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2021年7月20日 (火)

メタモルフォシス:リック・ベイカー全作品

 リック・ベイカーという人を知っているでしょうか。ハリウッドの特殊メイクアップ・アーティストで、「狼男アメリカン」やマイケル・ジャクソンの「スリラー」などのモンスターを作り、アカデミー賞メイクアップ部門を3回受賞した実績は有名ですから、映画好きの人なら名前ぐらいはご存知と思います。

81u1lzlhjts1  そんな特殊メイクアップ・アーティストの全作品を解説した限定1000部の豪華本「メタモルフォシス:リック・ベイカー全作品」が翻訳発売されました。内容は、そのタイトルのとおり、彼がアマチュア時代に作ったモンスターをはじめ没になった作品まで、本当にあらゆる作品を写真入りで1800点以上紹介しています。なにしろ、本のサイズが28.5cm×26cm×9.3cm(2冊揃)で、ページ数が736頁もありますので、その重量や価格はとんでもなく重かったなあ。

 実際、手にとってみる(机上に置いてページを繰るのですが(笑))と、とにかく造型した作品の写真の精度と迫力が凄い。ピントはいうまでもなく、1頁一杯に掲載されたサイズで、彼が手掛けたモンスターの造型に圧倒されます。切り傷や腐ったゾンビなどの容貌はなかなかにえぐいですが、やっぱり作り手の手腕に感心します。

 また、彼がまだ無名の時のエピソードが凄い。当時のハリウッドのメイクアップ組合というのは血縁関係のある身内の集まり、つまりメイクアップ技術の既得権集団だったそうで、彼の才能をねたんでいろいろな嫌がらせがあったそうです。何処の世界でも”出る杭は打たれる”のでしょう。それを思えば、彼の師匠ディック・スミスはえらかった!!。手紙で彼の才能を認めるや、様々なノウハウを惜しみなく教えてくれたそうですから、良き先達に恵まれたものです。彼の師匠デイック・スミスのことは、以前このブログで紹介した日本人メイクアップ・アーティストのお話(2018.8.20参照)をご参照ください。

 さらに、あのイタリアの大プロデューサー製作の「キングコング」では、当時の第一人者といわれた有名な造形師が製作した巨大な機械仕掛けコングという宣伝の下、若手のベイカー一人が自作したコングの着ぐるみを着て自ら演じたという伝説には、ハリウッド映画界の闇をみる思いがします。クレジットからも外されたそうで、この時は監督のギラーミンだけが彼の味方だったそうです。いやあ、ハリウッドのボスの力は、セクハラ以上に恐ろしいですねえ。

 そのほか、メイクした有名スターのそれぞれのエピソードも面白いですねえ。イメージ的に”いかにも”というのが笑えます。ただ、スピルバーグ監督とはあまり親しくなかったようで、詳しく書いていませんが、どうやら「ET」の企画の関わったベイカーのアイディアが前述の有名な造形師の手に移った”因縁”があるようで、なにやら胡散臭い話です。ベイカー製ならもっと生物感溢れる宇宙人になったとおもいますが、残念でした。

 加えて、変装技術の研究でCIAからの勧誘があった話にも驚きました。しかし、考えてみれば、CIAも国の正式の機関ですから、アチラでは当然かもしれません。なにしろ「猿の惑星」の造型師がそうだったというのは有名なお話らしい。

 そのほか、彼のエイプ(類人猿)好きは有名で、リアルなターザン物語「グレイストーク」などはもう本物のチンパンジーとしか思えない芸術品を造り上げています。もっとも、そういう天才でさえも、CG技術の進歩にはその活躍の場も徐々に少なくなり、引退した現在は、妻と世界旅行を楽しんでいるそうです。なんとも見事な人生ですねえ。思えば、この作品集は、彼の人生を綴った伝記本にもなっています。

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