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2021年1月28日 (木)

アメリカ人の見たゴジラ 日本人の見たゴジラ

 先日、新作のゴジラ映画「GODZILLA VS KONG」の予告編第1弾が解禁されました。YouTubeではかなりな盛り上がりを見せています。もっとも予告編解禁前から様々な予想が飛び交っていたものの、元ネタの信ぴょう性もありましょうが、ほとんど外れているようです(笑)。そして、いまや公開された映像のコングの姿に話題騒然です。初代「キングコング」に敬意を表しているのか人間に捕えられた姿があり、巨大なタンカーで眠ったまま運ばれている(オリジナルにはありません。)のです。しかも、ゴジラと同等ほどに巨大化し、長いリーチでゴジラを殴りつけ、道具を使って放射能光線を防御するという史上初めて道具を使う怪獣が登場するのです。こりゃコングの圧勝ですねえ。
 一方、 ゴジラの姿はなんか手が長くなってカッコウがあまり良くありませんし、新登場のモンスターも弱そうです。
 期待の小栗旬は、メカゴジラのようなマシン(予告編の画像にちらりと)を操作するマッドドクター風で、やっぱりハリウッド進出の定番である敵役のようです。頑張れ!!アメリカの公開は3月らしいのですが、日本は未定だとのことです。お暇なときに一度YouTubeをご覧ください。

81iiqgex25l 丁度、このタイミングで「アメリカ人の見たゴジラ 日本人の見たゴジラ」という書物を入手しましたので、ご紹介します。この本は、大阪大学出版会から出版されており、日米の大学の6人の学者さんがゴジラ映画の文化的考察を記述したものです。一種の研究書ですので、少し固いのですが、アメリカ人学者の見方がなかなか興味深い内容になっています。主に、日本映画「ゴジラ」がいかにしてアメリカ映画「怪獣王ゴジラ」に改編され、その結果、アメリカで大ヒットになったかというお話は本当に面白い。
 我が国からいえば単にアメリカナイズされたと一刀両断ですが、ハリウッドの3流プロデューサーがベテランの編集ディレクターを使って、レイモンド・バーの特派員を登場させ、その目を通して悲惨な現場を紹介する形に再編集したことがもっとも当時のアメリカ人の心情に合致していたとか、とりわけ潜在的な原爆の加害者意識や政治的配慮から”原爆”を巧妙に削除し、しかも”日本”までも消し去ったことが効果があったそうです。

 そして、このアメリカ映画は全米各地で巡業上映したのち、テレビに安価で売られた(もともと東宝から安く購入しているが)ことから、幼い時からゴジラ(映画だけでなく、TOYがイコン化したと指摘)をテレビやおもちゃ屋で見て育った世代がアメリカのゴジラ支持層を作ったと分析しています。まあ、彼の国を批判している「シンゴジラ」がアメリカでヒットするわけはありませんねえ。

 さらに、この本では、東宝映画の「キングコング対ゴジラ」のアメリカ版にまでその批評は及び、オリジナル映画にある、南洋の島での現地人に対する差別的な表現が、アメリカ版では、日本国内の島にすることにより日本人全体に対するアメリカ人の差別的な姿に拡大されていると喝破します。しかも、その姿は「怪獣王ゴジラ」のレイモンド・バー扮する現地特派員の上から目線の不遜な態度と同一であると指摘します。文明国から見た未開の国の悲惨な話になるというわけです。当然、アメリカ版の作品では、ラストはキングコングが勝利したとナレーションで明確にされているようです。

 ということで、新作のラストも、キングコングの勝利という線が濃厚です。まあ、日本の”特撮の神様”円谷英二特技監督の憧れが元祖「キングコング」でしたので、それはそれでいいのですが、学者さんの深堀りの見解は凄いですねえ。しかも、”ゴジラ”を学問として研究している(現代史の歴史学者らしい)というのも驚きました(笑)。

 ちなみに、「怪獣王ゴジラ」の原題は「Godzilla ,King of the Monsters!」ですから、ハリウッドゴジラの前作のタイトルと同じになります。(余談ですが、この本によるとGodの付く英語表記は日本側が付けたようです。)つまり、現在のシリーズは、東宝の「ゴジラ」ではなく、アメリカ人になじみのある「怪獣王ゴジラ」のリメイクシリーズなのです。そして、前作がアメリカではヒットしなかったことをふまえて、怪獣映画の元祖「キングコング」への偏りは大きくなるのでしょう。なにしろ、「怪獣王ゴジラ」では”キングコングの十倍は大きい”というが当時の宣伝文句だったようです。今回は、コングも成長したので、思う存分ゴジラを打ちのめすことになるのでしょうねえ。しかも悪役は日本人なのですから。・・・新作の”キングコング映画”の公開が楽しみです。

2021年1月26日 (火)

別冊スクリーン/マカロニ・ウェスタン特集

 前回ブログでお話した「別冊スクリーン/マカロニ・ウエスタン特集」の古本が届きました。本の状態は、数か所に書き込み(傍線)があったものの、表紙をはじめ背表紙も含めて全体的にヨレも日焼けもほとんどなく実にきれいなままです。裏表紙がちぎれた「怪獣映画特集」とは雲泥の差です。これで送料込みで1810円はお得でした。
 いや、それ以上に、読みたいと思っていた本が50年も過ぎて読むことができたことに価値があります。まあ実際は先日までそのことを忘れていた(笑)のですが、それはともかく、今回ひょんなことから念願がかなったことになんとも感慨深いものがあります。
 ここは素直に古書通販サイト「日本の古本屋」さんに感謝しましょう。皆さんも是非ご利用ください。参加の店舗にもよりますが、商品が届くのも早いですよ。

Img_20210126_0001  さて、ページを開いてみると、初めて読むはずなのに懐かしさで一杯です。一般の娯楽映画ファンにとっては、映画雑誌「スクリーン」が唯一無二の情報源と言ってよい時代です。(キネマ旬報は昔も芸術指向ですから) 新作の情報や撮影裏話をむさぼるように読んでいた当時の雰囲気が一気に蘇ります。多分、記事の文体というか、レイアウトや表現方法に、なんとも古き良き時代ののんびり笑えるようなおおらかさがあります。

 それにしても、この本にはマカロニウエスタンの特集と副題が付いていますが、発売時点では、イタリア西部劇は、まだ14本しかわが国で公開されていないことが分かりました。丁度、セルジオ・レオーネ監督の「続夕陽のガンマン」が公開される前なのです。

 そのせいでしょうか、本場の西部劇に肩入れしている(としか思えない)評論家が寄稿している”マカロニウエスタン(記事の中でMWと称するとの説明あり)の魅力を解剖する”というタイトルの記事では、MWと本家の違い、MWの面白さとは?(何故疑問符)、ガンプレーと残酷さなどの論点で紹介しているのですが、そこはかとなくマカロニ・ウエスタンをゲテモノ扱い(していないとわざわざ記載していますが・・)しているような印象があります。まあ、本場ではスパゲッティ・ウエスタンと揶揄されていましたから当然かもしれませんが、当時の本場西部劇を愛する評論家たちの思いがにじみ出ています。

 雑誌の構成も、冒頭特集は、”思い出の西部劇名作選”として、駅馬車、荒野の決闘、黄色いリボン、シェーン、リオ・ブラボー、赤い河、西部の男の7作品を写真入りで紹介した後、製作中のハリウッド西部劇の紹介が続きます。マカロニウエスタン作品は、雑誌の後半からやっと新着映画紹介として「続夕陽のガンマン」が出て来ます。本場優先の編集方針なのでしょうねえ、きっと。今や「続夕陽のガンマン」は西部劇の名作と言われていますから笑えます。

 そして今回、私が一番楽しんだのが、”これがマカロニ西部劇の内幕だ!”という、イタリア人ペンネーム(?)の署名入り記事でした。これは、ヤンキー名前大作戦、ローマのテキサス、スペインのユタ州などという目次で、イタリア西部劇が始まった経緯や撮影の裏話等を軽妙に紹介しています。例えば、もともとメキシコにはスペイン文化の影響(コロンブス?)があり、当時のままの古い建物などが残っているスペインの田舎町が撮影ロケ地になって一気に発展したとか、そんなこぼれ話がなんとも愉しかったのです。

 映画雑誌としても、実在の歴史上の人物の紹介などは余分なものの、盛りだくさんのネタをわかりやすい文体で記事にした内容で構成され、大変楽しい読み物になっています。昨今の映画雑誌の露骨で悪趣味的な内容と比べると、なんとも節度があって気持ちよく読むことができました。”昔は良かった”という懐かしさだけではない、大らかな面白さが感じられます。なんだか、よく分かりませんが、ともかく今風にいえば、イイネ、イイネを押したくなりました(笑)。

2021年1月25日 (月)

別冊スクリーン/怪獣映画大特集

20210125_1039251  日頃は全く見ることのない書斎机の下の棚から昔のアルバムを引っ張りだしたところ、思わぬ古雑誌を見つけました。プラスティックの蓋つきケースにしまい込んでいた「別冊スクリーン/ 怪獣映画大特集」です。子供のころの懐かしい愛読書です。もっとも、高学年になって怪獣物は卒業とばかり劇場パンフレットなどと一緒に廃棄した本の一冊(一部記事の切り抜きが現存)でもあります。

 20210125_1033501 そして、いま発掘したこの本は、最近と言っても少なくても10年以上前のことですが、映画パンフレットの再収集に併せて、オークションで入手したものです。ただし、その当時のオークション市場でも、状態の良いものは数万円を超える金額で取引されていましたので、手が届くわけもありません。結局、裏表紙がちぎれて無くなっている”訳アリ商品”をゲットしたのですが、一度内容を確認したまますっかり忘れていたのです。裏側は、2番目の写真のように最後のページ(マカロニ特集の臨時増刊号の宣伝)がむき出しになっています。

 さて、久しぶりに中身を見てみると、やはり懐かしさが半端ではありません。改めて掲載されている記事と写真の見事さに感心します。この出来なら子供たちの心は鷲づかみされます。
  署名記事には「児玉数夫」氏の名前もあります。我が国の映画評論家にゲテモノ扱いされたSF映画や怪奇映画をきちんと紹介してくれた奇特な映画評論家です。まあ、双葉十三郎さんほどは有名ではありませんが、「妖怪の世界」や「ターザン」などマニアックな映画評論の著作が多数あります。

 一方で、当時封切られた「恐竜100万年」をリモコンを使って恐竜を撮影したなどというとんでもない解説をしている評論家もいます。ビデオもDVDもない時代ですから、半魚人やサイクロプスなどの見たこともないモンスターの大判の写真(青や赤の単色刷が懐かしい)には感動した記憶があります。当時はレイ・ハリーハウゼンの名前も知りませんでしたし、映画を観る機会も手段も全くありませんでしたが、現在では掲載されたモンスターが登場する映画はすべてDVDが発売されています。もっとも実際に鑑賞してみると、長年の夢が崩れて幻滅する作品が多いのが困りものです(笑)。
 とにかく予備知識や情報もない中で、たった1枚の写真や僅かな解説から想像を勝手にめぐらし、脳内で理想の映像を形成したことが、現在の私の”好み”を作り上げてしまったのでしょう。思えば子供頃の教育は本当に大事です。しかも、年を経て子供に戻りはじめますと、焼けぼっくりになんとかで一層大変です(笑)。

20210125_1040041  ところで、これからが本題なのです。このように折角お宝を発掘したのですが、裏表紙が無いとどうにも本が持ちにくいし、相当ガタが来ているページもめくり難いのです。そこで、本の修繕を行うこととしました。
 ぼろぼろの背表紙の修復は難しいものの、せめてページが落丁しないように、手芸用の白い接着剤で貼り付けます。爪楊枝で慎重に1枚の紙の背の部分を貼り合わせるイメージです。

 そして、今回は失われた裏表紙も復元しました。いまやネットには様々な画像があります。当然、この雑誌の表紙や裏表紙もたくさん掲示されていましたので、適当な画像(この本は映画「恐竜100万年」の写真を使用したデザイン)をパソコンに取り込んで、キャノン写真紙A4版にサイズB5版で印刷しました。微妙に縮尺が異なりましたが、紙の厚さや質感はぴったりで実にうまく本に収まり、見栄えも上等です。なにより持ちやすいのが便利です。このように本の修復は結構簡単にできますので、皆さんも是非一度お試しください。

 20210125_1036481 20210125_103658120210125_1037261 20210125_1037131 ところで、この本の最後に掲載されていた、スクリーン臨時増刊号については、当時読みたいと思っていた雑誌なのですが、どうしても入手できなかったものなのです。今回「日本の古本屋」を検索するとわずか1500円で販売されているのを見つけました。早速注文です、本当に便利な時代になりました。また、商品が届きましたら「マカロニ・ウエスタン特集」をご紹介します。

 余談ですが、書斎机の下からは、懐かしの「平凡パンチ」も数冊見つかりました。これはひょっとして大変な”お宝”ではないかと現在精査中です(笑)。

 

2021年1月24日 (日)

アラスカ魂

 ジョン・ウェイン主演のアラスカを舞台にした異色の西部劇「アラスカ魂」を久しぶりにブルーレイで見ました。時代は1901年、ゴールドラッシュで一獲千金の夢を実現した男たちと鉄火肌のフランス女の喜劇です。共演は、本土に残した婚約者を呼び寄せようとする相棒にスチュアート・グレンジャー、そしてヒロインはフランス人女優のキャプシーヌという顔ぶれです。

51pxcxej4gl_ac_  この映画は、何といっても、冒頭から流れる主題歌「北の国アラスカへ(映画の原題と同じ)」が印象的です。ユーモアあふれる曲調に”ウエイアー”という歌詞が耳について離れません。当時、大ヒットしたそうです。確かにどっかで聞いたような気がします。今回は、この音楽を確認出来ただけでブルーレイを買った価値はあった、と、そう信じます(笑)。

 さて、内容は撃ち合いは中盤1回あるだけで、あとはウエインとキャプシーヌのコメディタッチの恋愛喜劇です。名匠ヘンリー・ハサウェイ監督の演出も完全にお遊びムードです。お馴染みの酒場の喧嘩騒動はもちろん、アラスカらしく泥だらけの広場の大乱闘は、ヤギやアザラシまで登場してハチャメチャです。完全な泥レスリング状態です。ご丁寧に漫画映画のような擬音の演出まであります。
 ラストは、金鉱乗っ取りを企んだ詐欺師もあっさりと捕まりますし、意地っ張りなウェインも美人のフランス女に陥落してハッピーエンドです。ここで本土の奥様連中と違って売春婦を差別しない主人公達をさらりと描くのも男性監督ならではの心意気かもしれません。

 それにしても、この映画をみると、アメリカ人というのはいかにフランスに憧れているかがよくわかります。相棒のグレンジャーは婚約者に裏切られた直後に、連れてこられたキャプシーヌのフランス訛りに一目惚れするという設定ですし、他の西部劇でもフランスへの憧れを描いた作品がありましたよねえ。しかし、日本人もあまり彼の国のことは言えません。ひと昔の”おフランス”熱は顰蹙でした。まあ、海外旅行が一般化したせいか、最近はあまり外国への憧れを熱く上から目線で語る人が少なくなったことは良いことです。それでなくても、移民の国フランスはもちろん、豊かな夢の国のアメリカの幻想も地に落ちましたし(笑)・・・。いやあ、思えば日本ってまだまだ良い国なのかもしれません。

 

2021年1月20日 (水)

サイドショウのビッグ・チャップ

 映画「エイリアン」は、悪夢に出てくるような画期的なデザインの宇宙生物によって有名ですが、そのストーリーも実に凝った様々な仕掛けが施されており、見直すたびに新しい発見や面白さがあります。そのせいか、40年以上も前の作品ですが、続編「エイリアン2」と併せて、様々な解説本が出版されるほどの人気を保っています。そして、この”エイリアン”という言葉の意味さえ変えてしまった宇宙生物の人気にあやかろうと、いまでも模型の類は国内外の様々なメーカーから多数販売されています。

 国内産で言えば、海洋堂の可動式のフィギュアをはじめ、発売当時”世界で最も美しい”と映画会社が評したと言われる「マーミット」の伝説の模型”かがみエイリアン”(当ブログ2006.8.22参照)も生まれています。最近では、ギーガーのオリジナルに忠実な大型模型の製作販売も話題になっていました。私も含めて”エイリアン”のファンは多いのです。

20210120_1214441 当然、本家アメリカでは、有名な「サイドショウ」をはじめいろいろな模型メーカーから大小様々なサイズの精巧な模型が幾種類も発売されています。こうした本場の模型の良いところはほとんどがレジン製であり、実に精巧な造りになっていることです。やはりソフビなどとは見た目が一味違います。ただし、かなりな重量になるほか、破損しやすいという欠点があります。しかも、最近では、商品のサイズが大型化し、当然精緻さが増大してはいるのですが、なんとも価格がけた違いに高くなっています。そのため、我が家では置き場もありませんが、なにより全く手が出ません。・・・あのブドウは酸っぱいのだ(笑)。

 そういった模型市場の状況ではありますが、「サイドショウ」から初期の頃、多分一番最初に発売されたものと思いますが、映画「エイリアン」第1作に登場する「ビッグ・チャップ(エイリアン成体の呼び名)」の中古品をオークションで入手しました。商品化第1弾のせいか、本体のサイズは1/6足らずであまり大きくはありません。その代わり映画で最初に成体の姿が登場する倉庫がジオラマになっています。
 個人的にはあまりジオラマは好みではないのですが、同じ商品シリーズと思われる「エイリアン2」に登場する「エイリアン・ウォリアー」を1年前に入手していましたので、これでセット品となることを踏まえて投資しました。ちなみに同シリーズの「エイリアン・クイーン」は随分前(2017.2.25参照)に確保済みです。ついでにいえば、同時期に発売された「プレデター」もゲット(2014.1.11参照)しているのです(笑)。

20210120_1213181 20210120_1215211  さて、実際に、現物を間近で眺めてみると、ジオラマの倉庫の機械部品の作り込みがなんとも素晴らしいのです。映画の中ではほとんど映っていない錆びた鎖を巻き付けた円柱等のデザインとリアルな塗装が映画の醍醐味を蘇らせます。では、ご覧ください、薄汚れたマシンはなんとも美しい(笑)。

 20200126_1523401 ちなみに、頭部に透明フードが無いタイプが第2作目の兵隊「エイリアン・ウォリアー」です。

2021年1月17日 (日)

テキサス魂

 西部劇と言えば、やはり名優ヘンリー・フォンダ主演の作品が期待できます。なにしろ「荒野の決闘」の素朴な保安官から「ウエスタン」のように悪逆非道のガンマンまで幅広く演じています。まあ、社会派ドラマでも活躍した名優ですから当然かもしれません。
 ということで、まだ見ていない数ある西部劇作品の中から選んでDVDを購入したのが、グレン・フォードと共演した映画「ランダース」でしたが、なんと、この作品は、西部劇という範疇ではなく現代のカウボーイを描いた喜劇だったのです。思い込んでいた私も悪いのですが、商品説明はもっと丁寧に書いてほしいものです。冒頭、牧場を車が走ってきたのには絶句しました。もっとも、それ以外は本当に西部劇の時代そのままといってもおかしくない生活ぶりなのでさらに驚きです。ただ、こうした地域がトランプ大統領の岩盤層なんだと改めて納得しました。

81xbr1ywxl_ac_sy445_  さて、この失敗を踏まえて、験直しにジェームス・スチュアートとヘンリ・フォンダが共演した「テキサス魂」を購入しました。1867年テキサスと表示がありますので、西部劇で間違いありません(笑)。物語は、スチュアートとフォンダの初老のカウボーイ2人の遺産を巡るコメディ・ウエスタンです。最近は、どうもシリアスな物語は体に応えますので、こういう軽い調子のお話の方が心地良いのです。

 物語は、スチュアートが兄の遺産を継ぐためにシャイアンの町を訪れると、その兄の遺産というのは町の有名な高級娼館だったのです。そして、この娼館の設定が面白いのです。鉄道会社の土地にあって、高級家具を揃え、美人ぞろいで気立ての良い娼婦たちがアットホームに暮らす歴史的な建造物だったのです。しかし、大金を手にしたスチュアートは舞い上がり、商売替えをもくろみますが、娼婦たちや町の男達の総スカンを喰らいます。恒例の酒場での大乱闘もしっかり描かれます。

 そんなコメディタッチの騒動の中で、娼婦の一人に逆恨みしたならず者が彼女に殴るけるの暴行を働きます。どっかで聞いたようなお話ですが、こちらが元祖かな?ともかく娼婦の顔のケガの描写などは現代版と比べると”可愛い”ものです。しかし、こんな”許されざる”無法に怒ったスチュアートがならず者と決闘して勝ちを拾うのですが、ここで相棒フォンダのある癖が伏線として生かされるので、それはどうぞ映画でお楽しみください。

 しかし、お話はそこでは終わらず、西部劇のお約束のとおりその無法者には無法者の一族がついており、彼らが復讐に町に来ます。フォンダが早速町を逃げ出したのでスチュアートは単身で迎え撃つことになるのですが、その結果は・・・というのが大筋です。
 この映画の見所は、なんといっても名優2人の掛け合い漫才を楽しむことなのでしょうねえ。フォンダは女好きでおしゃべりで日和見な男を飄々と演じ、スチュアートは社会貢献を夢見る堅物に扮します。資産家になったスチュアートが共和党支持を宣言し、民主党に投票していたことを黙ってくれとフォンダに口止めするのが一番笑えました。
 ともかく、監督は才人ジーン・ケリーなので、西部劇に必要な要素である酒場の乱闘、決闘、撃ち合いなどを過不足なく入れながら、古き良き時代の初老のカウボーイの生き様までもさりげなく描いています。今回はDVDを一度も早送りにすることなく102分楽しめましたので、満足です。

2021年1月16日 (土)

静之浦の漂着巨大卵

20210116_1539161  タイトルの「静之浦の漂着巨大卵」とは、映画「モスラ対ゴジラ」に登場するモスラの卵のことです。東宝怪獣映画の黄金期に製作されたこの作品は、大ヒットした「キングコング対ゴジラ」の続編であり、怪獣映画の秀作となりました。日本を襲った台風によりはるか彼方のインファント島から静之浦までモスラの巨大な卵が漂着するという発想はなんとも素晴らしい。また、小舟で地元の漁師が獲りに行ったり、新聞記者が食べかけた湯で卵のギャグ、網元が観光開発業者に鶏卵何個分として売り払うシーンなどは忘れられません。

 今回、この巨大卵の漂着シーンを再現した模型をオークションで見つけました。調べてみると、メーカーは、東宝や大映の特撮映画に登場するモンスター達をレジン製のオーナメント・フィギュアにして製作・販売している株式会社「キャスト」でした。この会社のことは当ブログで紹介(2020.1.27、2011.5.4)していますのでご参照ください。「特撮大百科」シリーズとしていつもなかなか面白い模型を製作しており、以前から新製品などの動向には注意していたのですが、この卵の模型については、販促用キャンペーン品として作られて「ゴジラ対エビラ」のフィギュアのおまけとして配られていたようで、全く知りませんでした。不覚でした(笑)。

20210116_1537211  サイズは5cmぐらいの小さなものですが、巨大卵に近づく漁師の小舟など映画の雰囲気を実にうまく再現しています。こうしてみると、オーナメント(飾り)と称する商品の”売り”なのか、どの模型にも白いプラスティックのフックが付いているのですが、なんとも無粋で目障りです。そもそも、このフックはなんのために付いてるのでしょうねえ、一度、メーカーの方に聞いてみたいものです。本当に除けてほしいと思います。(昔購入したモノは自分で除けていましたが、最近は転売も視野に入れてひかえています(笑)。)

 それにしても、タダほど高いものはないという言葉を、本来の格言の意味とは全く違いますが、オークションの結果から実感しました。だいたい通信販売で1回の販売個数が20個ぐらいと数が異常に少ないことがイケません。しかも、不定期な販売時期で、気が付けばいつも予約受付終了となっています。メーカーさん、できたらもう少し販売個数を増やしてください。受付期間を伸ばして予約受付後に必要な個数を製作する方針への転換をお願いしたいものです。

20200125_1642021  ちなみに、映画「モスラ対ゴジラ」では、前作でキングコングに敗れ海中に沈んだゴジラが埋立て地から出現します。最初は尻尾だけが登場する意表を突く展開などはなんとも素晴らしい。三白眼のブルドッグ顔のモスゴジの姿と併せて名シーンになっています。シン・ゴジラの冒頭にもこの映画へのオマージュがありましたねえ、それだけの名場面となりました。ちなみにこのゴジラ登場シーンも模型化されています。
 そのほか、モスラの親が死んで、卵から双子のモスラが生まれてゴジラと戦うなど、子どもたちの予想をはるかに超えたストーリーも再評価すべきです。よく考えたものです。共演の星由里子の女記者も「若大将」のヒロインよりずっと可愛い。最近再見した「若大将」の”純ちゃん”役は意外にチャッカリ娘であまり好感がもてません。シリーズ途中交代もやむないような気がします。・・・余談でした。

20200125_1639591_20210116172201 20200125_1642331 20210116_1558001 20210116_1558341 20210116_1559121_20210116171601 20210116_1545481 20210116_1600191 20210116_1544511 20210116_1540531  そのほか、初ゴジ(第1作)、キンゴジ(キングコング対ゴジラ)、シン・ゴジラなどの模型もご紹介します。特に、シン・ゴジラ関係はこのメーカーが特に力を入れているようで、第1形態から第4形態まで様々なタイプが製品化されています。さすが大ヒットした映画だけのことはあります。いずれも小さなサイズであり、一番大きなものでも高さ11cmのシンゴジラですが、レジン製であり造形がなかなか細かくよくできており、ついつい購入してしまいました。もっとも最近のシン・ゴジラの光線まで再現した模型まではさすがに持っていません、高いし(笑)。
 最後のおまけは、映画「南海の大決闘」のエビラの爪です。映画の中では実に印象的な姿でした。そういえば、ガイラが海で泳ぐ人間を食うシーンも模型化されていましたが、我が家で行方不明になっています。また次の機会にご紹介します。え?いらない?失礼しました。

2021年1月15日 (金)

荒野のガンマン

 以前から観たかった映画に、サム・ペキンパー監督の劇場映画デビュー作にあたる1961年の「荒野のガンマン」という西部劇があります。実は、ジョン・フォード監督作品のアイルランド系のヒロイン役で有名な赤毛美人のモーリン・オハラが出演しているのです。主演はブライアン・キースという粗野な感じのごつい男優さんで、私が知っているのはジェームス・スチュアート主演の「スタンピード」に登場する髯つらの男で、再びモーリン・オハラと共演しています。正直、テレビ映画で経験があるとは言っても、無名の監督の西部劇に、何故、有名な女優が出演したのだろうと不思議だったのですが、その謎解きは、後ほどご説明します。

81i8zwybfwl_ac_sx342_  さて、ストーリーは、縛り首のリンチに陥っている老人を助けた訳アリの男(ブライアン・キース)が偶然通りかかった銀行強盗を撃ったところ、居合わせた少年を射殺してしまうという事故が起きます。その男は、良心の呵責から助けた老人とその早撃ちの若き相棒と一緒に、遺体を父親の墓の隣に埋葬したいという母親(モーリン・オハラ)の護衛に付くのですが、もちろん勝ち気なオハラと息子の仇の男という間柄ではうまくいく筈もありません。やむなく、ほとんど強行手段で随行したものの、行き先はアパッチの縄張りであり、美しい母親に野心を抱く若い相棒の行動もあって、次々とトラブルが起こります。しかも、モーリン・オハラが出演する映画では恒例のこと(笑)ですが、馬に引きずられたり、川に落ちたり、最後は馬にまで逃げられるという体を張った場面が展開し、何故か全裸シーン(背中と足だけですが・・)まで付いています。まあ、”映画に一つ良い場面があれば良い映画”と故淀川長治先生も言っていますから、良ししましょう。
 それにしても、まだ無名の新人監督の映画なのに、彼女の体を張った熱演にはひどく違和感がありましたが、その訳も実は出演理由と同じものでした。

 ただ、映画としては、思わせぶりな主人公の因縁の話はともかく、同行する老人と相棒の行動がどうもちぐはぐですし、アパッチの態度もなんか筋が通らないのです。特に何日も泊りがけになる旅なのに遺体が腐らないのか、気になってしかたがありませんでした。このことは”解説”にもありましたので皆思うらしい(笑)。
 まあ、主人公が古傷でまともに鉄砲が撃てないという設定や母親が酒場の踊り子の故に父親の存在まで疑われている伏線に興味がありましたが、父親の墓の件は羊頭狗肉ですねえ、あの場面でのあれは肩透かしで怒りますよ(笑)。まあ、全体的に言っても、後年のサム・ペキンパー監督の作品とは思えない平凡なデビュー作という感じでした。

 ここで前述に提示した謎の種あかしです。
 このブルーレイには、ケースに収まるサイズの解説用の小冊子が付いています。9ぺージに渡ってびっしりと文章で撮影裏話が書かれており、なかなか読みごたえがあります。その中に回答がありました。ディスクより価値がありそうです(笑)。その解説によると、この映画の製作がモーリン・オハラとその実兄、そして脚本を書いた原作者が作った会社だったようで、以前オハラと共演して知り合いだった主演のブライアン・キースが推薦して監督となったサム・ペキンパーには、オリジナル脚本の修正を一切受け付けなかったばかりか、オハラの演技指導まで禁止したそうですから、現場の確執は大変だったようです。
 ストーリーの意味不明な展開もさもありなんです。・・・買う前に、誰か早く言ってほしかったです、セール品ではないので中古でも高いんですよ、このBD。どうやら、サム・ペキンパー監督の本当のデビュー作は、第2作目の「昼下がりの決斗」のようです。未見ですが、しばらくほとぼりを醒ましましょう。

2021年1月12日 (火)

シュモクザメの復活

 突然ですが、「シュモクザメ」というサメをご存知でしょうか。そう、あの頭が撞木のような形になっているところから命名されたサメの一種であり、英語ではハンマーヘッド・シャークと言います。
 T字型の頭から左右に飛び出した部分に目が付いている変な顔のサメです。どうやら左右の獲物をよく見るためにそうした形状に進化したようですが、その実、真正面が死角になっているみたいで、頭を左右に揺らしながら泳ぐそうです。・・・変な奴ですよねえ。

 そういえば、「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」に登場する蛸(髯)のモンスター「ディビー・ジョーンズ」の副官が、このサメをモチーフにした奇抜なデザインでした。ここだけが映画関連で、あとは模型のお話になる(笑)ので、興味のない方はパスしてください。

 そんな変わり者のデザインが好きなせいで、今は廃盤となっているフェバリット社のレジン製の22cmぐらいの模型を部屋のDVDケースの上に飾っていました。このモデルは、確か「MARINE LIFE」シリーズだったか、「マンボウ」と「ナポレオンフィッシュ」も発売されていましたが、最近は、ほとんどがソフトビニール製の商品に取って代わり、ネットでもその当時の商品の類はほとんど見かけることはありませんねえ。

20210101_1025551 そんな貴重なお宝(その割には無造作に放置していたのですが・・)を年末の大掃除の時に手が滑ってケースの上から取り落として壊してしまったのです。誠に一寸先は闇ですねえ。レジン製品というのは、繊細な細工が実現できる反面、実に壊れやすいんです。まあ、そのせいで今やほとんどソフトビニールに取って代わられました。本当に残念です。

 破損個所は尾ヒレの付け根と先の2か所が折れていましたが、幸い折れた部分は残っていました。欠片を見失いますと、補修がなかなか難しくなるので、まあ、一安心なのですが、単に瞬間接着剤で張り合わせただけでは元には戻りません。当然ながら、つなぎ目や微小な欠損跡が残り、見苦しいのです。しかも、強度を保つためには、尾ヒレと胴体を真鍮棒でつなぎ補強する必要がありました。欠損跡はパテと接着剤で埋めます。

20210104_1306491  そうして、接着剤が乾燥した後、グラインダーを使って継ぎ目を削り目立たなくします。次に、周囲をマスキングテープで囲った上で、ブラックのサーフェイサーで下塗り吹き付けを行います。
 その上で塗装するのですが、車体のような体表の滑らかな面を塗るのはなかなか難しいのです。とにかく既存の色合いと違和感がないように塗料の色を創り出すのに四苦八苦です。
 実は、このブログの目的は、今回の塗料の配合の備忘録なのです。はい、すみません、無視してください(笑)。

20210109_1754531   さて、肝心のベースの色は、ラッカー塗料の「サンディ・ブラウン」に「オレンジ」を極少量加え、あとはつや消しブラックを何段階かで混合です。そして、手順としては、まず「つや消しホワイト」にその混色塗料を少し混ぜ込んだホワイト色をエアブラシで腹部に塗装します。そして、胴体部分にはベースの混色を段階的に分けて吹きつけ、濃淡を出します。塗装する部分と元の色合いを違いを目立たなくするように、ブラックの濃さを変えた塗料で何度か塗り重ねて、完成です。シュモクザメが復活しました。これで春から縁起が良くなります(笑)。

  
20210109_1754031 20210110_18341001  では、復活した姿をご覧ください。まあ、私のレベルでは、こんなものでショウ。ちなみに、最後の完成写真で横に映っているのは、海洋堂製の「マンタ」です。もともとの模型が、本体の大きさに比較して、台座と支え棒が少し大きい(最後から3枚目の写真参照のこと)ので、全体のバランスに配慮して追加しているものですが、味があって良いアイディアでしょう。ここだけは自画自賛します(笑)。

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2021年1月11日 (月)

誇りと情熱

 あけましておめでとうございます。

 コロナ禍の中で、封切り映画も目ぼしいものはなく、最近はまだ見ていない古典を発掘していくのがもっぱらの楽しみになっています。とはいっても、発売されているDVDやBDの中から、ほとんど勘だけで探していますので、西部劇のつもりが現代のカウボーイの喜劇を買ってしまったりと当たり外れが多いのもしかたありません。しかも余り知られていない作品=売れ筋でない作品は値段が高いのです。で、結局、新品よりは中古品にならざるを得ません(笑)。ちなみに、動画配信は、最近の作品やヒット作品が中心ですので、古い作品はあまり見当たりません。残念です。

81uw3xergl_ac_sx342_  さて、今回ご紹介するのは、1957年製作、贔屓のケイリー・グラント主演の活劇「誇りと情熱」です。監督がスタンリー・クレイマーで、監督となって2作目ですが、翌年に「手錠のままの脱獄」、次の年に「渚にて」を製作していますので、その演出手腕に期待していました。

 物語は、1810年代の初頭ナポレオン率いるフランス軍がスペインに侵攻する中、敗走するスペイン軍が保有する”巨大な大砲”をイギリスの海軍将校が引き取りに来たところから始まります。ちなみに、原作小説の原題は”大砲”であり、砲身の長さ10m、砲台の車輪の直径が2mという、当時の大砲の基準としては規格外の巨大サイズで画期的な兵器が真の意味での主人公なのですが、映画はなんでこんな題名にしたのでしょうねえ、不思議です。

 それはともかく、映画冒頭のスペイン軍の撤退シーンの規模にまず圧倒されます。CGの無い時代ですから、荒野を埋め尽くするエキストラの”数”の物量に感動しました。これぞ、ベンハーのローマ軍の行進シーンを彷彿させる、”史劇”の醍醐味です。ちなみに、”史劇”の難しい定義はまた今度(笑)。個人的には、この場面だけで買った価値は十分あったと納得しました。うん。

 主演のケイリー・グラントは、イギリス海軍の砲術専門家の将校として、十八番の”ユーモラスな困り顔”でオンボロ馬車に乗って登場しますが、到着した先がスペイン軍が敗走したため、フランク・シナトラ扮する”靴屋の息子”の率いる人民軍(ゲリラ)が占拠している司令部の跡地という設定です。しかも、肝心な大砲は既に崖下に廃棄されており、なんとも前途多難な幕開けです。加えて、ゲリラ側の要望で1000km離れたスペイン軍の砦の城壁を砲撃する羽目になるというのは、活劇としても喜劇としても最高のシュチュエーションなのですが、演出は特に盛り上がることもなく平凡に進んで行きます(監督2作目ですから)。

 しかも、グラントが”大砲を崖下から引き上げるには2千人必要”と言うと2千人のゲリラが集まるし、”川に落ちた大砲を引き揚げるに1万人はいる”と愚痴れば、闘牛場の群衆を1万人集めるという、とんでもない展開をグラントのセリフと表情の”一人芸”に任せて、演出はことさら喜劇調にするわけでもなく、悠々とゆったりしたペースで進みます。しかし、巨大な大砲をロバや群衆で引っ張って行くシーンは、なんとものんびりした風景になっており、個人的にはこの絵柄が実に気に入りました。いいぢぁないか。

 途中、スペイン軍との遭遇や待ち伏せをはじめ砲台の故障など様々なトラブルに会いますが、ほとんどスリルもサスペンスもメリハリもなく、無事(死者多数?ですが・・)に2万人の群衆とともに目的地に到着します。そして、ラスト、大砲以外は全くの徒手空拳の群衆による最後の総突撃の結果はどうなるのか、それは観客の期待にはまったく忖度しない、なんともあっけない無情の結末なのですが、作品でご確認ください。古き良き時代の長閑なくせにシニカルな物語です。

 しかしながら、この作品の最大の見所は、なんといっても若き日のソフィア・ローレンのハリウッド映画への登場なのでしょう。親兄弟を助けるためにスペイン軍司令官に身を任せたものの裏切られたという、ゲリラの頭の情婦の役です。登場するや画面のすべての人物を食ってしまいます。高慢に胸をそらせた其の姿は見る者全てを圧倒します。とにかく反則じゃないかというほどの存在感であり、はち切れんばかりのそれは周囲を睥睨しています。アメリカ軍のピンナップ・ガールを生身化したようなスタイルは、当時はなんとも煽情的でセンセーショナルだったのでしょうねえ。彼女の立ち居振る舞いへの演出も作為的でここだけはなんか力が入っているような気がします(笑)。いや、いまみても凄いですねえ。CGじゃあないですよ。嗚呼、南無阿弥陀仏・・・・でした(笑)。

 当然、物語は当時のお約束に従って唐突に二人のラブロマンスになります。この辺は、古典を見るときのお約束です。現在の目線で見てはいけません。それにしても、大歌手のフランク・シナトラは何故いつもあんな役なのでしょうねえ。まだ、ぺエペエの時かな?

 解説によると、名代のプレイボーイだったケイリー・グラントが彼女のお色気に惚れて熱烈にアタックしたそうですが、当時彼女には恋人がおり、相手にされなかったようです。この逸話は、翌年に「月夜の出来事」という艶笑喜劇で再び共演していますので、あながちガセネタではないような気がします。まあ、とにかく、そのボリュームの破壊力は、”大砲”の比ではありませんでしたねえ。眼福です。いやあ、買ってよかった(笑)。以上です。 

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