独立機関銃隊未だ射撃中
岡本喜八監督の「独立愚連隊」シリーズ8本のうち、未見だったのが「独立機関銃隊未だ射撃中」でした。以前「東宝・新東宝戦争映画DVDコレクション」のシリーズの中に入っていたものの、絶版となったままでした。それがこのたび、やっと正規のDVDが発売されたのです。
ちなみに、昭和34年公開の「独立愚連隊」から「独立愚連隊、西へ」そして第3作の「どぶ鼠作戦」までが岡本喜八監督で、その後の「やま猫作戦」から谷口千吉監督に交代し、第5作がこの「独立機関銃隊、未だ射撃中」なのです。そのシリーズは、その後も、福田純監督の「のら犬作戦」、坪島孝監督の「あり地獄作戦(当ブログ2018.5.16参照)」、そしてシリーズ最後の作品が、岡本喜八監督の「血と砂」でした。
さて、この作品は、”独立愚連隊”の娯楽活劇というよりは、その名を冠した(もじっているタイトル)反戦映画です。どうやら、当時の独立愚連隊シリーズに対する根強い批判をかわすアリバイ的な意味合いが感じられます。
物語は、ソビエトとの国境にある機関銃隊のトーチカを守る兵士達のお話です。豪放磊落な三橋達也、経験豊かな佐藤充、口先だけの兵士、インテリの兵士、志願兵の若い新兵、そしてベテランの連絡係などの生きざまを戦時中の軍隊の非人間的な部分を懺悔でもするかのようにじっくり描きます。基本的にトーチカの中だけの密室劇です。とにかく、登場人物達はまじめに悩み、苦しみ、国に居る家族を守るために戦おうとします。
しかしながら、ソ連軍の侵攻の直前という中で描かれる兵士達の描き方がおざなりです。豪放磊落だがお守りを離さない上官、貧農出身で軍隊が天国という兵士、下の者には厳しいが実は小心で臆病な兵士、そして、インテリで戦争に疑問を持っている兵士など、どうもどこかで見たり聞いたりした人物造形です。しかも、俳優達の熱演も、影や構図など演出が観念的で真面目すぎるせいか、どうにも”固く”感じられます。
にもかわらず、敵のソ連軍が東宝特撮自慢の戦車模型なのです。このギャップはなんとも悲しくなります。
しかも、最後はなんと名作「西部前線異常なし」のラストの蝶々を百合に変えての”反戦”を象徴させる演出なのです。途中からそうなるのではないかと予想していたら、本当にそうなったので驚きです。
とりあえず、一応は自宅のモニターで最後まで見ることができましたので、今回は”見た”という実績を積んだことだけで満足することにしましょう。
それにしても、谷口千吉監督は、戦前から山本嘉次郎監督に師事し、黒澤明監督とは兄弟弟子に当たります。戦後の一時期は三船敏郎のデビュー作の「銀嶺の果て」や「暁の脱走」などを発表した有名な映画監督なのですが、どうも作品に恵まれていません。最近、いろいろ見る機会が増えてもなんだか感心しません。でも、いいのだ。彼は八千草薫の旦那(略奪愛らしい)ですから、幸せな映画監督です。
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