コロナ禍のせいか、以前に比べて劇場に足を運ぶことが億劫になってきています。まあ、年のせいかもしれませんが、昨年の封切り映画を考えても、私好みの娯楽活劇の超大作を結構見逃しています。有名どころとしては、マーベルスタジオの「シャンチー/テン・リングスの伝説」、日本が舞台の「G・Iジョー/漆黒のスネークアイズ」、ジャッキーチェンとシュワルツネッガーが共演した「レジェンド・オブ・ドラゴン」、SFパニックものの「グリーンランド/地球最後の2日間」、韓国映画「白頭山大噴火」などがあげられます。
さて、このように劇場で見逃した映画については、DVD発売が解禁された後、まずレンタルの動画配信でチェックするようにしています。のちほど詳しく述べますが、「白頭山大噴火」を除いて、前述の作品のほとんどはレンタル料500円が高く感じられるほどの残念な出来映えでした。本当に劇場に行かなくてよかったと自分の直感を褒めてあげたくなりましたねえ。
例えば、中国人のアメコミ・ヒーロー物である「シャンチー/テン・リングスの伝説」のなんと退屈なことか。いわゆる桃源郷伝説ものであり、カンフーや伝説の龍まで登場しますが、印象として”こいのぼり”のような軽さです。実際、龍のCGの動きの軽さには本当に呆れました(笑)。とても、マーベルスタジオの作品とは思えません。そういや「エターナルズ」もそれなりの作品でしたので、マーベルの新シリーズの今後が少し心配されます。
しかし、それ以上に絶句したのが「G・Iジョー/漆黒のスネークアイズ」です。米国印のニンジャものですから、ある程度は”覚悟”をしていたのですが、その予想をはるかに超える酷いストーリーでした。まずヒーローであるはずの主人公の裏切り行動にあきれかえります。その行動には共感のしようがないし、どうしてそんな彼を石田えりの女頭領が何度も許すのか、全く理解できません。彼に惚れるヒロインも美人ではないですし、その惚れる理由や経過もよくわかりません。それ以上に日本社会の描写やニンジャ組織については日本人として恥ずかしくてまともに見ていられません。平幹次郎2世の敵役好演も姫路城ロケもすべて無駄になった駄作でした。
また「レジェンド・オブ・ドラゴン」はロシアの魔女伝説映画「レジェンド・オブ・ヴィー」の続編であり、第1作は、その映像表現の斬新さで結構気に入っている(BD保有)のですが、ロシアから中国に舞台を移しても、やはり”続編に傑作なし”の例外にはなり得ませんでした。第一、ロンドン塔に幽閉中の囚人ジャッキー・チェンと脳筋の監獄長役のシュワルツネッガーのマンガ的なアクションは、冒頭だけの共演で本編とは全く無関係という、まさに羊頭狗肉の作品なのです。あれ、この映画は劇場で公開されたかな?未公開作品ならご容赦ください(笑)。
そして、彗星が地球に衝突するSFパニック映画「グリーンランド/地球最後の2日間」も、主人公が剛腕のジェラルド・バトラーですから家族3人ラストでなんとかグリーンランドのシュルターに逃げ込めるのですが、その行程で遭遇するパニック描写は、アメリカという国の現実、人間のエゴイズムの醜さを突きつけます。現実もそうなんだろうが、なんとも不快な気分になりましたねえ。後味がよくありません。
で、やっと「白頭山大噴火」の感想です。この作品はレンタルすること自体少し悩みましたが、これが意外に拾いものでした。ストーリーは、北朝鮮にある”首領”のお膝元の白頭山が大噴火し、朝鮮半島全体に大災害が起こるのを防ごうとする韓国軍の技術将校のお話です。まあ、よくある火山噴火のパニックものなのですが、設定がいかにも韓国ドラマらしく、荒唐無稽でしかも無理難題のてんこ盛りなのです。本当によくあれだけの艱難辛苦の大嘘エピソードを創作できるものと感心します。
まず、火山噴火はスリルを高めるために、小から大へ3段階に分かれて順次起こるという周到さであり、主人公の頼りない技術将校は退役当日で女房は出産間近という切羽詰まった状況なのです。
しかも、その噴火防止作戦とは、北朝鮮の核ミサイルを盗み出し、白頭山のふもとの鉱山の奥で爆発させ、マグマの大噴火を抑え込もうというなんとも奇想天外な作戦なのです。その上、その日は北朝鮮の非核化が実現する日で、アメリカ軍が核を受け取りに韓国に来ているという空想映画です。
なお、この作戦を立てたのが、地震学者役の韓国系アメリカ人のマ・ドンソク、映画「新感染」で腕っぷしの強い親父を演じた俳優さんです。そういえば「エターナル」にも出ていましたねえ。今回は何故か腕っぷしの強さは披露されません。「いのちぼうにふろう」のカツシンを思い出しました。
そして、ミサイル格納庫の場所を知るのが北朝鮮の刑務所に幽閉されている二重スパイなのですが、その役をいまやハリウッドスターと言えるイ・ビョンホンが演じます。何をやらかすかわからない凄腕のスパイを硬軟自在な演技で魅せます。ただ、幽閉されていたという設定からか、やつれた風貌がなんとなく我が国の有名漫才師の”はまちゃん”を彷彿させると感じたのは私だけでしょうか?妻よ、御免なさい(妻がファンなのです・・)。
それにしても、この作品の肝となる噴火により都市破壊のシーンは、ハリウッド映画並みの迫力です。日本の一見してCGとわかるような映像とは雲泥の差です。加えて、そのストーリーも観客の予想を超えて進みます。半島全滅という未曾有の大災害を前にして、イ・ビョンホンの勝手な行動により作戦部隊は紆余曲折の道中となり、さらに協定を順守したいアメリカ軍と韓国軍の北朝鮮侵入の証拠を押さえたい中国軍と三つ巴のトラブルにまで発展します。とにかく次から次へこれでもかというほど意表を突く展開が続き、また、その解決策や着地点がなんとも小憎らしい程上手いのです。
そして、その極めつけが、逃走したイ・ビョンホンが中国軍に捕捉され、アメリカ軍までが対峙したその時に、韓国軍の主人公が取った方法です。とにかくあっと驚く方法で窮地を脱するのですが、良く考えると現実には絶対あり得ないだろうと思っても、よく、こんなアイディアを思いついたと脚本家に座布団をあげたいほどです。もっとも日本人なら絶対こんなことは考えないでしょうが、とにかく脱帽です。
以上、この映画は、中国やアメリカの妨害にも拘わらず、大統領府の迅速な作戦決行により、白頭山の大噴火を防ぐというなんとも見事な空想科学映画に仕上がっています。加えて、緊急連絡の際でも主人公と妻の人の話を全く聞かないエピソードなどには笑わされますし、予想以上に楽しめました、今後DVDの購入も検討してみましょう。
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