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2021年10月29日 (金)

アラビアのロレンス

 先日観た「DUNE/デューン 砂の惑星」の余韻を引きずっていたせいか、原作に影響を与えたというデビット・リーン監督の本家「アラビアのロレンス」を観たくなりました。しかし、残念なことに、この名作をコレクションしていなかったことに気づき、丁度、半額セールだったブルーレイを購入しました。

91gthe6588l_ac_sx342_  久しぶりに観たところ、まず、冒頭のオートバイのシーンから私の記憶と違っています。確か舗装した地面だった気がしたのですが、どうやら、これは多分名物映画評論家の故淀川長治氏が公開当時”予想外の幕開けだった”と評した映画雑誌のコメントから、勝手に刷り込まれたニセ情報のせいだったのでしょう。まったく私の記憶は本当にあてになりません(笑)。しかも、最近、年のせいかさらに思い違いが多くなったような気がします。

 で、ストーリーも全く覚えていない(笑)状態なので、実に新作を観るような新鮮な気持ちです。主演のロレンスを演じる若き日のピーター・オトゥールが若い(当たり前)ですねえ。加えて、その当時、いろいろな大作映画に脇役で出演していた、ハンバーグ顔のアンソニー・クエール(クインじゃないよ)の顔が懐かしい。

 しかし、有名なオマー・シャリフの登場シーンは、さすがに覚えています。灼熱の砂漠で陽炎の中から現れる黒い影、CGなど全くない撮影ですから、現場は大変だったのでしょうねえ。また、井戸の水を飲んだぐらいで、射殺される砂漠の民の非情さは、わかっていても戦慄します。今も昔も変わらないような気さえします。

 そのほか、主人公のロレンスが、死の砂漠の向こう側にある港町のドイツ・トルコ連合軍を破るために、不可能と思われる作戦を立案するシーンは、まるで救世主が神の啓示を受けるような描写ですが、自ら決死隊を組んで乗り込むというくだりは、まさしく戦争映画の王道です。

 いやあ、この辺までは実に面白かったのですが、いざ港町の要塞への攻撃場面になると、カメラが町全体を俯瞰したままなのです。居間のテレビ画面では全くイケません。ラクダに乗った大勢の戦士たちが砂煙を挙げて攻め込んでいるのですが、神の目を持たない者には、ラクダも人も小さすぎてまるで見えません。やはり、この70mm映画は、劇場の大画面で見るべきものなのですねえ。家庭の小さなモニターで見るべきではありませんでした。残念です。まあ、いわゆる”戦争娯楽映画”ではないですからね、仕方ありませんね。

51hb6qxlll_sy452_bo1204203200_  ところで、お話は全く変わるのですが、予約していた「DUNE/デューン 砂の惑星」のメイキング本がアマゾンから届きました。分厚い大型本なのに、段ボールでもなく、緩衝材もないただの薄手の厚紙封筒に封入してきたのに驚きます。輸送中の手荒い扱いのせいか、封筒の角がつぶれています。幸い、本体の角などは無事でしたが、アマゾンももう少し神経を使ってほしいものです。普通の雑誌や文庫本などの柔らかい紙の本と違って、こういう固い表紙を持つ大型本は値段が高いので、もっと輸送方法を考えてほしいものですねえ。

 話がさらに横道にそれましたが、今回紹介したいのは、この本の内容です。映画に登場する宇宙船や衣装、セットなどのデザイン画とその製作過程等を集めた解説本になっています。前回のブログでも触れていますが、この映画の魅力はなんといっても、SF世界をリアルに見せた素晴らしい映像です。そして、それらの現実にはない架空のメカや習俗を造り上げたのが、類まれな想像力と卓越したデザイン力なのです。まず、前回のブログに引き続き何度もいいますが、なんといっても宇宙船のデザインが秀逸です。いままでに見たことのないユニークさですし、それでいて、この架空の世界によくマッチしています。それは、それぞれの背景をよく考え抜いた監督の指示によるそうです。

 また、衣装などでも、デザインの製作コンセプトに関するコメントなどを読むと、シャーロット・ランプリング演じる帝国の女巫女の衣装をチェスのコマの形にしたのは原作者がチェス好きだから、というのには笑いましたが、それぞれのデザイン検討のイメージには、監督の細かな指示が付いています。例えば、悪役のデブは「地獄の黙示録」のマーロン・ブランドが演じたカーツ大佐のような陰影のある姿にするようにとの指示とか。そして、そんな監督のイメージを見事に実現するスタッフの技術力も高い。闇の中で顔が映り、長い裾がどんどん伸びて空中に浮かぶ姿はなんとも戦慄ものでした。

 こういう様々なエピソードが豊富な図版や美しい写真とともに、カテゴリー別に記録されています。まさしく、映画の裏側、創作の過程を克明に記録した一冊の資料になっています。私にとっては、この本を手に取り、読んでいる(眺めている)間がまたとない至福の時間でした。日本語訳の出版、ありがとうございました。

2021年10月20日 (水)

DUNE/デューン 砂の惑星

 映画「DUNE/デューン 砂の惑星」は、欧米のSF小説界では大変有名な作品らしい。映画化も何度も計画され、結局、映画が実現したのはデビット・リンチ監督の「デューン 砂の惑星」だけのようです。最近、テレビドラマ化されたようですが、これは別にして、デビット・リンチ作は、膨大(らしい)な原作を2時間16分に収めるために短くしようとしたせいか、とりとめのないようなお話になって、全く面白くなかった記憶があります。公開時ロードショーで観た若き日の一コマを思いだしましたが、何故、あの映画を選んだのか、未だにわかりません(笑)。ただ、リンチ監督らしい趣味の悪いとしか言いようのないデザインの宇宙船やグロテスクな異形の人間達の姿はいまでも鮮明に覚えています。

Img_20211020_0001-2 こうした体験があるだけに、この「DUNE/デューン 砂の惑星」も実は期待していませんでした。ところが、始まってすぐに映像に引き込まれます。なにしろ、いままで見たことのないような壮大な光景が描かれるのです。帝国や宗教、そして各惑星の領主の関係など複雑な背景は簡略化し、主に主人公の目線で物語がつづられますので、感情が移入しやすいのです。

 それにしても、この作品のビジュアルには圧倒されました。原作が「アラビアのロレンス」から着想を得たという情報がありますが、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督(名前が読みにくいしすぐ忘れる)は、ヨルダンの砂漠をリアルに撮影することを条件にしたそうです。そして、登場する宇宙船や宮殿などの秀逸なデザインに圧倒されます。特に、宇宙船は、前作のようなオモチャ・タイプでもなく、スター・ウォーズのメカニックなものでもなく、これまでに見たことのないタイプです。コンクリートの塊がそのまま浮かんでいるような、なんとも壮大なイメージです。いやはや、世界は広い、才能は次々と生まれますねえ。これまで、あきるほど宇宙船の絵を見てきたつもりですが、全く手垢のついていない、斬新で力強い映像です。さすが、「メッセージ」や「ブレードランナー2049」の監督と言ってよいのでしょうか。とにかく、前半は圧倒的で美しいとしか表現できない映像のつるべ打ちに完全に魅せられました。

 そして、後半は、砂の惑星アラキスの砂漠が舞台です。リアルな本物の撮影にこだわっただけあって、過酷な”砂漠”の美しさ、そして、現代の中東での民族・宗教戦争、石油戦争までも描き出している(気がする)のは凄いとしか、いいようがありません。まあ、鑑賞中に、リンチ版で皇帝(今作ではまだ未登場)を演じたホセ・フェラーの顔やアラキスの女戦士が美形のショーン・ヤングだったことが脳内に浮かんだことは、前作の呪いか、あるいは今作の弱点かもしれません。

 それにしても、パンフレットを読んで知ったのですが、砂漠の民のリーダーを演じたのが、オマー・シャリフではなく(笑)、ハビエル・バルデムとは気が付きませんでしたし、ベールをかぶった帝国の女教祖が、ご贔屓のシャーロット・ランプリングだったとは本当に驚きました。また、主演のティモシー・シャラメは、線が細くてよく役柄に似合っています。ただ、ヒロインが現世のスパイダーマンの恋人役の女優さんとは個人的にすこし残念でしたねえ。

 さて、今作160分弱でやっと物語は半分です。後半の第2部の早い公開を待っています。いやあ、映画って本当に面白いですねえ。 

2021年10月16日 (土)

円谷英二 生誕120周年

 今年は、かつて東宝でゴジラ、テレビでウルトラマンを誕生させた”特撮の神様”と称された円谷英二特技監督の生誕120周年らしい。その証拠に、月刊誌ユリイカに「円谷英二/特撮の映画史 生誕120年」という特集が組まれています。

41ed5o8clzl_sx322_bo1204203200_  一方、YouTubeを見ると、オタク学で有名な岡田斗司夫氏の無料講座などで、”特撮は死んだ”などと解説されています。映画製作においては既に円谷英二特技監督が生み出した伝統の特殊撮影技術、いわゆるアナログの特撮は、いまやCG技術によって代替されてしまったというのです。その止めを刺したのは、「シン・ゴジラ」だったそうで、総監督だったアニメ「エヴァンゲリオン」の庵野秀明は、新しいゴジラ映画を作るため、アナログの特撮技術を駆使した短編映画を作ったのですが、その出来上がりに全く満足できず、新作ゴジラでは、ほぼCG技術でリアルな映像を造り上げたそうです。

 まあ、資本力の乏しい日本映画界では「シン・ゴジラ」を例に出すのでしょうが、ハリウッド映画などでは、その随分前からCG技術が主流です。「ジュラシック・パーク」の第1作は、CG映画の古典ともいえるもので、いまや背景はグリーン幕だけで何でもできる時代なのです。しかも、逆にリアル感を出すため、あるいは役者の気分を高めるためか、実物大の美術を作るようなこともしているのですから、もう、飛行機模型をピアノ線で吊るしたり、大きなプールに模型の戦艦を浮かべる撮影は遠い、遠い昔のお話なのです。

 第一、「ゴジラ/キングオブモンスターズ」で往年の東宝怪獣たちを蘇らせたハリウッド映画では、冒頭「本多猪四郎監督に捧ぐ」という字幕に驚いた覚えがあります。私の子供のころは、ゴジラ映画は、特様の神様”つぶらやえいじ”の作品と思っており、監督の名は全く意識していませんでした。最近ですよ、本多猪四郎監督の評価が高まっているのは。・・・実はうれしいことです。昔は、特撮は褒めるが、映画自体はB級のゲテモノ、子供だまし扱いでしかなく、本多監督への評価は全くなかったといってよいのですが、はっきり言えるのは、彼の怪獣映画は、後年の他の監督の映画と一味違います。

81dnh9pd9zl_ac_sy445_  少し横道にそれましたが、ユリイカの特集号で、円谷英二特技監督の弟子たちの師匠に対する賛辞ばかり読んでいると、やっぱり”特撮”が目的化していたのではないか、という思いが強くなります。映画としてリアルな映像を創り出すための技術が、手段と目的を取り違えているような気がします。多分、”親父さん”は、通常の撮影では不可能であるリアルな映像を作るために、いろいろなアイディアや特殊な撮影技術を駆使したのだろうと思います。それが寒天の海や絵の具の原爆雲になったものであり、実際、聞いて驚く非凡なアイディですよねえ。
 そして、そのテクニックを磨き上げていったことが、伝統となり、類まれな”特撮”独自の映像世界を造り上げたのでしょう。

 今回、ユリイカの円谷歌舞伎への賛辞を読んだせいか、彼の原点である戦争映画を再見したくなりましたので、円熟期の「青島要塞爆撃命令」「日本海大海戦」「山本五十六」のDVDを観ました。いずれも、ストーリーの陳腐さや冗漫さに途中からドラマ部門をすっ飛ばかして、特撮シーンばかり見てしまいました。いくら、富士山麓に野外の青島要塞を作って機関車を走らせても、大プールに日本海や真珠湾を作って、巨大な模型戦艦を浮かべても、今の(大人の)目では決してリアルには見えません。火と水は縮小しないからです。

 51gimzgbful_ac_sy445_ しかし、模型のアクションとしてみた場合は、なんとも理屈抜きで素晴らしいものなのです。「日本海大海戦」での日本海でのバルチック艦隊との戦いは、一体どれほど大きな模型を作ったかな、と感動しますし、「連合艦隊司令長官 /山本五十六」では0戦が戦隊を組んで飛ぶシーンなどの操演技術の素晴らしさには言葉がありません。また、ジャングルの島の模型の精緻さも必見です。まさに、職人たちの熟練の手腕です。この職人技を観ることに”特撮”の醍醐味があるのです。

 5150qvc3v1l_ac_sy445_ いやあ、改めて円谷特撮の凄味を楽しみました。やっぱり、”特撮の神様”は、当時としては、世界最高の職人技だったのでしょうねえ、きっと。それを再確認しただけでもよかったなあ。特に「日本海大海戦」は、勝ち戦だけに気分が良いのです(笑)。

2021年10月 7日 (木)

007/ノー・タイム・トゥ・ダイ

 製作も公開も遅れに遅れた007映画「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」を観ましたが、あまりのラストの衝撃に感想を書くのが遅れました。前作「007/スペクター」で終わっていれば、ダニエル・クレイグ主演シリーズが有終の美を飾っていたのにと思わず舌打ちをしたくなります。
 このシリーズが何度も主演男優を変えて新作を作ろうとも、越えてはならない一線があると思います。あのラストは無いですねえ。いや、決してやってはいけないことでした。007の番号を黒人女優さんに与えるのは何の問題もありません。しかし、あれは禁じ手です。まあ、エンドロールで、シリーズの次回予告をしているなどは、家族経営とか言われる製作陣には”ジェームス・ボンド”という存在になんの思い入れもないようにさえ思えます。

Img_20211007_0001-2  ところが、この映画に対するレビューやユーチューバー達の評価がやたら高いのに驚きました。敵がDNAを操作する細菌兵器に比してジェームス・ボンドのDNAの対比が素晴らしいなど深読みのような賛辞を送ります。どうやら、肯定派はダニエル・クレイグ主演シリーズしか見ていないような若者が多いようで、初代ショーン・コネリーのボンド映画の醍醐味を全く知らないようです。

 それにしても、ダニエル・ボンドは、ド派手でタフな格闘シーンは素晴らしいが、なんともメンタルが弱い。 幾多の女性を虜にした”男の中の男”の粋なボンドが、たった一人の女に惚れてしまい、何の根拠もなく恋人の裏切りを疑い、挙句の果ては、失恋のあまり引退してどっかの海辺のリゾート地に引きこもってしまうなど、あってはならないのです。なんとも情けない姿です。
 もっとも、ダニエル・ボンドは、これまでも彼の私生活の因縁を引っ張って来るのが新味でしたから、予想された行き着く先の姿かもしれませんが、いくらなんでも、女に弱すぎでしょう。

 加えて、ラミ・マレック扮する鳴り物入りの悪役もまったく情けない。素顔を隠す能面の姿の意味はあるのか? 両親の上司で仇であるブロフェルドを含め、スペクターの組織を壊滅させる目的は分かるが、その後、何故世界を滅ぼすのか?、映画では全く分かりません。まあ、ロリコンというのは分かった(笑)。
 とにかく、敵が圧倒的に強くないとお話は面白くないのだ。しかも、ボスがだめなら、ボンドをつけ狙う義眼の殺し屋までも弱いですねえ。いつもボンドに止めを見逃されるだけ?。
 でも、あやつはいつの間にスペクターを裏切っていたのでしょうか、何の説明もありません(笑)。しかも、敵の秘密基地のセキュリティの杜撰なことは、観ている観客が心配するほどですから、あきれますねえ。

 ついでに言えば、Mも細菌兵器を作るなど何を考えているのでしょうねえ。MI-6も地に落ちましたねえ。

 まあ、設定と脚本への不満を挙げ出すときりがありませんし、そもそも往年のボンドファンには全く共感できません。確かに、現代に007という存在が合わなくなっているのはわかっていますが、そこをうまく料理するのが肝心なのです。しかも、演出に全くメリハリがなく、だるくて退屈でした。本当に160分は長すぎました。
 特に、お馴染みのタイトルが出る前のプロローグの長いこと、長いこと、あくびが出ました。何せ、その中でさらに過去の回想まで挿入されるですから驚きです。しかも、驚くような仕掛けもなく、本当にしょうもないエピソードです。これは完全にタイトル前のエピソードという意味を間違えています。

 若い時から”007映画”に思い入れがある分、ついつい小言ばかりになってしまい申し訳なかったですが、この映画で唯一楽しかったと感じたのは、アナ・デ・アルマスが扮する研修3週間のCIAの女エージェントと一緒にアクションを展開するキューバ(多分)のシーンです。まさしく007映画らしい、正装で決めた活劇の場面です。こういうのを待っているのですよ、オジサンたちは世の中の憂さを晴らすに。

 最後に、もう一つ、世の中狭くなったといっても、まだまだ外国のことはよく分かりません。せめて、いつものように、007映画らしく、観光名所の地名を入れてください。ノルウェー?、イタリア?、ジャマイカのどこ?、教えてください。ちなみに、北方領土はわかりました(笑)。

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