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2020年3月29日 (日)

犬神家の一族

 またまたYoutubeのWOWOWぷらすとの番組紹介です。WOWOWの映画「金田一耕助」シリーズの一挙公開にあわせた特集です。タイトルは「春日が語る金田一」という座談会で2015年5月15日配信という随分前のものですが、これがちょいと面白いのです。
 日本映画研究家(ちょっと変化していますが)の春日太一氏が登場して2時間、市川昆の角川映画第1作「犬神家の一族」への愛を熱弁します。曰く、”この作品は、市川崑のすべてを集大成したもの”という評価なのです。
 黒澤明監督らと「四騎の会」のメンバーでもあった巨匠をもってこの角川映画を集大成といわれれば、私のような年寄りには少し違和感がありますが、その後の彼の分析を聞くとそんな気もしてきますから、面白いものです。

21mh3pw444l_ac_  さて、春日氏によると、この映画の当初の脚本はオカルト風の内容だったのですが、角川社長が難色を示してやり直したそうです。まあ、これから横溝正史ミステリーを売り出そうとしているのに、オカルトでは出版社は困りますよねえ。しかし、映画界には”ミステリーは映画化できない”という常識があったそうです。その証左として、春日氏が挙げたのがヒッチコックの言葉で「私はサスペンス映画を作ってきた。ミステリーにはエモーションがないから。」というのがあるそうです。(寡聞ながら出拠はわかりません。)要は、犯人あての知的な謎解きは観客のハラハラドキドキ感をそぐものだということです。しかし、市川崑監督は、この作品で最後まで観客が楽しめる完璧なミステリー映画に挑戦し、成功したと力説します。

 その市川崑が考案した観客のエモーションをつなぐ仕掛けと工夫についての春日流解説がなかなか面白いのです。春日講談には、地道な聞き取り取材があるようでなかなか説得力があります。
 第一に挙げるのが、加藤武や坂口良子などのコメディリリーフの活用です。笑いと緊張の演出です。
 第二にサプライズの多用です。とにかく、突然叫び声などの驚きがあります。
 第三に金田一耕助の天使の役割といいます。探偵を二枚目でなく滑稽なものとして、事件にかかわらせない傍観者”天使”に仕立てたといい、さらに原作のニ枚目の探偵像を改変した、と分析します。
 しかし、この点については、映画化より前から原作小説のファンだった私としてはやや違和感があります。原作者の横溝正史は、金田一耕助という、風采の上がらない着物姿というこれまでにない探偵像をつくりあげたと思っています。それまでの映画化で片岡千恵蔵のスーツ姿の二枚目に仕立て上げたのは映画製作者側ですから、ここは、やっぱり”原点復帰”というべきでしょう。
 そして、一度断ったという石坂浩二を説得してキャスティングした理由を「都会的で二枚目半ができる俳優」とした市川崑の説明を本当の理由を隠していると断じた春日氏の説には大いに賛同します。事件を説明するには、ウルトラQやウルトラマンのナレーションで有名な彼でなければならなかったと主張します。確かに説明を自然に聞かせ映像に集中させるには声を使い分けるナレーションの名手の石坂浩二が最適だったのでしょう。ここは大いに納得です。

 最後に、探偵小説の醍醐味である関係者全員が集まって謎解きをする場面は、映画ではラストになりますが、真犯人の説明に終始する形は観客の集中力を欠くことにつながるため、市川崑は犯人あてを絶妙にタイミングをずらし、関係者のサブミナル効果的なショットをつなげながら、全く違うドラマを提示することに成功したと種明かしします。だから、犯人が分かっても何度も観たくなる作品になっているといいます。この分析には素直に感心しました。司会役が”カスガ凄い”と奇声を発したのも頷けます。

 なお、この市川崑の挑戦は、次作「悪魔の手毬唄」でより洗練され、最高傑作になったと評価しています。第3作以降の作品は市川崑が嫌や嫌や作ったもので、4作目などはほとんど別の者に監督させているとかの暴露には笑わされます。しかも、リメイクの「犬神家の一族」はラスト以外観る価値が無いと切って捨てています。全く同感です。

71ugzemg8l_ac_ul320_ml3_  いやはや、Youtubeにこんな”おもろい”トーク番組があったとはまったく不覚でした。しかも、この番組の元ネタとなった内容をしっかり書籍化している春日太一という日本映画研究家の才覚にはなんとも感心します。早速彼の著書「市川崑と「犬神家の一族」」を注文しましたが、随分前の発売の書籍なので入手できるのはかなり先(?)になるようです。
 それにしても、若い人がこれまでいわゆる映画評論家から相手にされていなかった娯楽作品について新たな視点で評価してくれるのはうれしいことですねえ。リアルタイムで見た思いとやや違いを感じる箇所もありますが、いろいろと新しい発見などがあり、本当に勉強になります。
 今夜はなんだか「犬神家の一族」のDVDを再見したくなりました。映画放送の宣伝としてはかなり効果があるようですね。これを機会にほか作品のトーク番組も見てみましょう。

 

 

2020年3月28日 (土)

フィラデルフィア物語

 ロマンティック・コメディの代表的な女優としては、オードリー・へプバーン、マリリン・モンローの登場の前に、キャサリン・ヘプバーンを忘れてはいけません。なにしろ元祖スクリューボール・コメディ「赤ちゃん教育(1938年)」の主演女優です。ロマコメ歴代第5位(当ブログ2020.3.22参照)の「フィラデルフィア物語」の主演もこなしています。

71muqdarv2l_ac_sy445_  この有名な「フィラデルフィア物語」は、これまで何度か観た覚えがありますが、どうにも内容を覚えておらず、DVDも持っていなかったので、今回改めて購入して観ることにしました。丁度バーゲン商品がありましたし(笑)。

 お話は、社交界の華であるキャサリンが再婚することになったため、独占取材したい雑誌社が元夫のケイリー・グラントを使って、作家で記者のジェームス・スチュアートを前夜祭と結婚式に潜り込ませようとすることから始まる、元夫と婚約者、作家の恋愛喜劇です。びっくりするほどの豪華な顔合わせです。

 観客は、婚約者が成り上がり者の嫌な奴であることから当然ながら離婚を悔やんでいるグラントを応援することになるのですが、初対面のスチュアートもなかなか頑張ります。もっとも、キャサリンの性格がよくわかりません(笑)し、愛人の元にいる親父、セクハラ全開の叔父、ませた妹役の子役(絶品)などいかにも上流階級という世界です。庶民のスチュアートに上級階級批判のセリフを言わせていますが、やっぱり一般大衆にはあこがれの世界なのでしょうねえ。贅沢な室内や調度品、建物やプールなどの豪華な世界は銀幕の世界そのものなのです。
 それにしても、キャサリン・ヘプバーンという女優さんは、理知的で鋭い顔、細身で長身の体型、中性的でもありますし、運動神経の良さそうな機敏な動作など、なんとも”男前”なその姿はとても現代的です。当時のふくよかな感じの多い女優達の中では異色な存在といってよいでしょう。とても1940年公開の映画とは思えません。全く古びた感がないのに逆に驚きます。もっとも、黒人は一切登場しないのは時代なのですねえ。

 ただ、元々が舞台劇のせいか、登場人物達はタバコとシャンパンを飲み続けながら、機関銃のような早口のテンポでセリフの応酬をしていますし、あいかわらずグラントは”何を考えているかわからない”風の十八番の表情ですから、なかなか登場人物達の心理がわかりません(笑)。でも結局は、キャサリンが泥酔して紆余曲折のうえ、最後はめでたく観客が望むハッピーエンドになります。
 今回、DVDは一度も早回しすることなく楽しく観ることはできましたが、この作品がロマコメ史上第5位という評価は多分に映画史上の歴史的価値を加味しているのでしょう。様々なバリエーションが繰り返されてきた今となっては、最近、といってももう随分古くなりましたが、メグ・ライアンなどの一般大衆階級の作品の方がしっくりきます。

 余談になりますが、今回購入した2枚組のDVDのボーナス・ディスクに収録されているキャサリン・ヘプバーンの伝記が非常に面白い内容でした。晩年のキャサリン本人が自分の生涯や作品の裏話を映像で解説するのです。彼女の話によると「赤ちゃん教育」はまったくヒットせず(漠然と当時の大ヒット作品と誤解していましたが・・)、その後、主演の舞台「フィラデルフィア物語」のロングランにより再び映画界に戻ったとのことです。しかも、交流のあった大富豪ハワード・ヒューズが映画化権をプレゼントしてくれたそうです。おかげで「風と共に去りぬ」の監督を首になった旧友のジョージ・キューカーを監督にできたということらしい。また、事実上のパートナーであったスペンサー・トレイシーとの関係(実はトレイシーの妻がいる)をあっけからんと認めるのは立派。でも、何故に名優とはいえあんな武骨な俳優さんが彼女の好みだったのだろう。当初は彼女からの一方的なアタックだったようで、蓼食う虫も好き好きとは誠によく言った格言(どうも失礼しました。)でした。 

2020年3月25日 (水)

ブリッツウェイ

 ハリウッド黄金時代の映画、特に1950年代のロマンティック・コメディがとにかく面白い。先般このブログでも紹介しましたが、この時代の作品は映画史的に言えば、セックス・コメディ、いわゆる艶笑喜劇と分類されているらしい。
 まず、1953年には、ウイリアム・ワイラー監督によるオードリー・ヘプバーンの初主演の「ローマの休日」が公開され、同じくハワード・ホークスが監督した「紳士は金髪がお好き」でマリリン・モンローが一躍有名になりました。
 翌年からはビリー・ワイルダー監督によるオードリー・ヘップバーンとマリリン・モンローを交互に使った艶笑喜劇が製作されています。1954年「麗しのサブリナ」、1955年「七年目の浮気」、1957年「昼下がりの情事」、1959年「お熱いのがお好き」とよくもこれだけ傑作を連続して作ったものだと感心します。

51trnua61el_ac_sy445_  このあたりの作品が私のお気に入りの最たるものなのですが、考えてみれば実に60年以上も前のクラシックな作品です。しかし、今観ても全く古びていないのが、傑作の傑作たる所以なのでしょうねえ。
 オードリーが清純派の親父殺し(笑)で、マリリンが肉体派の天真爛漫なゴールド・ディガーを演じています。
 昔はオードリー・ヘプバーン一筋だったのですが、最近、遅まきながら、マリリン・モンローのコメディセンスの才能に改めて感心もしています。前述の作品を観ると、マリリンは”セックス・シンボル”というよりは、彼女の演技のコケティッシュな魅力が光り輝いています。不慮の死を遂げたこともあり、マリリン人気はいまなお衰えを知らないようです。

 前にもご紹介しましたが、映画の登場人物の精巧なフィギュアを製作・販売している「ブリッツウェイ」という米国のメーカーがあります。実は、このメーカーは2015年にマリリン・モンローのフィギアを発売しています。しかも「紳士は金髪がお好き」での役名ローレライ・リーという踊り子の設定です。1/4のサイズ(40cm強)で造型師が韓国のK.A.キムという女性フィギュアアーティストだそうです。商品写真を観るかぎりその造型はまるで”生き人形”のような素晴らしさです。

 このメーカー「ブリッツウェイ」では、ブルース・リーやシャロン・ストーンなどいろんな俳優の商品を発売しているのですが、マリリンのフィギュアだけが模倣品が作られ、そちらの方が巷に多く出回っています。誠に困ったものですが、これはやはりマリリン・モンローの衰えぬ人気とそのフィギュアの出来の良さを証明しているともいえます。なにしろ正規の商品は結構な値段ですのでなかなか手が出せません。

20200226_1249451  ところが、世の中面白いものでオークションには時々本物が格安で出品されます。しかも未使用のものを1円スタートの破格の値段で購入できる場合もあります。で、ついつい入手してしまいました(笑)。ご覧ください。顔などは化粧までしてあるようでため息がでます。でも、あまり見つめ過ぎると目に毒かも(笑)。ただ、この大胆な衣装は映画の中では登場しません。そこが少し残念です。ちなみに、本物と模倣品の区別は容器と化粧箱(メーカー名が入っている)によって見分けてください。

20200226_1250141  さて、ここで大事なお知らせがあります。このメーカーから、ビリー・ワイルダー監督が「この女性はたった1人で豊かなバストを過去のものにするだろう」と評した女優さんのフィギュアが発売されることが予告されています。このニュースを聞いたのが、この正月のことです。いま、ひたすら待っているのですが、コロナ・ショックによる中国での生産の遅れを心配しているのです。一日も早いコロナ・ウィルスの撃退を願うところです。      

 20200226_1252121

 おまけとして後ろ向きの写真もサービスしますが、あの指の精巧な造りには感動しかありません。韓国の女造型師、恐るべし。

2020年3月24日 (火)

若山富三郎を語る。

 Youtubeで面白いコンテンツを見つけました。「WOWOWぷらすと」というWOWOW番組の宣伝コーナーの映像なのですが、映画「子連れ狼」6部作の一挙上映を記念した「若山富三郎を語る。」という座談会なのです。この映像はWOWOWofficalの提供なので、まず著作権等の問題は無かろうとじっくり拝見しました。YouTubeは玉石混交で無法地帯なので要注意(笑)です。

 さて、この番組は、映画史・時代劇研究家である春日太一氏がゲストで登場して、タイトル通り映画「子連れ狼」の主演である若山富三郎という役者を徹底的に語ろうというものです。私も若山の殺陣にはゾッコンですので、やっとこの役者に光が当たる時代が来たかと思ったものでしたが、実はもう2年も前の番組(笑)でした。

91inoqf9nal_ac_ul320_ml3_   ちなみに、ゲストの春日太一とは、「天才 勝新太郎」とか「仲代達矢が語る日本映画黄金時代」、そして当ブログ(2019.7.6)でも紹介した「町山智浩・春日太一の日本映画講義 時代劇編」などを出版し、注目を浴びている映画評論家です。
 まだ年は若いようですが、役者をはじめ撮影所関係者に地道な取材をしてその聞き取りを基に結構面白い分析をしています。そして、なにより邦画の娯楽映画、特に時代劇が好きでたまらないという良い意味でミーハー感覚が満載で、芸術・文芸志向の高尚ぶった映画論とは一線を画した著作が多いので、私のような一般の時代劇映画ファンには大変ありがたい存在です。ただ、彼の場合、映画だけでなくテレビドラマまでもがその対象になっていますのでややしんどい(笑)面があります。

 そして、その内容は、活字でない座談会という形式のせいか、司会やアシスタントともう言いたい放題の笑いがとまらないほどの与太話のような雰囲気なのです。しかし、さすがに時代劇研究家というだけあって、かなり地道で膨大な取材にもとづくネタを披露します。
 もともと、若山富三郎は勝新太郎の兄で、殺陣のうまさでは定評のある役者ですが、それほど世間一般では評価されておらず、その評論や伝記などは断片的なものしかありません。そのうえ、山城新伍などによる彼の豪快な武勇伝ばかりが先行して役者としての真価が薄れている感もします。

 若山はご承知のとおり新東宝→大映→東映と移籍を繰り返した経歴ですが、それぞれのステージで、存在感を示した演技を披露しています。大映時代の「忍びの者」の織田信長、「座頭市」の凄腕の浪人などは物凄い迫力です。
 また、東映復帰後の「総長賭博」での鶴田浩二の敵役は伝説だそうです(私は未見です)。そして「子連れ狼」の拝一刀はそのスプラッター的迫力で殺陣の頂点を極めました。
 その後、刑事役を経て”役者”として様々な役を演じており、「悪魔の手毬唄」の老刑事は実に味がありました。とはいえ「魔界転生」のラストの弟子の千葉真一との大立ち回りは必見ですし、ハリウッド映画の「ブラックレイン」のヤクザのラスボスも凄味がありました。

 こういった代表作品を年代順にあげながら若山の演技の凄味を紹介するのですが、春日の話す声がなかなか良い(意外ですが)うえ、一人のファンとなって殺陣の見事さなどを事細かに手振りを加えながら説明するのがなんともいいのです。例えば、若山の”とんぼ”や納刀の所作などは彼以外にはできないと声を大にします。また本当の”峰打ち”ができるのは若山と弟子の千葉だけというのは初耳でした。殺陣には速さが必要ですが、併せて刀の重さを感じさせ、人を斬る演技をすることが大事であり、”峰打ち”を実感させるには当てた刀を瞬時に返す技が難しいのだそうです。さらに若山は刀はもちろん槍や手裏剣まで武芸百般の達人で”とんぼ”をきった後の態勢も早いし、映画「子連れ狼」では彼の殺陣の集大成になったなどと楽しいエピソードをしゃべりっぱなしです。

 春日は「本当の天才は弟ではなく兄の若山富三郎。器用”富豪”であらゆる役をオールラウンドに演じられる俳優で、日本ではこんな役者はあと仲代達矢しかいない。」とまで言い切ります。カツシンが実は不器用だったというのはなんとなくわかります(笑)。兄は積み木を完璧に積挙げ、弟は積んだ積み木をぶっ壊すのが好きなタイプなどと言いたい放題。いやあ、嘘かホントか、講談調で断定的な切り口がとにかく笑えました。是非ともこのネタを基にして「若山富三郎」の評論本を出版してほしいものです。

 最後に余談ですが、春日太一の最新作「時代劇入門」には、椿三十郎の記述の中でやや誤解を招く表現があります。三船は自分が負けても加山らには(斬られるから)手を出すなと言ったのであり、本題は、加山らを斬らないでくれと仲代に言った(お願い)のです。・・まあ、どうでもよいのですが、ファンの間ではこうしたお話がなんとも楽しいのです。

2020年3月22日 (日)

映画講義 ロマンティック・コメディ

 久しぶりに面白い映画解説書を読みました。平凡社新書の「映画講義ロマンティック・コメディ」です。ハリウッド映画の王道ともいうべき”ロマンティック・コメディ”というジャンルをしっかり定義し、その歴史を俯瞰的にかつ簡潔に整理しています。なお、このロマンティック・コメディ(以下、ロマ・コメと略します。日本では全く使われないようですが、米国ではこの略語が使われているそうです。)というのは、今中高生の間で流行っているラブコメとは異なるものですので、お間違えの無いようにお願いします。

_new_20200322133101  さて、ロマ・コメ映画の代表的な作品といえば、アメリカ映画界の権威筋が2008年にまとめた史上ベストテンによると、第1位「街の灯」以下「アニーホール」、「或る夜の出来事」、「ローマの休日」、「フィラデルフィア物語」、そして第10位が「めぐり逢えたら」となっているそうです。いずれも映画の中でも名作揃いですが、この中では私の好みとしては第4位と第10位ぐらいですか。個人的にはもっとミーハー的なお伽話が好きです。ビリーワイルダーの「昼下がりの情事」や「あなただけ今晩は」、あるいはサスペンスとのミックス型のヒッチコックの「泥棒成金」や「シャレード」、さらには「プリティ・ウーマン」や「ノッティィングヒルの恋人」なども捨てがたい。

 この新書では、こうしたロマ・コメの歴史を無声映画時代から掘り起こします。ロイドやキートンのアクション喜劇までロマ・コメと断じているのも興味深いですが、トーキー後の作品について年代順にタイトル名と簡単なストーリー紹介を次々と紹介しているのが圧巻です。とにかく、ネタバレまでふくめて数多くの作品がこれでもかというぐらい列挙されているのが実にうれしいですねえ。まだまだ未見の作品が多いのだ(笑)。

 ちなみに恋愛喜劇の歴史は1935年のスクリューボール・コメディの誕生以降、戦時中の停滞を除き、戦後のセックス・コメディ(1950年代)と続きますが、その後はナーヴァス・ロマンス(1970年代)とかネオ=トラディショナル・ロマンティック・コメディ(1990年代)などとやや訳の分からない変遷を経て、2000年代に多様化の時代になっていると解説しています。なお、ここでいうセックス・コメディとは際どいセリフのやり取りによる喜劇というもので、セックス描写はありませんので誤解のないように(笑)。

 また、恋愛喜劇の作劇のパターンごとに様々なエピソード(小ネタ)を紹介しているのも素晴らしい。例えば、私のお気に入りのケイリー・グラントは上流階級あるいはそれに類する職業の主人公を演じ続けて独自の世界を作ったとか、あるいは清純な小娘のオードリー・ヘプバーンとゴールド・ディガー(財産目当ての娘)のマリリン・モンローの物語には共通の構造が見られるとか、さらには恋愛喜劇とは二人の間にある様々な障害、例えば婚約者の存在などを乗り越えて結ばれるお話であると喝破しているのがうまい。特に、こうした恋愛の障害となる善良な配役を”ベラミー”と呼ぶそうです。由来はラルフ・ベラミーという役者が同じような役を数多くこなしていたことからそういう呼び名になったそうです。背の低い俳優が乗る踏み台を早川雪舟に因んで”せっしゅう”という伝説と同じお話です。なお、このベラミーさんは典型的なロマ・コメのシンデレラ物語である「プリティ・ウーマン」で買収されかかった造船会社のいかにも人の好さそうなオーナーを演じていると紹介するのも楽屋ネタらしく好きですねえ。このほかにも、様々な考察が収められており、本当に楽しく読ませていただきました。

 ただ、こうした記述の中でレックス・ハリソン主演の「殺人幻想曲」が未公開映画のような横文字のタイトルだったのがちょっと解せませんが、ロマ・コメのこれからについて、ラノベの「異世界転生もの」のハリウッド映画化まで言及しているのには感心しました。

 今回は、本当に勉強になりましたが、まだまだ未見のロマ・コメも数多くありますので、メーカーの方には、是非ともDVD化をどんどん進めてほしいものです。ただ困ったことにクラシックな作品の中には、評価は高いものの現代感覚ではモラル上いかがなものかという内容でなんとも面白くもない作品が結構ありますので、そこが悩みの種なのです。できたら無料の動画配信が望ましいものです(笑)。

2020年3月20日 (金)

ジャコ萬と鉄(1964年版)

 若き日の高倉健が三船敏郎を尊敬していたという話に少し驚きましたが、実際、三船敏郎と月形龍之介が演じた谷口千吉監督の「ジャコ萬と鉄(1949年)」をリメイクしたことを考えると納得です。この1964年版の「ジャコ萬と鉄」は、深作欣二監督でオリジナルの黒澤明の脚本をそのまま使っているため、このたび黒澤明DVDコレクション第57号(まだ続いているんだあ~)でDVD化されました。このシリーズとオリジナル版については2019年4月14日付けの当ブログをご参照ください。
 今回、昔テレビ放映で見て以来本当に久しぶりに再見したのですが、やはり面白い。我が家の小さな画面でもモノクロでもその世界に引きずり込まれます。映画というのはこういうものでなければなりません。改めて”本物”の凄さを感じ入ります。

_new_20200320083701  さて、オリジナルの作品と比較すると、監督の力量の差でしょうか、メリハリがついてより娯楽性が高まっています。主演の高倉健が二枚目でパっとせず、俳優業に迷いを持っていた時代、東映社長に直談判をして、この作品を作った(DVDの解説による)そうです。高倉は「赤ひげ」の撮影中の三船を訪ね、挨拶をしたうえで、相当な覚悟を持って北海道ロケに臨んだといいます。それは冬の海にふんどし一丁で飛び込んだことからもわかったという深作監督の述懐もあります。

 私としては、あの宴会の席の”南方踊り”を高く評価したい。深作監督も”面白くて長く撮った”というぐらい秀逸です。三船のそれよりも滑稽で迫力があります。
 配役についても、主人公の”鉄”が因業網元の若大将(息子)という設定から、どうしても若く見える高倉健に軍配があがります。三船はとても若造には見えません(笑)。ライバルのジャコ萬もダンマリの月形龍之介よりも口八丁手八丁の丹波哲郎の方がわかりやすいし、因業親父も進藤英太郎より山形勲のほうが悪そうです。というように、いずれもリメイク版の方が適役のような気がします。

 そして、一番の違いが”鉄”が毎週末そりで通うマドンナの設定です。オリジナルでは教会の娘を遠くから見に行くだけですが、リメイク版では、戦友の妹でありその家の開拓を手伝うという風に変えています。この変更は至極納得のいくもので、オリジナルの方は少しストーカー的な異常さ(笑)を感じます。

 かくのごとくリメイク版は宿命的にオリジナルとの比較を求められるものですが、この作品は、オリジナル版の欠点をうまくカバーした非常によくできたリメイク版といえます。しかも、現在の目で見ても観ても面白い、というのは誠に立派です。こういう作品が本物なのでしょうねえ。DVDですぐに早送りしたくなるのは下の下ですねえ。是非、ご覧ください。

 

2020年3月19日 (木)

或る剣豪の生涯

 2020年は三船敏郎の生誕100年だそうです。そのせいか、最近三船関係の書籍やDVDがかなり発売されています。おかげで「或る剣豪の生涯」が初DVD化されました。この映画はシラノ・ド・ベルジュラックの戯曲を日本の時代劇に翻案した作品で、鼻のでかいブ男の主人公を三船敏郎が大きな獅子鼻を付けて演じています。幼い頃にテレビ放映で見て面白かった記憶があって、もう一度再見したいと前から思っていた作品です。ありがたいことです。

71relpnbrgl_ac_sy445_  さて、場末の上映館の看板のような趣味の悪いDVDの表紙はともかく、久々に観た稲垣時代劇の中では、ほとんど唯一と言っていいほど面白かった作品でした。舞台劇としてよくできています。三船の豪快でコミカルで全力投球の演技も良かったし、見かけだけの二枚目の宝田明、ヒロインの司葉子も美しい。この作品は最後まで早回しもせずに観ることができました。

 三船敏郎、世界のミフネは、私の若いころから、クロサワ映画以外は全然ダメと言われることが多くありました。実際のところは黒澤映画が凄すぎるのでそんな見方をされるのだろうと思っていたので、せっかくだからこの際未見だった黒澤以外の時代劇をDVDで観ることにしました。ほとんどが戦前からの巨匠、稲垣浩の監督作品です。
 この監督はバンツマの「無法松の一生」を自身が三船主演でリメイクした同作品でヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞を取っていますし、その前には「宮本武蔵」の第一部はアカデミー賞外国映画賞(名誉賞)に選ばれています。実際「無法松の一生」はそれなりに立派と思いますが、「宮本武蔵」3部作はどうも面白くありません。アカデミー賞は、多分、異国趣味(サムライ)とミフネ主演のおかげでしょうね、きっと。

71a3dgatil_ac_sy445_  今回観たのは「或る剣豪の生涯」に加えて、「戦国無頼」、「柳生武芸帖」、「柳生武芸帖 双竜秘剣」、「戦国群盗伝」、「大阪城物語」、「暴れ豪右衛門」です。いずれもレンタルは無くてDVDをわざわざ購入しました。タイトルだけを観ると、血湧き肉躍るような内容を期待(実は以前から見たかった作品ばかり)させるのですが、どの作品も今一つ面白くありません。

 邦画の黄金時代に製作された作品のため「七人の侍」レベルの立派なセットで、その規模も大きく、そして、それを惜しげもなく燃やしてしまう、もったいなさです。馬も人も豪勢に動員されています。しかし、残念なことにそれらが全然面白さにつながりません。今観ると、現在のテンポに合わないのか、主人公の行動が意味不明なのか、とにかく映画の世界に入りきれないのです。

 まあ、どれもこれも、男の自分勝手な行動、亭主関白をはじめ年長者のパワハラ、粗暴で行きあたりばったりの主人公達にはなんとも共感はできません。
 三船の役柄も”菊千代”あがりのワンパターンのタイプばかりで、殺陣もアクションも力任せの大雑把なものです。馬は走らすだけ、刀は竹光でのチャンバラです。いくら製作年次を考えても、大映時代劇の格調の高さから比較すると情けないものがあります。思えば大映の職人監督たちの作品をもっと評価すべきです。

81pwhckal  三船生誕100周年記念の出版された「三船敏郎の映画史」によると、稲垣時代劇は、”時として冗長な筋運び、緊張感をそぐ演出に陥ってしまう特性がある”と書かれており、私だけの印象でもないかと少し安心しました(笑)。そういえば「待ち伏せ」も稲垣監督作品でした。納得です。

 それにしても、やっぱり”世界のミフネ”は凄い。数年前から様々な書籍が出版されていますし、外国人によるミフネのドキュメンタリーのDVDも発売されています。いくつか写真でご紹介します。思えば、「或る剣豪の生涯」というのは、三船敏郎の映画人生のタイトルのようですねえ。

 余談ですが、稲垣時代劇では三船と鶴田浩二が2枚看板として扱われており、柳生武芸帖では前後作で主演のタイトル順番(冒頭)が入れ替わっています(笑)。前述の書籍によると、鶴田浩二が三船に強烈なライバル意識を一方的に持っていたとか。東映の人かと思っていました(笑)。41rouqkxg9l_sx352_bo1204203200_71foo7aefbl_ac_sy445_ 51l6yf2jckl_sx359_bo1204203200_やっぱり、”男は黙って☆★ビール”ですよねえ。

2020年3月17日 (火)

ビバ!レオーネ

 昨年の2019年はイタリアの映画監督セルジオ・レオーネの生誕90年に当たるらしい。そのためか「ビバ!レオーネ」というわずか36ページですが、実にわかりやすい作品解説本が出版されています。
51u6zp2qydl_sy361_bo1204203200_  この監督についてはイギリスの批評家による「セルジオ・レオーネ 西部劇神話を撃ったイタリアの悪童」という399頁にもなる分厚い研究書があるのですが、購入したものの内容が2段組みで細かな活字がびっしり詰まった膨大な”論文”ともいえるような作家論であり、結局ほとんど読むこともないまま放置してしまっていたので、この冊子によって、マカロニウエスタンの巨匠としか承知していなかった映画監督の実像を初めて知ったような気がして、個人的には極めてありがたい書物となりました。

 ちなみに、この監督は60歳で急逝し、作品数も少なかったせいか、長い間低評価のままだったようです。まあ、私自身も黒澤明の「用心棒」の盗作である「荒野の用心棒」の監督というイメージがあったので、当初は悪い印象を持っていたのですが、マカロニウエスタンの傑作「続夕陽のガンマン」を観てからは、ご贔屓の監督の一人となっていました。そして、今回、まだ無名だったレオーネ監督がイタリアでの「用心棒」の初公開を観て感激し、友人たちに観ることを勧めたりした挙句に、結局自分で翻案物を作ってしまったというエピソードを読んで、彼の稚気が分かったような気がして最後のわだかまりもなくなりました(笑)。

 51sdb1d8p0l_sx331_bo1204203200_ さて、彼の本国で評価が低い理由はイタリアの映画を作っていない(西部劇はアメリカのお話)ということらしい(笑)のですが、ヨーロッパはともかく西部劇の本場アメリカではスパゲッティウエスタンという目で見られて、公開当時からまったく正当な評価を受けていなかったようです。
 しかも、大スターのヘンリー・フォンダやチャールス・ブロンソンを主演に本場で製作した「ウエスタン」についても、アメリカでは短縮版で公開されて散々な興行成績だったらしい。

 ただ「ウエスタン」をリアルタイムで見た私は、悪漢たちが駅で待っているだけの冒頭のシーンのアップとロングを使い分ける華麗な演出にひたすら感動した覚えがあり、淀川長治さんが悪役のヘンリー・フォンダの悪役ぶりを「ワーロック」を例に絶賛したことを記憶しています。もっとも、日本版も短縮版だったらしいのですが・・・。

 このアメリカでの興行成績の惨敗によって、レオーネ監督は一時引退まで考えたそうです。その後、評価が一変するのは、彼の死後かなり経って、前述の研究書が発表されて以降だそうで、ヨーロッパでの高評価がアメリカに伝播し、いまや押しも押されぬ巨匠になっています。「2001年宇宙の旅」と並び評されるという批評家もいるようですから驚きです。まあ、ヒッチコックへの評価と同じような経緯であり、アメリカのヨーロッパ礼賛の傾向は変わりませんね。もっとも舶来物に弱いのは彼の国だけではないですが(笑)。

 加えて、レオーネ監督のファンを自称するクエンティン・タランチーノ監督の常日頃のアピールの影響もあるとも言われています。ちなみにタランティーノは先般「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」を製作していますが、この作品はご存知のとおり「ウエスタン」の原題「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト」をはじめとワンス・アポン・ア・タイム3部作へのオマージュです。
 このタランティーノ監督の新作のおかげで、不遇だった「ウエスタン」が原題でオリジナルの長尺版が公開され、アメリカでも大好評だったそうです。新作はともかく、さすがタランチーノです。そういえば、スチール版のブルーレイも発売されていますし、多分この冊子もその関連書籍なのでしょう。

 お話を戻しますと、この冊子のおかげでレオーネ監督の生い立ちもわかりました。監督デビューが「ロード島の要塞」という史劇ですが、その前に「ポンペイ最後の日」で急病の監督に代って演出したのが最初だそうです。もともと映画監督の息子に生まれ、イタリア史劇の脚本を書いていた頃にローマのチネチッタ撮影所で、ハリウッド大作「クオ・バディス」や「ベン・ハー」のロケ撮影を手伝っていたそうですから、”ハリウッド仕込み”のノウハウが彼の演出の原点かもしれません。後年のクリント・イーストウッド監督の名演出もレオーネ監督の演出に立ち会っていた経験からといわれるのも同じことかも知れませんねえ。

510vtdxgvol_ac_ul320_ml3_  ところで、これもこの冊子で知ったのですが、「サッドヒルを堀り返せ」というドキュメンタリー映画(2017年)があります。この作品は、「続夕陽のガンマン」のロケ地であるスペイン北部のゴルゴスにあるミランディージャ渓谷の周辺住民の活動を記録したものです。といえばおわかりのとおり、同作品の地元ファン達が1966年の撮影以来忘れられ埋もれていた、ラストの舞台である円形のサッドヒル墓地を発掘する記録なのです。早速、動画配信レンタル(550円)で見てみると、2015年に地元のファンが場所を発見し、50周年イベントに向けて20cmも土に埋もれた墓地を50年ぶりに発掘する感動作になっています。

 いい年のおっさん達が懸命に活動します。そして地元の呼びかけに応じてヨーロッパ中からファンが訪れ、ボランティアで聖地を掘りだす姿は同じファンとして感動します。また、墓標の製作費のために墓を売り出すアイディアも感心しました。それにしても、あの墓地が撮影のために作られたセットだったとは正直信じられませんでした。このDVDの説明によるとロケ隊と契約したスペイン政府が軍隊を貸し出したそうです。当時の兵士たちのインタビューも入っています。

 そして、50周年のイベントは、当時の編集者をイタリアから招いて、墓地での演奏会と即興劇と上映会です。ファンが4000人が集まり、上映会の冒頭にはエンリオ・モリコーネとヘビィメタル・バンドの「メタリカ」のビデオメッセージで大いに盛り上がりますが、しかし、サプライズで、クリント・イーストウッドのビデオメッセージが出た時には、スタッフが茫然自失。何も聞かされていなかったリーダーは泣いていましたよ。同じ映画ファンとしては、彼らには本当に敬意を表します。未見の方は是非ご覧ください。

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<追記>

 ロックバンドの「メタリカ」は、毎回自分たちのコンサートのオープニングに、エンリオ・モリコーネの作曲の「続夕陽のガンマン」のメインテーマ曲を使うというコアなファンだそうです。
 このテーマ曲は、映画の最後の決闘シーンで使われているのですが、実は完成済みの曲に合わせて、レオーネが演出したといいますから、やはり非凡な映画です。
 しかも、当時マカロニウェスタンの象徴であったモリコーネの映画音楽は、いまや本場を抜いて西部劇のサウンドトラックで人気第一位になっているそうです。思えば、この作曲家も無名時代に「荒野の用心棒」でセルジオ・レオーネ(同級生)と出会ってその才能を世界に示したのですから、縁とは本当に不思議なものです。いやあ、映画って本当に面白いですねえ。

2020年3月15日 (日)

アイアンスタジオ

 最近、映画ファンで映画グッズ収集癖のある私にとって実に気になるフィギアメーカーがあります。
 「アイアンスタジオ」というブラジルの新興メーカーらしいのですが、お気に入りの映画「ジュラシックパーク」関係のフィギュアを矢継ぎ早に発売しているのです。

 いままでに発売された商品は、第1作に登場する「ティラノサウルス」をはじめ、悪役「ヴェロキラプトル」、映画冒頭の「ブラキオサウルス」まで一挙にラインナップされています。しかも、恐竜だけでなく登場人物やパークのロゴのあるジープのフィギュアまであるのです。品質も老舗のサイドショウの水準を上回るような出来栄えです。ただ、残念なのは、サイズがかなり大きく、しかも販売価格が一桁違うぐらいの高額なのです。一般庶民、特に私には全く手が届かないレベルです。そのため販売店でも予約するには内金が必要となっていますから驚きです。まあ、店からすれば、あの値段で勝手にキャンセルされれば商売は成り立ちませんねえ(笑)。

 というような状況で、サイドショウの一部の高級作品と同様に、私には縁なき衆生の物と諦めていたのですが、実は、比較的リーズナブルな値段の小さなサイズの商品がぼつぼつ発売されています。
 本日は、その商品をご紹介したいと思いますが、この商品は、映画の中の有名な厨房でのラプトル襲撃シーンを再現したものです。本来は襲われる子供や料理台・厨房器具まで揃ったジオラマのセットになっている商品で、予算的な面から別売されていたラプトル2体を単品で購入したものなのです。セット物の中の単品ですからサイズが小さくなっているものの、そのクオリティは見事なものです。正直、これまでの模型の水準をワンランク上げたような気さえしますが、それこそ、高額な商品の出来はいかばかりか、想像できません。是非ご覧ください。

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 先ほど述べたように、本来はこの2体のラプトルが厨房台の上と向こう側に立って、その間に、子どもが座り込んでいるという映画の名シーンのジオラマです。
 商品写真で見る限り、子どもの造型も良くできています。本当にここでは紹介できなかった他の高額商品、特に、当時世界に衝撃を与えた巨大なブラキオサウルスの実物を観たいものです。

 しかし、昨今のフィギア業界には、映画ファンにとって、さらなる恐怖、いや驚きが存在しています。
 名作映画の登場人物を作品の扮装でリアルにフィギュア化しているメーカーがあるのです。これまでに発売された商品には「ゴッドファーザー」のマーロン・ブランドや「ドラゴン」のブルース・リー、「羊たちの沈黙」のアンソニー・ホプキンスなどがあります。商品写真でみる限り、1/4のサイズの人形にもかかわらず、本人とも見まがうばかりの造型の出来は凄まじいクオリティがあります。もちろん値段も高額ですのでおいそれと私の手が届くものではありませんし、第一、さすがの私も”人食いレクター”を飾りたいとも思いません(笑)。
 ところが、今年(私の知った時期)このメーカーがある商品の発売を発表したため、ついに禁断の世界に入ることになりそうです。怖いなあ。まあ、”これはまた別のお話で”ということで、ブログはこうご期待ください。

 

 

2020年3月10日 (火)

くたばれ!ヤンキース

 このところ映画館に全く出かけていません。新型コロナウィルスへの対応という面もありますが、実のところ、どうしても観たい作品がないのです。「バッド・ボーイズ」、「野生の呼び声」「1917 命をかけた伝令」などいろいろ公開されていますが、今一つ食指が動きません。
 やっぱり、こういうときは、自宅で楽しめる(筈の)クラシック映画が一番です。

31gfaqtvz7l  ということで、野球映画では未見だった1958年製作の「くたばれ!ヤンキース」のDVDを購入してみました。タイトルも含めて有名な作品ですが、あらすじは中年の野球ファンが弱小の贔屓のチームを優勝させるために悪魔と契約し、若返って選手として活躍するという、いわばゲーテの「ファウスト」のコメディ版です。
 このテーマはラクウェル・ウェルチがサキュバスに扮した1967年の「悪いことしましョ!」(2000年にもリメイク)などのように欧米ではよく使われますが、この作品のミソは、妻をほっぽらかして野球に熱中する亭主族への揶揄をはじめ、一時期のアンチ巨人ファンのような常勝チームであるヤンキースへの”反発?”あるいは”敬意”でしょうか。なにしろ、タイトルに反して作品中には、対戦試合のほかほとんどヤンキースのお話は出て来ないのです。当時のアメリカでの絶対王者ヤンキースの人気を象徴しているようです。

 お話は、結局、悪魔に一杯食わせた親父の勝ちになり、もとの幸せな家庭にもどってめでたし、めでたしとなる、歌って踊っての楽しいブロードウェイ・ミュージカルなのですが、登場人物達が悪魔役の”ブラボー火星人”しか知りませんし、誘惑するサキュバス役も舞台で演じた俳優さんのようで、歌と踊りが凄いもののまったく盛り上がりません(笑)。

 というか、今回、初見と思っていましたら、この映画、私は観たことがあったのです。冒頭いきなり、亭主のテレビに熱中する場面で思い出しました。いやあ、こんなことでは、加齢によるボケがはじまったのか(笑)と、心配になりますねえ。困ったものです。

 余談ですが、映画の中で日本人の亭主がちゃぶ台の前でテレビの野球中継に熱中しているシーン(変な恰好の日本人ですが・・)を発見しました。当時のアメリカでの東洋人とは、まだ韓国や中国ではなかったのです(笑)。・・・それだけのことです。  

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