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2022年1月31日 (月)

フィル・ティペット物語

 アマゾンで、米国製ブレ―レイ「THE MONSTER COLLECTION」を購入しました。中身は「PHIL TIPPETT:MAD DREAMS AND MONSTERS」と「THE FRANKENSTEIN COMPLEX」の2枚にボーナスディスク1枚が入っています。
 映画のSFX(特殊撮影技術)に詳しい方は、フィル・ティペット(PHIL TIPPET)といえばご存知だと思いますが、「スターウォーズ/帝国の逆襲」の雪原のトーントーンや大型装甲車のストップモーション・アニメで一躍その名を世界に知らしめた特殊映像技術者です。その後も、私のお気に入りの作品、例えば、ディズニー映画「ドラゴンスレイヤー」のリアルなドラゴンをはじめ「ロボコップ」の敵役ロボットED-206の絶妙な動きなどを生み出しています。また、アカデミー賞も特殊映像部門の賞を何度も受賞しており、一時は巨匠レイ・ハリーハウゼンの正当なる後継者とまでいわれていました。その彼の名前を冠した映像記録の発売です。もちろん英語版で日本語の字幕はありませんし、日本で視聴できるかどうか、不明でしたが、彼の隠れファンとしてはここは是が非でも(笑)買わなければなりません。

 さて、リージョンはブルーレイの場合、日本と米国は同じですので、ディスクは見事に再生できました。以前、座頭市全作品をコンプリートした海外版ブルーレイが再生できなかった苦い経験がありましたので、実はほっとしました。

81dgntfskcs_ac_sx342_  まず、お目当てのディスク「PHIL TIPPET・・・」は、フィル・ティペット本人が登場して、こどもの頃からの作品を含めて自分がかかわった映画の紹介をします。字幕がないのでほとんど何を言っているか分かりませんが、メイキングファンの私にとっては、コメントの合間に挿入される当時のメイキング映像が実にうれしいのです。写真で知っている撮影現場が映像で動くのです。短いショットですが、本当に楽しいですねえ。
 本人以外にも多数のゲストから様々なコメントが紹介され、一言で言うと、”フィル・ティペット物語”とでもいうような内容になっています。
 とりわけ、作品ごとに当時のスタッフ達が撮影に使った「ロボコップ」の実物大のED-206や「ドラゴンスレイヤー」のゴ―モ―ション用模型などを見せてくれるのがなんともファン心をくすぐります。

 それにしても、ティペットさんは、昔は若ハゲで気弱な若者でしたが、功を為し年を重ねて実に優しそうな白髪のハゲじいさん(笑)になりました。その人の顔が人生を表すというのはそのとおりですねえ。いまだに自分の隠れ家のような仕事部屋で喜々として作業しています。その部屋には、撮影で使用した(?)模型やオスカー像が無造作に飾られ、様々な作業道具が並んでいます。・・・羨ましい限りです(笑)。

 そして、ディスクには満を持して臨んだスピルバーグ監督の「ジュラシック・パーク」で起こった衝撃のエピソードがしっかり紹介されています。
 製作開始当初は彼が中心で”ゴーモーション”という当時最高の”ストップモーション”技術でティラノサウルスの車両攻撃シーンを撮影していたのですが、突如ルーカススタジオのスタッフが極秘で開発を進めていたコンピュータ・グラフィック製の恐竜映像にとって代わられます。
 当時は誰も思いもよらなかった技術革新です。公開されたCG製の恐竜のリアルさには、観客だった私も度肝を抜かれたのですが、ストップモーションで頂点を極めていたティペットさんにはどれほどの衝撃だったのが想像も付きません。
 このディスクには彼のショックを象徴するかのようにフュルムが燃え尽きるような映像が挿入されています。
 ちなみに「ジュラシック・パーク」ではまだまだCG技術が開発途上であり、彼は解雇されることなく、コンピュータに電極をつないだ恐竜ロボットのような模型を操作して映画作りに貢献しています。

 その後、彼はその時のコンピュータ技術と併せたアニメ―ション技術を駆使して「スターシップ・トルーパーズ」の無数のバグズ(私のご贔屓です)を生み出しますし、そのほかにも、いろいろな映画に参加しており、その実績を伸ばしたようです。どうやら、ティペット印クリーチャーは私の好みに合うようで、どれも好感が持てる造形と動きでしたねえ。敬意を表します。
 ともかくも、フィル・ティペットという特殊撮影技術者に関するこのような商品が発売されるということは、彼の功績がアチラでもきちんと認められているという証であり、昔からのファンである私としてはなんとも心強い限りです。

 もう1枚のディスク「THE FRANKENSTEIN COMPLEX」は、キングコングから始まった、ストップモーションや特殊メイクアップなど主にアナログ特殊撮影の歴史の紹介です。様々な技術者や映画監督のコメントとSF・ホラー作品のメイキングなどが紹介されています。字幕が無いのでゲストたちのコメントが長く退屈なのですが、今迄にみたことがないような撮影風景の映像や小道具模型の数々はなんとも素晴らしい。特に「エイリアン」シリーズについては、どこかのスタジオの倉庫らしいところに「2」のクイーンの巨大な操り模型などをはじめ撮影に使った小道具や模型が飾られており、しかもかつて雑誌で見た円谷プロの”怪獣倉庫”の乱雑さではなく、きちんとディスプレイされているのは一見の価値があります。さすがハリウッドです。ただ「エイリアン4」のクローン実験失敗胎児の模型などを喜々として並べているのは勘弁してほしい(笑)。でも、こういう貴重なお宝映像を観ることができて眼福でした。

 なお、3枚目のボーナス・デスクは、2枚分の目次のような内容でので言及は省略します。

 最後に、こういう貴重なメイキング商品は、我が国のメーカーで、日本語字幕版を発売してほしいものです。貴重なアナログ撮影技術の資料になると思うのですが、いかがでしょうか。少なくとも私はまた買いますゾ(笑)。

 

2022年1月30日 (日)

レイ・ハリーハウゼンのクラーケン

 ストップモーション・アニメ作家レイ・ハリーハウゼンの最晩年の作1981年「タイタンの戦い」に登場するクラーケンが”特大”フュギュアとしてエクスプラスから発売されました。以前紹介した”生誕100周年”シリーズです。”特大”と言うのは、材質が硬いレジン製ではなくソフビ製なのに高さが35cmで、横幅がなんと54cmもあるサイズなのです。商品写真では少しいびつな形に見えます。まあ、最近のソフビも結構硬質になっていますから経年変化への耐性はある程度大丈夫だろうとは思うのですが、結構値段が高い上に、個人的な感想から言うと、このシリーズでこれまで発売されてきた商品の造型の出来が、私が期待する”映画で出会った本物の雰囲気”を再現できていない感が微妙にするのですねえ。で、かなり悩みましたが、幼少時に刷り込まれた”レイ・ハリーハウゼン神話”には勝てません(笑)、ついに購入しました。

Img_20220130_0001  ちなみに、映画「タイタンの戦い」は後年2010年に再映画化されており、この辺のことは当ブログ(2010.4.24)でも紹介していますので、是非そちらをご参照ください。もちろん、登場するクリーチャー達のデザインの新旧比較はCG化してリアルな新作よりもオリジナルの方の圧勝です。オリジナル作品は、確かにレイ・ハリーハウゼンの老いによりコマ撮り技術自体は全盛期のものとは比較にはなりませんが、その造型の見事さは比類がありません。この”クラーケン”(2007.4.29参照)もそうですが、ヘビの胴体を持つ”メドゥーサ”のデザイン(2008.1.20,2009.10.4参照)にはその類まれな発想に感嘆した記憶があります。・・・あ、サソリは駄目(笑)ですねえ。

 そして、当時もっとも驚いたのが、レイ・ハリーハウゼンの映画に、なんと英国の名優ローレンス・オリビエやウルスラ・アンドレスなど一流の俳優が出演していることです。B級や子供騙し映画といわれたハリーハウゼン作品が大作として扱われる、やっと陽が当たる時代が来たような気がしました。これで主演俳優と演出が良かったら、名作となったのですが、映画としての出来は今一つでした、残念です。なお、レイ・ハリーハウゼン氏は、引退後の1992年にその功績を認められアカデミー賞特別賞を貰っています。

20220117_1324061 20220117_1327571 20220117_1329591 20220117_1324062  さて、お話が随分それましたが、実際搬入した”クラーケン”の特大フィギュアの現物はやっぱりでかい。幸い、海外製品とは違って、胴体の上半分のところで尾までの下半身を分割し、コンパクトに保管できるようになっています。さすが日本のメーカーは、狭い家屋事情に細かな配慮があります(笑)が、しかし、それでも、我が家にはでかすぎるのです。
 そのため、当初は押し入れにそのまま死蔵するしかないと覚悟していたのですが、現物を組み立ててみると、商品写真とはちがって、実に出来が良いのです。ソフビの材質や色付けが海生生物らしく、しかも、映画の雰囲気を実にうまく伝えているのです。このシリーズの商品の中で最上の仕上がり(もっとも、分割結合部に隙間ができるのが難点)です。そこで上半身部分のみ飾ることにしました。もっとも、山積みの本ケースの間にできた僅かなスペースへの仮置きですが(笑)。大げさに言えば、以前メイキング写真で見たハリーハウゼン御大のストップモーションの撮影現場を再現しているようで楽しくなります。そういう意味でこの模型は儲けものでしたねえ。ゆっくり楽しみましょう。

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2022年1月26日 (水)

コーダ/あいのうた

 久しぶりに劇場でSF/アクション映画以外の作品を観ました。「コーダ/あいのうた」です。劇場の予告編を見て何故か無性に見たいと思った作品です。

 タイトルのコーダ:CODAというのは、Child of Deaf Adults の略語で、聾唖者の親を持つ子供という意味だそうです。ストーリーは、まさにタイトルどおり、漁業を営む聾唖者の4人家族の中で唯一一人だけ健常者だった高校生の娘の物語です。この音の聞こえない家庭の中で主人公には歌の才能があり、高校で出会った音楽の教師にその才を見いだされ、音楽大学への入学に挑戦するという、一種の”天才”物語です。私、昔から”天才”物語に目が無いんです(笑)。・・・無性に見たかった理由はその辺かもしれません。

Img_20220124_00012  実はパンフレットを見て驚いたのですが、主人公以外の家族役、父親、母親、兄貴は、いずれも本当の聾唖者の役者さんだそうです。アチラには、こうした障碍者が活躍できる劇団もあるようです。いやあ認識不足でした。しかも結構名の知れた俳優達らしいです。それだけに、実に上手い。手話のうまさなどはアタリ前なのですが、演じる小さな漁師町の漁師はもう本物のようです。

 内容はといえば、社会の差別を声高に強く訴えるようなものではなく、聾唖者の生の生活を笑いで包みながら生き生きと描いた実にアットホームな物語です。家族思いで通訳をする主人公のまっすぐな生き方には年甲斐もなく感動します。また、親父と母親のあっけからんな”熱愛事情”には思わず笑いますし、妹思いの兄貴のぶっきらぼうな態度も演技がうまいせいか、実に心に響きます。
 そして、主人公の才能を見出すメキシコ系(?)の音楽教師が面白い。巻き舌発音を矯正する”変な”性格が笑えますし、やたら口が悪く厳しい指導ぶりなのですが、”教師”を天職という自らのセリフも最後の活躍で本物になります。儲け役ですねえ。

 また、このお話はいわゆる”悪人”が登場しないのが良い。まあ、聾唖者を笑う女学生、魚を買いたたく卸業者などは登場していますが、普通のドラマによく登場する、悪らつな罠や苛めで主人公の恋路を邪魔する女ライバルや主人公たちの漁師協同組合設立をつぶそうとする顔役などの悪者たちは登場しません。法に厳格な女監察官は出ますが、あれは仕方がないなあ。実は観ている中で”外国の場合は大丈夫かな”と心配になったシーンがあるのですが、これが”やっぱりだめだった”パターンでした(笑)。それ以外は安心して観てください。悪者のいない世界は本当にほっとします。

Img_20220124_0001  さて、主人公の大学進学について、家族の反応は”通訳”がいなくなることに加え、いつまでも「ベイビー」扱いの母親が大反対。それに対して父親の「あの子は昔から大人だった」というセリフが心に響きます。しかも、何故かすねている兄貴まで「家族の犠牲になるな」というのにも泣けます。当然、そうなると、家族思いの主人公は進学をあきらめますよねえ。・・いったいどうなるのか、是非劇場でお確かめください。

 それにしても、この映画に出て来るセックス関係のエピソードは笑えますが、なんとも下ネタ風で露骨です。まあ”アメリカ映画ですから”と思っていたら、この作品の元ネタというか、フランス映画の「エール!」の再映画化作品なので、アマゾンプライムの動画配信中(今回の映画との連携でしょうか、実にタイミングが良い)のオリジナルを観ると、しっかりそれらのエピソードが描かれています。”フランス映画”仕込みのセックスネタでした。アチラは実に大らかですねえ(笑)。改めて感心します。

 Img_20220124_00011 ちなみに、オリジナル「エール!」との違いは、家族の仕事が農業から漁業に代わり、弟が兄貴になっているものの、家族を演じる俳優達の容貌や雰囲気がほぼ同じなのには驚きました。また、町長選への立候補が漁師協同組合の設立に換えているのも、オリジナルのストーリーの不具合をうまく修正した感があります。
 そして、今作は、恋人役の同級生との恋愛をしっかり描いています。ここはいかにもアメリカ映画ですねえ。 

 以上、本当にハートウォーミングなハッピーエンドのお話です。世知辛い今の世の中にはこうした作品は必要です。出品されたサンダンス映画祭で数々の賞を受賞し、全世界配給権が26億円という過去最高の金額で落札されたことは心強い。是非、世界でヒットしてほしいものです。

 なお、今回、劇場パンフレット買いましたが、どうも最近の風潮でなんとも表紙が味気ないので、宣伝チラシの表と裏の両方を掲載しました。どうかじっくりご覧いただき、是非、劇場に足をお運びください。コーダ私設宣伝員でした(笑)。

 

  

2022年1月25日 (火)

デフォリアル

 「デフォリアル」とは、怪獣やモンスター造型の専門メーカー「エクスプラス」から発売されているフィギュアのシリーズ名です。デフォルメとリアルを合成した名前のとおり、約15cmぐらいのリアルなデフォルメ・フィギュアです。

 映画グッズの入手目的をあくまで作品の”感動”を手許に置くものと位置付けている私としては、再現模型は収集対象となってもデフォルメ造型にはほとんど興味はないのです。が、しかし、たまに作品の”魂”を表現するような秀逸なデフォルメ模型に出会うことがあります。そんな時は衝動的に買ってしまいます。まあ、”後悔は買ってからせよ”なのです(笑)。

 ちなみに、現在うちにあるデフォルメ模型と言えば、もう随分昔に購入したサイドショウ・トイの”ビッグヘッド”半魚人(当ブログ2006.7.25参照)。私が初めて買ったフュギュアでもあります。10cm程度のほぼ2頭身ながら実にリアルな造形なのです。その当時は「サイドショウ」という米国のメーカー名すらも知らず、また現在のようにこれほどフィギュア文化が進歩・発展するとは夢にも思ってなかった時代でした。たまたま雑貨屋で見かけて買ったような記憶があります。思えば、それが因果の始まりでしたねえ。

 その他には、先輩から戦車模型を貰って模型塗装に目覚めた頃に出会った「ウエストケンジ」という個人(?)メーカー発売のソフビキットのキングギドラがあります。ちなみに、この”リアルデフォルメミニソフビ”のシリーズには、ギドラ以外にもゴジラやラドンなどのキット商品を組み立て塗装もしたのですが、完成してみれば、いまひとつデフォルメ具合が気に入りませんでしたので、オークションで手放してしまいました。今残っているのは、デフォルメ・ギドラ一匹だけですねえ。やはり、デフォルメはその誇張表現が難しいものなのです。個人の好みの差に大きく影響されます。

20220110_0805101  さて、前置きがやたらと長くなりましたが、”デフォリアル”のシリーズはもう何年も前から発売されていることは知っていました。ただ、前述のような事情から、私はこれまであまり関心が無かったのですが、先日、偶然YouTubeで、怪獣マニアのユーチューバーが発売されたばかりのデフォリアルの「ガメラ3」のフィギュアを詳しく紹介をしている画像を観たのです。
 その動画でフィギュアの詳細な画像をつぶさに見せられると、その出来の良さに驚きました。15cmサイズなのに、ガメラ3のリアルな質感や誇張した牙など、実に絶妙なデフォルメ具合です。その表現にはつくづく感心しました。このユーチューバーによると、現在このデフォルメシリーズがマニアの間では大人気となっているらしいのです。どうもメーカーの宣伝の”手先”のような匂いもします(笑)。 

20220110_0757481 20220110_0759221 20220110_0800191  ただ、こういう話を聞くと、ミーハーの私としては、いろいろ調べたくなります(笑)。そこで、改めてこのシリーズの造形物をチェックしてみると、確かに平成ガメラシリーズの造形物(G3とG2)はよくできています。

 しかし、それ以上に驚いたのが「シン・ゴジラ」の造型物です。製造元の「少年リック(エクスプラスの関連会社)」の商品写真を見てみると、シン・ゴジラの皮膚感はもとより憎たらしい表情やその乱杭歯の表現、ボリュームのある長いしっ尾のコンパクトな処理、さらには、映画の画面ではよくわからなかった尻尾の先の醜い顔を分かりやすく誇張しています。このリアルなデフォルメ具合こそがまさにシン・ゴジラのテーマをより鮮明に表している(ほめすぎ?)ようにも思えます。
 で、早速実物をゲットしようとしたのですが、1年以上も前の発売らしいので既に絶版商品となっており、現在では秋葉原のショップでは定価の4倍強のプレミア価格がついているとのことです。出遅れた分、比較的安価で入手するまでの苦労は大変でした(笑)。

 そのほかにもこのデフォリアルシリーズでは、昭和ゴジラ物なども商品化されていますが、商品写真を見る限り、何故かデフォルメ・デザインがあまりよくありません。”普通”の出来なのです。もともとの怪獣のデザインが完成されすぎているということもあるのでしょうか、デフォルメに全くインパクトがありません。まあ、今後の新たな商品に期待しましょう。
 逆に、平成ゴジラ物になると、元々漫画的な容姿のせいか、意外にデフォルメ具合が似合っています。もちろん購入する気は全くない(私の対象年代ではありません。)のですが、”デフォルメ模型”の造形物としては評価できます。
 あとは”平成ガメラ”物か、”ハリウッドゴジラ”物が期待できるかもしれません。でも、やっぱりデフォルメ造型は難しのです。琴線にふれるものは数少ないなあ。・・・でも、コレクターとして正直ほっとしている私もいます(笑)。興味のある方は是非ご覧ください。 

2022年1月23日 (日)

性本能と原爆戦

 「性本能と原爆戦」というなんともコーマン的Z級のタイトルのDVDが発売されました。いつもの1950年代の安直SF映画かと思ってほぼ自動的に購入したら、実は1962年公開の映画でした(笑)。

71ib0maful_ac_sy445_  内容は低予算映画であることは間違いないですが、カメラワークなどの演出が驚くほど本格的に作られています。あのアマチュアじみたコーマン映画とは一線を画しています。ちなみに、TV映画「刑事コロンボ」によくゲストとして登場するレイ・ミランドが主演しているのですが、彼が監督した作品だそうです。

 ストーリーは、いかにも50年代の豊かで幸せなアメリカ白人の主人公と妻、そして娘、息子の四人家族が休暇で田舎へキャンピングカーによるキャンプ旅行に出かけるところから物語は始まり、その直後、彼らの住んでいた都市に原爆が投下されます。そして、楽しいバカンスは生き残りをかけたサバイバルキャンプになるというSF映画です。ちなみに、SFらしい特殊撮影は、街の方角に見える絵で描いた”きのこ雲”だけです。あとは、彼らが食料などを調達する田舎町での混乱や避難するために道路を疾走する多数の車などです。ほんとうに低予算ですが、なかなかモノクロ映像はしっかりしています。

 アメリカの場合、クライシスになるとすぐに暴動や略奪が起こるわけですが、御多分に漏れず、この映画でも田舎店の店主によるまさかの車強奪未遂なども起ります。
 ただし、危機感を持つのは、男の主人公だけで妻や娘は平常時ののんびり意識のままで、実家の母親や家の状況を知りたいと不満を言い立てます。また、娘は途中で知り合ったばかりの若者たちとも親しく口をきいたりします。もうまるで現在の日本人の危機感の無さと同じですねえ。困ったものです(笑)。

 結局、彼らはキャンプ地にある洞窟にサバイバルの拠点を作るのですが、娘は無防備にも一人で近くの池に出かけ、偶然出会った若者2人に暴行されます。声を聞いた母親が駆け付け命拾いします。このへんからが”性本能”のタイトルの所以です。
 そして、この後の展開がいかにもアメリカ人らしい行動です。主人公と息子は、猟銃を持って復讐に出かけるのです。いかにも、西部開拓の子孫です。やられたらやり返す。自分の命や家族は自分で守るという意識が凄いですねえ。もちろんいまや母親もすっかり復讐心の塊です。
 
 襲った若者たちは近くの家に住んでいるのですが、実は彼らはその家の住民を殺し、その一人娘を監禁陵辱しているのです。いやあ、もう撃ち殺す正当性は十分です。
 その後、娘を助け出して洞窟に連れてきたのはよいのですが、若者グループにはもう一人たまたま不在だった一番悪のリーダーが居たのです。娘の心のケアは大事ですが、周囲にもっと気を付けて!と心配していたら案の定・・・とその後は、御想像ください。

 ラストは救助活動の軍に助けられるのですが、彼らに救援基地に行くよう指示した兵士二人が呟きます。「これで健康なものが増えた」と。これは娘2人を差しているのかな?・・なんかこのセリフは怖いですねえ。

 それにしても、この当時は有色人種への隔離政策が徹底している時代なので、映画では現在ほどの激しい略奪行動などは描かれていませんが、いまのSF映画の描写ではもう暴動です。コロナ禍でのニュース映像でさえ酷いですねえ。まあ、日本の常識は通じませんねえ。逆に3.11の際の東北での整然とした状況は世界でニュースになったほどです。

 それからいうと、日本の平穏な時代は今回のコロナで終わりかもしれませんねえ。いまや我が国以外の出来事がダイレクトに影響する時代です。ミサイルが落ちるとは思いませんが、もっと巧妙な見えない攻撃が心配されますので、政治家には本当にしっかり物事を見据えてほしいものです。などなど、作品の是非より今の我が国の頼りない政治情勢が気になってしまい、驚くことに全編を通常倍速で観てしまいました。
 俳優ながら監督したレイ・ミランドさんに敬意を表します。ちなみに、原題は「PIKUNIC IN YEAR ZERO」ですので、変てこネーミングの責任は、日本の配給会社にあります(笑)。

2022年1月22日 (土)

アクリル加工奮闘記

 昨年末、地震による転倒防止対策の一環として模型の破損を防ぐためアクリルケースの自作を試みた(当ブログ2021.12.25参照)ところですが、設計ミスから不出来な仕上がりでしたので、今回、お約束のとおり背の高いアクリルケースの製作に再挑戦しました。

20220114_0030341  まず、前回の反省を踏まえ、上からケースを底板に被せる方式として、4枚の横板をそれぞれ互い違いに接着したうえで、上版と底板の寸法を合わせることとしました。しかし、その方法は全くの”机上の空論”でしたねえ。実際の作業は悪戦苦闘の連続です。
 とにかく、25cm×40cm幅のアクリル板の”切り出し”作業からしてなかなか難しいのです。作業台が狭いためか、専用カッターの始点と終点部分がうまく直線に切断できません。やっとの思いで4枚が揃ったのでチェックもせずにそのまま順次接着しました。作業自体は、机に置いた板に直角に立てたアクリル板2枚の隙間に専用接着剤を流し込むだけなのですが、これがくせものでした。
 なんとか4枚目を張り付けた時、底が正方形のはずが、何故かダイヤ形に歪んで(接着面が直角じゃなかったのだ!!)おり、幅も1mm程度ズレ(切り出し寸法が不精密だったのだ!)ています。天を仰ぎましたねえ、ホント。

20220114_1927001  やむなく、この変形横板を上蓋アクリルに無理やり力ずくで矯正接着しました。そして、底板は、寸法に余裕を持たせたうえで、上から被せるケースを置けるスペースを残し、固定するための1.5cm程度のアクリル板を底4か所に接着しました。なにしろ微妙に形が変形している(笑)ので、接着には2~3度やり直しが必要でした。

 そんなこんなの大騒動を経て、やっとアクリルケースの完成です。
 そこで、むき出しのためにかねてから安全性が懸案だったスピルバーグ監督の「宇宙戦争」に登場する”ウォーマシン”のプラモデルを入れようとしたのですが、ここで、その模型の専用台座が未塗装だったことに気が付きました。昔からあまり台座に興味がないのです(笑)。
20220114_2223231   ただ、せっかく曲りなりにも保護ケースができたので、今回、台座を塗装してみました。まあ、急ぎ仕事でしたので、黒のサーフェーサーを吹いた後、タイトル名はラッカー塗料のゴールドで、台座の模様はゴールドとブロンズの混合色でドライブラシ塗装です。かなりなインスタント塗装でしたが、まあ、雰囲気は出ている気がしますので、これで完了です。正直、この”お手軽塗装”は気に入りました(笑)。

 20220115_1031161 20220115_1036041 では、第2回アクリルケース製作奮闘結果をご覧ください。・・やっぱり「男はつらいよ」の主題歌のようになってしまったかな。

 まあ、今回の失敗を生かして、次の挑戦を頑張りましょう。なにしろまだまだ、保護すべきブツはあるのですから(笑)。

2022年1月15日 (土)

スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム

 アメコミのヒーロー、スパイダーマンの新作「スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム」には魂消ました。マーベル・スタジオという映画製作会社のアイディアと実行力には本当に驚きます。かつて「アベンジャーズ/エンド・ゲーム」の予想を超えたあっと驚くストーリー展開にも驚嘆しましたが、今回は、それ以上です。なにしろ、これまでのシリーズの登場人物を同じキャストで集めて戦わすなどという、幼い子ども達が夢みるような世界を本当に実現するとは奇跡・・・それ以外ではお金の力しかありませんねえ(笑)。ともかく、そんな荒業が成し遂げられています。

Img_20220115_0001  ご存知のとおり、スパイダーマンは、本家のマーベルに映画化権(売却済み)はなく、確かソニー・ピクチャーズで2002年にサム・ライム監督がトビー・マクガイアを主演に映画化しました。この作品は平凡な少年がヒーローを演じる苦悩を描いた物語であり、史上初めて蜘蛛の糸でビル街を跳躍する姿を違和感なく描いた作品で、大ヒットとなりました。このシリーズは3部作となり、第2作に登場するヴィラン(敵役)のドクター・オクトパスは、背中からの触手でヒロインを誘拐するシーンなどはまさにモンスター映画といってよいほどの迫力であり、しかも列車や摩天楼でのスピードある戦いは、いままで見たことのない映像でした。映画「レイダース」のジャングル案内人役の俳優さんの出世作にもなりました。私の大のお気に入りです。パンフレット(劇場で品切れのため、オークションでゲット)によると、再出演したこの俳優さんは、4本の触手を人が大勢で動かしていた当時の撮影とのあまりの違いに驚いた(今はすべてCG)と言ったコメントが載っていました。逆に言うと、第1作の映像が当時としてはいかに画期的だったかを表していますねえ。

 さらに、2012年からは、主演者が代り新しいスパイダーマン・シリーズが始まりましたが、トカゲ男や電気人間が登場したものの、人気は今一つでしたねえ。私も全然買っていませんでした。こうした結果からか、2016年、製作会社のソニーもマーベルのアベンジャーシリーズ「ウィンター・ソルジャー/キャプテン・アメリカ」にスパイダーマンを登場(製作会社同士の業務提携)させました。

 そして、2017年には、ついにマーベル・スタジオによるスパイダーマン単独シリーズ、つまり、今作につながるトム・ホランド主演のスパイダーマンが本格的に始まりました。
 第1作は「スパイダーマン/ホームカミング」であり、タイトルはスパイダーマンの”マーベル”への帰還をお祝いする楽屋落ちの命名です。シューン・コネリーの007復帰作「ネバー・セイ・ネバー・アゲイン」と同じです。向こうではこんなタイトルの付け方もよくあるんだろうか?

 さて、その第1作はぐっと身近でささやかな内容で、”バルチャー”と呼ばれる翼の怪人を頭とした窃盗団のお話であり、第2作目2019年の「スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム」も、異世界からの来訪者と思われた”ミステリオ”もとんだ詐欺師だったという物語です。
 何しろ、その第1作と第2作の間には2018年「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」や2019年の「同/エンドゲーム」が公開されており、ヒーロー勢ぞろいで戦う”指パッチン”の大スペクタクル劇と比べたらなんとなく物足りないと思っていたら、2作目のラストで、全世界にスパイダーマンの正体を暴露するというとんでもない爆弾を落とした幕切れでした。

 その後一体どうなるんだと思った続きが今作なのですが、予告編でも既に周知されている範囲でストーリーを紹介すると、正体がバレた主人公が魔術師ドクター・ストレンジに頼んで世界中の人々からスパイダーマンの正体の記録を消そうとしたため、誤ってパラレルワールドから別のスパイダーマンのヴィランを呼び寄せてしまうというとんでもない展開となります。”指パッチン”も”とんでも魔術”もまあアメコミ原作のお約束ですから(笑)。肝心なのは、そんな馬鹿げた設定をいかに面白く巧みに使ってカタストロフィから救う物語を生み出すかが脚本や演出の腕の見せ所なのです。
 ちなみに、他の世界からスパイダーマンがやって来るという設定は、既にアニメ版映画であるのですが、凄いと感心したのは、他の映画シリーズ作品をパラレルワールドに見立てて、実写でその当時のキャストをそのまま登場させたことです。グリ-ン・ゴブリン役のウィリアム・デフォー、ドック・オク役のアルフレッド・モリーナ、エレクトロ役のジェイミー・フォックス、リザード役、サンドマン役のキャストも同じです。そしてあろうことか、・・・いや、ここからは映画をご覧ください。私は知らなかったので、ここが一番驚きました。

 また、ストーリーも、単に悪を退治しようというのではなくて、悪を救おうと言い出す高尚なテーマになっています。しかも、なかなか悲劇的な展開も織り込みながら、全3シリーズでの設定上の微妙な違いなどもさらりと説明していく手腕はなんとも素晴らしい。さすが、その力量を買われて3作とも監督したジョン・ワッツです。なお、脚本はクリス・マッケナとエリック・ソマーズという2人で、どうやらマーベルスタジオの中ではローテ―ションで各作品に携わっている(?)ようですが、いやはや、やっぱりハリウッド映画界の地力には感心させられます。

 以上のように今回は本当に楽しめました。これまでの2作の不満は一気に解消されました。まるで、この最後の作品のための長い布石だったのか、とさえ思えます。製作会社の背景などを考えれば考えるほど今回の企画が見事だと感じます。ちなみに、ネットによると、この3部作で終了する予定が、あまりの好評のせいか、新たなシリーズの製作が決定したらしい。おめでとうございます。できたらヒロインは古典的な美人が良いが・・。

2022年1月10日 (月)

フェバリット クロダイ(年なし)

 私はとある理由(当ブログ2020.11.09参照)から「フェバリット」社の釣魚模型シリーズを集めています。昨年の大みそか、何気なく”不用品販売サイト”を眺めていると、2017年の廃盤以降ほとんどオークションにも出品されない幻のフィギュア”クロダイ(年なし)”が売り出されています。

 このクロダイの模型は、全長51cmもある特大のフュギュアです。定価は確か2万円ぐらいはしたと思います。売り出し価格は送料別で5千円程度と割安感があり、”左胸ヒレ”に欠損があるという商品説明もありましたが、出品自体が少ないので思い切って購入しました。

 商品は正月3日に届きました。正月休みなのに宅配の人は本当にご苦労様です。頼んだ人が言っても申し訳無いですが・・。
20220103_1502501  ただ、商品の包装がプチプチに包まれていたものの、段ボール紙でそのまま巻いているだけの輸送方法には驚かされました。これで中身は大丈夫かと恐る恐る開けてみると、案の定本体と台座が壊れて二つになっています。ただ、幸いなことに破損したのは台座の継ぎ目の部分だけであり、そのほかは、台座や本体腹部に塗料はげが見られたものの、腹や尾ヒレなどには影響はありませんでした。特に、補修の型どりに必要な”右胸ヒレ”が無事だったのが不幸中の幸いです。

20220103_150354-2 20220103_160406-2  一方、商品説明に記載されていた”左胸ヒレ”の先端の欠損以外にも、背びれの前から3番、4番(中途から先)、5番の先端が欠けています。商品写真を確認してみると、これは当初から欠けていたのに気が付かなかったのです。どちらにしても、補修する気でいましたから特にクレーム対応などは行いません。それに、補修には台座と別れていた方が作業がやりやすいので、かえって好都合でした。台座部分が異常に重いのですよ、これが。天の配剤かもしれません。うん、”こいつは春から縁起が良い”のかもしれません(笑)。

 さて、補修の手順としては、まず台座の塗料ハゲの処理ですが、これはラッカー塗料のミッドナイトブルーにフラットベースを混ぜて筆塗りです。それだけで補修箇所が全くわからなくなりました。次に、銀色の腹部の塗料ハゲについては、シルバーにクリアーを混ぜたラッカー塗料を筆塗りした後、仕上げ剤スーパークリアー(光沢)をスプレーしました。これでなんとかごまかせます。まあ、もともと腹の底ですので目立ちません(笑)。

41qgzb8qctl_sy90_  そして、 今回の作業の最大難所は、なんといっても透明のヒレの補修です。欠損した部分はありませんので、新しく創り出す必要があります。
20220107_2210241  いろいろ考えた末に、やはり透明のUVレジンを使うことにしました。百円ショップに売っているUVレジン液は太陽光でも紫外線でも全く固まりませんので、新しく通販で”水玉の結晶”という商品(1,740円)を購入しました。日本の手芸工房が作ったとのことで、併せて購入した”コンパクトUVライト”(900円)を当てると簡単に固まります。やっぱり日本製が一番ですねえ。信頼がおけます。

41kyugt2dvl_sy90_  もちろん、型どりは、いつもの青い型取り剤”ブルーミックスクイック”です。まず型どりした型で部品を作ったのですが、気泡ができる上に、ヒレの端に後から接着する方法が思った以上に難しく、いろいろ試行錯誤しましたが、ここは思い切って、型を上下に分ける”受け皿”方式にしました。そして、レジン液を本体に被せた型枠にそのまま流し込んだのです。型枠をテープでしっかりと固定することが肝要ですが、初めてのことで少しゆるみが生じて若干凹凸ができました。
しかし、UVライトを何回か照射した後恐る恐る型を取った時、先端が本体ヒレにしっかりくっついていたのには感動しました。いや、本当にうれしかったなあ(笑)。
 あとは、反対側から今度は上から枠を押し付ける”スタンプ”方式です。そしてルーターで余分な部分を削り取って形を整えます。そして最後に仕上げ材スーパークリア(光沢)をスプレーすれば、微細な傷で白濁した部分もほとんど気にならなくなります。・・・これで完成です。

 なお、背びれの欠損も同じ補修方法ですが、型は無傷だった前から6番目の背びれ部分を使用し、前から3番と5番のヒレの先端、そしで4番ヒレの上半分を作っていきます。特に4番目の欠損面積が広い分なかなかうまくいかず、凸凹になった箇所に後からレジン液を追加するなどしたせいか、少し不出来な仕上がりになっています。まあ、今回で一液タイプのUVレジンの扱いにも慣れてきたので、2回目(あるとすれば)はもっとうまく出来そうです(笑)。

51k717dkzrl_ac_sx569_  最後は、本体と台座の接合です。ネットで調べてみると、レジン用の強力な接着剤のお勧めは、30分以降に固まり始めるエポキシ樹脂系2液タイプのものが良いとの意見があったので、早速通販で”ボンド/クイック30”(600円)を購入しました。実際使って2液を混ぜ合わせてみると、まるで透明のトリモチのような感触で、いかにも強力な粘着液という感じです。実際数時間後にはしっかり固まりました。いやあ、本当に良い商品を知ることができました。今後ともレジン製の大きな部品の接着には大いに活用しましょう。

20220110_0746521 20220110_0747451 20220110_0748171  結局、初めての作業も多かったため補修が完了したのは、商品が届いた日から1週間後の1月9日の夜でした。今回はUV透明レジンや強力接着剤の使い方など本当に勉強になりました。

 では完成品をご覧ください。左の一番目の写真が補修箇所の見える画像です。まあまあ目出た無くなっています・・・かな?

2022年1月 6日 (木)

マトリックス/レザレクションズ

 明けましておめでとうございます。

 今年初の劇場での映画鑑賞作品は、昨年から悩んでいた「マトリックス/レザレクションズ」にしました。ご存知のとおり、この映画の元祖である「マトリックス」は1999年に公開され、それまで見たことのない映像表現を駆使して、社会的な現象にまでなった作品です。その後2作ほど続編が作られましたが、よくわからない結末で終わっていました。

Img_20220106_0001  この映画史に残る作品をいまさら何故作るのか、非常に疑問でした。監督のウォシャウスキー兄弟は一人は女性になりましたし、CG技術の発展で世の中一変しています。しかも、予告編を見る限りでは第1作のリブート作品(シリーズを一から仕切り直す作品)の印象が強く感じられ、いくら当時は全く無かったCG技術を使って新たな映像に作り替えようと、あの公開時の衝撃にはかなうはずもありません。そんな思いから、今回は劇場鑑賞をパスしようと思っていたのですが、YouTubeなどでしきりに作品の解説(多分宣伝のため)が目につき始めた中、今作がリブートではなく、第4作目としての正式な”続編”であることが分かったので、正月明けに重い腰をあげました。

 さて、冒頭は、続編というものの、第1作目のデジャブともいえるような映像が展開され、一方でオリジナルとは違う俳優が演じる登場人物にはいささか戸惑います。ネオ役のキアヌ・リーブスとヒロイン・トリニティー役のキャリー・アン・モスを使うなら、最低限、モーフィアス役のローレンス・フィッシュバーンとエージェント・スミス役のヒューゴ・ウィーヴィングは継続すべきでした。特に、人間ではないスミスは治安維持プログラムなのですから、変えるのはおかしいなあ。劇中新しいスミスに「青い目はやりすぎ」と自虐ネタを言わせているが、どうやらスケジュールの都合がつかなかったのが原因らしい。本当に残念です。

 ともあれ、前作(第三作目)でネオもトリニティーも死んだはずなのに、ネオはゲーム「マトリックス」を作ったゲームクリエーターとして成功をおさめており、一方、トリニティーは、2人の子供を持つ主婦として生活をしています。そして、バッグスという青い髪の女性(新しい登場人物)がネオを覚醒させるところから物語はやっと本筋に入ります。やっぱり、この導入部分はデジャブ過ぎて退屈です。いくら、劇中でゲームの続編を作る話として「マトリックス4」の必要性を説いてもやっぱり自虐ネタです。

 そして、今作には、現在のAIの進歩を反映してか、コンピュータにいわば”人間臭さ”が付け加えられています。理屈が分からないので、私などには”プログラムの実体化”には違和感がありますが、人間と機械の共存のテーマを加味したのはやはり時代の流れなのでしょうねえ。もっとも、そのせいか、新しい配役のスミスの影がすっかり薄くなりましたが、ニール・パトリック・ハリス演じる後任のアナリストがなかなか嫌な奴でした。この俳優さんは才槌頭の容貌から「スターシップ・トゥルーパーズ」で超能力を持つ将校を演じており、少し人間離れした役が良く似合います(笑)。

 作品の講評としては、最後の”救世主オチ”はなんとも評価しにくいのですが、前半はともかく、後半は予想以上に面白かった。でも、あえて今続編を作る必要があるのかというと、往年のファンとしてはやはり疑問に思いますねえ。
 加えて、劇場では一般的なパンフレットが売り切れていたので、やむなくオークションで入手しました。何しろ第2作や第3作を再見するつもりがないので、細かな設定や登場人物の素姓について、鑑賞後勉強する必要がありました。やはり画面やストーリーを見てもよくわからないというのはイケませんねえ(笑)。

 

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