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2021年7月29日 (木)

イングリッド・バーグマン

 突然ですが、映画「カサブランカ」は不朽の名作です。この有名な作品には、ハンフリー・ボガードの名セリフ「君の瞳に乾杯」をはじめ、ピアノの名曲「時の過ぎゆくままに」など様々な見所がありますが、一番の衝撃はなんといってもイングリッド・バーグマンの美女ぶりでしょう。1942年の作品なのですが、何度見返しても非の打ちどころが無い彼女の美貌はモノクロの銀幕の中でいつまで光り輝いています。
 そうです、何を隠そう、私は若い頃からこの映画の中の彼女のファンなのです。カラー版の「カサブランカ」のレーザーディスク(笑)も持っています。この映画のことは、以前に当ブログ(2007.9.15)で詳しく書いていますので、そちらをご参照ください。

20210728_1050201  本日の話題は、映画そのものではなく映画の関連グッズのお話です。
 彼女が不倫に走った映画監督の母国イタリアに「インフィニティスタチュー」という造型メーカーがあります。その工房では「オールド&レア」シリーズとしてチャップリンなどクラシック映画の登場人物をモノクロ風にスタチュー(置物)化して販売しています。その中に「カサブランカ」の”イルザ”の彫像があったのです。

 偶然、このことを知った私は、海外輸入サイト「セカイモン」に出品されていた商品を後先考えずに速攻で買ってしまいました。我ながらファン心理というのは恐ろしいものです。全く理性が働きませんでした。
 というのも、本体価格(定価)はまあそれなりの金額なのですが、なにしろ個人での海外輸入品となりますので、セカイモンの手数料はともかく、売り主の所在地が英国だったとは気が付かなかったのです。そもそもイーベイ関連サイトなので米国とばかり思い込んでいたので、英国からの国際輸送料(着払い)の予想外の金額に仰天しました。いやあ、やっぱり英国という国は遠くにあるのですねえ、舶来物の貴重さを改めて実感しました。今回の教訓は”高額商品の購入には事前にしっかりした資金計画を立てましょう。”でした(笑)。

20210728_1044121  では、”イルザ”のスタチューをご披露します。モノクロ調の銀幕の美女の姿はいかがでしょうか。実際に現物を見ると、1/6というサイズの設定なのですが、顔や手足などが少し小さいように感じます。しかし高さを測ってみると約29cmありますから、彼女の実際の身長175cmに相応するようです。やっぱり小顔なのかな?

 ちなみに、ハンフリー・ボガードもセットで売っているようですが、全くお呼びではありません(笑)。ただ、今年末には、映画「用心棒」の三船敏郎扮する”三十郎”のスタチューが販売されるようで、これは正規の輸入代理店から購入する予定です。これにも期待しています。なにしろ黒澤明監督のファンなのですから(笑)。


 

 

 

2021年7月28日 (水)

一番くじ ゴジラVSコング

 暇にまかせてユーチューブを眺めていると、ゴジラマニアのグッズ爆買い顛末を記録した投稿動画に驚かされました。映画「ゴジラVSコング」の公開日に合わせて、バンダイ(の小会社)からゴジラグッズが”一番くじ”商品として売り出されたそうです。この”一番くじ”商品とは、ドラゴンボールをはじめ様々なキャラクターのグッズを1回数百円のクジで引かす方式の商品で、A賞からF賞まで、空クジなしの商品らしい。言われてみれば、以前、この”一番くじ”シリーズの本物そっくりの巨大昆虫フィギュアをオークションで購入した覚え(当ブログ2020.10.31)があります。お目当ての品をゲットするには、当たるか当たらないかわからないクジより、多少プレミアがついてもオークションの方が確実で効率が良い。・・・これは、その昔、チョコエッグで痛い目にあって得た貴重な教訓です(笑)。

20210725_1724021  さて、そのゴジラマニアのユーチューバーさんのお目当ては、もちろんA賞の30cmほどのゴジラフィギュアだそうです。そのほかの商品にはF賞の怪獣の頭にマグネットが付いたモンスターヘッドをはじめ、歴代のゴジラ映画のポスター復刻版、ゴジラのタオルや足型コースター、変な取っ手の付いたマグカップまであります。もう、昔の駄菓子屋のくじと同じですねえ。
 私としてはおもちゃっぽく、チープなくじ引きのオマケ商品(偏見でした)には余り興味もなく、ぼんやりと動画を眺めていたのですが、実はこの商品は都内では売り切れ続出だそうで、どうやらわざわざ遠出して売っている店を探したようなのです。ちなみに今回はコンビニ店での販売はなく、ホビーショップや書店での販売に限っているとのことであり、私も地元では観たことがありません。
 しかも、この人、1回900円(史上最高額らしい)のクジを25枚も一挙に買うのですからびっくり仰天です。大人買いにも程があるのではないか、と見ていたら、開封するクジはほとんどがタオルかポスターであり、時間が経つにつれて本人はもちろん観る方ももうだめかとほとんどあきらめかけていたら、最後の2枚目でどうにかA賞をゲットできました。いやあ、本人の喜びもさることながら、観る方もほっとしました。何しろ総額22,500円のフィギュアなのですから、ホントにお疲れさまでした(笑)。それにしても、今時のクジはあんなモノかと大変勉強になりました。

 動画では、その後自宅でゲットしたばかりの商品を次々開封して披露してくれたのですが、当然テンションはかなり高く、さほど興味もなさそうだったタオルやマグカップまでもしきりに褒めていた一方で、あれほどの枚数のクジを買った割にF賞のキングギドラのモンスターヘッドが当たらなかった(ブラインド商品なので、何が出るかわからない)と嘆いていました。「3つの首を集めて壁に付けたかった・・。」このつぶやきには思わず感心しました。・・・やってみたい(笑)。

20210725_1726301 そして、お披露目の最後の商品は、当然ながらA賞のゴジラのフィギュアです。ゴジラ作家で有名な酒井ゆうじ氏の造型作品だそうで、外箱を開封して出てきた商品は、彼曰く「これまでで一番良い出来」ということでそのテンションはマックスな状態です。正直、動画の画面で見ても、かなり精巧な出来具合であり、売り切れ続出という情報もあることから、ミーハーの私としてはなにやら俄然欲しくなりました(笑)。

 そういうことで、オークションに挑戦しました。ちなみにネット情報によると、A賞の当選確率は、1ロット80本中4本だそうで、当選確率5%、1万8千円必要な計算となるそうです。当然、そんなお金は出せませんが、やはりプレミアの付き方はハンパありません。まあ、そこそこの価格でゲットしました。驚くことに、キングギドラの3つのヘッドがセットになった出品もあります。皆さん、本当に商売上手ですねえ。・・・まいりました。
 20210725_1731511 では、そのオークションの成果をご披露しますが、確かにA賞ゴジラの造型は素晴らしい。こういう立派な商品がクジ当選品として登場するとなると、これからはこうした市場にも留意が必要ですねえ。なんで?(笑)しかも、前のシンゴジラの一番くじもあったのですねえ、全く知りませんでした。F賞のモンスターヘッドも何種類もあって意外に良い出来です。・・・しかし、本当に余分な出費が重なります、困ったものです(笑)。   

 20210725_173358-1 20210725_1736341 20210725_173744120210725_1738551  

2021年7月20日 (火)

メタモルフォシス:リック・ベイカー全作品

 リック・ベイカーという人を知っているでしょうか。ハリウッドの特殊メイクアップ・アーティストで、「狼男アメリカン」やマイケル・ジャクソンの「スリラー」などのモンスターを作り、アカデミー賞メイクアップ部門を3回受賞した実績は有名ですから、映画好きの人なら名前ぐらいはご存知と思います。

81u1lzlhjts1  そんな特殊メイクアップ・アーティストの全作品を解説した限定1000部の豪華本「メタモルフォシス:リック・ベイカー全作品」が翻訳発売されました。内容は、そのタイトルのとおり、彼がアマチュア時代に作ったモンスターをはじめ没になった作品まで、本当にあらゆる作品を写真入りで1800点以上紹介しています。なにしろ、本のサイズが28.5cm×26cm×9.3cm(2冊揃)で、ページ数が736頁もありますので、その重量や価格はとんでもなく重かったなあ。

 実際、手にとってみる(机上に置いてページを繰るのですが(笑))と、とにかく造型した作品の写真の精度と迫力が凄い。ピントはいうまでもなく、1頁一杯に掲載されたサイズで、彼が手掛けたモンスターの造型に圧倒されます。切り傷や腐ったゾンビなどの容貌はなかなかにえぐいですが、やっぱり作り手の手腕に感心します。

 また、彼がまだ無名の時のエピソードが凄い。当時のハリウッドのメイクアップ組合というのは血縁関係のある身内の集まり、つまりメイクアップ技術の既得権集団だったそうで、彼の才能をねたんでいろいろな嫌がらせがあったそうです。何処の世界でも”出る杭は打たれる”のでしょう。それを思えば、彼の師匠ディック・スミスはえらかった!!。手紙で彼の才能を認めるや、様々なノウハウを惜しみなく教えてくれたそうですから、良き先達に恵まれたものです。彼の師匠デイック・スミスのことは、以前このブログで紹介した日本人メイクアップ・アーティストのお話(2018.8.20参照)をご参照ください。

 さらに、あのイタリアの大プロデューサー製作の「キングコング」では、当時の第一人者といわれた有名な造形師が製作した巨大な機械仕掛けコングという宣伝の下、若手のベイカー一人が自作したコングの着ぐるみを着て自ら演じたという伝説には、ハリウッド映画界の闇をみる思いがします。クレジットからも外されたそうで、この時は監督のギラーミンだけが彼の味方だったそうです。いやあ、ハリウッドのボスの力は、セクハラ以上に恐ろしいですねえ。

 そのほか、メイクした有名スターのそれぞれのエピソードも面白いですねえ。イメージ的に”いかにも”というのが笑えます。ただ、スピルバーグ監督とはあまり親しくなかったようで、詳しく書いていませんが、どうやら「ET」の企画の関わったベイカーのアイディアが前述の有名な造形師の手に移った”因縁”があるようで、なにやら胡散臭い話です。ベイカー製ならもっと生物感溢れる宇宙人になったとおもいますが、残念でした。

 加えて、変装技術の研究でCIAからの勧誘があった話にも驚きました。しかし、考えてみれば、CIAも国の正式の機関ですから、アチラでは当然かもしれません。なにしろ「猿の惑星」の造型師がそうだったというのは有名なお話らしい。

 そのほか、彼のエイプ(類人猿)好きは有名で、リアルなターザン物語「グレイストーク」などはもう本物のチンパンジーとしか思えない芸術品を造り上げています。もっとも、そういう天才でさえも、CG技術の進歩にはその活躍の場も徐々に少なくなり、引退した現在は、妻と世界旅行を楽しんでいるそうです。なんとも見事な人生ですねえ。思えば、この作品集は、彼の人生を綴った伝記本にもなっています。

2021年7月13日 (火)

クワイエット・プレイス/破られた沈黙

 まさかあの傑作エイリアン・スリラーである「クワイエット・プレイス」の続編が製作されようとは思っていませんでした。なにしろ、第1作では、ラストまで素早すぎてほとんど見えなかったエイリアンがその凶悪な姿を現したあげく、思いもよらぬ弱点が発覚し、駆除することができたのですから、頼りになる旦那さんは死んだものの、あとは親子4人で隠れ家で幸せに暮らしました・・・というほぼ完結したストーリーだった筈なのです。1作目の詳しい内容は、当ブログ(2018.10.26)を参照してください。

Img_20210713_0001  でも、この第2作目の「クワイエット・プレイス/破られた沈黙」は、原題は「A QUIET PLACE PARTⅡ」なのですから、完全な続編です。どんな展開になるのか、全く想像もつかなかったのですが、とにかく、この作品は劇場に足を運ぶことがまず大変でした。何故かと言うと、前作は、あまりにも演出に臨場感があって、音を立てるな!!という場所に、妊娠と赤ん坊ですよ、なんちゅう怖い設定をするんですか、この監督は。
 しかも、音を立てないために素足であるくエミリー・ブラントに、むき出しの釘が静かに待っているのです。エイリアンのショックだけでなく、こういった日常に存在する恐怖の演出をさまざまに凝らしているエミリー・ブラントの旦那(監督・共演・実際の夫)の手腕は素晴らしく、本当に生々しくも”怖い”映画でした。そのため、鑑賞のための心の準備(笑)に相当時間がかかり、やっと心身ともに安定した昨日観て来ました。しかも、座席は、万一に備えてすぐに避難できる入口に近い”列の端”を確保しました(笑)。

 まず、冒頭、全くの意表をついてエイリアンの襲撃の1日目から始まります。子どもたちの野球を家族で応援している平和な日常が、隕石の落下、エイリアン達の襲撃により突然崩れます。第1作でエイリアンの姿形は明らかになっていますし、世界的大ヒットで予算がふんだんにあるおかげか、田舎町でのエイリアン達の凶行を派手に描いています。しかし、実は、この冒頭には重要な伏線が仕掛けれていたことが中盤になってわかるのですから、やっぱり、この監督は脚本がうまいですねえ。感心しました。

 その後、ドラマは一気に4百数日目まで、つまり、前作でやっとエイリアンを撃退したところに戻ります。エイリアンを1匹殺したものの、隠れ家の地下室は水没、母屋は火事でなくなり、赤ん坊、長女、長男を連れたエミリー一家は、住み家を失うのです。そして、安住の地を求めて旅に出かけるのです。しかも、また素足で・・・。ここはせめて運動靴を履くべきです。痛そうで観ていられません。

 そして、中盤、長女は一人、ラジオ放送を頼りに単独行動を取るのです。”危険だからみんなで一緒に行動しようよ”と願うのですが、とにかく、この映画の登場人物たちは皆、”してはいけない”と観客が心配する行動を必ずとるのです。”酸素ボンベの残量メモリを見て”、”大金庫の外鍵を無造作に下ろさないで”、”不用意に外に出かけないで”、”そんな離れたところに銃を置かないで”、”足元の落ちそうな小物に注意して”など、”お願いだからそんなことはしないで”という観客の切なる思いを全く無視します。おかげで、ハラハラ、ドキドキ、その都度、肩に力が入ります。見事なスリラー演出の術中にすっかり嵌っているのです。

 そして、中盤から別れた長女と残された家族の2つのストーリーが並行して進む中で、それらが見事に融合するラストは、実に感心しました。ストーリーに仕込まれた伏線が見事につながるのです。しかも、子供たちも困難を通じて成長し、なんとも見事なラストになりました。・・・でも、これは、絶対PARTⅢがある前提ですよねえ。演出だけでなく、商売も上手いですねえ、この監督は。

 とにかく、上映時間1時間半でよかった。終わってみると、肩がもうパンパンです。これ以上長いと体がもちません。続編でありながら、見事な作品を作ったジョン・クラシンスキー監督に賛辞と御礼を申し上げたいと思います。子役の成長速度もあるので、PARTⅢの迅速な製作を待っています。

2021年7月 9日 (金)

トゥモロー・ウォー

 アマゾンが製作したSF映画「トゥモロー・ウォー」は、アマゾン・プライム会員なら無料で観られる作品です。こうした劇場公開がなく、動画配信サービスだけで観られる作品が増えて来ました。ネットフリックスが製作・配信したマッツ・ミケルセン主演の殺し屋アクション「ポーラー/狙われた暗殺者」などが有名です。一時期、こうした作品をアカデミー賞の対象とするかどうかでもめたというニュースもありました。どうやら全米の各劇場主が反対しているらしいのですが、潤沢な資本を有する動画配信会社の方針と市場がある以上、映画の公開方式の多用化は避けられそうにありませんねえ。

 劇場公開映画として製作されたにもかかわらず、コロナ禍で公開できず、結局、動画配信サービスに身売りされた「グレイ・ハウンド」などという第二次世界大戦の潜水艦と駆逐艦の戦いを描いた戦争映画もあります。主演はトム・ハンクスで、荒波を航海する駆逐艦の姿など予告編を見る限り、なかなか迫力があって、劇場で観たかったと思わざるを得ません。

 さて、この「トゥモロー・ウォー」という作品は、さすがにアマゾンだけに巨額の予算を使って製作されているようで、かつての安いテレビドラマのイメージはありません。主演がいま旬のクリス・プラット(ジュラシック・ワールドの主演)であり、軽い気持ちで観始めて、一気に2時間18分全編を観てしまいました。結論から言って、全く先が読めない展開や最後のオチもなかなか考え抜かれた面白い本格的SF大作でした。

 物語は、エイリアンの襲来により滅亡に瀕している2051年の未来を救うため、現在において、徴兵令が施行され、小さな娘がいる中年の高校教師の主人公が兵士として選ばれて、未来に送られるというタイムトラベル物語です。徴兵期間はわずか7日、選別基準は2051年までに死亡していることなど、しかも生存率20%といういろいろな意味で過酷な制度です。出だしは、昔ながらのチープなSF設定と思って観ていたら、未来世界で登場するエイリアンの映像がなかなか凄い。針を飛ばしてくる複数の触手(尾)を持つ狼というものですが、一言で言うと、白い”鵺”ですねえ。そうした生きものが無数に、しかも物凄く素早く襲いかかってきます。最近のモンスターは、ゾンビもそうですが、目に見えないほど素早いのです。まさしく瞬殺されます。

 突発的なトラブルが生じ、訓練もないままに何もわからない主人公たちがいきなり戦場へ送られます。主人公は実は軍歴があるのですが、そうでもないアメリカ市民たちも、おばさんもおじさんも結構銃で応戦しながらがんがん戦います。この辺は、いくらフィクションとしても、我が国の市民感覚とはまったく違いますねえ。日本では、泣きわめくシーンが入って、こんな即戦力のドラマはとうてい成り立たないでしょうねえ。いやはや日常が戦場の国のメンタルに感心します。多分、あちらの観客がそういう目で観ているのですから、いまや戦争してもとても勝てそうにありませんねえ。平和が一番です(笑)。

 

2021年7月 6日 (火)

映画監督 三隅研次 密やかな革新

 大映の映画監督三隈研次の評論「映画監督 三隈研次 密やかな革新」が出版されました。ページ数が422頁もある大著です。これまであまり評価されてこなかったのですが、大映の時代劇などでその才能をいかんなく発揮した映画監督の全作品を評価した内容になっています。この監督さんは、座頭市と子連れ狼で傑作を作っており、私のお気に入りの”作家”(当ブログ2007.10.21、同左10.28、2010.10.11参照)なので、今回の発売を楽しみにしていました。以前「剣/三隈研次の妖艶なる映像美」という評論も発売されていましたが、それ以来の快挙なのです。

412iewmfpss_sx340_bo1204203200_ でも、この大著の「まえがき」を読んで、いきなり頭に血が上りました。こともあろうに、この本には、私が長らく忘れてた「三隈研次監督は、思想が無く、作家とは言えない。」という我が国の大物映画評論家の古い批評を再掲していたのです。著者としては、こうした定説を覆そうとする決意を意図したものなのでしょうが、私としては、”芸術性”や”思想性”の中心主義で固まって映画本来の”娯楽”作品をまったく評価しない我が国の”映画評論風土”への怒りが再燃したのです。寝た子を起こすことなかれ!!

 この大物映画評論家は、その著作で「七人の侍」を評して”自衛隊賛成論”といい、”私は百姓だ”と上から目線です。生前黒澤明が国内の評価がいかに低かったかを嘆いていますが、こうした”映画批評界”が長年日本映画を衰退させてきたのは間違いないと思っています。ちなみに、驚くことに我が国で最初に黒澤明の評論の単行本「黒沢明の世界」を発行したのはこの大物評論家なのですから、あとはおして知るべしなのでしょう。ホントに、せめて映画は”純文学”だけではなくて”大衆文学”も平等に評価してほしいものです。映画は大衆芸術なのですよねえ。でも、普通「作家じゃない」なんて言う(書く)のか!!。まったく何様?

 話が随分横にそれてしまいましたが、ここは素直に三隈研次監督が評価されたことを喜びましょう。本の内容は、多数のプログラム・ピクチャーを丁寧にひとつづつ紹介しておりますので、まあ、ご覧ください。各作品ごとにカットの素晴らしさなどを評価しています。ただ、私としては、作品の優劣を整理し、もう少しメリハリをつけてほしかった。なにしろ、時代劇以外の作品数が多いですから、歳のせいか、読むのに根気が続きません(笑)。

 しかし、こうして全作品を眺めてみると、個人的な見解としては、やはり三隅監督は、座頭市シリーズ、そして、アメリカで有名になった子連れ狼などの時代劇が代表作になるのでしょうねえ。”日本人が「人間の条件」で反省した、日本刀の恐ろしさを復活させた”などというどなた様かの批判は当たらないと思いますが、いかがでしょうか?どうにも、三隈研次監督に対する長年の冷遇ぶりに怒りがなかなか収まりません。

2021年7月 3日 (土)

ゴジラVSコング

 7月2日の封切日の初回上映(字幕版)に映画「ゴジラVSコング」を観ました。当初より約2カ月遅れの公開で、海外公開から既に4か月近く経っています。YouTubeでは海外の断片情報を独自(?)に分析して、とんでもない妄想ストーリーを展開しているユーチューバーもおられましたが、ネタバレ的にいうと、メカゴジラが登場して「キングコング:髑髏島の巨神」で示唆された”地球空洞世界”があんなに堂々と描かれること以外は、ストーリーはほぼ予告編映像をつなぎ合わせた、単純な展開でした。もう少し、ひねりがあっても良かったのでは?と思うのは、ないものねだりの贅沢なのでしょう。

Img_20210703_0001  とにかく、今作のゴジラとコングのCGモデルは大変よくできていました。特にコングがすっかり格好良くなっていました。これが◎です。
 また、昼間に太平洋のど真ん中を進む空母の上で2頭が戦うシーン(第1ラウンド)は、どうやら初の試みらしい。第2ラウンドの香港の場合は夜景ですから、昭和ゴジラというよりは平成ゴジラバージョンですか。何故、今香港?なのか、思わず邪推しました(笑)。でも、せめてもう1ラウンドぐらいは戦って欲しかったものです。なんかチャンピオン戦の割には物足りません。
 ただ、前作と比較して、CG怪獣たちの動きが巨大感を保ったままで素早いのが評価できます。いつまでもアナログ時代の円谷特撮のスロースピードでもないでしょう。でも、メカゴジラのジェット推進力を駆使した素早さは反則ものですねえ。あの巨大な体を動かす動力源の正体は何なのでしょう。地下空洞探査機の動力も不明です。とても人類が作ったとは思えませんね(笑)。アメリカと香港をつなぐ地下リニアカーの設定も衝撃でした。小栗旬の扱いにも違う意味で驚きましたが・・・。

 ツッコミどころと言えば、映画「キングコング対ゴジラ」のオマージュとは思うのですが、巨大なコングをあんな網や輸送機の数で空中輸送することは重量的に許容の範囲なのでしょうかねえ。空想科学映画にしても、今時の映画のリアル感でいえば、とても心配になります(笑)。
 あえていえば、ゴジラの背びれの斧は誰が作ったの?コングの先祖?なら、あの大きな岩の扉はどうやって作ったの?地下空洞には様々な謎が満ち溢れています。地下鉄の例のとおり、地下モノの謎は考えると夜も眠れなくなる(昔の漫才ネタ)ので、このへんにいたしましょう。

 まあ、今作は、前作「ゴジラ/キングオブモンスターズ」とは違って、全世界で大ヒットした(もちろん現時点では日本は除外)ようで、製作中止になっていた次回作も作られるようですから、ここは素直に喜びましょう。もっとも、タイトルは「コングの息子」らしいので、興行面で勝ったのはキング・コングのようです(笑)。
 でも、音楽の基調がすっかり変わったのは少し残念でした。それに加えて、モブキャラの怪獣たちがいかにも西洋モンスターのデザインというのがやっぱり残念でした。まあ、次回に期待をしましょう。
 それにしても、映画が公開された後では、あおりに煽った”YouTube”の番組はどんなコメントになっているのでしょう。少し楽しみです(笑)。

最後に、劇場パンフレットで、アート絵のカバーを付けただけ(?)の特別版販売はどうぞお止めください。お願いです。

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