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2021年6月27日 (日)

ザック・スナイダーカット/ジャスティス・リーグ

 映画「ジャスティス・リーグ」の監督ザック・スナイダーカット版ブルーレイが発売されました。いわゆるディレクターカット版というもので、例えば、リドリー・スコット監督の「ブレードランナー」などは違うラストで何種類も発売されているので有名ですが、このブルーレイは少し違います。なにしろ、オリジナルの劇場公開版が120分に対して、なんと240分、つまり4時間超もあるのです。

Img_20210627_0001  聞くところによると、劇場で公開されたオリジナル版は評判も興行も悪く、ファンを中心にザック・スナイダー監督の当初に企画した内容に改変するよう働きかける運動があったようです。もともと、スナイダー監督は熱烈なコミックファンであり、そうした思いがコミックファンとの連携となったようで、今回、かなりな追加撮影も行って、上映時間4時間の作品が出来上がったそうです。

 しかも、ブルーレイの発売にあたってアマゾンが特別仕様で売り出したおかげで、予約受付と同時にすべて売り切れ、転売屋が何倍ものプレミア価格でアマゾンの中古売場で転売するという事態を引き起こしました。当時は、買えなかったファン達の発売元のワーナーへの怨嗟の声がアマゾンのレビューに掲載されていました。劇場公開版を気に入っている私(当ブログ2017.11.26参照)としても、当然、品切れの中なんとかゲットしようと、楽天市場などを探し回ったあげく、やっと初回仕様のブルーレイセットを”定価”で予約したものでした。その時は、こんな変則的な作品なので発売予定数が抑えられているのかとも思っていましたが、販売直前になって、”通常版”がアマゾンでお安く発売されたのには呆れると同時に怒りが湧いていますが、これはまた別の話です・・か。

 さて、このような経緯があった作品ですが、観て驚きました。まず、画面が監督の意向によりスタンダード版なのです。つまり、ワイドテレビでは、左右に黒枠が出ます。しかも、極端にカラーの彩度を低くしているので、まるでモノクロ画質です。つまり、一見すると、クラシック映画のようです。スーパーマンたちの超人が活躍する娯楽活劇なのに、なんとも暗いムードです。冒頭のワンダーウーマンの活躍が文字通り色あせて見えます。これはイケません。色を抜きすぎて、まるで古いアルバムを眺めるような気さえします。

 加えて、4時間という長時間のせいか、サイレント映画のような”章立て”なのです。しかも、2時間の追加分はほとんどが細かな説明的な内容であり、あまつさえ意味不明な夢のシーンも多く挿入されています。オリジナルの作品では、実に要領よく超人たちを紹介していた物語が、どうでもいいようなエピソードが挿入されたせいで、なんとも中途半端なテンポになってしまいました。アマチュアが作った個人的な映画のようだといったら、失礼ですよねえ。わざわざ、マーベルに対抗したかのようなラスボスなどを追加することはないのです。

 しいて良かった点を言えば、悪役のステップウルフのデザインが各段に改善されたこと、ロシアの原発跡地の住民エピソードをカットしたこと、エンドロール後のスーパーマンとフラッシュの速度競争などがカットされたことは喜ばしいのですが、それ以外は、何故、こんな長い作品を作る必要があったのか、理解できません。私としては、上記の点以外は元の劇場公開版に軍配を上げます。これは決して、アマゾンやワーナーの”商売”に騙されたと怒っているわけではありませんので誤解のないように願います。でも、ホントなら、映像配信でレンタルしてから購入を判断したらよかったぐらいは後悔しています。

 ちなみに、改めて劇場公開版を観ましたが、つまらないギャグが少し鼻に突きますが、やっぱり色鮮やか(マーベルよりは随分暗い色調ですが)な方が娯楽活劇としては楽しめました。

2021年6月26日 (土)

ゲーム・オブ・スローンズ/最終章

 アマゾンプライムで配信中の「ゲーム・オブ・スローンズ」は、第7章までは無料配信なのですが、「最終章」だけはレンタル料金が1話300円程度かかります。それまではドラゴン登場シーンばかりを熱心に見ていたのですが、現金なもので料金がかかると思うと、生来の貧乏性なので「最終章」全編しっかり鑑賞しました。

618a6gpy20l_sx260_  また、このドラマは、あまりに登場人物が多く、しかも、不親切ともいえるほど説明などが一切ない展開ですので、場所や人間関係がよくわかりません。そこで、海外で出版された表紙が豪華な解説本を買ったのですが、これがまた不親切な内容の代物でした。翻訳の面もあるかもしれませんが、それぞれの家ごとに人物紹介を羅列したものなのです。しかも、カタカナ名で、”何々家のだれだれの子のだれだれであり、何々家のだれだれに殺された”などという記述を網羅されても、まったく理解不能なのです。公式ガイドブックが聞いてあきれます。高いだけでドラマを見るうえでは、何の手引きにもなりませんでした。全くの大失敗でした。

 51gleia38gl_sx352_bo1204203200_-1 そこで、最終章の初配信時(2019年11月)に角川ムックから発売されたDVD動画配信データの別冊「ゲーム・オブ・スローンズ完全読本」の古書を購入しました。定価は1800円(税抜)がプレミアがついてなんと3900円もしましたが、その内容は、さすが大出版社の角川書店です。前述の外国モノとは雲泥の差です。図式や表をうまく使って人間関係をわかりやすく説明しているほか、各章ごとの各話の物語を簡潔に記述しており、ガイドブックとしては誠に役に立ちます。しかも、映画評論家の批評にもなかなか面白く感心したものがありましたので、そのコメントはのちほど紹介しますが、この特集号は様々な切り口から長く複雑なドラマを手際よく解説しており、初心者には実にありがたい内容となっています。

 さて、前置きが長くなりましたが、結論から言うと「ゲーム・オブ・スローンズ/最終章」の全5話は、なんとも大傑作です。エミー賞を受賞したのも頷けます。第1回目の受賞は第5章らしいのですが、第1章から始まる裏切りと殺し合いの悲惨な玉座争いの物語は、最終章(第8章)に至って、南下する”夜の王”率いるナイト・ウォーカー(死者)の大軍を迎え、人族側が敵味方の恩讐を越えて団結するという”英雄譚”といっていいほどの盛り上がりを見せます。特に、戦闘シーンのない第2話での決戦前夜の語らいなどは実にいい。しかも、登場人物がこれまでの非道を懺悔するなどまさしく英雄への道を進むかのような展開となります。第1話で子供を搭から突き落とし半身不随の身に至らしめた片腕の王弟騎士の改心ぶりはその典型です。これまでの邪道から王道の物語に立ち返ったような感があります。

 しかも、前述のガイドブックで大筋を知ってしまった(観る前に読んだノダ!)うえでも、最終章はドラマチックでした。ほとんど負けかけていたホワイト・ウォーカーとの戦いでも、まさかあんな殺陣で夜の王を仕留めるとは思いませんでしたし、ドラゴン同士の戦いも一瞬ですが墨絵のごとき構図はなんとも素晴らしい。ちなみに、ガイドブックでもドラゴンの造型を絶賛です。

 一方、裏切った王都をドラゴンで空襲するシーンは、まさしく東京大空襲の悪夢、現在の無人機の爆撃の再現です。人々が焼死する映像などは、空爆の下の地獄図を見事に描いています。ドラゴンの母を止められなかった北の王が「空から見るのでは無く、下を歩いてみたか?」と問いかけますが、現王制を倒し、虐げられている奴隷達を解放するという信念を持つドラゴンの母(女王)には届きません。過度の正義は悪にも狂気にもなることを観客に訴えます。見事ですねえ。 

 そして、愛する者の手による”ブルータス、お前もか?”という衝撃の展開となった挙句、怒ったドラゴンが権力と欲望の象徴である”鉄の玉座”を溶かします。そのあと、結局、王座には、第1話で搭から落とされ車いす生活になった子供が”不自由王”として就くのですが、前述の完全読本に掲載された評論で、”ドラゴンが王座を溶かしたのは、玉座が不要な、車椅子の王様となることを象徴している”と解説していることに、いたく感心しましたし、とにかく全5話を一気に見てしまうほど、その面白さにハマってしまいました。確かに全世界で大ヒットした価値はあります。映画「ロード・オブ・ザ・リング」以降の快挙とも言われているそうですので、いつかブルーレイを買うなりして、全編を初めからじっくり見てみたいものです。

2021年6月24日 (木)

ザ・ファブル/殺さない殺し屋

 映画「ザ・ファブル/殺さない殺し屋」が封切られて、週間興行収入の第1位にあるらしい。レビューも軒並高得点です。実は、私も既に鑑賞ずみなのですが、確かに、主演の岡田准一の体を張ったアクションシーンはさすがだとは思うものの、第1作の時ほどのインパクトはないし、それ以上に、気分の滅入る”嫌な映画”でした。

Img_20210622_0001 その理由は、ひとえに今回の敵役である堤真一演じる詐欺グループの親玉のあまりの”ゲスぶり”に気分が落ち込んだからです。女性、身体障碍者などの弱者を食い物にし、加えて車いすの少女をいたぶる”悪逆非道”の隠し事には反吐が出ます。観る人の心を腐らすような変態描写は、確かに現在の日本社会の歪みを象徴しているのかもしれませんが、なにも娯楽作品の中でわざわざ映像にすることもないのではないか? ネチネチしたチンピラ悪党のこずるさや詐欺の手口を見せられても、全くスカッとしません。嫌な場面だけが思い出されるのです。

 しかも、ストーリーの展開も、最後のボスの行動は意味不明ですし、あの腕の立たない殺し屋のその稼業らしからぬ右往左往の行動もわかりません。観る方としては戸惑ってしまいます。あのゲスの変態ボスに肩入れする人がいるとしたら、それはそれでさびしいですねえ。
 娯楽作品の”敵”はもっと強大な存在が必要です。弱い者いじめの小悪党では”寓話”には役不足でしたねえ。

 逆にいうと、あんなわずか4人の弱小詐欺グループが、あれだけ大勢の殺し屋を雇う金があったことは不思議です。しかも、伝説の殺し屋ファブルとタイマンが張れる手練れも集めているのですから、大いに違和感があります。せめて、もう少し伏線を張ってほしいものです。

 加えて、お楽しみだった、佐藤二朗さんのお得意の即興話術芸は、今回は共演者やスタップだけに受けたような感じで不発でした。全然面白くありません。一方、木村文乃さんは頑張りましたが、ツッコミのタイミングにやや違和感ありです。ここは多分編集のせいと思います。惜しかったですねえ。

 以上のように、ザファブルの続編は、日本映画の範囲内での体当たりアクションは評価しますが、なんとも後味が悪い映画となってしまいました、残念です。当然、パンフレットも購入しませんでしたので、チラシをご覧ください。

 

2021年6月19日 (土)

モータルコンバット

 映画「モータルコンバット」は、格闘ゲームの実写化ですが、既に1995年に一度映画化され、続編も作られたものの、確かビデオで見た限り、全然面白くなかった記憶があります。今回は、CG技術も格段に進歩しており、しかも、日本のアクションスターの真田広之やいまやハリウッドスターともいえる浅野忠信が出演しておりますので、封切り日に映画館へ足を運びました。

Img_20210618_0001  冒頭、1600年頃の設定で、真田が扮するハンゾウの家族が襲われます。真田は、苦無を結んだ縄術で奮闘しますが、家族もろともあえなく殺されます。いきなり刀を敵に投げるなんてあり得ない殺陣の上、敵の親玉は氷の魔法を使うのです。その直後に、浅野が演じる坊主が出現しますが、目が青く光っており、どうみても悪の使徒ですよねえ。そして、場面は「魔界」という字幕の付いた荒涼とした世界に変わり、田舎のおっちゃんのような魔界のボスが登場です。どうやら、ハンゾウの子孫が魔界をほろぼす予言に怯えているようで、来たるモータルコンバット(闘技大会)までに、人間界の代表選手を皆殺しにしようという企てがなされるようです。

 実は、「魔界」という字幕を観た時点で、私はこの映画から脱落してしまいました。その後描かれるハンゾウの子孫の主人公の俳優さんもなんか中途半端ですし、金髪美人も選ばれし者のドラゴン印が無いし、中国系やロシア系の代表選手もなんだかパッとしません。
 各スキルも、氷や炎、高速移動、転移などの超能力があるものの、カンフー技が基本であり、なんとも、スーパーマン対バットマンのような居心地の悪さです。まあ、ゲームで有名らしい手が四本ある魔法のランプの魔神もどきが登場するのは、お約束かもしれませんが、なんとも見掛け倒しでした。しかも、ラストは、ハンゾウまでも炎のスキルを持って復活します。まったく理由も意味も分かりませんでした。

 この作品が週間興行収入で全米1位を獲ったというのが、なんとも信じられません。他に有力作品が無かったコロナ禍での珍事かもしれません。ゲームファンなら、もっと楽しめるのかもしれませんが、知識のない私ではまったく寄るすべすらありませんでした。誠に残念でした。しかも、今回は、何故か鑑賞前にパンフレットを買ってしまいました。これも悔やまれます。

 それにしても、真田広之氏は「アベンジャーズ/エンドゲーム」でもちょい役でしたし、今回も、ゲームでは有名な役柄(覚醒して”スコーピオン”という。)らしいですが、”恰好良い役”かと言えばあんまり強そうになくて、正直良くわかりません。もっともっと活躍してほしい日本人俳優ですのに、ここもなんか残念でした。

2021年6月17日 (木)

ポリプテルス

「ポリプテルス」とは、熱帯魚に詳しい方ならご存知と思いますが、アフリカに生息する”古代魚”の仲間です。古代魚とはなんとロマンのある呼称でしょう。太古からその姿を変えずに生き残っている”生きている化石”なのです。このあたりの生物については、シーラカンスと同様に何故か無条件に”好き”なのです。多分、幼いころからの図鑑好きの延長線に位置する趣味のお話です(笑)。

20210617_092041  さて、今回、全長34cmぐらいの模型を入手しましたので、ご紹介したいと思います。メーカーは、これまでシーラカンスを2体ほど購入した実績のある”fish craft REAL”さんという個人メーカーの商品です。随分昔に発売されていたものなのですが、先日、久しぶりにオークションに出品されていたので、思い切って購入しました。ご覧ください。やはり、生物模型は、写真とちがって立体的に鑑賞できるので、飾っていて楽しくなります。丸い棒のような体型や爬虫類のような頭部などが、よく分かります。
20210617_092200 20210617_092101  ちなみに、このメーカーのサイトを拝見すると、アマゾンに生息する「ピラルク」も商品目録(売り切れ中)にありますので、いずれは手に取ってみたいものです。

 以上、映画とは全く関係のないお話でした。コロナ禍での”おうち時間”の過ごし方もなかなか迷走し、大変ですが、今週末あたりからは、ハリウッド映画の新作も徐々に解禁されるようですので、大いに期待しているところです。

2021年6月15日 (火)

Mr.ノーバディ

 映画「Mr.ノーバディ」の題名はどこかで聞いたことがあるとおもったら、マカロニウェスタンの「ミスター・ノーボディ」がありました。意味は、劇中では”誰でもない”という字幕があったように思えますが、”無名の人”という意味なのでしょうねえ。
 つまり、名もなき一般人が、実は最強の男だったというパターンです。最近では、キアヌ・リーブス主演の「ジョン・ウィック」、デイゼル・ワシントン主演の「イコライザー」などが有名ですが、昔では、シルベスター・スタローンの「ランボー」もそうですよねえ。いわば、アクション物の鉄板のストーリーです。

Img_20210615_0001 でも、これまでの映画は、観客からみれば、主演俳優の配役でもう主人公が強いということが分かるのですが、この作品の主演は、ボブ・オデンカークという俳優さんが演じる、いかにもさえない中年男という風采であり、そのあたりが新機軸(笑)なのかもしれません。
 妻や息子からも愛想をつかされたようなおっさんの悲哀に加え、あまりに一般人の振りをしすぎたストレスからか、冒頭の強盗事件の空振りエピソードの情けなさがこの作品の持ち味になっています。なにしろ、正体は、元国家機関の”会計士”と言う名の凄腕仕置き人だったというのですから、そのストレスのはけ口となる相手が気の毒になります(笑)。軍隊OBらしい男が怯える主人公の手首の刺青のエピソードをもう少し丁寧に描いてほしかったなあ。非常に気になります(笑)。

 そして、主人公のストレス発散の可哀想な敵役となるのはロシアン・マフィアの組織であり、ボスの出来損ない弟グループとのトラブルから巻き起こるアクション・シーンは、「ジョン・ウィック」のスタッフが参加しているようで、それが映画館に観に行った動機でもありますが、予想どおりなかなか迫力があります。主人公が結構ぼろぼろになるのが良いですねえ。
 また、マフィアの情報屋がペンタゴンの秘密資料を見て即座に退職するのが笑えます。

 上映時間は90分、昔の基準で言ったら、まさしくB級映画なのでしょう。しかし、舐めてかかった一般人に、組織全体をつぶされるという物語は、アクション映画のカタルシスを十二分に感じさせてもらいました。ボケたようにみえる主人公の年老いた父親、クリストファー・ロイドが喜々としてショットガンをぶっぱなします。クライマックスでは、主人公が妻の父親から急遽買い取った工場を改造し、様々なトラップを仕掛けて敵を全滅にするあたりは、あのランボーの最後の作品よりは何倍も良くできています。ボスとの決着シーンも意表をついて感心しました。小品ですがアクション映画の快作となりました。

 それにしても、映画「96時間」でも思いましたが、アメリカという国は、やっぱり自衛、”自分の家族の身は自分で守る”という意識が強いのですねえ。自宅への襲撃から焼失という大惨事があったにもかかわず、妻や子供たちはやっぱり平気で主人公と生活を続けていくのですから、平和な我が国の意識ではとうてい太刀打ちできないメンタルの強さです。常に犯罪が日常的にある社会では、マイホームには地下室が必要なのです、と(笑)。

2021年6月10日 (木)

るろうに剣心 最終章 The Beginning

 映画「るろうに剣心 最終章 The Beginning」は、前作「最終章 The Fainal」で登場したものの、パンフレットには一切掲載されなかった(当ブログ2021.4.24)有村架純扮する剣心の元妻との哀しいラブストーリーでした。
 彼女の名も役名も伏せたのは、この作品のための布石だったのでしょうが、正直いえば、北村一輝の隠密をふくめてその筋書きと結末は全部前作で描いているのですから、今作ではストーリーには何の起伏もなく、ひたすら二人の演技を観ることになります。
 「本当に血の雨を降らすのですね」と言って剣心の前に現れた謎の女、内面がわからない仮面のような有村架純はなかなかの好演です。洗い髪のまま雪化粧の山道を歩く姿は雪女のようで実に雰囲気があります。◎です。

 加えて、高橋一生が演じた桂小五郎がうまい。剣心を人斬りテロの武器として使う長州藩のリーダーをそのカリスマ性や人間性を見事に演じています。幕末物のテロリズムを描いた傑作である五社英雄監督の「人斬り(当ブログ2007.10.20参照」に登場する岡田以蔵(勝新太郎)を使う冷酷な武市半平太(仲代達矢)とは全くタイプは異なるものの、それに匹敵するような”維新の志士”の名演技です。

Img_20210610_0001 さて、この映画の見所と言えば、人を斬らない”るろうにん剣心”ではなく、”人斬り抜刀斎”の殺陣が見られることでしょう。とにかく、佐藤健の剣さばきが早い。冒頭の捕えられたシーンはその設定がなんとも疑問ですが、その後の殺陣が素晴らしい。人を斬ると血がきちんと出ます(笑)。しかも、CG技術の進歩のせいか、瞬間的で後を引きません。昔の「人斬り」や映画「子連れ狼」シリーズのようなアナログの血しぶきとは違いますねえ。私が長年思い描いていた時代劇映画に到達したのかもしれません。
 ちなみに、パンフレットを読むと、アクション監督さんのコメントで「日本刀の使い方が違う」などという批判(やっぱり)があったので、今作は刀で斬るということを重視したそうです。逆刃刀の殺陣とは違うそうです。
 ただ、見せ場となる新撰組沖田総司との対決シーンの殺陣は、なんとも地味で期待はずれでしたねえ。その直前の池田屋の”2階建具落ち”アクションがうれしかったので、余計そう感じるのかもしれません。

 それにしても、あの新撰組の衣装はいくらなんでも”いかん”でしょう。模様はともかく羽衣のような長すぎ袖などは戦闘には向きません。なんともだらしなくで違和感がありまくりです。その点が実に残念でした。

 一方、”ハブタエ”を排してウィッグによる髷はいいですねえ。一人ひとり個性的で、幕末の写真を彷彿させます。まあ、薄汚れぶりが濃いのはNHK以来のものでしょうか(笑)。思えば、色合いも彩度を落としているので、姿形は黒澤明の「用心棒」のヤクザたちを思い出しました。

 あと、長州藩の宿がのセットが凄すぎます。宿屋の細部はリアルな生活感をしっかり描こうとしていますが、その前に、日本建築であんな巨大な土間ともいえる空間が構造的に建築可能なのか、その点が気になって仕方がありませんでした。
 一方で、あの”山小屋”のたたずまいは良いねえ。あんな場所に住んでみたいものですねえ。でも、お風呂はあったのかな?そんな細かなことが気になりました(笑)。美術が見事過ぎるからです、きっと。

 以上、いろいろ些細な気が付いた点を記述しましたが、結論としては、上映時間はやや長かったものの、新しい時代劇に挑戦していることを楽しんで観ることができました。なにも、今作で完結することもないで、次作も”新時代劇”を製作してほしいものです。往年の時代劇ファンとしては、大いに期待しています。

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