キングスマン:ファースト・コンタクト
2021年最後の劇場での映画鑑賞は「キングスマン:ファースト・コンタクト」になりました(多分)。この映画は、ご存知の通り、「キングスマン」と「キングスマン/ゴールデン・サークル」の第3作目になるのですが、内容は”キングスマン”というスパイ機関の誕生物語という前日譚であり、時代は第一次世界大戦に遡り、主人公も前作とは全く違うのです。
そして、なにより面白かったのが、イギリス、ドイツ、ロシアの皇帝やアメリカ大統領などの国の統治者をはじめ、ラスプーチンやマタ・ハリなど歴史上の有名人物を登場させたうえ、戦争の陰で暗躍する”007”のような犯罪組織である”羊飼い”の陰謀を、世界大戦という戦争の始まりや終わりを虚実織り混ぜながら、毒のあるユーモアを含んだ演出で展開するストーリーです。先がまったく読めません。しかも、ハッタリのきいた娯楽活劇にもかかわらず、”反戦”というテーマが強く打ち出されていることにも舌を巻きました。ちなみに、今回は、前2作の漫画チックな馬鹿げたアクションなどが影を潜めているのも好感が持てます。これはシリーズ中の最高傑作といえるのではないでしょうか。
今作の主演は、英国の平和主義者の侯爵であり、現在の007の”M”を演じている、やや年を食っている感がするレイフ・ファインズが演じます。彼は名門貴族でありながら、南アフリカのボーア戦争で赤十字活動中の妻を亡くし、足に負傷するという過去を持ち、19歳となる一人息子を過保護に育てている裏で、密かに戦争回避に向けた活動に黒人と女性の二人の執事と取り組んでいるという設定です。その息子をハリス・ディキンソンという若手俳優が演じており、前半は、この親子二人がセットで、サラエボのオーストリア=ハンガリー皇帝の暗殺やロシアのラスプーチンの暗躍を阻止しようとするのですが、後半、とにかく”臆病者”と言われたくない息子は、無断で戦争に志願し、あの有名な”西部戦線”に送られます。アメコミ映画「ワンダー・ウーマン」で描かれた塹壕風景が再び再現されます。そして、英国王と妻の遺言に縛られた父親の過保護が思わぬ展開となりますが、そのあたりは是非映画でご覧ください。戦争の理不尽さや悲惨さが見事に描かれます。
一方、架空の犯罪組織”羊飼い”の戦争誘発、戦線拡大への陰謀はとどまるところを知りません。第一次世界大戦の当事者たちを唆したと言われる有名人たちを手下にして、数百メートルの高さの断崖絶壁で守られた頂にある秘密基地(羊小屋ですが・・)で会合をするシーンは、監督が大ファンという007の”スペクター”の 再現です。顔を見せないボスは、猫の代わりに羊を飼っており、部下へのパワハラは容赦ありません。この天然の要塞をどう攻略するのか、是非気楽に楽しんでください。正直心情的にキツイ展開もありますが、最近の本家”007”のように深刻ぶらないところが立派です。どんなときでもユーモアを忘れてはいけません。
それにしても、イギリス、ドイツ、ロシアの王様や皇帝たちが従兄関係(一人三役)で、幼いことから交流があったと言われると改めて欧州は歴史的に一体なんだなあと思われます。また、レーニンの扱いにも皮肉がきいています。そして、エンドロール中に席を立たないようにしてください。最後にとんでもない人物が登場します。
最後に、この映画の監督マシュー・ヴォーンは、TV映画「0011ナポレオン・ソロ」で有名な俳優ロバート・ヴォーンの息子として子供時代を過ごしたものの、実はDNA鑑定で、英国の有名な貴族の息子と分かったという大変な経歴の持ち主であり、彼が007が好きとか、劇中、主人公の公爵に「略奪、人殺しで貴族になり上がった」と言わせているのは、そういった私的な背景があるのでしょうか。すみません、余計なことですねえ。
そして、ハリウッド版「GODZILLA ゴジラ」第1作の主演者アーロン・テイラー=ジョンソンがあんな役で出ているのは、次作以降の布石でしょうか。しかも、最後のワンシーンで、スタンリー・トゥイッチ(「プラダを着た悪魔」の名脇役)まで顔を出すのは、やっぱり、新たなシリーズ化かな? 期待しています。


コメント