立ち合っています。これは汚職に関わっていない唯一の警官ゴードンの独断的な協力によって可能となっているのですが、まあ、無口な名探偵バットマンという感じなのです。
主演のバットマンは、ロバート・パティンソン、あの「トライライト」の吸血鬼エドワード役を演じた俳優さんです。誰にも会わない引きこもりの大富豪ブルース・ウェインを実に病的な所作で見事に演じており、いかつい暴力的なバットマンのスーツを脱いだ後の目の周りを黒く塗ったままの姿がよく似合っています(笑)。
加えて、今回はアイコンである”バットマンカー”も馬力はバカでかいものの、普通のアメ車であり、めぼしい装備もワイヤーぐらいなので、もうマントもマスクもやめた方が良いのにと思っていたら、マントにはなかなか面白い仕掛けがありましたが、これまでの派手なデザインのバットマン・アイテムを期待しては駄目でしたねえ。しかも、”ペンギン”は、ただの犯罪組織のボスのあだ名でしたので、ティム・バートン監督作とはまったく違います。ただ、共演のキャット・ウーマンの卵を演じたゾーイ・クラヴィッツは、バートン版のミッシェル・ファイファーより色っぽくで好きです(笑)。
結局、この作品で一番良かったのは、冒頭の「THE BATTOMAN」というタイトルでした。どーんと画面ギリギリいっぱいに描かれた巨大なタイトル文字のインパクトには驚きました。ただ、文字を書いただけの始まりなのですが、単純だけになんか圧倒されて、本編まで期待しました(笑)。もっとも、ストーリーは、”リドラー”の連続殺人の動機も大掛かりな復讐劇も、クリストファー・ノーラン監督のあの”ジョーカー”の悪らつぶりには及びません。
でも、最後の”リドラー”と”バットマン”の対面シーンは、黒澤明の「天国と地獄」とそっくり同じ構図です。思えば犯人の動機も似ていますねえ。どうやらこの監督さんは、黒澤明のファンのようでそのリスペクトぶりがうれしいなあ(笑)。
しかし、アメコミ映画の定番であるラストのエンドロールが終わった後のお楽しみ映像には、ほんとうにガッカリしました。170分もの長編映画を観た後、ただただ流れるスタッフ名をひたすら我慢したあげく、あんな映像を出されては客としては許せません。あれを蛇足というのです。
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