円谷英二 生誕120周年
今年は、かつて東宝でゴジラ、テレビでウルトラマンを誕生させた”特撮の神様”と称された円谷英二特技監督の生誕120周年らしい。その証拠に、月刊誌ユリイカに「円谷英二/特撮の映画史 生誕120年」という特集が組まれています。
一方、YouTubeを見ると、オタク学で有名な岡田斗司夫氏の無料講座などで、”特撮は死んだ”などと解説されています。映画製作においては既に円谷英二特技監督が生み出した伝統の特殊撮影技術、いわゆるアナログの特撮は、いまやCG技術によって代替されてしまったというのです。その止めを刺したのは、「シン・ゴジラ」だったそうで、総監督だったアニメ「エヴァンゲリオン」の庵野秀明は、新しいゴジラ映画を作るため、アナログの特撮技術を駆使した短編映画を作ったのですが、その出来上がりに全く満足できず、新作ゴジラでは、ほぼCG技術でリアルな映像を造り上げたそうです。
まあ、資本力の乏しい日本映画界では「シン・ゴジラ」を例に出すのでしょうが、ハリウッド映画などでは、その随分前からCG技術が主流です。「ジュラシック・パーク」の第1作は、CG映画の古典ともいえるもので、いまや背景はグリーン幕だけで何でもできる時代なのです。しかも、逆にリアル感を出すため、あるいは役者の気分を高めるためか、実物大の美術を作るようなこともしているのですから、もう、飛行機模型をピアノ線で吊るしたり、大きなプールに模型の戦艦を浮かべる撮影は遠い、遠い昔のお話なのです。
第一、「ゴジラ/キングオブモンスターズ」で往年の東宝怪獣たちを蘇らせたハリウッド映画では、冒頭「本多猪四郎監督に捧ぐ」という字幕に驚いた覚えがあります。私の子供のころは、ゴジラ映画は、特様の神様”つぶらやえいじ”の作品と思っており、監督の名は全く意識していませんでした。最近ですよ、本多猪四郎監督の評価が高まっているのは。・・・実はうれしいことです。昔は、特撮は褒めるが、映画自体はB級のゲテモノ、子供だまし扱いでしかなく、本多監督への評価は全くなかったといってよいのですが、はっきり言えるのは、彼の怪獣映画は、後年の他の監督の映画と一味違います。
少し横道にそれましたが、ユリイカの特集号で、円谷英二特技監督の弟子たちの師匠に対する賛辞ばかり読んでいると、やっぱり”特撮”が目的化していたのではないか、という思いが強くなります。映画としてリアルな映像を創り出すための技術が、手段と目的を取り違えているような気がします。多分、”親父さん”は、通常の撮影では不可能であるリアルな映像を作るために、いろいろなアイディアや特殊な撮影技術を駆使したのだろうと思います。それが寒天の海や絵の具の原爆雲になったものであり、実際、聞いて驚く非凡なアイディですよねえ。
そして、そのテクニックを磨き上げていったことが、伝統となり、類まれな”特撮”独自の映像世界を造り上げたのでしょう。
今回、ユリイカの円谷歌舞伎への賛辞を読んだせいか、彼の原点である戦争映画を再見したくなりましたので、円熟期の「青島要塞爆撃命令」「日本海大海戦」「山本五十六」のDVDを観ました。いずれも、ストーリーの陳腐さや冗漫さに途中からドラマ部門をすっ飛ばかして、特撮シーンばかり見てしまいました。いくら、富士山麓に野外の青島要塞を作って機関車を走らせても、大プールに日本海や真珠湾を作って、巨大な模型戦艦を浮かべても、今の(大人の)目では決してリアルには見えません。火と水は縮小しないからです。
しかし、模型のアクションとしてみた場合は、なんとも理屈抜きで素晴らしいものなのです。「日本海大海戦」での日本海でのバルチック艦隊との戦いは、一体どれほど大きな模型を作ったかな、と感動しますし、「連合艦隊司令長官 /山本五十六」では0戦が戦隊を組んで飛ぶシーンなどの操演技術の素晴らしさには言葉がありません。また、ジャングルの島の模型の精緻さも必見です。まさに、職人たちの熟練の手腕です。この職人技を観ることに”特撮”の醍醐味があるのです。
いやあ、改めて円谷特撮の凄味を楽しみました。やっぱり、”特撮の神様”は、当時としては、世界最高の職人技だったのでしょうねえ、きっと。それを再確認しただけでもよかったなあ。特に「日本海大海戦」は、勝ち戦だけに気分が良いのです(笑)。
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