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2021年9月23日 (木)

祭りの準備

 最近は、懐かしい古典など新作以外のブルーレイが手ごろな価格になって有難い。黒木和雄監督の「祭りの準備」もそうです。VHSは所有してるのですが、ビデオレコーダーを使わなくなって、何年ぶりでしょう、久しぶりに鑑賞しました。人間の記憶は、いや私の場合、特にあやふやなので、随分忘れているシーンが多いのですが、やっぱりこの作品は傑作です。

51xlqw35bos__ac_sx300_sy300_ql70_ml2_  脚本家の中島丈博の自伝的なストーリーであり、主人公(江藤潤)が、一念発起して故郷を捨てて上京するまでの昭和30年のひと夏のお話なのです。江藤潤は新人でしたが、気弱だがシナリオライターを夢見る信用金庫に勤める青年をよく演じています。そして、彼の周りに居る家族や仲間たちの一癖も二癖もある生き方が面白いのです。彼らには、一応外聞が悪いという意識はあるものの、モラルや社会規範などには無関係に好き勝手に生きています。

 演じる役者も素晴らしい。一番常識的なと思われた母親役は馬渕晴子。女好きで愛人宅で暮らしている父親がハナ肇です。上半身裸で愛人と飯を食っているシーンはいかにもというほどリアルです。また、都会で気が狂った娘を胎ませた祖父を浜村淳が演じます。狂ったように襲い掛かる場面や正気を取り戻した娘を追いかける鬼気迫る姿は彼の本領発揮の演技です。
 この狂った娘役の女優さんも裸をいとわないド根性があります。ブルーリボン新人賞も獲ったようですが、その後は俳優としてはあまり出演は無く、声優などをしていたようです。もったいない(笑)。
 主人公のマドンナ役の竹下景子も清純派役者だったにもかかわらず濡れ場を演じます。オルグの男に騙されたという経緯もあってか、主人公の宿直室まで追いかけ忍び込むという、なかなか肉食系(笑)の行動をとります。ただ、濡れ場の吹き替え(多分)は少し残念でしたが(笑)。

 そして、なにより、主人公の悪友を演じた原田芳雄が絶品です。とにかく盗みも兄嫁とのセックスもやり放題なのですが、足に障害を持つ友人を馬鹿にされた女郎屋では大暴れをしたり、ラストでは、主人公から金をせびった後で、主人公の状況の決意を知った時、なんとも素晴らしい行動を取るのです。このラストだけでもこの映画は見る価値があります。

 また、主人公たちの住む村を悪友原田芳雄はいいます。「いい村だ。前科があっても誰も気にしない。」そういう村の人間達の汗ばむような生々しい生きざまを全編ロケのような撮影で描いています。もっともロケに協力した地元は完成した映画を観た途端、大反発したというようなニュースを当時耳にした覚えがあります。まあ、あれだけモラルがないような場面を描いておれば、キモチは分かります。

 でも、映画としては、何度も言いますが、青春映画の傑作です。成人の方は是非ご覧ください。

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