追悼 ショーン・コネリー
西暦2020年10月31日にショーン・コネリーがお亡くなりになったそうです。享年90歳ということですから大往生ですよねえ。私たちのオールド世代には、もうなんといっても初代007のジェームス・ボンド、その人なのです。「ボンド、ジェームス・ボンド」と名乗る声まで魅力的です。
彼が演じたボンド映画はスパイ映画の金字塔であり、その恰好良さとセックス・アピール度で歴代の007ナンバーワンです。「ドクター・ノー」、「ロシアより愛をこめて」、「ゴールド・フィンガー」は初期の傑作です。そのあと何作か演じてボンド役を引退。個人的にはもっと続けてほしかったのですが、残念でした。引退後しばらくして「サンダーボール作戦」のリメイク版「ネバー・セイ・ネバー・アゲイン」で一度復帰したのですが、ファンの声を代弁したタイトルでうれしかったですねえ。
後に知ったのですが、彼はもともとスコットランドの労働者階級出身であり、小説で描かれたボンド役を演じるには随分異論があったそうです。それを上流階級出身(?)の映画監督テレンス・ヤングが、ゴルフ、酒、身だしなみなど徹底的に指導して役を造り上げたようです。そういえば、金髪のダニエル・クレイグも当初相当な反発がファンからあったようですが、ボンド役はイメージと異なる俳優の方が成功するのかもしれません。
007卒業後は様々な役を演じるものの、どうしてもジェームス・ボンドにしか見えなかったのは可哀想でしたねえ。一世一代の当たり役「シェーン」のアラン・ラッドのように消えていくのかと思いきや、「アンタッチャブル」でカツラを脱ぎ、脇役の渋い警官を演じてアカデミー賞助演男優賞を得てから名優への道を歩み始めたような気がします。
で、今回、コネリーを偲んで「アンタッチャブル」をブルーレイで再見してみました。当時は、ブライアン・デ・パルマの華麗なる映像表現が有名でしたが、やっぱりお話も面白い。冒頭のタイトルからエンニオ・モリコーネの音楽が盛り上げますし、1930年のシカゴの街の美術も美しい。シューン・コネリーの渋い演技に加えて、ロバート・デ・ニーロの”アル・カポネ”の凄味はさすがです。
それにしても、ケビン・コスナーやアンディ・ガルシアなどの豪華俳優陣が出演する超大作と思っていたら、ブルーレイの特典映像によると、当時はケビン・コスナーはまだ「シルバラード」に出演したくらいで全くの無名、大スターだったのはシューン・コネリーだけだったらしい。しかも、ゲスト出演のロバード・デ・ニーロは、デ・パルマ監督が2週間だけ無理に依頼して(大金を払って)実現した経緯だったらしいのです。意外にこじんまりした作品なのです。デ・パルマ監督の見せ方の工夫、例えば、カポネのホテル内装はフランス太陽王風?とか、白ずくめの殺し屋とか、野球バットのとんでもない使い方などは、まさしく”ケレン”とも言えるような効果なのでしょう。まあ、戦艦ポチョムキンはやりすぎかな?結局、やはり映画の面白さは必ずしも予算に比例するものではないことはよくわかりますねえ。
そのほか、後年の代表作とよく言われる「レッドオクトーバーを追え」も併せて再見しましたが、どうもピンときませんでした。潜水艦のセットや模型の撮影方法がCGの無い時代の作品であることが影響しているのか、あまり緊迫感がありません。多分、ベストセラーとなったトム・クランシーの原作、ジャック・ライアンに力負けした結果なのでしょう。亡命の意思を持った無口なロシア艦長を演じたコネリーのカツラが気になっていたせい(笑)では決してありません。
やはり前述の007映画もそうですが、コネリーの独特なユーモアを活かせる役柄の作品の方が記憶に強く残っています。悠々自適の世界最高の美術品泥棒役の「エントラップメント」、刑務所に収監されている元英国情報部員役の「ザ・ロック」、伝説のドラゴンの声を吹き替えた「ドラゴンハート」、ハリソン・フォードのおちゃめな親父役の「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」、老境のロビン・フッド役でオードリー・ヘプバーンと共演した「ロビンとマリアン」などは暇を見つけて(時間はあるので気合の問題?)是非もう一度見てみましょう。
改めて、冥福をお祈りします。
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