性本能と原爆戦
「性本能と原爆戦」というなんともコーマン的Z級のタイトルのDVDが発売されました。いつもの1950年代の安直SF映画かと思ってほぼ自動的に購入したら、実は1962年公開の映画でした(笑)。
内容は低予算映画であることは間違いないですが、カメラワークなどの演出が驚くほど本格的に作られています。あのアマチュアじみたコーマン映画とは一線を画しています。ちなみに、TV映画「刑事コロンボ」によくゲストとして登場するレイ・ミランドが主演しているのですが、彼が監督した作品だそうです。
ストーリーは、いかにも50年代の豊かで幸せなアメリカ白人の主人公と妻、そして娘、息子の四人家族が休暇で田舎へキャンピングカーによるキャンプ旅行に出かけるところから物語は始まり、その直後、彼らの住んでいた都市に原爆が投下されます。そして、楽しいバカンスは生き残りをかけたサバイバルキャンプになるというSF映画です。ちなみに、SFらしい特殊撮影は、街の方角に見える絵で描いた”きのこ雲”だけです。あとは、彼らが食料などを調達する田舎町での混乱や避難するために道路を疾走する多数の車などです。ほんとうに低予算ですが、なかなかモノクロ映像はしっかりしています。
アメリカの場合、クライシスになるとすぐに暴動や略奪が起こるわけですが、御多分に漏れず、この映画でも田舎店の店主によるまさかの車強奪未遂なども起ります。
ただし、危機感を持つのは、男の主人公だけで妻や娘は平常時ののんびり意識のままで、実家の母親や家の状況を知りたいと不満を言い立てます。また、娘は途中で知り合ったばかりの若者たちとも親しく口をきいたりします。もうまるで現在の日本人の危機感の無さと同じですねえ。困ったものです(笑)。
結局、彼らはキャンプ地にある洞窟にサバイバルの拠点を作るのですが、娘は無防備にも一人で近くの池に出かけ、偶然出会った若者2人に暴行されます。声を聞いた母親が駆け付け命拾いします。このへんからが”性本能”のタイトルの所以です。
そして、この後の展開がいかにもアメリカ人らしい行動です。主人公と息子は、猟銃を持って復讐に出かけるのです。いかにも、西部開拓の子孫です。やられたらやり返す。自分の命や家族は自分で守るという意識が凄いですねえ。もちろんいまや母親もすっかり復讐心の塊です。
襲った若者たちは近くの家に住んでいるのですが、実は彼らはその家の住民を殺し、その一人娘を監禁陵辱しているのです。いやあ、もう撃ち殺す正当性は十分です。
その後、娘を助け出して洞窟に連れてきたのはよいのですが、若者グループにはもう一人たまたま不在だった一番悪のリーダーが居たのです。娘の心のケアは大事ですが、周囲にもっと気を付けて!と心配していたら案の定・・・とその後は、御想像ください。
ラストは救助活動の軍に助けられるのですが、彼らに救援基地に行くよう指示した兵士二人が呟きます。「これで健康なものが増えた」と。これは娘2人を差しているのかな?・・なんかこのセリフは怖いですねえ。
それにしても、この当時は有色人種への隔離政策が徹底している時代なので、映画では現在ほどの激しい略奪行動などは描かれていませんが、いまのSF映画の描写ではもう暴動です。コロナ禍でのニュース映像でさえ酷いですねえ。まあ、日本の常識は通じませんねえ。逆に3.11の際の東北での整然とした状況は世界でニュースになったほどです。
それからいうと、日本の平穏な時代は今回のコロナで終わりかもしれませんねえ。いまや我が国以外の出来事がダイレクトに影響する時代です。ミサイルが落ちるとは思いませんが、もっと巧妙な見えない攻撃が心配されますので、政治家には本当にしっかり物事を見据えてほしいものです。などなど、作品の是非より今の我が国の頼りない政治情勢が気になってしまい、驚くことに全編を通常倍速で観てしまいました。
俳優ながら監督したレイ・ミランドさんに敬意を表します。ちなみに、原題は「PIKUNIC IN YEAR ZERO」ですので、変てこネーミングの責任は、日本の配給会社にあります(笑)。
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