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2021年9月26日 (日)

ジャッジ・ドレッド

 スチール・ブック仕様のブルーレイ「ジャッジ・ドレッド」の中古品をオークションの競い合いの勢いでつい買ってしまいました。この作品は、イギリスの同名のSFバイオレンス・コミックを映画化したものですが、この作品の前にもシルベスター・スタローン主演で一度映画化されています。スタローン主演の内容はほとんど覚えていないのですが、顔出しスタローンばかり強調した、なんとも面白くなかった記憶だけがあります。実際、コミックファンなど世間的にも無視されているようです(笑)。

Img_20210925_0001  さて、この作品は、戦争により荒廃した未来都市で犯罪者を取締るために創設された”ジャッジ”の物語です。ジャッジとは、捜査官と裁判官、そして執行官までを兼ね、強力な武器を持ちヘルメットで顔を覆った取締官のことであり、ドレッドという名の凄腕”ジャッジ”が主人公です。まあ、雰囲気は「ロボコップ」の第1作ですねえ。荒廃した未来の都市の風景や汚れた画面作りがよく似ています。

 ストーリーは、思考を読めるミュータントである新人の女性ジャッジを連れて、スローモーという麻薬を扱う犯罪組織のボス”ママ”が支配するピーチツリーという200階建ての巨大スラム・ビルに捜査に入ったことから、2人のジャッジ対麻薬組織の無数の構成員たちの戦闘が起こるというものです。中空のビルは、シェルターが閉じられ、完全な巨大な密室となり、その中が阿鼻叫喚の戦場になります。この銃撃戦が見所なのです。

 冒頭から、生き皮をはがれ上層階から地上に突き落とされるというショッキングな映像がありますし、麻薬を使った際のスローモーな映像をやたらみせます。いつごろから、アクション映画はリアルというにはあまりに汚くてグロすぎる映像が流行っているのでしょうか、あんまり感心しませんね。せっかく、野戦用の据え置き型の重機関銃を何台も持ち出して、中空の回廊の反対側から部屋もろとも無差別に攻撃するなど、なかなか過激で、秀逸な銃撃アクションを見せるのに、前述の映像の汚さで減点されます。

 それにしても、主演のドレッドは、原作コミックのとおり全編ヘルメットで顔が見えません。多分、スタローンは、それを嫌って、顔出しをしたのでしょうが、原作ファンにそっぽむかれたのは当然でしょう。今回の主演は「ボーン・スプレマシー」でボーンの恋人を殺したロシア秘密警察の殺し屋役を演じたカール・アーバンだそうです。まったく分かりませんでした(笑)。

 一方、金髪の新人取締官がヘルメットをかぶらないのは、超能力を発揮するためだとか、ちゃんと説明しています。まあ、ヒロインまでヘルメットで顔もわからないとなると観客が納得しませんわねえ(笑)。オリビア・サールビーというなかなか美人の女優さんです。いっとき人質になるのもお約束です。

 そして、麻薬組織の女ボス”ママ”が圧巻です。売春婦からボスのナニを食いちぎってボスにのし上がった顔に切り傷のある女丈夫です。演じるのは、レナ・ヘディです。そうです、あの「ゲーム・オブ・ザ・スローン」で教会の陰謀によって全裸で糞尿を投げつけられながら大衆の中を歩かされた野心多き女王を演じた女優さんです。まあ、いつも凄惨な役を演じます。ご苦労様です。この作品でもなかなか意外なツテや奥の手を駆使しながら、無慈悲なボスらしい説得力あるヒール演技を披露します。この女優さんを一寸贔屓したいと思います(笑)。

 今回、ブルーレイで再見(以前に一度DVDレンタルで見た)したら、ブルーレイの解像度のせいか、映像の汚さが若干軽減されている(笑)ようにも感じましたので、”まあ、いいんぢゃないか”というぐらいには気に入りました。以上です。

2021年9月23日 (木)

祭りの準備

 最近は、懐かしい古典など新作以外のブルーレイが手ごろな価格になって有難い。黒木和雄監督の「祭りの準備」もそうです。VHSは所有してるのですが、ビデオレコーダーを使わなくなって、何年ぶりでしょう、久しぶりに鑑賞しました。人間の記憶は、いや私の場合、特にあやふやなので、随分忘れているシーンが多いのですが、やっぱりこの作品は傑作です。

51xlqw35bos__ac_sx300_sy300_ql70_ml2_  脚本家の中島丈博の自伝的なストーリーであり、主人公(江藤潤)が、一念発起して故郷を捨てて上京するまでの昭和30年のひと夏のお話なのです。江藤潤は新人でしたが、気弱だがシナリオライターを夢見る信用金庫に勤める青年をよく演じています。そして、彼の周りに居る家族や仲間たちの一癖も二癖もある生き方が面白いのです。彼らには、一応外聞が悪いという意識はあるものの、モラルや社会規範などには無関係に好き勝手に生きています。

 演じる役者も素晴らしい。一番常識的なと思われた母親役は馬渕晴子。女好きで愛人宅で暮らしている父親がハナ肇です。上半身裸で愛人と飯を食っているシーンはいかにもというほどリアルです。また、都会で気が狂った娘を胎ませた祖父を浜村淳が演じます。狂ったように襲い掛かる場面や正気を取り戻した娘を追いかける鬼気迫る姿は彼の本領発揮の演技です。
 この狂った娘役の女優さんも裸をいとわないド根性があります。ブルーリボン新人賞も獲ったようですが、その後は俳優としてはあまり出演は無く、声優などをしていたようです。もったいない(笑)。
 主人公のマドンナ役の竹下景子も清純派役者だったにもかかわらず濡れ場を演じます。オルグの男に騙されたという経緯もあってか、主人公の宿直室まで追いかけ忍び込むという、なかなか肉食系(笑)の行動をとります。ただ、濡れ場の吹き替え(多分)は少し残念でしたが(笑)。

 そして、なにより、主人公の悪友を演じた原田芳雄が絶品です。とにかく盗みも兄嫁とのセックスもやり放題なのですが、足に障害を持つ友人を馬鹿にされた女郎屋では大暴れをしたり、ラストでは、主人公から金をせびった後で、主人公の状況の決意を知った時、なんとも素晴らしい行動を取るのです。このラストだけでもこの映画は見る価値があります。

 また、主人公たちの住む村を悪友原田芳雄はいいます。「いい村だ。前科があっても誰も気にしない。」そういう村の人間達の汗ばむような生々しい生きざまを全編ロケのような撮影で描いています。もっともロケに協力した地元は完成した映画を観た途端、大反発したというようなニュースを当時耳にした覚えがあります。まあ、あれだけモラルがないような場面を描いておれば、キモチは分かります。

 でも、映画としては、何度も言いますが、青春映画の傑作です。成人の方は是非ご覧ください。

2021年9月22日 (水)

仕事と人生に効く教養としての映画

 久しぶりに出かけた書店で見つけたのが「仕事と人生に効く教養としての映画」です。なんとも、長くてダサいタイトルですし、手に取ってみると、映画ファンにとっては実に初歩的な事柄ばかりの上、著者が大学の准教授のせいか”何故、映画を観るのか”などといういかにも映画学科の講義風の内容なのです。しかし読みやすい構成や文章だったので、おもわず(笑)買ってしまいました。

 読んでみると、意外に知っているつもりのことでも様々な気づきがあって、予想以上に勉強になりました。もっとも、その主張が章によっては矛盾する気もしますが、まあ古典映画を学ぶという意味では大学にこんな映画学の講義やゼミもあってもいいのでしょう。若い頃には考えられなかったことですが、映画だけでなく漫画なども差別されない本当に良い時代になったものです。

51xz8ibidws_sx353_bo1204203200_  さて、この本で、特に気に入ったのが、映画を観た後には、鑑賞記録を付けることを推奨していることです。そのことで、映画を2回見たことになると力説しています。いや、その通りだと賛同したのですが、著者は、その後に”ただ面白い”というだけではだめで、細かな演出の妙など印象的なエピソードを書くべきだ”とも述べています。なかなか耳が痛いですねえ。

 また、日本映画では、やはり、黒澤、溝渕、小津などの古典をあげて、その作品の見所を順次解説しています。まず、黒澤明の演出は、ハリウッド映画が生み出したカット割りなどの演出技法をさらに磨き上げ、ダイナミックにした手法であり、アメリカという映画の本場で特に高い評価があることを説明しています。

 次に、小津作品の場合は、ハリウッドが練り上げた120度視点演出術などとは全く別の撮影手法で、ヨーロッパの映画評論家達を驚かせたとその独特な手法を事細かく説明します。有名なお話としてどの作品もコップや水さしの水の量は、机の上に出された両手のこぶしの高さに合わせているとか、壁の絵画は交流のあった梅原龍三郎などの巨匠の絵ばかりとか、かなりのスペースを割いて紹介しています。
 まあ、OZ作品は著者の研究テーマらしいので当然かも知れません。個人的には、若い頃に何作か観ても、批評家のほめちぎる良さがよくわからなかったので、歳を重ねたら理解できるかなとも思いましたが、いまだによく分かりません。東京物語が世界映画のベスト第2位ですからその評価の高さにあいかわらず驚きます。

 しかし考えてみれば、彼の作品は公開当時の国内興行成績は良かった筈ですから、当時の日本の大衆は実に見る目を持っていたということなのでしょう。それにしても、小津監督作品は、世界的な映画祭ではほとんど賞を取っていないのに、当時、いち早く彼の作品に注目したフランスの批評家たちはやっぱり凄いのですねえ。ヒッチコックも評価したし(笑)。

 一方、黒澤明の羅生門以後、様々な外国の映画祭で賞を獲った溝渕作品は、やはり、その”長回し”というハリウッド技法とは全く異なる演出方法が、ヨーロッパの人たちの度肝を抜いたそうです。わが国でも溝渕監督のある作品を観なければ日本人の資格なしとまで言わんばかりの有名な映画評論家もいたそうですので、どうやら私は落ちこぼれらしい(笑)。溝渕作品はどれも無情で重苦しく悲しいお話しばかりなので一部の作品以外パスしてきました。現在では、ブルーレイも発売されて公開当時に観客が見た映像に近くなっているという推奨コメントも付いていますが、・・・やっぱり鑑賞後は落ち込んでしまいそうで、まだまだ再見する覚悟も気力もありません。

 最後に、著者は映画は、倍速鑑賞も含めて臨機応変に観たらよいとも言っています。かなり、前後と矛盾する(笑)内容ですが、それには賛成です。映画原理主義や古典至上主義ではなく、映画は好きな映画を自由に気楽に観たらいいのだ。あんまり仕事や教養に役立てようとするとろくなことにになりません。人生を楽しむ一助なのですから。娯楽アクション映画で良いのだ。アメコミ映画、上等です(笑)。

2021年9月19日 (日)

ブラック・ウィドウ

 やっと映画「ブラック・ウィドウ」を観ることができました。この作品は、マーベル社のアメコミ映画シリーズのスピンオフで、アベンジャーズの数少ない生身の人間のメンバーであるブラック・ウイドウが主人公の物語なのですが、親会社のディズニーが、劇場公開と同時に、自らのディズニー・プラスの動画配信で配信したために、TOHOが劇場公開を拒否し、私の地元では劇場公開されなかったのです。
 ネット情報によると、そのせいでしょうか、主演のスカーレット・ヨハンセンがディズニーを訴えたとか、彼女の演じるブラック・ウィドウは、既にマーベルシリーズでは死んでしまったので、これが最後の作品となるのですねえ、残念です。その曰く付きの作品が先日DVDとブルーレイで発売されたのです。四千円弱ですから、アマゾンプラスで加入して特別料金を払うとほぼ同じですねえ、「ジャングル・クルーズ」もDVDを待つべきでした(当ブログ2021.8.12参照)。

71oz14e8wpl__ac_sx300_sy300_ql70_ml2_ さて、内容は、アベンジャーズが分裂し、国の機関から追われていた時代にまで遡ったときのエピソードであり、そこで彼女の生い立ちが判明するという物語です。冒頭、オハイオに住む両親と二人の少女の家庭の情景から始まります。秘密組織のエージェント養成機関出身の筈なんだが?と思っているうちに、お話は次々と予想を超えるド派手な展開を見せます。さすがマーベル作品です。このシリーズは、いつもながらお話が面白い。やはりストーリーが過去に発売された何種類も存在するというアメコミの原作を組み合わせているのでしょうかねえ、本当に破天荒な話の運び方に感心します。今回のテーマは”家族”ですねえ。規格外の家族達に笑います。

 まず、母親役のレイチェル・ワイズが懐かしい。「ハムナプトラ」のアクションもこなす女優の面目躍如です。そして、今回での一番の儲け役は父親役のデイビット・ハーバーという大男でしょう。2019年の「ヘルボーイ」の主演はあまり評判は良くありませんが、今回のロシアの超人第1号役はなかなか楽しい。娘たちに嫌われるようなデリカシーの無さ、キャプテン・アメリカに勝手なライバル意識を持ったり、たるんだ腹を昔のヒーロー・スーツに押し込む姿など、実にだらしない親父像を好演して、笑いを一手に引き受けます。

 そして、役柄上死んでしまったスカーレット・ヨハンソンに代わり、今後のシリーズを引き継ぐであろう新たなヒロインが、妹役のフローレンス・ピューという女優さんです。「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」でアカデミー助演女優賞にノミネートされた演技者らしい。いやあ、こんな実力者があんなアクションをするのですから、さすが、ハリウッド俳優というべきでしょうか?スカウトするマーベル・スタジオも凄い。

 今後の新生アベンジャーズ・シリーズも期待できますねえ。でも、新作の「シャン・チー/テン・リングスの伝説」は、どうしようか少し迷っています。

2021年9月 6日 (月)

竜とそばかすの姫

Img_20210906_0002  細田守監督のアニメ「竜とそばかすの姫」にはやや失望しました。なにしろ、傑作「サマー・ウォーズ」のようなインターネット世界を描く作品だったので、やや一方的な期待が過ぎたのかもしれません。

 内容は、最先端のバーチャルな世界で大人気となる歌姫と田舎の写真とも見まがう写実的な風景の中で、母を失った女子高生のリアルな生活を対比させながら、ディズニーの名作「美女と野獣」をモチーフにした物語なのです。

 冒頭の「U」というバーチャル世界は、「サマー・ウォーズ」のゲーム世界を思い出させますし、お得意のクジラも登場します。でも、この「U」のアバターたちはその別世界で何をしているんだろうと不思議でなりません。ゲームをする世界ではないので、才能があれば主人公のように歌姫になることも可能ですし、スポンサーが付けば自警団でアバターを解除するパワーまでも持てることは分かりました。でも、なんのとりえもない一般の参加者は、モブキャラとして何をしているのでしょうか、イマイチ不明です。それで50億人もの人が参加するのかなあ、と舞台設定でつまずいてしまいました。頭に”?マーク”がついたまま、途中から登場する妖精のようなAIやあんな立派な隠れ家の城などはどうやってできたの?などと思ってしまうのは、コンピュータ知識のない私だけでしょうか。まあ、こんな些細なことに気が向くのは”物語”に没頭していない証拠なのですが・・・。

Img_20210906_0003  さらに、現実世界の主人公の女子高生の行動もどうも良くわかりません。友人のお金持ちの娘の行動や近所のコーラスおばさんなどは、細田流の常連さんのキャラクターのような気がしますが、肝心の主人公の心理がさっぱりわからないのです。歌えなくなった歌声を取り戻していく過程は共感できますが、いきなり現れた”竜”に抱くあの”気持ち”はなんなのでしょうか? 普通そうした”感情”には、隠された”絆”や見えない”赤い糸”があると思うのですが、まったくそうではなかった彼の”正体”には裏切られます。しかも、現実世界での女子高生一人の思い付き行動は全く共感できません。結果を見ても釈然としません。一体全体、周りのコーラスおばちゃんたちの大人たちはなにをしているのですか!!ダメ親父も困ったものです。

 やはり「美女と野獣」の物語は王子と村娘の恋の物語であるからこそ名作足り得ているのです。その肝心の”肝”がないのでは全くお話になりません。結局、消化不良で終わってしまいました。田舎の風景の絵柄が美しいだけに本当に残念でした。

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