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2019年10月30日 (水)

マレフィセント2

 大ヒットした作品でも、そうそう柳の下に二匹のドジョウはいないでしょう。映画「マレフィセント2」はその格言どおりの作品となりました。第1作目は、アニメ「眠れる森の美女」のヴィランである恐ろしい魔女を主役にした、ユニークな視点の物語でしたが、その続編となると、やっぱり二番煎じになります。なかなかジェームス・キャメロン監督の「エイリアン2」のようにはイケません。まあ、彼の人も続編はよく作りますし、監督作品ではないですが、製作を担った期待の次の作品はいかがでしょうねえ、やっぱり心配になります。

_new_20191030102801  お話をもとに戻して、今回は、隣国の王子との結婚話です。今時のお伽話は、王子様と結婚してもなかなか幸せになりません。おっと、この続編は、結婚式までのお話でした。先取りはイケませんねえ。

 それにしても、王子の母親役をミッシュル・ファイファーが演じるですから、もう筋書きは見え見えです。さすが、往年のキャット・ウーマンです。オーロラ姫への策略・陰謀と妖精国への侵略戦争など、観客の予想どおりの展開となります。そして、ディズニーらしく、いまアメリカの大きな課題である人種問題の平和的解決をテーマに掲げています。

 しかし、残念ながら、前作に引き続き登場する妖精たちも、なんとも陳腐化した映像の連続で、この手の作品に不可欠な”センス・オブ・ワンダー”感が全く感じられません。続編だからこそ、観客の予想を上回る演出の創意工夫が必要なのです。それどころか、話もどこかつじつまが合っていません。
 第一、今回は、妖精の国の女王であるアンジョリー・ジョリーが弱すぎます。一発の鉄の弾丸で死の淵に追いやられるのですが、もう少し彼女の強い力を描かないとお話が全く面白くありません。最後に”見せ場”がありますが遅きに失しています。

 新登場の彼女の仲間の翼のある種族も見掛け倒しですし、全体になんとも妖精たちの魅力が文字通り二番茶の出がらしのようになっています。妖精の姿自体、もうひと昔のアメリカ漫画の絵のようですから、なんとも感情移入できません。まあ、見所としては、悪の女王の小姓?いや私設秘書みたいな小娘の悪行ぶりが新鮮(笑)でしたし、敵役のミッシェル・ファイファーの”妖精たち”への悪逆非道ぶりが強烈です。有色人種を人間とは考えていない白人種の持つ差別意識を誇張して演じているのでしょうが、笑えなくて実に怖いです。

 それにしても、王子との結婚は、あんな悪らつな母親の息子でも大丈夫でしょうかねえ。父親の王様が良い人だったから救われるのでしょうけど、欧米人はきちんと割り切るのですねえ。この辺はさすがです。素晴らしい。
 しかし、人体(妖精)実験を繰り返し、殺りく兵器を開発した裏切り者の妖精科学者が”呪いのアイテム”を証拠提出しただけで無罪放免になるのはおおいに問題です。司法取引かと、なんか釈然としないまま、王子様とのハッピーな結婚式を迎えてジ・エンドです。少しは多数の犠牲者を追悼してほしいものです。当然、パンフレットは購入しませんでした。おしまい。

2019年10月16日 (水)

映画版「蜜蜂と遠雷」

 以前、このブログでも取り上げました恩田陸の傑作「蜜蜂と遠雷」を映画化した作品を観て来ました。宣伝文句は「”映画化不可能といわれた小説”の実写化」というものでしたが、まさに、その”通説”を見事に証明してみせた作品となっています。

 本当に残念な出来です。
 主演の若手の俳優達はそれなりに原作のイメージで頑張っていますが、原作を無理に簡略化した筋書きと音楽界の重鎮たちのキャスティングがなんとも違和感があります。
 しかし、この映画の致命的な欠陥は、原作小説の肝である、3人の神童の天才ぶりを少しも描いていないことです。単なる天然少年の登場、挫折した少女の復活、優等生の活躍という平凡なピアノコンクールの物語になっています。しかも、何故か、原作では脇役である青年を松坂桃李くんが演じ、”日常生活の中の音楽”のウェイトが高くなっています。まさか俳優の名で観客を呼ぼうとしてこんな改変をしたのじゃないですよねえ。

 原作のファンが見たいのは、そんな”普通の人”達のお話ではなく、文章で描かれた天才ぶりを、月まで飛ぶ恍惚感を、壇上の草原の輝きを映像で楽しみたかったのです。この監督さんは、その天才をきちんと描こうという気が全くないようでした。ただ原作のクラシック音楽を流せばよいというもので、監督がインタビューで豪語していた”五線符”の演出などはまったく感じられませんでした。音楽自体に凝ったのかもしれませんが、ここはやはり演出で審査員や観客の驚きや喜びをち密にきちんと描くべきでしょう。しかも、まさかと思っていた”黒い馬”が登場する映像は安易で陳腐の極まりです。全く幻滅ですねえ。

 加えて言えば、厳しい競争の場であるピアノコンクールも、主役の4人以外のコンテスト出場者の演奏はほとんどカットです。これではコンクールの非情さや熱気はまったく伝わりません。しかも、意味不明なインタビュー場面や4人の海辺のシーンは、ただつじつま合わせの安上がり映画という感想しかありません。

 ああ、やっぱり、贔屓の小説の映画化作品などは見に行くべきではなかったのだ!!原作ファンにはなんとも悲しい作品になりました。

2019年10月15日 (火)

アド・アストラ

 ブラッド・ピット主演の映画「アド・アストラ」は、レビューの評価がやたら低いのですが、SF映画ファンとしては見に行かざるを得ません。今回は、いつも以上に雑音を排し、純粋に映画を楽しむために内容についての事前情報を完全にシャットアウトして観て来ました。

_new_20191015150501  そのため、”宇宙の彼方”の行き先や展開がわからなかったこともありますが、冒頭からドキュメンタリーのような宇宙空間、月や宇宙ステーションなどの素晴らしい映像に支えられてか、目的不明のミッションに対する主人公の行動を追っていくだけで、スリルとサスペンスが勝手に盛り上がりました。とにかく何も起こらないのにハラハラ、ドキドキの連続です(笑)。

 最近のこういった近未来の宇宙旅行などのハリウッドの映像は、あの傑作「ゼロ・グラビティ」を経て、ますます磨きがかかっています。もう本物としか、いや、特殊撮影などという意識さえなくなるほど自然です。パンフレットによれば、撮影カメラマンはその「ゼロ・グラビティ」の担当ということですから、まあ、当然の結果かもしれません。

 ストーリー的に言えば、幕が下りてしまえば、なんということのないお話なのですが、演出だけで楽しむことができました。月や火星、いやまさしく宇宙の果てに行って来たような気にさえなります。これはやっぱり演出を褒めるべきでしょうねえ。大したものです。

 トミー・リー・ジョーンズに絡む厄災の謎解きはやや物足りませんが、世界各国が開発競争中の月面が無法地帯で西部劇のようになっているという近未来の設定は面白いですねえ。そして、エリートの筈の宇宙飛行士も、月への定期便のある時代では、もはや現在の航空会社の雇われパイロット並みというのも笑えます。当たり前か?
 しかし、科学的な考証の正確性はともかく、本物らしいセットや宇宙空間での大胆な行動にはやっぱり感動します。あの宇宙空間に浮かぶ地球の美しい姿を見ただけで満足ですし、たまには、エイリアンが登場しない硬派なSF映画も良いものです。私は、この映画を大いに評価したいと思います。

 

 

2019年10月14日 (月)

ヘルボーイ2019

 かつてギレルモ・デル・トロ監督が映画化した「ヘルボーイ」2作に敬意を表して、アメコミ「ヘルボーイ」の最新作の実写版を観に行きました。主演も監督も過去の2作とは違っています。ギレルモ作品の主演俳優さんは、赤く塗ったままでヘルボーイと呼ばれた適役でしたが、今回の役者さんはかなりメイクで作って頑張っています。演じたのはネットフレックスの人気SFTV番組「ストレンジャー・シングス」の保安官役というから驚きです。でも、やっぱり、どっか貧相で薄汚いですねえ。ここでまず若干マイナス(笑)です。

_new_20191014123701  そのほかの出演者は、「ジョン・ウィック」でお会いしたばかりの殺し屋ホテルの支配人がヘルボーイの育ての親役です。韓国人の傲慢な特殊部隊の隊長役は、どっかで見たと思ったら、アメリカTV番組で人気だった「LOST」の登場人物でした。結構、ハリウッドには韓国勢が進出していますねえ。でも、この二人の登場人物は±でイーブン(笑)です。

 そして、ご期待の魔女ブラッド・クイーン役のミラ・ジョヴォヴィッチなのですが、これがどうも期待はずれでした。なにしろ、首や手足をバラバラにされ、箱詰めにされても1500年も生きている悪の女王なのです。適役じゃあないですか。でも、ダメでしたねえ。全裸の筈なのに何のサービス・ショットもありません(笑)。薄汚れたままで、少しも悪の魅力も美しさも感じません。しかも、復活しても全然大したことはしないのです。これではいけません。あの逆さ歩きババア魔女バーバ・ヤーガの方がキモチ悪いですが、まだ、見せ場があります。ミラにはホントに残念でした。ここも大きく減点です。

 唯一感心したのが、霊能少女の降霊術です。これは、かなり気持ち悪いですが、霊魂のエクトプラズムのイメージを一新したアイディアです。
 ただ、新生第1作目なのに、登場人物や組織の説明が断片的でおざなりで、アメコミに詳しくない観客にはよくわかりません。エンドロールの合間に登場する常連のことも意味不明です。しかも、3回も小出しするとはルール違反です。ナイトショーだったので、2回の後途中で退席してしまったぞ。許せないなあ(笑)。

 それにしても、この映画は、多分、結構な予算がかかっていると思うのですが、どうもお話がせこくて、見せ場も”狭く”て貧乏くさいオーラが蔓延しています。そして、その分をカバーするかのように、グロテスクで醜悪なシーンが多すぎます。冒頭の3巨人との戦いなどはまだ斬新なショットで面白いのですが、巨人たちの食事シーンをはじめ、子どもを食う魔女の隠れ家での貯蔵庫や食卓風景、獣人の襲撃による死体の有様、さらには、ラストの地獄から来た怪物たちによる人体破壊シーンは、西洋の拷問絵を再現するようなリアルな映像です。この映画を作った監督や製作陣は、一体何を考えているのでしょう。全く不思議です。第一、原作がアメコミで小・中学生向けの映画でしょうに、R15+指定などはふつう考えられませんぞ。許容範囲を超えています。絶対当たらないような気がします。どうも、全米の興行では大惨敗の模様です。・・・当たり前か(笑)。

 加えて物語が酷すぎます。英国のお伽話なのでしょうが、現代に、ジャックと豆の木の巨人、アーサー王伝説のマーリンなどが生きて登場するのですから、かつて「トランスフォーマー」シリーズの逸話でも驚いた経験がありましたが、やっぱりあ然とするしかありません。しかも、英国の騎士の伝統による巨人始末のための秘密組織の存在など、この辺の設定は日本人にはもう完全にお手上げです。いかに欧米人がこの類の伝説が好きかを改めて感じました。

 ちなみに、この映画の監督は、ニール・マーシャルという人で、かつてホラー映画「ディセント(洞窟食人族)」や「ドッグソルジャー(狼男)」などのSF・ホラーB級映画を作り、今や、これも架空の中世を描いたTV映画シリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」で名を為した人だそうです。まあ、どうでもいいことですが、今回は、本当に残念な結果になりました。

2019年10月 9日 (水)

ジョン・ウィック:パラベラム

 キアヌ・リーブス主演のシリーズ「ジョン・ウィック」の第3弾は、アメリカで「アベンジャーズ/エンドゲーム」の首位の座を奪い大ヒットしたと聞いていましたが、噂にたがわずノンストップ・”マラソン”・アクション・ム―ビーでした。

_new_20191009195401 幕開けは、組織の掟を破り、1時間後に殺し屋から命を狙われることになるという前作の衝撃的な幕切れ、その直後からのそのままの続きなのでした。前作は2017年ですから、もう2年ぶりなのですが、そんな斟酌は全くありません。アベンジャーズのせいでしょうか、こんな続編映画が多くなりましたねえ。

 映画は、ともかく次々と襲い掛かる殺し屋との格闘です。思えば、2作目から続くハードなアクションの連続です。一体、ジョン・ウイックは何処に逃げるのかと観客までが見疲れた時に、休憩のためのような静かな場面が挿入されます。それは、ニューヨークの図書館やバレエ訓練学校でのエピソードですが、すぐに新たな敵が現れ、またまたガン・フーの再開です。まさしく全力疾走のエンドレスのマラソン・アクションです。
 しかも、なかなかにアクションの質が高いのです。どうやら、最近話題になったアクション俳優たちを総動員している感じです。中国系のカンフーでは、投げナイフの技が凄まじいですねえ。また、韓国系の映画の白刃を掲げたオートバイ・シーンなどもしっかり活用しています。さらにいろいろな映画で見かけるようになった東南アジア系の凄まじい格闘術までも登場します。とにかく世界の旬のアクターたちのハリウッド進出映画とも言えそうです。さすが監督がスタントマン出身のことはあります。そのアクション・シーンの質と物量と迫力に圧倒されます。

 それにしても、敵である元雇い主の組織”主席連合”(ギャングたちの連合会)から派遣された裁定人という謎の美女などはもうアニメの世界に登場するキャラクターそのものです。やっぱり日本アニメの実写化(?)は西洋人に限りますね。いやあ、そのクールさには感激します。
 しかし、その余りの裁定の非情さが殺し屋の聖地「コンチネンタル・ホテル」の支配人や「ホームレス帝国」の王様を怒らせるのですから、なかなかツボを押さえた展開です。実際、「コンチネンタル・ホテル」がジョン・ウィックと一緒になって最新の武器を使って主席連合の殺し屋と銃撃戦を行うという見せ場は大いに盛り上がります。この設定は、組織から追われる羽目になる第2作目のフォローという意味でも実に上手いですねえ、感心します。加えて防弾装備の進化にも吹き出します(笑)。

 一方、”主席連合”の上にさらに”首長”がいるという今回の新しい設定はやや疑問です。いまもオイルマネーなのかな? しかも、ジョン・ウィックが無理して”首長”に会った意味もなんか変ですよねえ。いや、時間稼ぎという立派な意味があったのだ(笑)。

 もう一つ、日本人として違和感があったのが、”主席連合”の最強の殺し屋ゼロです。彼が日本の寿司職人という設定は市川雷蔵の「ある殺し屋」みたいで面白いのですが、やっぱり、ここは日本人俳優を使ってほしかった。変な日本語は著しく興をそぎますし、寿司屋で猫の餌やりなど厳禁です(笑)。日本人としては許せません。ただ、この無口な殺し屋(弟子も)が、休戦時に、”実はジョン・ウイックのファンだ”とその憧れを饒舌に口にするのは、なんか日本人らしく(?)て笑えます。

 そしてラストは、絶対死んだと思ったジョン・ウィックがホームレス帝国の王様に助けられ、”主席連合”への報復を口にしたところで、幕が下ります。やっぱり宴半ばで次に続くじゃないか! また2年後の続編なのか、しかたがない、これだけの面白い映画なら、気長に待ちましょう。
 おもえば、マーベルは10年シリーズでした。そして、最近のできの悪いスター・ウォーズ3部作は急いで作り過ぎたと幹部が反省しているとか、もう1話完結は昔の話なのかな?。実際、製作的には長くヒットすればそれだけ儲けがデカイのでしょうねえ。
 ということで、じっくり時間をかけて是非、凄い映画を作ってください。楽しみにみんなで待ちましょう。でも、日本公開は全米と同じ時期にしてください。今回は5カ月遅れで世界の国の中で最も遅い部類とか。いまや初代のスターウォーズとは時代が違いますぞ。そのせいでか、今最も話題の「ジョーカー」に喰われて日本の興行成績は今一つとか、これは配給元が悪いですねえ。今後の巻き返しを期待したいものです。

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