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2021年11月25日 (木)

ビリケン商会 通信販売サイト

 このブログでもよく紹介する模型ショップの「ビリケン商会」に昨年通信販売サイトが開設されました。会社概要によると、このショップは、1976年に日本最初の古い玩具を販売する専門店として、南青山の骨董通りにオープンしたそうです。そして1983年に製造販売を始めたようです。いわゆるフィギュア・ショップの老舗ですねえ。
 ビリケン商会は、これまで様々なソフトビニール製の未彩色キットを生み出してきましたが、どの製品も見事な造形です。製造を始めた当時のフィギュア製造技術水準は、まだまだ発展途上だったのではないか思いますが、ビリケン商会の製品は、他のメーカーとは一線を画すほどリアルでした。東宝のゴジラやウルトラ怪獣などはもちろんですが、海外物としてレイ・ハリーハウゼンやその他のB級映画のユニークなモンスター達が商品化されており、その映画作品のチョイスといい、キットのデザインの凄さ、そして組み立て易さなどは、SF映画ファンや模型マニアの心を揺さぶりました。この辺の模型づくりの事情は、過去の当ブログをご参照ください。今でも「大アマゾンの半魚人」や「フランケンシュタイン」などは、伝説の名作キットです。

 ただ、惜しむらくは、流通量が非常に少なくて、直ぐに絶版になってしまい、しかも通信販売も電話で在庫の有無を確認したうえで注文する方法しかなく、地方在住者には、入手すること自体がなかなか困難な幻の商品群だったのです。ちなみに、私はヤフーオークションでゲットしていたのですが、完品はプレミア価格でなかなか手が出ないので、”箱なし、説明書なし、難あり”のジャンク物が狙い目でしたねえ。でも、ここ最近特に価格が高騰しています。困ったものです。

 こうした中で、昨年、2020.12.18に待望の通信販売サイトが開設されました。翌年の2021.1.19から過去のキットの一部が売り出されておりますが、いずれも”ソールドアウト”の表示です。多分、一瞬で売り切れたのでしょうねえ。なにしろ「ゴジラの逆襲」や昭和の「大怪獣ガメラ」などですから、創立以来の初志を貫かれている気がします。

20211115_1426491  そして、2021.4.1に待望の新作キットが発売されました。選ばれたモンスターは「フランケンシュタインの怪獣/サンダ対ガイラ」という誠にマニアックなチョイスであり、しかも2体セットという豪華版です。実は、この作品は東宝特撮作品の中でも異色作であり、私のお気に入りの”ガイラ”は体長20m程度(当時のゴジラは50m)で人を襲い食うという恐怖のモンスターなのです。これまでも”エクスプラス”などの他のメーカーからフィギュアが何種類も発売されていたのですが、どうも造形がイマイチで映画の雰囲気をうまく再現できていなかったのです。
 しかし、さすがビリケン商会です。完成した商品写真を見たところ、実にリアルで出来がよいのです。新人の造型師さんらしいのですが、今後も大いに期待ができます。正直、最近の他のメーカーさんの商品は”微妙に映画と似ていない”という不満を感じることが多かったのですが、この商品には大変満足しました。

20211115_142725 20211115_1434571 20211115_1430381  ところが、第1回の発売分は、瞬時に売り切れたようで、直ぐに2021.4.14に第2回目の販売が行われたのですが、それも私が知らない間に”ソールドアウト”です。それから、2021.10.28の第3回目の発売日までが長かったなあ。
 ともかくやっと入手できたので、ご紹介します。ちなみに、11.17には「メカゴジラの逆襲」が売り出されていましたが、これも販売と同時に売り切れという状態です。この東宝特撮黄金時代の後期作品には全く興味がないので、私にとっては対岸の火事なのですが、今後ともこのショップの動向には、十分気を付けていく必要がありそうです。特に、昔の海外モンスターの再版も期待したいのですが、いかがでしょうか。

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 写真は、とりあえず部品のバリなどを切り取り仮組みをしたところです。これから、固定化と安定性を保つために、下半身にレジン液を注入し、継ぎ目をパテで塗って、下塗りして、塗装するということになるのですが、寒くなってなかなか気力が整いません(笑)ので、もう少しこのままで眺めていましょう。うん、映画のワンシーンを再現したかのようなポーズが実に良い(笑)。

2021年11月21日 (日)

エターナルズ

 映画「エターナルズ」とは、マーベル・スタジオの「アイアンマン」から始まり、「アベンジャーズ/エンドゲーム」で完結したアメコミ実写化シリーズの新たな作品です。

Img_20211119_0001 物語は、7000年前に宇宙の創造者に命じられて、人類を邪悪なモンスターから守るために派遣された10人の超人たちの物語です。冒頭「2001年宇宙の旅」に登場するモノリス(黒い長方形の物体)に金筋の文様を入れたような宇宙船で彼らは地球のメソポタニアにやって来ます。丁度、古代メソポタニア人がモンスターに襲われており、漁師の親父が食われた後にその息子を助けるのですが、10人の立ち位置を考えれば、最初に犠牲となった親父も助けられてたのではないか、と素朴な疑問が浮かぶほどのタイミングなのです。あの親父は死ぬ必要があったのかな?この最初の疑問がこの作品の全体の印象を象徴します。ツッコミどころ満載です。

 このシーンは、まさに神話に出て来る神の降臨の風景なのですが、そもそも、宇宙の創造主という存在が胡散臭い(これは、ラストのドンデン返し的な展開につながります)し、十人十色と言うが、それぞれのエターナルズ達の能力の設定理由がよくわかりません。
 例えば、目から光線を出し、マントも無くて空を飛び回る白人系のスーパーマン、あらゆる物質を変換してしまう中国系の女錬金術師、治癒能力者のメキシコ系の女リーダー、実物そっくりの幻を生み出す未成年者(成長が固定)の女幻術師、あらゆる武器を創造できるPTSDの女戦士、その女戦士にぞっこんの韓国系の腕力男、人類全部を洗脳できる根暗な催眠術師、指弾を撃つパキスタン系の陽気な男、高速で動ける聾唖の引きこもり女、科学技術を生み出す黒人の同性愛メカニックというメンバーなのです。典型的な戦うヒーローというイメージではなく、現在流行りの多様性や人種に配慮した”大人の設定”かもしれません。

 しかも「アベンジャーズ/エンドゲーム」で宇宙の悪サノスの指パッチンで人類が半減した時も彼らは静観しています。このことは、劇中で、わざわざエターナルズの一人に言い訳をさせています。曰く「”指令”ではなかったので、サノスには介入しなかった」と。前シリーズとの整合性を保つために、製作陣(脚本)が苦労しているようです(笑)。ちなみに、”指令”だったモンスター討伐は、数千年前に達成しており、その後は、エターナルたちは、人類社会の中でひっそりと身を潜めてきた(もっともインドの映画スターを一人で代々演じている派手男もいますが)という設定です。

 そして、映画は淡々と過去のエピソードを交えながらこの神話を説明し、そして現在に至って絶滅させたはずのモンスターの復活、エターナルズのリーダーの死など、次々と不可思議なことが起こり、世界に散っているエターナルたちを集めていくのですが、神に等しい存在も人類の文明にすっかり毒されている状況がそれぞれ描かれます。例えば、中国系の錬金術師のヒロインは大学教授とのおつきあいに悩んでいるとか。 その教授を演じるのが「ゲーム・オブ・スローンズ」の主人公の一人北の国の王であり、”鴉”役を演じたキット・ハリントンです。彼にこんな普通の人間の端役?などとおもっていたら、「うちの家系もなかなか複雑で・・・」というセリフもあって、エンドクレジットで正体の一部を見せます。

 ちなみに、マントなしのスーパーマンを演じるのは、同じドラマで北の国の長男を演じたリチャード・マッセンでした。どっかで見た顔とは思っていましたが、同ドラマで行き当たりばったりな母親に引き回された役柄とよく似ています(笑)。ついでにいうと、アンジェリーナ・ジョリーは、PTSDの女戦士役です。
 なお、過去のエピソードでは、原爆が落とされた広島の地で、科学技術を不用意に進歩させた責任を感じて号泣している黒人のエターナルの姿には少し泣かされます。演じるのは意外なことに「ゴジラVSコング」でのメカゴジラを創り出す企業の陰謀を暴く陽気な黒人役の俳優さんでした。
 そのほか、エターナルのキャストは、最近のヒット作に出演している話題の人ばかりです。さすが、マーベル・スタジオです、その時の旬の人気俳優を取り込む商売気は立派です。そういえば「キャプテン・マーベル」の主演女優も直前のアカデミー賞主演女優さんでしたねえ。

 この作品は、ラスト近くのどんでん返し、特に、宇宙の創造者の正体、エターナルズのメンバーの争いなどが描かれるのですが、人類滅亡まで7日間などという割にはまったく危機感やスリルもなく、超能力を駆使した戦いもあれよあれよと流れます。
 しかも、最後は恋愛感情で腰砕け?というような中途半端な結末です。もっとも、その後は宇宙の創造者の怒りによって・・・次回に続くという有様なのです。今回は、いわばエターナルズという新たな世界を紹介したものにすぎないのでしょう。

 なお、未見の方は、エンドクレジットが始まっても席を立たないようにしてください。マーベル作品の恒例ですが、前述したように、次回に向けたエピソードが挿入されています。しかも、今回は、まずミッド・クレジットで、唐突に2人の新ヒーロー(?)が登場しますし、さらに、ポストクレジットで、前述のように、教授の正体の一部を垣間見せます。しかも、声(セリフ)だけでもう一人(有名な黒人俳優らしい)加わるようです。ヒーローの数が多くてわからなくなります(笑)。

 まあ、結局すべては次回作からなのでしょう、きっと。このマーベルの商売が成功することをお祈りします。私は、今回、劇場パンフレットは買いませんでしたので、当ブログもチラシでご容赦願います。しかし、・・・・長かった(笑)

2021年11月19日 (金)

ゲーム・オブ・スローンズ BDフルコンプリート

20211115_150532 20211115_150444  海外ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のブル―レイ・フルコンプリート全8巻(メイキング別巻1)をやっと通しで観ることができました。なにしろ、8シーズン分ですから、ディスク27枚に全73話が入っています。1話1時間弱としても73時間ほどの上映時間です、本当に時間がかかりました。しかも、途中で掟破りの”早送り”まで使ってしまいました。一度無料の動画配信でアットランダムで眺めていました(主にドラゴン登場シーン)から、勘所はほぼ分かりますし、あまりに酷いエログロシーンなどは早々に飛ばします。まあ、本の飛ばし読みと同じです(笑)。でも、何故、再びブルーレイで観たのか、というと画質が隋分違う(個人的な印象)からなのです。ちなみに、吹替版です。

 そして、今回、やっと全体のストーリーを把握することができました。とにかく王座をめぐる各諸侯の争いですから、出てくるやつらがほとんど悪逆非道な連中です。シリーズの序盤では、誰が主人公がよくわからないうちに、子どもを搭から突き落としたり、昭和の時代のような赤裸々なセックスシーン、残虐な処刑など、”テレビの自主規制はどうなっているか”などと思ってしまうほどのえげつない場面がてんこ盛りなのです。なんでも、ケーブルテレビらしいので、テレビの規制は受けないそうです。でも、”こんなハードな映画が世界的な大ヒットになるとは世も末だ”と思っていたら、ミイラ取りがミイラになってしまいました。しかも、けっこう後々まで尾を引きます。随分前に発売されている高価なデザイン画の特集本も欲しいなあ(笑)。

 この作品の魅力は、とにかく物語がよく練られていて、ドラゴンやゾンビが出てくるのに、そのリアルな中世のような世界観が見事なことにつきます。北アイルランドをはじめとする素晴らしいロケ地と精緻なCG合成がダークで残酷で美しいファンタジー世界を作リ上げています。そして、やっと、この物語の主人公達が判明しはじめた時(なにしろ、登場人物が多くて・・)、すっかり虜になっていました。しかも、最終章では、敵同士だった者たちがゾンビたちとの戦争前夜に心を合わせる場面をはじめ、本当に救いのない悪党たちはそれぞれ無残な死を迎えるし、ドラゴンの母も含めて、主人公達は落ちつくべきところに落ち着きます。まあ、その本質は”勧善懲悪の王道の物語”だったのです。そのために、あんなにも残酷で非道で淫らなエピソードがあったにもかかわらず、あと味がそう悪くないのです。しかも、鑑賞後もけっこう後を引くほどにです。

6240675 6240655 6240666  私のような動画配信で初めて知ったものも多いのか、あるいは人気が衰えないのか、2019年5月に放送が終わっているにもかわらず、先日ドラゴン3種のフィギュアが発売されました。以前に発売されていた高額商品はとても買えませんが、このフィギュアは小型で手頃なので思わず買ってしまいました。商品の外箱をご紹介しましょう。

 それにしても、このドラマの出演者が随分ハリウッドの大作映画に出演しているようです。いまさらながらですが、やっと気が付きます(笑)。
 まずは、短矩の俳優ピーター・ディンクレイジは「Xメン フューチャー&ファスト」や「スリー・ビルボード」に出ていましたし、騎馬民族の族長役の大男は「アクアマン」の主演ジェイソン・モモアでした。インディアン風の蛮族メイクだったので当初はまったく気が付きませんでした(笑)。ドラゴンの母役、エミリア・クラークも「ターミネーター新起動/ジェニシス」や「ハン・ソロ」のヒロインでした。金髪でないのでわかりません(笑)。北の国の長女役ソフィー・ターナーは、やっぱり「Xメン」でした。
 でも、この長いドラマの本当の主人公である、北の王の落とし子役のキット・ハリントンの出演がないなあ、と思っていたら、先日公開された「エターナルズ」でやっとお目見えです。でも、ちょい役?などと思っていたら・・・、続きは映画「エターナルズ」の感想の中でお話ししましょう。

 それにしても、マーベルなどのアメコミ映画は、ヒットした作品の若手俳優達を次々登用するのですねえ。まあ、その時の人気にあやかろうとする戦略なのでしょう。商売上手ですねえ。

 おまけに、最後まで生き残るドラゴンである”ドロゴン”の勇姿をどうぞ。残りの”ヴィセリオン(ゾンビ化)”と”レイガル(緑)”は箱の中のままです。サイズは小さいですが、レジン製で特徴をよくとらえた造型です。劇中で人が乗るので印象的な背面からの写真もサービスします(笑)。

20211115_144225-2 20211115_144250 20211115_144325 

2021年11月16日 (火)

原子怪獣現わる(その2)

20211115_145643   ストップ・モーションの巨匠レイ・ハリーハウゼンが初めて特殊撮影の全権を任されたのが、1953年公開の作品「原子怪獣現わる」です。ストーリーは、北極圏に眠っていた巨大生物”リドサウルス”が水爆実験によって蘇り、ニューヨークを襲うというものです。ご存知のとおり、「ゴジラ」の元ネタです。東宝のプロデューサー田中友幸氏がアメリカ訪問時にこの映画を観て、円谷英二に映画製作を持ち込んだのは有名なお話です。

 20200518154112917005_e99755371a57e04a470 さて、個人的には、子どものころ、伝説の名著(後年復刻されたぐらい)と評価されるキネマ旬報別冊「世界怪物怪獣大全集」に掲載された、この映画に登場する怪獣の一枚のモノクロ写真に衝撃を受けた記憶があります。なにしろ、当時(昭和42年)の東宝怪獣たちとは全く異なる、人間が中に入っていない、本物としか思えないリアルな姿だったのです。
 ちなみに、このキネ旬別冊には大伴昌司監修で海外映画に登場する様々なモンスターの写真が掲載されており、私の”異形好き”を決定付けた”悪魔の書物”でした。それにしても、地元の書店の書棚の中からこの雑誌を見つけた時は本当にうれしかったものです。世界にはまだこんなにも知らない映画があるんだと感心しましたねえ。ビデオもDVDも無かった時代ですから、テレビの特番など様々な機会に50年代製作の外国のSF作品を観る機会を探していました。本当に昔の映画は見る機会が無かったなあ。その飢餓感のせいか、いまでも、時々発売されるB級SF映画のDVDは思わず買ってしまいます。

 考えてみれば、写真というものは凄まじい”威力”があります。戦場の1枚の写真が世界を動かしたり、たった1枚のスナップ写真が100年に一度の美少女を誕生させたりすることはご存知のとおりですが、私にしても、こどもの頃の1枚の写真から妄想され創り出された”記憶”が今でもその作品の評価になっています。後年、レンタルビデオなどが登場し、それらのモンスター映画を観た時のショックはなかなかのものでした。B級どころか、なんとも筆舌に尽くしがたい程悲惨な出来のものがほとんどだったのです。大伴さん、酷いですよー(笑)。
 もっとも、レイ・ハリーハウゼンの作品だけはさすが見事なアニメーションであり、彼は、この作品以降も次々と傑作を生み出し、CGの全盛時においても、そして、彼の死後もその名声と評価は途絶えることなく伝説となっていますし、私もいまだにコレクションしている有様です。

20211115_1421501 20211115_1422441 20211115_1424451  ちなみに、先日エクスプラス・トイから”リドサウルス”が発売されました。大昔にビリケン商会から発売されていた、おとなしい雰囲気のモデル(当ブログ2006.12.31.参照)とは違って、映画のポスター風に少し凶暴なイメージで造型されています。ご覧ください。

 なお、最後のアップ写真は、BDの表紙に併せて、左右反転させています(笑)。

2021年11月 4日 (木)

燃えよ剣

 映画「燃えよ剣」は、予想以上に面白かった。
 まず感心したのが、キャスティングの見事さです。土方歳三を演じた主演の岡田准一は「シェーン」のアラン・ラッドのようなはまり役だし、鈴木亮平の近藤勇、山田涼介の沖田総司は、そのまんまの適役です。このトリオをハワード・ホークス監督の「リオ・ブラボー」のように撮ったという監督のコメントから言えば、飲んだくれのじいさん役のウォルター・ブキャナンに当たる井上源三郎を演じた、たかお鷹(俳優名)が実に味がありました。源さんが「実は一人も斬っていない」と独白して、土方が「知っているよ」というあたりは名場面ですねえ。実に気に入りました。そのほか、汚れ役の芹沢鴨を演じた伊藤英明がえらい。この人は本当に悪役が良く似合う。なんか三国連太郎の道を歩んでいるのかな? また、男の夢のようなヒロイン(フィクションの人物)、なんとも自分勝手な徳川慶喜、饒舌な密偵山崎、ワンシーンだけの岡田以蔵など、なかなかユニークな人物設定でしたが、それぞれ演じた俳優さんがはまり役です。

Img_20211104_0001  次に、物語を回想シーンでまとめたことが結果として良かった。
 なにしろ、多摩のバラガキ(茨垣)時代から、京都、そして江戸から蝦夷まで、戦い続けた土方歳三の生きざまを2時間半(劇場鑑賞に堪える限度かな)で描くのですから、やむ得ない措置と思いますし、逆に、見せ場をつないでテンポも良くなった気がします。
 あえて言えば、西洋風軍事を取り入れて組織化する土方歳三という男の非凡性をもう少し掘り下げてほしかった、というのは贅沢でしょうか。

 そして、なにより、江戸幕末の時代の風景を再現しようとしたところが凄い。
 なかなか味のある映像とおもったら、撮影したロケ地に驚きます。パンフレットによると国宝級の城や神社仏閣をはじめ、自然が残っている京都、滋賀、奈良、岡山などに長期ロケしたとのことです。しかも、凝りに凝った角度から名刹を切り取り撮影しているので、実に本物らしい大作感がにじみ出ています。しかも、俳優たちの扮装がリアルです。髷などはハリウッド仕込みの技術も使われているとのことで、東映時代劇のカツラとは一線を画しています。

 しかも、どうやら、本物の幕末の写真に写っている庶民の姿を再現しようとしたカットもあって、監督の強い思い入れを感じました。ハリウッドの「ラスト・サムライ」のセットに負けないでほしいものです。でも、やっと、わが国でも、史実を忠実に再現しようとする映画が登場してきたのは、本当にうれしい限りです。時代劇ファンとしては、こういう新しい流れを今後ともしっかり応援したいなあ。

 なお、今回は、新撰組おなじみの浅葱色のだんだら模様の羽織があまり使われません。幹部たちは皆黒い羽織なのです。”えっ”と驚いたら、どうやら史実(芹澤鴨案とは不明とのこと)らしいのです。それなら、もっと黒を早く使えよ。と言いたくなりました(笑)。だんだらは安っぽくて個人的には好きではなかった・・。
 ついでにいうと、バラガキ時代の土方の百姓らしい”ちょこちょこ”歩きは、「たそがれ清兵衛」の走り方のように史実かなとも思っていましたが、これは監督の想像らしい。少しやりすぎ?かな。

 最後に、CG処理について言及します。時代劇の要である殺陣は奇をてらないオーソドックスなリアルなもので良かった。木刀のシーンなどなかなか迫力があった。しかし、それ以上に、CG処理に感心しました。本格的に宮大工に作らせたという池田屋のセットは、あとあと恒常的に使うもので、障子や床の血のリや破損はCG処理と言います。なかなかリアルな血も出ますし、刃が打ち合うと火花も出ます。昔、アナログでやった火花にはがっかりした映画もありましたが、今回は実に見事でした。
 本当に、昔、若い頃に夢見たリアルで派手な殺陣が実現してきているのですねえ。いやあ、うれしい限りです。今回は、原田眞人監督を見直しました。かつて「ラスト・サムライ」に俳優として出演した成果が出てきたような気さえします。ありがとうございました。  

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