ANNA/アナ
見なければよかった系の映画の口直しの作品を探していたら、リュック・ベッソンの「ANNA/アナ」に気が付きました。2019年の作品なのですが、評価が低かったせいか、日本では昨年の6月まで公開が延期されていた映画です。私もすっかり忘れていましたが、動画配信サービスで再発見です。
フランスの”女好き”ですが、稀代のアクション映画の製作・脚本も行う監督として名を成しているベッソン監督の最新作です。その実績から間違いはないだろうとレンタルで鑑賞してみました。確かに、いつものベッソン映画の焼き直しという印象からか、評価が低いのは理解できますが、やっぱり面白いぢあないか。マンネリズムもシリーズ作品と考えればいいじゃないですか。私は、十分楽しめました。
思えば、監督作品としては「レオン」、「ニキータ」、「ルーシー」という傑作映画があり、脚本作品としては、「トランスポーター」、「96時間」、「コロンビアーナ」、「ラストミッション」などがあります。本当に娯楽アクションの話題作を作り上げているといって過言ではありません。特に、アンヌ・パリロー、ミラ・ジョボヴィッチ、ナタリー・ポートマンなど無名の新人女優を使って大スターに仕立てあげる手腕は神業ともいえ、その辺が”女好き”の噂が立つ所以です。
今回の作品は間違いなくこれまでのアクション路線、特に「ニキータ」とほぼ同じ、KGBの女殺し屋アナが主人公の物語です。ただ、違うのは、今流行の時系列で物語が進行しない構成をとっており、観客が意外な結末に驚くようなエピソード後に「何か月前」という字幕で、その裏側の事情が語られるというスタイルなのです。こうしたエピソードが何回か繰り返されて、徐々にアナの過去や背景が描かれます。
上手いのは、時代を1990年代に設定して、まだまだアナログのスパイの活躍が実感できるようにしています。現代のサイバー攻撃などはやっぱり余り面白くはありませんから。
今回の主演女優は、ロシア出身のサッシャ・ルスで、モデル業界ではスーパーモデルらしいのです。背が高く、いかにもモデルという体型です。個人的には顔はあまり好みではないのですが、最近は劇中でモデルスカウトが言うように「背が高い、肌の色、髪の色」が美人のポイントのようです。ちなみにBDのメイキングを観ると、彼女は、前作に宇宙人の役で出演した後、1年間格闘術の訓練を受けて、この映画に臨んだらしい。あのスリムな体で巨漢のボディーガードとの格闘を見事に演じたのは、その成果のようです。アチラの映画はこれだけの時間をかけて準備をすることに改めて感心します。
共演は、KGBの上司役が「ホビット」や「ワイルド・スピード」の敵役ショウを演じたルーク・エヴァンス、CIAのエージェントが「バットマンビギンズ」のスケアクロウ役キリアン・マーフィ、そして、KGBの女ボスにヘレン・ミレンが扮します。エバンスは初登場のシーンはカッコよかったのですが、いつのまにかアナに翻弄されます。不気味な雰囲気のマーフィも似たような状況に陥ります。あの即物的なセックスシーンが怖いですねえ(笑)。ヘレン・ミレンは、最近「レッド」以降、アクション映画のこうした役ばかりのような気がしますし、「ワイルド・スピード」ではエバンスの母親役でしたが、相変わらずの存在感です。メイキングを見ても、監督や共演者が彼女をべた褒めですねえ。眼鏡や衣装などさまざまな演技の工夫が凄いのでしょうねえ。でも、彼女がロシア系とは知りませんでした。勉強になります。
そして、今回驚いたのが、アナのスパイになる前の悲惨な時期のチンピラ情夫が「T-34/レジェンド・オブ・ウォー」の主人公だったアレクサンドル・ペテロフとは信じられません。見た後も分かりませんでした。それだけ役になりきっているのでしょうかねえ、「レオン」のゲイリー・オールドマンの狂気の演技を思い出しました。
とにかく、モデルで女殺し屋という子供っぽい発想をきちんとリアルに見せたことや観客を一定満足させるアクション、そして、なによりハッピーエンドが良かった作品です。特に、アンがKGBの勧誘の際にみせた第3の選択肢がよかった。この一点でこの作品を評価します。こういう観客の意表を突く場面が良いのです。決して進行時間を操作するだけが演出ではありません。私としてはベッソン印の娯楽アクション作品として一票を入れたいと思います。ちなみにBDも買ってしまいました(笑)。
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