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2021年9月22日 (水)

仕事と人生に効く教養としての映画

 久しぶりに出かけた書店で見つけたのが「仕事と人生に効く教養としての映画」です。なんとも、長くてダサいタイトルですし、手に取ってみると、映画ファンにとっては実に初歩的な事柄ばかりの上、著者が大学の准教授のせいか”何故、映画を観るのか”などといういかにも映画学科の講義風の内容なのです。しかし読みやすい構成や文章だったので、おもわず(笑)買ってしまいました。

 読んでみると、意外に知っているつもりのことでも様々な気づきがあって、予想以上に勉強になりました。もっとも、その主張が章によっては矛盾する気もしますが、まあ古典映画を学ぶという意味では大学にこんな映画学の講義やゼミもあってもいいのでしょう。若い頃には考えられなかったことですが、映画だけでなく漫画なども差別されない本当に良い時代になったものです。

51xz8ibidws_sx353_bo1204203200_  さて、この本で、特に気に入ったのが、映画を観た後には、鑑賞記録を付けることを推奨していることです。そのことで、映画を2回見たことになると力説しています。いや、その通りだと賛同したのですが、著者は、その後に”ただ面白い”というだけではだめで、細かな演出の妙など印象的なエピソードを書くべきだ”とも述べています。なかなか耳が痛いですねえ。

 また、日本映画では、やはり、黒澤、溝渕、小津などの古典をあげて、その作品の見所を順次解説しています。まず、黒澤明の演出は、ハリウッド映画が生み出したカット割りなどの演出技法をさらに磨き上げ、ダイナミックにした手法であり、アメリカという映画の本場で特に高い評価があることを説明しています。

 次に、小津作品の場合は、ハリウッドが練り上げた120度視点演出術などとは全く別の撮影手法で、ヨーロッパの映画評論家達を驚かせたとその独特な手法を事細かく説明します。有名なお話としてどの作品もコップや水さしの水の量は、机の上に出された両手のこぶしの高さに合わせているとか、壁の絵画は交流のあった梅原龍三郎などの巨匠の絵ばかりとか、かなりのスペースを割いて紹介しています。
 まあ、OZ作品は著者の研究テーマらしいので当然かも知れません。個人的には、若い頃に何作か観ても、批評家のほめちぎる良さがよくわからなかったので、歳を重ねたら理解できるかなとも思いましたが、いまだによく分かりません。東京物語が世界映画のベスト第2位ですからその評価の高さにあいかわらず驚きます。

 しかし考えてみれば、彼の作品は公開当時の国内興行成績は良かった筈ですから、当時の日本の大衆は実に見る目を持っていたということなのでしょう。それにしても、小津監督作品は、世界的な映画祭ではほとんど賞を取っていないのに、当時、いち早く彼の作品に注目したフランスの批評家たちはやっぱり凄いのですねえ。ヒッチコックも評価したし(笑)。

 一方、黒澤明の羅生門以後、様々な外国の映画祭で賞を獲った溝渕作品は、やはり、その”長回し”というハリウッド技法とは全く異なる演出方法が、ヨーロッパの人たちの度肝を抜いたそうです。わが国でも溝渕監督のある作品を観なければ日本人の資格なしとまで言わんばかりの有名な映画評論家もいたそうですので、どうやら私は落ちこぼれらしい(笑)。溝渕作品はどれも無情で重苦しく悲しいお話しばかりなので一部の作品以外パスしてきました。現在では、ブルーレイも発売されて公開当時に観客が見た映像に近くなっているという推奨コメントも付いていますが、・・・やっぱり鑑賞後は落ち込んでしまいそうで、まだまだ再見する覚悟も気力もありません。

 最後に、著者は映画は、倍速鑑賞も含めて臨機応変に観たらよいとも言っています。かなり、前後と矛盾する(笑)内容ですが、それには賛成です。映画原理主義や古典至上主義ではなく、映画は好きな映画を自由に気楽に観たらいいのだ。あんまり仕事や教養に役立てようとするとろくなことにになりません。人生を楽しむ一助なのですから。娯楽アクション映画で良いのだ。アメコミ映画、上等です(笑)。

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