アメリカ人の見たゴジラ 日本人の見たゴジラ
先日、新作のゴジラ映画「GODZILLA VS KONG」の予告編第1弾が解禁されました。YouTubeではかなりな盛り上がりを見せています。もっとも予告編解禁前から様々な予想が飛び交っていたものの、元ネタの信ぴょう性もありましょうが、ほとんど外れているようです(笑)。そして、いまや公開された映像のコングの姿に話題騒然です。初代「キングコング」に敬意を表しているのか人間に捕えられた姿があり、巨大なタンカーで眠ったまま運ばれている(オリジナルにはありません。)のです。しかも、ゴジラと同等ほどに巨大化し、長いリーチでゴジラを殴りつけ、道具を使って放射能光線を防御するという史上初めて道具を使う怪獣が登場するのです。こりゃコングの圧勝ですねえ。
一方、 ゴジラの姿はなんか手が長くなってカッコウがあまり良くありませんし、新登場のモンスターも弱そうです。
期待の小栗旬は、メカゴジラのようなマシン(予告編の画像にちらりと)を操作するマッドドクター風で、やっぱりハリウッド進出の定番である敵役のようです。頑張れ!!アメリカの公開は3月らしいのですが、日本は未定だとのことです。お暇なときに一度YouTubeをご覧ください。
丁度、このタイミングで「アメリカ人の見たゴジラ 日本人の見たゴジラ」という書物を入手しましたので、ご紹介します。この本は、大阪大学出版会から出版されており、日米の大学の6人の学者さんがゴジラ映画の文化的考察を記述したものです。一種の研究書ですので、少し固いのですが、アメリカ人学者の見方がなかなか興味深い内容になっています。主に、日本映画「ゴジラ」がいかにしてアメリカ映画「怪獣王ゴジラ」に改編され、その結果、アメリカで大ヒットになったかというお話は本当に面白い。
我が国からいえば単にアメリカナイズされたと一刀両断ですが、ハリウッドの3流プロデューサーがベテランの編集ディレクターを使って、レイモンド・バーの特派員を登場させ、その目を通して悲惨な現場を紹介する形に再編集したことがもっとも当時のアメリカ人の心情に合致していたとか、とりわけ潜在的な原爆の加害者意識や政治的配慮から”原爆”を巧妙に削除し、しかも”日本”までも消し去ったことが効果があったそうです。
そして、このアメリカ映画は全米各地で巡業上映したのち、テレビに安価で売られた(もともと東宝から安く購入しているが)ことから、幼い時からゴジラ(映画だけでなく、TOYがイコン化したと指摘)をテレビやおもちゃ屋で見て育った世代がアメリカのゴジラ支持層を作ったと分析しています。まあ、彼の国を批判している「シンゴジラ」がアメリカでヒットするわけはありませんねえ。
さらに、この本では、東宝映画の「キングコング対ゴジラ」のアメリカ版にまでその批評は及び、オリジナル映画にある、南洋の島での現地人に対する差別的な表現が、アメリカ版では、日本国内の島にすることにより日本人全体に対するアメリカ人の差別的な姿に拡大されていると喝破します。しかも、その姿は「怪獣王ゴジラ」のレイモンド・バー扮する現地特派員の上から目線の不遜な態度と同一であると指摘します。文明国から見た未開の国の悲惨な話になるというわけです。当然、アメリカ版の作品では、ラストはキングコングが勝利したとナレーションで明確にされているようです。
ということで、新作のラストも、キングコングの勝利という線が濃厚です。まあ、日本の”特撮の神様”円谷英二特技監督の憧れが元祖「キングコング」でしたので、それはそれでいいのですが、学者さんの深堀りの見解は凄いですねえ。しかも、”ゴジラ”を学問として研究している(現代史の歴史学者らしい)というのも驚きました(笑)。
ちなみに、「怪獣王ゴジラ」の原題は「Godzilla ,King of the Monsters!」ですから、ハリウッドゴジラの前作のタイトルと同じになります。(余談ですが、この本によるとGodの付く英語表記は日本側が付けたようです。)つまり、現在のシリーズは、東宝の「ゴジラ」ではなく、アメリカ人になじみのある「怪獣王ゴジラ」のリメイクシリーズなのです。そして、前作がアメリカではヒットしなかったことをふまえて、怪獣映画の元祖「キングコング」への偏りは大きくなるのでしょう。なにしろ、「怪獣王ゴジラ」では”キングコングの十倍は大きい”というが当時の宣伝文句だったようです。今回は、コングも成長したので、思う存分ゴジラを打ちのめすことになるのでしょうねえ。しかも悪役は日本人なのですから。・・・新作の”キングコング映画”の公開が楽しみです。
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