映画監督 三隅研次 密やかな革新
大映の映画監督三隈研次の評論「映画監督 三隈研次 密やかな革新」が出版されました。ページ数が422頁もある大著です。これまであまり評価されてこなかったのですが、大映の時代劇などでその才能をいかんなく発揮した映画監督の全作品を評価した内容になっています。この監督さんは、座頭市と子連れ狼で傑作を作っており、私のお気に入りの”作家”(当ブログ2007.10.21、同左10.28、2010.10.11参照)なので、今回の発売を楽しみにしていました。以前「剣/三隈研次の妖艶なる映像美」という評論も発売されていましたが、それ以来の快挙なのです。
でも、この大著の「まえがき」を読んで、いきなり頭に血が上りました。こともあろうに、この本には、私が長らく忘れてた「三隈研次監督は、思想が無く、作家とは言えない。」という我が国の大物映画評論家の古い批評を再掲していたのです。著者としては、こうした定説を覆そうとする決意を意図したものなのでしょうが、私としては、”芸術性”や”思想性”の中心主義で固まって映画本来の”娯楽”作品をまったく評価しない我が国の”映画評論風土”への怒りが再燃したのです。寝た子を起こすことなかれ!!
この大物映画評論家は、その著作で「七人の侍」を評して”自衛隊賛成論”といい、”私は百姓だ”と上から目線です。生前黒澤明が国内の評価がいかに低かったかを嘆いていますが、こうした”映画批評界”が長年日本映画を衰退させてきたのは間違いないと思っています。ちなみに、驚くことに我が国で最初に黒澤明の評論の単行本「黒沢明の世界」を発行したのはこの大物評論家なのですから、あとはおして知るべしなのでしょう。ホントに、せめて映画は”純文学”だけではなくて”大衆文学”も平等に評価してほしいものです。映画は大衆芸術なのですよねえ。でも、普通「作家じゃない」なんて言う(書く)のか!!。まったく何様?
話が随分横にそれてしまいましたが、ここは素直に三隈研次監督が評価されたことを喜びましょう。本の内容は、多数のプログラム・ピクチャーを丁寧にひとつづつ紹介しておりますので、まあ、ご覧ください。各作品ごとにカットの素晴らしさなどを評価しています。ただ、私としては、作品の優劣を整理し、もう少しメリハリをつけてほしかった。なにしろ、時代劇以外の作品数が多いですから、歳のせいか、読むのに根気が続きません(笑)。
しかし、こうして全作品を眺めてみると、個人的な見解としては、やはり三隅監督は、座頭市シリーズ、そして、アメリカで有名になった子連れ狼などの時代劇が代表作になるのでしょうねえ。”日本人が「人間の条件」で反省した、日本刀の恐ろしさを復活させた”などというどなた様かの批判は当たらないと思いますが、いかがでしょうか?どうにも、三隈研次監督に対する長年の冷遇ぶりに怒りがなかなか収まりません。
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