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2020年7月28日 (火)

七人の侍 ロケ地の謎を探る

 黒澤明監督の不朽の名作「七人の侍」の舞台である”村”は、1カ所では監督のイメージに合う場所がなく、何か所かでロケをしたという逸話は、ファンの間では有名な話です。撮影は昭和28年5月ごろから始まり翌年3月まで行われたそうですが、そのロケ地の場所を黒澤明生誕110年、三船敏郎生誕100年の2020年を記念して探そうとした方が、今回、ご紹介する「七人の侍 ロケ地の謎を探る」書籍の著者なのです。

919ego359l  世の中、誠に奇特な人がいると感心したのですが、実は、この著者の方は元成城大学教授であり、2017年に成城学園が立地する東京の世田谷区成城・祖師谷・砧地区でロケをした映画を紹介した「成城映画散歩」を出版されています。
 ご承知のとおり、この地区には東宝撮影所があって、当時は三船敏郎や黒澤明など多数の映画人が住んでおり、東宝の”農場オープン”や近くにあった里山などの自然風景、そして、成城学園や商店街等を活用し、ご存知「若大将」シリーズやクレイジーキャッツの映画などの撮影が頻繁に行われたそうです。
 この辺のお話は、是非、前述の「成城映画散歩」をご覧ください。私家版だそうですが、アマゾンで購入できます。映画全盛時代のエピソードや黒澤明監督関係のこぼれ話が大変面白い読み物になっていますし、東宝撮影所に特化したいわゆる”郷土史家”の研究成果にもなっています。
 それにしても、昔は、俳優の居宅もオープンですし、撮影所と地域の関係も何ともおおらかな雰囲気で、まさしく古き良き時代でした。いまの芸能ニュースなどをみると日本人の気質自体が悪くなったというほかないですねえ。

 さて、前置きが長くなりましたが、「七人の侍 ロケ地の謎を探る」は、前述の”成城編”の続きとも言ってよいもので、”村”の中心部を撮影した成城のオープンセットはともかくとして、”村”の入り口や全景シーンなどは、御殿場や伊豆で撮影したそうですから、60数年後、ロケ地の場所を特定しようというのは、なんともとんでもない試みともいえます。
 いま流行りの”聖地巡り”をするにしても、かつて「用心棒」の冒頭の三叉路のロケ地を紹介したネットを見たときに感じましたが、桑畑などの風景は一変していましたので、そう簡単にはわかるはずがありません。実際、著者が当時の記録を徹底的に調査し、グーグルの写真や山の稜線の形でひとつひとつ確認したという記述には本当に頭が下がりました。お疲れさまでした。

 しかし、それ以上に驚いたのが、この本に掲載されている東宝に保存されていたという多数の撮影風景写真です。撮影の合間か、三船敏郎たちのすぐそばに看護婦さんたちが群がっています。どうやら近くの病院から見学に来たようです。本当に”距離”が近い。
 また、冒頭の官兵衛と勝四郎を菊千代が追ってくる”坂道”は、意外に街の近郊だったそうで、黒澤流の映像のマジックにも感心しました。
 さらに、オマケとして紹介している「椿三十郎」の三船が仲代を斬ったロケ地の特定、画面の反対側から撮ったリハーサルの写真の存在には著者同様に驚きました。海洋堂のオマケフィギュアはこの写真を参考にしたんだということがわかり、納得です(笑)。

 いやはや、東宝さんも、これだけ大量の撮影風景写真を保存しているのなら、最近よく見かける怪獣映画関係写真集だけでなく、黒澤明の黄金時代の大型写真集を出版してほしいものです。待っています(笑)。以前発売された「黒澤明クロニクル」にはその一部が掲載されていたのかもしれませんが、生誕110年記念として是非やる”べし”。

2020年7月10日 (金)

ビリケン・アントラーの触覚

 久しぶりに模型作りです。興味のない方は飛ばしてください。
 今回、初代ウルトラマンの「バラージの青い石」に登場するアントラーのビリケン商会製の中古品を入手しました。御承知のとおりビリケン商会のソフビ模型は、いずれも造型のつくりがなんとも見事で、この商品も随分前に廃盤となっていますが、依然としてオークションなどでは高値で取引されています。もちろん、私の場合は、箱なし、説明書なし、組み立て中途品といういつものジャンク品です。

20200708_1645581  左の写真(エクスプラス製)のようにこの怪獣のデザインは、カブトムシの頭部にクワガタの大あごをくっつけて、二本足で立っているという姿です。実は、着ぐるみ製作者として有名な高山良策氏が最初に製作した”ウルトラマンの怪獣”だそうで、子どもの時に、この着ぐるみを製作中の有名なスナップ写真を少年雑誌で見たことがあります。その舞台裏の写真のインパクトは大きく、それ以来、私のお気に入りの怪獣になっています。
 考えてみると、なんとも奇妙なスタイルなのですが、高山良策氏の手にかかると、リアルな生物感が生まれるのが名人芸なのでしょう。他の造型師ではそうはなりません。デザインの成田氏も造型には高山氏をよく指名したそうですから、製作陣においても相当高い評価があったようです。おかげで、同時進行で何体も製作せざるを得なくなるほど忙しく、高山氏の日記には「他の造型師に廻してほしい」という愚痴が残っているそうです。

 さて、このビリケン製の模型は、スタイルなど実によく実際の着ぐるみを再現しており、ファンの間でも傑作モデルとして知られ、何度か再販もされています。しかし、このモデルにはひとつ致命的な欠陥があります。人形は顔が命とよくいいますが、昆虫は触覚が命です。そうです、このモデルには、触覚の部品が無いのです。これは画竜点睛を欠くというものです。
 ひょっとすれば、モデラー自身の創意工夫を期待してのことかもしれませんが、「カネゴン」の靴の球も作る会社のモデルキットとしては手抜きとしかいいようがありません。そのため、以前、この正規品を作った時には、触覚がなかったためにどうにも気に入らず転売してしまった苦い記憶があります。
 で、今回2度目の挑戦では、アントラーの触覚を自作することを目標に置きました。

 以下、模型作りの手順です。

20200629_1254161  まず、二本足で立たせるため、下半身にレジン液を注入します。足首の継ぎ目にしっかりビニールテープを巻いて、液が漏れるのを防ぎます。さらに、前面に突き出た大アゴによって前のめりに倒れるのを防止するため、背中の甲羅の下部にもレジン液を入れて前後のバランスを取って直立するようにします。
 そして、今回の目玉の触覚作りです。ただ、映像を見ても触角の位置がよくわかりません。そこで、少し邪道ですが、他のモデルを参考にすることにしました。怪獣モデルの専門メーカーのような会社エクスプラスのアントラー(一番最初の写真)を購入しました。で、驚きました。アントラーには口唇にも触覚のようなモノが付いていました。本物の昆虫には無い筈なのですが、架空の生物だから仕方がありません(笑)。

 20200710_13551811 自作する材料としては、針金を考え、粘度の高い接着剤を節として盛りましたが、形が不揃いで断念。次に樹脂粘土で整形しましたが、小さな節を作ることができす挫折。思い余って、他商品の触覚を型どりまでしたのですが、片面しか複製できず失敗。いろいろ考えた挙句、節にはビーズ玉を使用することを思いつきました。手近にあった直径3mmは少し大きすぎたので、2mmと2.5mmのビーズ玉を取り寄せて、1mm針金に通します、一定の間隔で並べるとそれらしく見えましたので、身近な針金を接着剤で固めて先端の櫛のような部分をつくって出来あがりです。

20200705_1604561  最大の課題をクリアしたあとは塗装です。いつものとおり、フラッドベースを混ぜたつやけし黒を全体にエアブラシ塗装します。この場合、少しづつ濃淡を付けながら何度も吹き付けます。エアブラシの調子が悪く、吹く量が少ないことがかえって効果がでたような気がします。背中の甲羅は丸く塗り残し、あとで、ホワイト+ブルーに、さらにスカイブルーをエアブラシします。そのほか、フラットベースを混ぜたダークイエローで手足や腹部、顎の周辺をそれらしく塗装します。これで終了です。塗装はいつものとおり1日で終了です。
 20200708_1637461 20200708_1632181 20200708_1634351 出来上がりは、次の写真をご覧ください。まあ、こんなのものでしょう。

2020年7月 9日 (木)

ランボー/ラストブラッド

 見る前から覚悟はしていましたが予想どおり”無残”な映画でした。「ランボー/ラストブラッド」は、言うまでもなく、あの「ランボー」シリーズの最終作というふれこみです。老いたランボーが自宅の牧場でメキシコの売春組織を相手にたった一人で戦争をするという物語は、迷路のような地下道で大人数の敵にいかにもグリーベレーらしく戦うランボーの姿のyoutubeの予告映像がなんとも魅力的だったのですが、どう予想しても、敵を自宅までおびき出す展開がなんとも悲惨な道筋しか思いつかないのです。しかも、アチラでは最低映画賞まで獲得したというネット情報もありましたので、正直、劇場に足を運ぶのがためらわれました。ただ、第1作や第2作の栄光を知っている者としては、義理(笑)と人情(わずかな期待)もあって観たのですが、結果は冒頭の通りです。

_new_20200709093001  とにかく物語がひどいのです。義理の娘がメキシコで売春組織に拉致されるのは、本人の考えの無さかもしれませんが、彼女には情け容赦ありません。ランボーや祖母の”正しい”言いつけを守らなかった”悪い”娘はこうなるのだ、とでも言いたげな無慈悲な教訓なのです。まあ、凌辱シーンが描かれていないだけでも良しとしましょう。
 せっかく、リーアム・ニーソンの娘救出の傑作アクション映画もあるのに、まるで正反対の描き方です。
 しかも、ランボーの行動は、考えなしの行き当たりばたり、なんとも頭が悪いとしか思えません。救出のための作戦も状況確認もなにもなく一人で敵のアジトに突っ込んでやられてしまいます。その行動があくまで救出のための方便だと信じていた観客(私)はあ然。結局、本人は4日も意識不明、たまたま都合よく命は助かるものの、娘の方は・・(以下省略)。
 まったく、ランボー映画の観客はこんな”救いのない現実”をお金を払って観に来るのではありませんし、ランボーの馬鹿な行動の結果ゆえの悲劇にはしてほしくありませんでした。しかも、作戦司令のいないランボーは”脳筋”だ、とでもいうような描き方はなんとも悲しいものがあります。

 そして、後半から始まる復讐の第1弾も、観客の要求不満が一層溜まります。せめてあの”実行犯”の最後はしっかり見せてほしかったし、あんなに簡単にアジトに進入できるのなら、何故、初動があんな馬鹿げた方法だったのか、まったく意味不明な展開です。本当にあれではただの猟奇殺人ではないか。

 しかも、お約束の”ランボー伝説”に怯える敵の姿が描かれていません。メキシコの売春組織も、国境超えてアメリカまで襲撃するなら、もっと相手のことを調べようよ。そして、ランボーの起こした事件などを知って、恐れたうえで準備して襲いましょうよ。まあ、あれだけの戦力を連れてきたということは事前に調査した結果かもしれませんが、その過程を省略しています。それでは観客サービスにはなりません。観客のささやかな楽しみを奪ってはいけません。

 また、私が予告映像で騙された、一番の見せ場であるラストの牧場での人身売買組織との戦いも、事前にきちんと地下道や罠の準備などを描いているのですが、あまりに予定どおり都合よく人体が破壊されますので、面白みが一向に盛り上がりません。それどころか、行き過ぎた殺し方ゆえか、戦いが終わったあとの掃除などの後始末を考えると気分が重くなりました。これは、実際エンディング中に感じたことなので、結局、これがこの映画の感想ということかもしれません。いやあ、恐れ入りました。 

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