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2021年5月31日 (月)

ゲーム・オブ・スローンズ

 今更ながらのテレビドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のお話です。2013年から8シーズン続き、世界中で大ヒットした作品ですが、かなり以前に観た時は、第一部の開幕早々貴族の少年がある出来事を目撃したために搭から突き落されるという衝撃的なシーンもあって、そのどぎつさと余りの情け容赦のなさに辟易して観るのを止めてしまった経緯があります。

 ところが先日アマゾン・プライムで視聴期間の終了予定の告知を見て、何気なくアットランダムに選択した第5部を観たのです。そこには、ドラゴンが騎士の隊列を襲撃しているシーンが映っていました。その映像が見事というか、とにかくドラゴンのデザインが秀逸なのです。CG時代に入って見た最良のドラゴンの姿です。あの名作「ロード・オブ・ザ・リング」の前日譚の「ホビット」に登場したドラゴンは、しゃくれ口が醜く、なにより溶けた黄金の中でも生きているという無敵すぎる怪獣はあまり感心しませんでした。「ハリー・ポッター」の”ハンガリー”ドラゴンも良くできていましたが、やはりお伽噺風でインパクトが足りませんし、直近の「モンスターハンター」も論外ですよねえ。

Img_20210531_0001-2  それらに比べて、この「ゲーム・オブ・スローンズ」のドラゴンには驚かされました。なにより、その生物感が素晴らしい。まあ、火を噴くのはしかたがないとして、うごめくような皮膚感が見事です。細い毛のようでもあり棘のようでもある皮膚が体表を覆い、細かな棘が大きな棘に連なり、身体を列状に覆った背ヒレの表現は実に凄い。しかも動くとその皮膚が象のようにたわむのです。その上、大きな弓矢で撃ち落とされるのですから、まさに生きている巨大な動物という設定です。CG製作はドイツの会社らしいので、まさにドラゴンの本家ニーベルンゲンの伝説の系譜です。ただ、いかにも空を飛べそうな翼竜タイプのドラゴン(最近はこのタイプが主流)なので、中世の木版画にあるような背中から羽のある空想生物ではないのですが、その雄姿をご紹介します。とは言っても、海外で販売されていた”ドロゴン”スタチューは、最高紙幣二けたという高額なもので全く手が届きませんので、拙作の鉛筆画で我慢ください(笑)。

 それにしてもこのドラマは、ファンタジー関連の映像表現も凄いですが、中世文化の薄汚れた映像や露骨な裸シーンは凄まじいの一言です。ドラゴンの母役の若い女優さんの全裸はまだしも、悪役女王が全裸で群衆の間を歩き、罵声や糞尿を投げられる場面などは、女優さんも大変だなあと思います。女優魂が立派としか言いようがない。エロチシズムなどというレベルではないですねえ、陵辱、バイオレンス等々なんとも言い難い過激すぎるドラマです。それにしても宗教は怖いですねえ、中世ヨーロッパ(を模したファンタジー社会)も恐ろしい。なかなか日本人のぬるま湯感覚では正視はできません。しかも、このシリーズ長いし、登場人物も多いし・・・。あとは第8部が残っているのですが、ここからレンタル料金が発生しますので、まだ未見です。まあ、ドラゴンの都市破壊シーンがあると聞いていますから、いずれ覚悟の上、観てみたいと思っていますが、歳を重ねるとアチラのドラマシリーズの鑑賞には気力と根気と体力が必要となってきます。冗談抜きで本当です(笑)。

 <追記>

20210531_151514   補足ですが、このシリーズに登場するドラゴンは3匹います。それぞれドロゴン、レイガル、ヴィセーリオンという名前がついてます。このうち、姫を背に乗せるのがドロゴンで、ホワイトウィーカー(闇の王)に殺されるのがヴィセーリオンです。ただ、どうやらゾンビドラゴンとして蘇るようです。このヴィセーリオンのアクション・フィギュア(いわゆるオモチャ)の飛ぶ姿をご覧ください。3匹とも色は違えど姿形はほぼ同じですので、ご参考にしてください。11

2021年5月29日 (土)

雑誌「怪獣大行進」顛末

20210529_133227  ヤフー・オークションを暇にまかせて眺めていたところ、懐かしい古書に出会いました。昭和42年に芳賀書店が発売した少年向け怪獣特集の雑誌「怪獣大行進」です。商品写真にページを開いた写真が掲載されており、すっかり忘れていた記憶が蘇りました。そう、この雑誌も持っていたのだ。当時としてはかなり鮮明な写真が掲載された特集雑誌であり、以前紹介(2021.1.25参照)したスクリーン別冊「怪獣映画大特集」と奇跡的に友人から手元に返された「ウルトラマン怪獣大百科」と双璧をなす名著(?)でした、と個人的には思っています。・・・忘れていましたが、愛読書でした(笑)。
 
 そこで、懐かしさもあり、実際手にとって読みたいと思ったのですが、提示価格をみてびっくり仰天です。なんと万札が片手ぐらいは必要なのです。こりゃあ、高すぎだろうと、ネットで相場を見てみると、もう随分前に、あの漫画の古本販売で名を成した古書店「まんだらけ」で並上5万円強、他のバイヤーでは完品が10万円弱という実績もありましたし、過去のオークションでは並本で3万円強の取引もありました。
 まあ、戦前の手塚治虫のマンガが数百万円というレベルとは違いますが、とても手が出る状況ではありません。特に、こうした子供向けの雑誌などは手荒く遊んでいるので状態が悪いのが当たり前で、残っていること自体が奇跡なのでしょう、プレミアが天井知らずで困ったものです(笑)。

20210529_133327  しかし、運はあるようです。先日、突然、メルカリで”状態が悪い”という説明付きの商品が出品されました。本の外面の商品写真しかないのですが、一応表表紙も裏表紙もあります。
 そこそこの値が付いているのですが、前述のような価格よりは”相対的”にリーズナブルなので、この際、中身のことは考えずにゲットしました。なにしろメルカリは即決価格ですので、逡巡していると他の買い手に奪われるのです。この前も、捜していた”フェバリット”の海の生物シリーズ・フィギュアが2個も同時に出品されたのに、油断した隙に売れてしまいました。とにかく即決即断です。「後悔は買ってからにしましょう。」という名文句の通りです。

20210529_133359 さて、届いた商品は覚悟の上とはいえ、なかなかに難物でした。表表紙と裏表紙は下部をセロハンテープで止められており、その他の部分は完全に本体から外れています。しかも、マジックで名前や背表紙のタイトルをなぞっています。中身は、なにかの付録を糊付けしていたり、一部切り取りがあったものの、肝心な写真の部分はなんとか無事だったのが幸いでした。

20210529_120427  早速、本の修復作業です。まず、貼り付けられたセロハンテープを慎重に剥がします。手持ちの”シールはがし”をテープと表紙の僅かな隙間に流し込みながらの作業でしたが、これは大成功でした。古びたテープが完全に取れた時は感動しましたねえ。
 次に、マジックで書いた名前などをシンナーで消していきます。表紙がコーティングした紙質なので周囲の汚れと馴染ませる程度には消すことができました。
 最後は、手芸用の白い接着剤で表紙を本体にくっつけていきます。楊枝を使って少しづつ細心の注意を払いながら貼り合わせていきます。
 そして洗濯ばさみで固定して一晩おいて、修復が完成です。今回は、なかなかうまくできました。私にとっては高い買い物でしたが、全体的に写真の部分の被害が少なく、うまく修復できたので気分も良く大変満足しています。
 頁を開くとやはり懐かしさが半端ありません。ではその修復本をご覧ください。

 また、同じ時期に発売されていた前述の3大名著のうち残り2点の雑誌「ウルトラマン怪獣大百科」と別冊スクリーン「怪獣映画大特集」も併せてご紹介します。20210529_133439

20210529_133525 もっとも、どの雑誌も写真集と銘打つ割には写真は全体の中のわずかな部分であり、ほとんどが挿絵と解説で成り立っていることや、サイズも実はB5版で意外と小さかったんだと改めて納得しました。子供の時はもっと大きくて初めて見るカラー写真に感動したものでしたのに・・。まあ、当時住んでいたところは、ウルトラマンのテレビ放送もない情報過疎の地域でしたし、こうした雑誌や少年漫画が数少ない情報源でしたから、大きく見えたのは当然だったかもしれませんが、現実はこんなものなのでしょうね(笑)。

20210529_133636  ちなみに、別冊スクリーン「怪獣映画大特集」は、以前ご紹介した冊子(2021.1.25参照)とは異なるのものです。その証拠に、正規の裏表紙が付いています(笑)。最近、交換部品用(?)に入手しました。

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2021年5月21日 (金)

映画衣装物語

 「映画衣装物語」という本のことは、以前から”大河通販”で承知していましたが、2018年発行の図書なので、新品はもう無くて、プレミア価格で大体3倍から6倍強の値段が付いた古書しかありませんでしたので、なかなか購入に踏み切れませんでした。
 今回、たまたまオークションで定価より若干高い程度の値段の物を見つけました。状態も良さそうなので思い切ってゲットしました。

Img_20210521_0001  著者は、東宝で衣装係を務め、三船プロに移った経歴の池田誠という方です。衣装を担当した俳優や映画の撮影裏話を綴った内容です。最近、映画のスタッフによる著作や対談集の出版は流行っているのですが、2018年というのは、この手の本としてはかなり早い時期だったのでしょうか?あまり知られていない割には、なかなか面白い読み物でした。

 なにしろ、衣装係としての初仕事が黒澤明の「隠し砦の三悪人」で、あの石段を駆け下りた群衆の衣装は、黒澤監督が灰を頭からかけたなどというエピソードはもう堪りません。しかも、この本で掲載した映画の選択が私ごのみなのです。
 例えば、「キングコング対ゴジラ」では、特撮映画は衣装予算が少ないのでゴジラの中身俳優用のトレーナー3枚を購入した裏話とか、円谷英二特技監督と俳優中島春雄が作り上げた”ゴジラ”をいまやさも自分達の手柄のように言い立てる連中に怒りを覚えるなどとストレートに書いているところは実に好感が持てます。

 また、私の好きな家庭劇ともいえる東宝映画「沈丁花」を取り上げているのもうれしかった。この映画は、当ブログ(2019.7.6参照)でも書いていますが、大映の京マチ子、司葉子、団令子、星由里子の美人4姉妹の物語なのです。共演男優陣も、小林桂樹、仲代達矢など豪華な配役です。しかも、出演しない高峰秀子が衣装監督としてタイアップした西武百貨店で着物を選んだといいます。そういや、女優達は皆着物姿でした。時代背景だけではなく製作裏話もあったのですねえ。

 そのほか、「佐々木小次郎」の星由里子パンツ事件、「黒部の太陽」のトンネルセットの手違い”事故”事件、「日本の一番長い日」の三船軍服事件、「レッド・サン」の三船二日酔い事件などなど、面白くて一気に読んでしまいました。

 こうした撮影の裏話と並行して、三船敏郎、石原裕次郎などの気配りを紹介し、返す刀でスタッフに配慮の無かった俳優たちを実名で掲げています。いやあ、こういう我が国の出版物ではあまり見たことのない率直さには驚きますが、新鮮ですねえ。いやあ、イイじゃないですか。私は大変気に入りました。

 

 

2021年5月15日 (土)

時代劇聖地巡礼

 本当に久しぶりに全国チェーンの大型書店に出かけました。かつてはあれほど足しげく通っていた本屋さんにほとんど出かけていません。その理由は、本が通信販売で翌日には手に入る便利な時代になったこともありますが、一番大きな要因は、地元の大型書店では椅子を構え、売り物の本を自由に長時間読ませるサービスを始めたからです。高齢化社会の縮図なのか、開店と同時にお年寄り(何故かほとんど男性)が集まり熱心に読書しています。それ自体はお年寄りの生きがいにつながるのでしょうが、問題は、手で丸めながら読んでいる本がすべて売り物なのです。併設の喫茶にも持ち込んでも良いといいます。それらの本は、当然、読まれた後は売り場の書棚に返されます。何度か、汗でよれよれになった本を手にしました。定価で売る大事な商品なのですよ、コレ。買う客をなめてません?ホントに。何か、本屋さんとして、商売として間違っている気がします。もっと”本”を大事に扱ってほしいものです。古書店チェーンの方がもっと本を大事にしていますゾ。

 実は、この”困ったちゃん”の大型書店さんが、コロナ禍のために椅子を撤去していたのです。で、久しぶりに書店の雰囲気を楽しみました。ネットショップのウインドウでは気が付かない新刊本が並んでいます。一期一会というのが本屋の楽しみですよねえ。

51jfemn4o5l_sy291_bo1204203200_ql40_ml2_  ということで、今回見つけたのが、「時代劇聖地巡礼」です。著者は、このブログでも何度か紹介したことがある時代劇研究家の春日太一氏です。立ち読みで中身をぱらぱらと見たら、ほとんどがTV番組の時代劇のロケ地の紹介で予想以上に映画関連が少ないため、購入を少し迷ったのですが、東映時代劇映画「十兵衛暗殺剣」で、殺陣に定評のある近衛十四郎扮する柳生十兵衛が湖族と戦った湖の場所が紹介されていたので、つい買ってしまいました。
 この映画のことは、当ブログでも紹介(2012.4.15参照)していますが、大スター大友柳太郎が悪役の剣豪に扮し、小太刀を使う重厚な殺陣を見せて実に面白かった作品です。多分、琵琶湖だろうと思っていましたが、この本によると、ロケ地は、琵琶湖の内湖の一つ、葦が群生している「西の湖」だそうです。唯一足がつく浅い水辺があるそうです。現地も全く見てもいないのですが、あのクライマックスが蘇り、著者でなくても興奮しますねえ。

 そして、購入後、もう一つの発見がありました。この本では、時代劇で良く使われる橋として、八幡市の上津屋橋、通称「流れ橋」が紹介されています。掲載されたカラー写真を見てうれしくなりました。私のお気に入りの大映映画「座頭市海を渡る」の前半に登場する欄干のない長い木造の橋があったのです。映画を観た時からどこにあるのだろうと思っていましたし、現在はもう存在しないのだろうと諦めていた”橋”が今も残っているのです。この映画の中でもう一つ印象的な”金毘羅宮の長い石段”が実は合成した絵だったとも聞いていましたから、なんだか昔の恋人に会ったような気がします。この本を買って本当に良かったと実感した一瞬でした。良く見れば表紙の写真の場所がそうです。

 そのほか、テレビ番組として紹介されたロケ地の写真の中には、何かの映画で見た風景がある気もしますので、次作は、是非、時代劇”映画”のロケ地を紹介する本を出版してほしいものです。最近の時代劇ロケは京都以外の場所を各地で探しているそうです。いまや京都はあふれるばかりの観光客で混雑している大観光地ですから実際の映画ロケ撮影はもう不可能でしょう。仮に邪魔な現代的な建物や背景についてグリーンバックを使ってCG処理しても、外国人などの物見客が大勢集まる観光名所ではどう考えても制約ばかりで撮影は無理ですよねえ。

 その意味で当初この本に掲載されている京都の風景が無人になっている写真に驚いたのですが、実は著者がロケハンで巡礼したのは、昨年のコロナウィルスの緊急事態宣言が解除された翌日以降の数日間だったそうで、まさに慧眼ともいえる出版でした。この掲載済みの写真から時代劇映画のロケ地を探し出すのも面白いかもしれません。いずれにしろ、歳を重ねた時代劇ファンには楽しい読み物となっています、未見の方は是非ご覧ください。

2021年5月14日 (金)

公開延期?世界で一番遅い国

 東宝が公開日を本日5月14日と発表していた映画「ゴジラVSコング」がいつのまにか公開延期になっていました。しかも、現在のところ、公開日はまだ未定だといいます。まったく、ふざけるな!と言いたくなります。アメリカでは3月末に既に公開され、大ヒットを飛ばしているようですし、どうやら、世界で最も公開が遅い国となってしまったようです。我が国由来のアイコンであるゴジラ物なのに、何故に、こんなに遅くなったのでしょう。ひとえに欲をかいた配給会社なのでしょうねえ。コロナ禍を見越して時期をずらしたのでしょうが、それが逆に一番やばい時期になったのでしょう。でも、他の映画は粛々と公開しているのにやっぱりこれは欲のかきすぎですねえ。時機を失してしまうと、当たるモノも当たらなくなりまねえ、興行も厳しい勝負の世界なのだ、多分(笑)。

 それにしても、関連の宣伝商品だけは予定どおり発売されているのが腹が立ちます(笑)。いろいろ発売されていますので少し紹介します。   まずは、今回の作品の元ネタ「キングコング対ゴジラ」の4Kブルーレイです。この商品の付属品である小冊子が欲しくて高いお金を出しました。そして、期待どおりその小冊子に掲載されている写真は、撮影したばかりの”生写真”ともいえそうな実に鮮明なピントのカラー写真でした。例えば、タコを這わしたセットの風景写真などは現場に居るような臨場感があって、これまでさんざん撮影裏話で聞かされていたことを目の当たりにした気がして身震いするほど感動しました。まあ、少し大げさですが、本当に買ってよかったと納得です。

 一方、絵にかいたような便乗商品もあります。編者が有名なデザイナーか何か知りませんが、先般発売された横長の分厚いゴジラの写真集「ゴジラ」です。だいたいこうした高価な大型本はビニールで袋綴じされており、中身を見る機会もありませんので、結局そのまま大河通販で取り寄せましたが、あまりに杜撰な中身に呆れ果てました。数が多いだけで掲載された写真はどれもピンボケのようなスナップ写真の寄せ集めです。しかも、掲載画面を大胆にカット(?)しており見るに堪えないシロモノです。よく、こんな写真集の出版を版元が許したものです。やっぱり、欲に目がくらんだのでしょうか?作り手の良心を問いたいと思います。今回は商品写真も省略です。

 それにしても、こんな商品まで企画するくらいなら、ゴジラVSガメラの企画を立ち上げてほしいものです。「用心棒対座頭市」が実現しているのですから出来そうなものですが、現実にはカツシンぐらいの無鉄砲さと腕力が必要なのでしょうねえ。ユーチューブなどを見ると、このシリーズの次には”ガメラ”という声もありますし、いまさらながら、結構、若者に”平成ガメラ”の評価が高くてうれしくなります。

 ところで、ガメラと言えば、”昭和ガメラ”の第2作目に登場する敵怪獣「バルゴン」をご存知でしょうか。子供向けの怪獣シリーズなのですが、この第2作目だけは巨大オパールをめぐる大人たちの欲望あふれる傑作なのです。加えて、口から長い舌を飛ばし、背中から虹の破壊光線を出す、どんでもない設定の冷凍怪獣(熱帯生物なのに冷凍なのです。)バルゴンへの人間側の攻撃作戦がなかなか見ごたえがあります。当時の大映特撮の粋であり、大映調の陰鬱な色調が素晴らしいのです。ちなみに、併映の大魔神も傑作でした。まさに、怪獣映画の黄金時代の作品です。未見の方には、是非ご覧いただきたいのですが、当時の特撮には温かい目で見ていただくようにお願いします。

20210424_2003011  で、今回何故か、ガメラのことまで思い出しましたので、私のお気に入りの”バルゴン”のレジンキットを組み立ててみました。いまは人形メーカーに転進したボークス社からもう数十年前に発売されていたキットです。サイズは舌の先から尾っぽの先まで約40cmです。以前、大型の模型を作ったこと(ブログ2016.3.21参照)がありますが、今回の模型は、小型で比較的簡単に作れるような気がしたのです。が、結局、そういう気がしただけで、今回も塗装の色目にはなかなか苦労しました。まあまあの完成度です。レッドブラウンとダークイエローの混色の濃淡では少し物足りません。どなたか、塗装色の配合見本を教えてほしいものです。完成品をご覧ください。

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2021年5月 9日 (日)

恐竜100万年 トリケラトプス

 映画「恐竜100万年」の恐竜のお話です。以前、この映画に登場するアロサウルスのフィギュアが発売されたことを紹介したブログ(2020.10.25)で予告していましたが、先月、発売延期を何度か繰り返してやっとトリケラトプスのフィギュアが発売されました。
 もちろん、このトリケラトプスの姿は、昔ながらの爬虫類系復元模型です。映画公開当時、荒涼とした原野でケラトサウルスと死闘を繰り広げたトリケラトプスの勇姿が目に焼き付いています。大きく開いた口、ごつごつした鱗、どっしりした体型など、当時の恐竜復元図そのものが動き出したような感動でした。なにしろCG技術の無い時代ですから、レイ・ハリーハウゼンの見事な手腕による恐竜の姿と動きが、”恐竜映画の決定版”として高い評価を受け、CG製の「ジュラシック・パーク」まで長らく恐竜像のバイブルになっていました。

 20210509_0945491 今回、その伝説の映画に登場するトリケラトプスが半世紀もたって初めて模型化されることは実に感慨深いものがあります。しかも、コロナ禍の影響で生産が遅延して発売日が相当遅れてしまい待つ身としては本当にヤキモキしていましたので、とりあえず商品発売が実現したことを素直に喜びましょう。なお、決闘の相手役のケラトサウルスも発売予定ではあるものの、これも一体いつになるのか、わからない状態です。

 20210509_0944541 さて、このように大きな期待のもとに購入した商品なのですが、手に取ってみると、少なからずデザイン等に不満があります。写真を見ていただくとわかりますが、映画のデザインとの違和感がかなりあります。
 そういえば、アロサウルスのときも少し感じましたが、造形が全体に荒い感じなのです。怪獣ではなく生物なのですから、もう少し皮膚や鱗などの細部の造りを丁寧に仕上げてほしいし、今回の造型は、特に目の印象がオリジナルのものと全く異なります。映画の中のレイ・ハリーハウゼンの造型はもう少し目つきが鋭いのです。しかも体型ももっとシャープな印象です。
20210509_0946341  ひょっとしたら、今回の商品は購入年齢のターゲットを低年齢層に絞った?せいなのでしょうか、どこか”トイ”っぽいのです。最近の子供たちはお金持ちらしいので・・(笑)結局、”人形は目が命”という宣伝文句のとおり、その目力の差が出てしまいました。本当に残念ですねえ。この商品は、レイ・ハリーハウゼン生誕100周年というシリーズの一環であり、このほかにも様々な商品が予定されていますが、少しならず、今後発売予定の商品群に不安を覚え始めています。どうか、次作は期待どおりの出来になることをお祈りしています。版権をもらうために、権利を持つ海外の会社に試作品を見せてお伺いを立てているそうですので、是非、天国のハリーハウゼン氏のお力もお借りしたいものです。

2021年5月 8日 (土)

恐竜画集

 前回に引き続き、恐竜本のお話です。恐竜の姿は化石の発掘による新発見や分析技術の進歩によって様々な形に変化してきているのは、前回ご紹介したとおりですし、それは、図鑑の復元図にも大きく影響しております。

 復元画家の元祖、チャールス・R・ナイトの復元図は科学的には不正確になっても、その芸術性や歴史的価値はいささかも失われていません。今観ても、素晴らしい”絵”なのです。残念ながら、我が国では、彼の恐竜画集は発売されてはいません。断片的に様々な図書でその”絵”が紹介されているにすぎませんが、どれも有名な”絵”であり、我が国の子供向の雑誌や図鑑で模倣されていたので、皆さんも多分どこかで見たことがあると思います。ちなみに、彼の作品をまとめた本はとしては「恐竜、マンモス、原始人」という洋書がありますが、この入手経過は当ブログ(2008.1.19)で詳細に書いていますのでご参照ください。

 また、私のご贔屓のチェコの画家”ズデニエック・ブリアン”の絵も、いまや図鑑ではなく、画集としてその価値を高めています。興味のある方は、我が国での翻訳版「図説 人類以前」を古書店で探して、その素晴らしい復元図をご堪能ください。様々な古生物が原始の自然の中で生き生きと描かれています。本当に素晴らしいものです。なお、画集としては「原色 前世紀の生物」という大型本が出版されており、当ブログで正・続と2回(2014.1.18,2014.8.26)紹介しています。

513lm3juunl_sy390_bo1204203200_ こうした名著に比較して我が国の図鑑の”絵”はどうも感心しないなどと思っていたら、トンデモ恐竜本で紹介のあった「藤井康文 恐竜画集」という恐竜画集を手に取って、日本の復元画家もいいぢあないかと少し見直しました。作者は科学雑誌の「ニュートン」や小学館の図鑑で40年も描いてきた方だそうです。私のイメージでは我が国の出版物は昔の荒々しいタッチのスケッチ風復元図や最近のCGチックな復元図でしたが、この本の絵は手書きの細密恐竜画なのです。しかも、各ページの真っ白な背景に細かな描写の恐竜たちがうまく配置されているデザインは図鑑としても実にいい。”画集”としたのは、最新の恐竜の定説と異なる部分があるのでしょうが、そんなことはどうでもいいのだ(笑)。羽毛のない姿が実に心地よいのです。本当に楽しめました。

 ちなみに、CG復元図では「寺越慶司の恐竜」、最新の学説に基づく恐竜画としては、内外の復元画家を紹介した「アート・オブ・ダイナソー」が出版されていますが、やっぱり、羽毛恐竜は嫌いです(笑)。しかし、何度も繰り返しますが、”近縁種は別にしてティラノサウルス本体にはまだ羽毛があったという決定的証拠はない”というのが往年の恐竜ファンの心のよりどころです。410lgsxb4ol_sy297_bo1204203200_ 61mv6fih9l_sy354_bo1204203200_

 

 

2021年5月 3日 (月)

日本昭和トンデモ恐竜大全

 「日本昭和トンデモ恐竜大全」という単行本が目についたのでつい購入しました。著者の田村博さんは、”著者紹介”によると”ジャズピアニストで、無類の恐竜マニアで恐竜に関するものは何でも集めている日本一のコレクター”だそうです。この本は、その彼のコレクションから、水平型の恐竜になる前の、つまりゴジラのように立ち姿で尻尾を引きずる昔ながらの垂直型の恐竜復元にもとづく図版やおもちゃなどの恐竜グッズを紹介したものなのですが、まだ現在ほど恐竜への理解が進んでいない時代ですから、少年雑誌の図版などは、怪獣のような姿はもちろん生息年代もめちゃくちゃだったようです。
91hi3qibais  それが著者が”トンデモ恐竜”と名付けた所以なのですが、私のような年配の者にはそれらの図版は懐かしさが半端ありません。しかも、著者のコレクションは、少年雑誌の挿絵や子供向けの図鑑はもちろんチープなおもちゃやオマケなどその種類と数がトンデモありません。題名の由来は、本当はこの凄まじいコレクションの量から来たのではないかと、私などは羨ましくも思ってしまいます。
 ちなみに、これらのコレクションは、恐竜展などによく貸し出されているということですから、できれば、いずれは常設の恐竜グッズ博物館を作ってほしいものです。

 さて、前書きによると、1976年出版の本「大恐竜時代」の恐竜温血説のディノニクスの図版に衝撃を受けて著者のコレクターの道が始まったということですが、確かに、恐竜が尻尾を水平に保った形の恐竜復元図が本格的になった1980年代であり、そのころ丁度図鑑「動物大百科」シリーズの「恐竜」をはじめとする新たな恐竜図鑑が次々出版され、私もそれらの新しい復元図に驚いた記憶があります。有名な話ですが、それまでの巨大恐竜の代名詞のような雷竜”ブロンドザウルス”がいなくなり、威風堂々とした暴君竜”チラノザウルス”がスマートな”ティラノサウルス”に変身し、”トリケラトプス”までもおちょぼ口になりました。
 こうした新しい図鑑を目にして、「図説 人類以前」というチェコの画家ブリアンの画集のファン(2008.1.19参照)である私としては、なんともいえない寂しさを覚えたものですが、一方でそれまで見たことがない恐竜の姿に新たな興味を抱いたことも事実でした。
 特に、著者もこの本で書いているように、それまで翼竜などはわが国ではプテラノドンほか数種類しか知られていなくて、前述のシリーズの「翼竜」という図鑑で初めてこれほど多くの種類の翼竜がいたのかと衝撃を受けた記憶があります。この辺の話は、以前このブログ(2011.2.20参照)でも取り上げましたので今回は詳しくは申しませんが、私が恐竜図鑑を収集しはじめたのも丁度このころでした。

515zf5cbf2l_sy346_  それにしても、この本で取り上げている、昔の少年マンガ雑誌の巻頭特集における恐竜同士が戦っている姿や水の中に詰め込まれている海生爬虫類の情景を描いた挿絵画家たちの力作は、その迫力と懐かしさがトンデモありません。現在のようなCGでも写真でもない”挿絵文化”というのは実に力があります。子供たちが虜になるはずです。最近、よく挿絵画家の作品集が出版されることがあります。この時代の”大衆文化”を見直すことも重要です。南村喬之氏(「大恐竜画報」)など、まだまだ一部の作家にすぎませんので、もっともっと多くの挿絵画家に光を当ててほしいものです。私の好きな編集者大伴昌司氏の図案を見事に絵にした遠藤昭吾先生の作品集を出してほしいものです。

 また、個人的には後半に掲載されてる子供向けの”おもちゃ”類にはあまり興味はないのですが、著者のブログ(造形メーカー「フェバリット」のサイトに掲載中)を拝見すると、造型師荒木一成氏などによる草創期のレジン製フィギュアなども数多く収集されているそうですので、次は是非そのコレクションを紹介する本を出版してほしいものです。これは本当に期待しています。

 しかし、やはり世の中には凄いコレクターが存在するものです。憧れますねえ(笑)。ちなみに、最近の羽毛恐竜に否定的なトーンも大いに賛同しています。とにかく羽毛の恐竜はカッコウが悪いのだ。

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