フィル・ティペット物語
アマゾンで、米国製ブレ―レイ「THE MONSTER COLLECTION」を購入しました。中身は「PHIL TIPPETT:MAD DREAMS AND MONSTERS」と「THE FRANKENSTEIN COMPLEX」の2枚にボーナスディスク1枚が入っています。
映画のSFX(特殊撮影技術)に詳しい方は、フィル・ティペット(PHIL TIPPET)といえばご存知だと思いますが、「スターウォーズ/帝国の逆襲」の雪原のトーントーンや大型装甲車のストップモーション・アニメで一躍その名を世界に知らしめた特殊映像技術者です。その後も、私のお気に入りの作品、例えば、ディズニー映画「ドラゴンスレイヤー」のリアルなドラゴンをはじめ「ロボコップ」の敵役ロボットED-206の絶妙な動きなどを生み出しています。また、アカデミー賞も特殊映像部門の賞を何度も受賞しており、一時は巨匠レイ・ハリーハウゼンの正当なる後継者とまでいわれていました。その彼の名前を冠した映像記録の発売です。もちろん英語版で日本語の字幕はありませんし、日本で視聴できるかどうか、不明でしたが、彼の隠れファンとしてはここは是が非でも(笑)買わなければなりません。
さて、リージョンはブルーレイの場合、日本と米国は同じですので、ディスクは見事に再生できました。以前、座頭市全作品をコンプリートした海外版ブルーレイが再生できなかった苦い経験がありましたので、実はほっとしました。
まず、お目当てのディスク「PHIL TIPPET・・・」は、フィル・ティペット本人が登場して、こどもの頃からの作品を含めて自分がかかわった映画の紹介をします。字幕がないのでほとんど何を言っているか分かりませんが、メイキングファンの私にとっては、コメントの合間に挿入される当時のメイキング映像が実にうれしいのです。写真で知っている撮影現場が映像で動くのです。短いショットですが、本当に楽しいですねえ。
本人以外にも多数のゲストから様々なコメントが紹介され、一言で言うと、”フィル・ティペット物語”とでもいうような内容になっています。
とりわけ、作品ごとに当時のスタッフ達が撮影に使った「ロボコップ」の実物大のED-206や「ドラゴンスレイヤー」のゴ―モ―ション用模型などを見せてくれるのがなんともファン心をくすぐります。
それにしても、ティペットさんは、昔は若ハゲで気弱な若者でしたが、功を為し年を重ねて実に優しそうな白髪のハゲじいさん(笑)になりました。その人の顔が人生を表すというのはそのとおりですねえ。いまだに自分の隠れ家のような仕事部屋で喜々として作業しています。その部屋には、撮影で使用した(?)模型やオスカー像が無造作に飾られ、様々な作業道具が並んでいます。・・・羨ましい限りです(笑)。
そして、ディスクには満を持して臨んだスピルバーグ監督の「ジュラシック・パーク」で起こった衝撃のエピソードがしっかり紹介されています。
製作開始当初は彼が中心で”ゴーモーション”という当時最高の”ストップモーション”技術でティラノサウルスの車両攻撃シーンを撮影していたのですが、突如ルーカススタジオのスタッフが極秘で開発を進めていたコンピュータ・グラフィック製の恐竜映像にとって代わられます。
当時は誰も思いもよらなかった技術革新です。公開されたCG製の恐竜のリアルさには、観客だった私も度肝を抜かれたのですが、ストップモーションで頂点を極めていたティペットさんにはどれほどの衝撃だったのが想像も付きません。
このディスクには彼のショックを象徴するかのようにフュルムが燃え尽きるような映像が挿入されています。
ちなみに「ジュラシック・パーク」ではまだまだCG技術が開発途上であり、彼は解雇されることなく、コンピュータに電極をつないだ恐竜ロボットのような模型を操作して映画作りに貢献しています。
その後、彼はその時のコンピュータ技術と併せたアニメ―ション技術を駆使して「スターシップ・トルーパーズ」の無数のバグズ(私のご贔屓です)を生み出しますし、そのほかにも、いろいろな映画に参加しており、その実績を伸ばしたようです。どうやら、ティペット印クリーチャーは私の好みに合うようで、どれも好感が持てる造形と動きでしたねえ。敬意を表します。
ともかくも、フィル・ティペットという特殊撮影技術者に関するこのような商品が発売されるということは、彼の功績がアチラでもきちんと認められているという証であり、昔からのファンである私としてはなんとも心強い限りです。
もう1枚のディスク「THE FRANKENSTEIN COMPLEX」は、キングコングから始まった、ストップモーションや特殊メイクアップなど主にアナログ特殊撮影の歴史の紹介です。様々な技術者や映画監督のコメントとSF・ホラー作品のメイキングなどが紹介されています。字幕が無いのでゲストたちのコメントが長く退屈なのですが、今迄にみたことがないような撮影風景の映像や小道具模型の数々はなんとも素晴らしい。特に「エイリアン」シリーズについては、どこかのスタジオの倉庫らしいところに「2」のクイーンの巨大な操り模型などをはじめ撮影に使った小道具や模型が飾られており、しかもかつて雑誌で見た円谷プロの”怪獣倉庫”の乱雑さではなく、きちんとディスプレイされているのは一見の価値があります。さすがハリウッドです。ただ「エイリアン4」のクローン実験失敗胎児の模型などを喜々として並べているのは勘弁してほしい(笑)。でも、こういう貴重なお宝映像を観ることができて眼福でした。
なお、3枚目のボーナス・デスクは、2枚分の目次のような内容でので言及は省略します。
最後に、こういう貴重なメイキング商品は、我が国のメーカーで、日本語字幕版を発売してほしいものです。貴重なアナログ撮影技術の資料になると思うのですが、いかがでしょうか。少なくとも私はまた買いますゾ(笑)。
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