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2019年11月26日 (火)

ブライトバーン/恐怖の拡散者

 「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズの監督ジェームズ・ガンが製作したという鳴り物入りのホラー映画「ブライトバーン」は、なんとも奇妙な作品でした。

_new_20191126181701  お話は、アメリカの代表的なヒーロー、スーパーマンが実は悪人だったらどうなるのか、というアイディアを映画化したものです。カンザス州の”ブライトバーン”(架空の地名らしい)という田舎町に小型宇宙船が落下し、近くで農場を営む子どものいなかった夫婦が宇宙船の中に入っていた赤ん坊を育てているという、まさにスーパーマン誕生物語なのですが、思春期を迎えた少年は、何を考えているのかわからない根暗な性格となり、人間とのコミュニケーション力が欠如(エイリアンだから当然?)している上、感情のコントロールできない怪物となって目覚めた超能力で周囲の人間を次々と殺戮していくという展開なのです。

 この少年のこわさは、超能力が無ければ、いまや本当にあちこちに存在していそうな”近所に棲む変質者”なのです。部屋に籠もって、悪夢のサインを描いたり、解剖写真を収集するなどの描写は、絵空事とは思えない程リアルな恐怖があります。まあ、ホラー演出自体は、昔ながらのびっくり音響と思わせぶりカメラですが、弾丸を跳ね返す強靭な肉体、物体を浮かす念動力、目からの熱線などの描写は、CGを駆使した見ごたえのあるモノです。特に、ほとんど一瞬で移動する映像やマントを翻して空中に浮かぶ姿は見事です。是非、あの技術で往年の名作SF漫画「8マン」を実写化してほしいものです。

 しかし残念だったのは、殺す対象者が因縁のある同級生の母親や親族などの身近な普通の人々です。与えられた凄い超能力の設定から言えば、なんともつまらぬ相手です。牛刀割鶏の極みです。それを一人ひとりネチネチと変質者らしくいたぶり殺すのです。こうなるとホラーとしても演出の意図が不愉快ですネ。

 ただ、この作品で、アメリカ人を凄いと感じたのは、普通のウエイトレスのおばさんでした。目玉に刺さったガラス片を自分で抜きながら戦おうとする姿勢や猟銃を渡してハンティングを教えようとする男親の姿など、ああ、西部開拓民の子孫だなあと感心しますし、自分の命は自分で守るという”強くハードな社会”に住んでいるのだと改めて教えられました。学校で対立する親たちの激しいディベートぶりも驚きです。のんびりと安全安心の国に住む日本人なら絶対できないですよねえ。グロテスクで悪趣味な人体破壊映像より、この辺が一番怖かった気がします。
 一方、母親の子供に対する溺愛振りはどこも同じですかねえ。愚かしいというよりこれも考えようによっては怖いお話です(笑)。

 それにしても、悪の異星人ならもっとバーンと派手に暴れてほしいものでした。欲求不満になりました(笑)。まあ、それは、これからのお楽しみという風に「オーメン」のように続編を作る気満々のラストですが、本当に肩透かしの作品でした。アメリカでも興行成績は芳しくないようですので、アレのその後の物語は日の目を見るのでしょうかね。あんまり期待できません。無料パスポートで良かった(笑)。

2019年11月20日 (水)

記憶にございません!

 三谷幸喜の新作喜劇「記憶にございません!」を上映期間終了間際に観て来ました。もともとは三谷喜劇は「古畑任三郎」や「王様のレストラン」などテレビシリーズは大好きだったのに、「総理と呼ばないで」という政治風刺喜劇がちっとも面白くなかった、という印象なので、劇場に行くのをためらっていたのです。実は、今回TOHOの特典1カ月無料パスポートを取得したため、足を運んだ次第でした(笑)。

_new_20191120152501  それにしても、記憶をなくした”最悪”首相が心を入れ替えて日本の政治の立て直しに取り組むというプロットを三谷幸喜監督がどう料理したのか、が見所ですが、なにしろ「総理と呼ばないで」のように邦画で政治テーマの喜劇は難しいのです。
 まず、官邸などのセットがリアルじゃない(笑)。テレビドラマとは違うと言ってもやはりチャチですよねえ。わざわざ、登場人物に大工を登場させて「合板?」などど”楽屋落ち”を仕掛けてもやっぱり笑えません。
 そもそも政治を題材にしたお気楽喜劇は、現在のリアルな我が国の政治が救いようもない喜劇(悲劇)と言えるだけに、なんとも笑う気がしません。やるなら山本薩夫監督の「金環蝕」ぐらい徹底しないとイケマセン。あれは堂々たる政治風刺喜劇でした。

 さて、今回の映画は、結局、往年のハリウッド作品「スミス、都へ行く」の焼き直しの様な気がします。記憶をなくした政治家というのは、まさしく同映画の新人政治家の主人公であり、その良心に基づく政治への希望の物語なのです。同じく正義感の強い秘書として小池栄子も居ます。嗚呼、三谷監督はフランク・キャプラをやりたかったんだ、というのは言い過ぎでしょうか。

 なにしろ、登場人物はみんな善人です。あくらつな賄賂や不倫をしていても結局みな改心するのですから、ほのぼのしたものです。官房長もアロハ着て辞めましたからねえ(笑)。・・・・平和なものです。

 喜劇としてみても、なんとも出演者の豪華なホームドラマの域であり、劇自体は面白くはないのですが、笑えたのは国会中継の妻への告白ぐらいですか。でも、少し今の世の中や政治家の在り様を考えると、あんな国家機密やアメリカの大統領はまったくナンセンスですねえ。三谷監督が本当にアメリカ文化が好きなんだということは分かりますが、現在の厳しい世界情勢との落差が大き過ぎてシラケます。やっぱり笑えません。

 最後に、エンドロールを見て山口崇に驚きました。どこに出ていたのか、”記憶にございません”でした。いやはやなんともお粗末なことでした。

2019年11月16日 (土)

IT/THE END ”それ”が見えたら終わり。

 お約束のホラー映画「IT/THE END ”それ”が見えたら、終わり。」を観て来ました。前作は素晴らしい出来でしたが、原作小説を知っているだけに、あのラストに登場するモンスターをどう処理するのかが、一番の大きな興味でした。なにしろ文章で読んでも、なんとも陳腐な奴だっただけに、まさしく監督の手腕が問われるところです。前回の映画版では情けない姿だったような・・・。

_new_20191116095601  さて、それはともかく、映画は、予想に反して、27年後の大人たちのお話だけではなく、彼らが忘れていた少年の頃のエピソードと交互に描かれています。これはなかなか上手い方法です。観客には前作の記憶を、登場人物たちには少年の頃の恐怖をよみがえらせます。”一粒でおいしさ倍増”というシナリオです。

 しかし、子役と似ている俳優をよく集めたものです。邦画と違ってほとんど違和感がありません。特に主演は”今が旬”といってもよいほど出演作品の多いジェームス・マカヴォイですから感心します。本当にキャスティングが凄いですねえ。まあ、太っちょが少しカッコよくなりすぎですが・・・。

 それにしても、劇中の紅一点の”ベヴァリー”は本当に家庭に恵まれませんねえ。アメリカの旦那というはベルトで妻や子を叩くというのが定番なのですねえ。”怖い”のはこの辺でした(笑)。というのも、今作は、ホラー映画と言うよりはモンスター映画というのがよく似合っています。

 まあ、ピエロ姿のペニーワイズの不気味で静かな恐怖は前作で描きつくしましたので、今回は、あっと驚く変身姿を見せようということでしょう。とにかく、気持ちの悪い小動物から始まって、巨大な婆々や動く銅像、そして「遊星からの物体X」の”スパイダーヘッド”並の頭部を皮切りに、原作のモンスターにリスペクトした蟹やら蜘蛛との合体ピエロがダイナミックに襲い掛かります。もう完全なモンスター・アクション映画です。前半に提示された先住民の謎の儀式も何の意味もなく、ひたすらピエロ・モンスターとの肉弾戦(?)です。結局、モンスターの正体はよくわからない”光”でしたが、原作のままの映像化ではなかったので、私としては、ペニーワイズの手品のような変形姿との戦いを十分堪能しました。

 ちなみに、映画の中で、小説家となった”ビル”がその作品のラストをいつもファンから批判されているエピソードは、原作者のスティーブン・キング自身の小説のような楽屋落ちという気もして面白かったなあ。キング自身がゲスト出演して苦情を言っているのも笑えます。

 そういえば、あのスタンリー・キューブリックのホラー傑作映画「シャイニング」をクソみそに批判したキングですが、なにしろ、超能力に興味のないキューブックとキングとはその主題が違うのですから、それは作り方が全く違って当然です。そして、その続編も近々公開されるようですし、原作と映画は本来違うのですから、この続編のラストも含めて、”良いぢゃない”でしょうか。

 最後に苦言をひとつ。何故、この映画の日本向けタイトルがこんなに長いのですか?「IT/イット 第2章」でいいじゃないか。表紙を掲載したパンフレットをご覧ください。原題は実にシンプルでいい。ちなみに、最近、若者向けのライトノベルのタイトルには、何行にもなるような馬鹿げたものもあるのですが、その理由はなんなのでしょうねえ。とてもクールと思えないのですが、誰か知っている方教えてください。

2019年11月14日 (木)

本当に怖い映画

 スティ―ブン・キング原作の映画「IT/イット THE END〝それ〟が見えたら終わり」の封切りに併せてか、カドカワムックから「本当に怖い映画100本」という特集雑誌が出版されています。内容は、映画雑誌の読者アンケートを集計して、第1位から第100位までの作品を紹介したものです。実は、5年前にも同じ雑誌を発売しており、今回がその第2弾になります。前回の集計結果とはかなり順位の変動があるようです。

51mhm7teqbl_sx352_bo1204203200_  ちなみに、第1位が「リング」で、第2位「エクソシスト」、第3位「シャイニング」、第4位「チャイルドプレイ」、第5位「ヘレディタリー/継承」、第6位「エイリアン」、第7位「ジョーズ」、第8位「悪魔のいけにえ」、第9位「呪怨 劇場版」、第10位「ソウ」となっており、以下、第100位までの〝怖い〟映画が網羅されています。

 ただ〝怖い〟映画というと、私なんかすぐにホラー映画、昔風に言うと怪奇映画、つまり怪物や幽霊、悪魔などの架空の化け物の物語だと思っているのですが、100本の作品を眺めると、実に様々なジャンルがあります。「エイリアン」や「ジョーズ」がホラー映画?その定義さえよくわからなくなりますが、今回は、小難しいジャンル別ではなくて、観客が怖いと思った映画のアンケート結果です。

 さて、前置きはさておき、第10位までの作品の中で見たことがなかったのは、第5位「ヘレディタリー/継承」と第10位「ソウ」なのですが、「ソウ」は、私が生理的に受け付けない拷問映画ですので、これはパスです。時代劇でスパッと斬るのは平気ですが、じわじわと〝痛い〟映画は大嫌いなのです。こんなのは邪道(観ることができないのでゴメンなさい。)です。ついでに言うと、スプラッターはもっと嫌いです。映像で切り株を露骨に見せるはやめてください。悪趣味の極みです。演出の腕を競ってください。
 さらに付け加えて言うと、第8位の「悪魔のいけにえ」は断じてスプラッタ―映画ではありません。私が劇場で恐怖に体が椅子に固まった記念すべき映画です。本当に怖かったのですが、驚くほど血とか肉体の破片は画面に映りません。トビー・フーパ―監督のデビュー作で最高作となった一世一代の名演出なのです。しかも、この作品は私のDVDコレクションの中に入っていません。保有するのも怖い(笑)ほどのトラウマになっています。あのざらざらした画面が嫌なのです。

 で、第5位の「ヘレディタリー」なのですが、早速レンタルして、居間で鑑賞することにしました。内容は、ホラー映画の王道の”悪魔崇拝”の物語でした。この映画はカナダ人の監督のデビュー作ということらしいですが、なかなか演出の雰囲気がいいですねえ。あの妹の惨劇は驚きましたし、結末に至るまでの展開はまったく予想がつきませんでしたが、やっぱり日本人なのでしょう、悪魔とか言われてもなんか今一つ生理的にピンとこないのです。恐ろしさがよくわかりません。実は第2位の「エクソシスト」も世評のほどには、怖くないのです。

Photo_20191114203901 とにかく、私的には第1位が「悪魔のいけにえ」そして、第2位以降は、Jホラー「リング」であり、「呪怨」ですねえ。やっぱり、日本人のDNAがそうさせるのでしょう。そういえば、中川信夫監督の名作「東海道四谷怪談」のブルーレイを購入しました。さすがに古典すぎて、当時の恐怖が薄れていました。ちなみに、今回は第24位にランキングされています。

81qfl82qdul_sy445_  一方、最近買ったブルーレイの「シャイニング」は、スチールブック製のアチラの製品のせいか、美しい映像も素晴らしく、見ごたえがありました。スピルバーグ監督の「レディ・プレイヤ―1」のおかげで第3位になった気もします。 

 さあ、いよいよ、これで、「IT/イット」の続編を見にいく決心を固めました。前作は本当に傑作でしたので、続編の出来はどうか、それも怖いですねええ。チャン、チャン。

2019年11月13日 (水)

ジェミニマン

 ウィル・スミス主演の「ジェミニマン」は、最近めずらしいシンプルさだけが目立つアクション映画でした。
 物語は、72人も暗殺した政府の凄腕エージェントが引退を申し出たところ、謎の殺し屋に狙われ、その殺し屋が実は彼のクローンだったというものです。

Photo_20191113141201  本当に単純なストーリーであり、上層部の裏切りもその後の展開も、何のヒネリも驚きの仕掛けも全くありません。
 ひたすら、ウィル・スミス扮するエージェントの絵に描いたような凄腕ぶりや互角の殺し屋同士のアクロバット的な格闘を描き、ヒロイン的な女優さんも一応登場しますが、全く添え物的な扱いであり、あくまで老若の二人のウィル・スミスをご覧くださいという作品でした。いや、驚きました。

 しいて見どころを挙げるとすると、今時珍しい昔ながらの”何も考えていない”アクション娯楽映画であり、クローンの若いウィル・スミスの映像技術が凄い(パンフレットによると新技術?)らしいということと、こどもも楽しめる残酷さを感じさせない殺し合い、特に、暗殺部隊の重機関銃による銃弾の雨あられシーンが楽しかったぐらいか、という気がします。
 なにしろ話がぬるくて、結構、簡単に味方の友人が殺されたのに、クライブ・オーウェン扮する諸悪の根源以外の、彼に手を貸した政府機関の上層部の連中には何の御咎めもなく、また、クローンの青年ものんきに大学生活を送る結末などは、本当にいろいろな意味であきれるほどの無神経さと能天気な作品でした。

2019年11月 9日 (土)

ターミネーター/ニュー・フェイト

 ご存知SF映画の金字塔シリーズ「ターミネーター」の最新作「ターミネーター/ニュー・フェイト」を封切日に観て来ました。もちろん生みの親のジェームズ・キャメロン監督に敬意を表してです。今回は監督をしていないのですが、第3作から5作目までの3作品とは異なり、自ら製作に主導的にかかわった作品だそうですから、いやがおうにも期待が高まっていました。

_new_20191109115301  ちなみに、この作品は第1作と並んでシリーズ最高傑作ともいえる第2作の正式な続編というふれ込みです。そして、サラ・コナーを演じるリンダ・ハミルトンが28年ぶりに再登場するのです。開幕のタイトルを見て驚きました。アーノルド・シュワルツネッガーより上に名前があるのです。確かに、キャメロン監督の本家シリーズでは、サラ・コナーという一人の女性の成長物語と言えなくもありません。

 第1作ではなにも知らなかった普通のウエイトレスが殺人機械に襲われ、恋をして、戦い、逞しくなります。第2作では、子供を守るために戦士になって、世界が滅亡する未来までも変えてしまう程強くなります。精神病院に入れられ、狂気の中で鍛え上げた姿は、もう女ターミネーターでしたねえ。
 その後の第3作以降は、終末到来版やその後の未来版、そして多次元世界版と手を変え品を変えての作品群でした。私としては結構好きなのですが、世評はあまり芳しいものではありませんでした。それに業を煮やしたのか、今回の本家バージョンの復活です。

 さて、物語は、いま流行りのメキシコから始まります。今回も未来から二人がタイムトラベルして来ます。一人は大変逞しい体つきの女戦闘員、そしてもう一人がスパニッシュ系の容姿を持つターミネーターです。
 いきなりメキシコ人の若い女性を巡っての凄まじいアクロバット的な格闘が展開されます。工場を破壊し、逃れ出た高速道路では”お約束の”大型ブルドーザーによる車の大量破壊シーンです。とにかく戦闘アクションは舞台も派手で、メキシコからアメリカへの密入国収容所、殺人無人ドローンの攻撃、大型軍用貨物航空機での空中戦、最後は巨大ダムの水中戦とサービス満点のてんこ盛りです。

 ただ、全編面白いのは間違いないのですが、どこか頭の片隅でよく考えられているなあと感心する醒めた目があって、第1作や第2作のような心の底から痺れるような感動まではありませんでした。まあ、それはキャメロン監督作品ではないのですから、求める方が贅沢と言うもんでしょうかねえ。期待が過ぎているのです(笑)。

 ついでにいうと、今回は、ストーリーにも早い時期にあっと驚く展開があって、アーノルド・シュワルツネッガー扮する年老いたターミネーターの存在に至るのですが、ここは少しタイムトラベルの矛盾を感じるものの、よく考えついたものと感心します。
 また、新型ター三ネーターの性能として第1作と第2作を合体させたアイディアは秀逸です。光線銃などの飛び道具を持たすよりずっと面白さ倍増です。ガードする女戦闘員も人間の強化サイボーグという設定(性別を超越したような体型も素晴らしい!!)も複数の格闘アクションには必須でしょう。さらに、AIや性別問題、移民問題まで塗しているのは、本当によく練れた脚本だと思います。

 最後に、結論としては、SFアクション映画としては基準以上のかなり面白い作品とは思いますが、「ターミネーター」である以上やっぱりキャメロン監督本人に監督してほしかったと思うのは私だけでしょうか?正直、現在撮影中という3Dの「アバター」の続編より、こっちに力を入れてほしかったなあ。それがやはり悔しいですねえ。まあ、無いものねだりでした(笑)。 

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