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2019年8月31日 (土)

アルキメデスの大戦

 山崎貴監督の映画「アルキメデスの大戦」については、なんとなく一種の食わず嫌いのような感覚があって、観に行くのをためらっていました。米軍の航空機によって撃沈されることは分かっており、敗戦後の大蔵省では”昭和の三大馬鹿査定”とまで呼ばれることになった戦艦大和の物語なのです。日本人としては映画を観終わって嫌~な気分に陥るのではないか、と心配していたのです。
 ただ、長年のご贔屓の監督の作品でもあるし、お得意のCGによる戦闘映像を見るだけでも価値があるかなと、先日なんとか劇場に足を運びました。

_0002_new 映画の冒頭、いきなりの大和沈没のハイライトシーンには度肝抜かれました。大空を飛ぶ無数の米軍戦闘機から落とされる、CGで精緻に描かれた爆弾や魚雷の非道さには震えるばかりです。逃げることも避けることもできない”大和”はゆっくりとなぶり殺しのように無様に破壊されていきます。一方で艦砲射撃の砲弾は高速で動く飛行機には全く当たりません。必死で機関砲にしがみつく日本軍の兵士たちの姿が哀れで、時代遅れの兵器の建造や無謀な作戦を遂行した無能な軍令部に本当に腹が立ちます。日本の兵士をただただ無残に死なすのか、と。
 それにしても、偶然(?)にしろ撃墜された米軍飛行機のパイロットを戦場の真っただ中で味方の水上飛行機が救助していくというこの彼我の差、この無念さはいったい何なんだ!!。

 ・・・だから見るのが嫌だったんだと思ったところで、戦艦大和が「タイタニック号」のように腹を上向けて”転覆”するのです。どうやらこれが大和の最後の真実のようですが、CG技術がなければ、いままでの砲煙だけが大げさな特撮では絶対表現できなかったのでしょうねえ。ここも驚きました。予想を上回る迫力です。さすが山崎貴監督率いるVFXチームです。

 さて、物語は、その大和の最後から遡って、次期戦艦建造をめぐる日本海軍内部における巨大戦艦の建造推進派と航空機を主力に置く空母派による派閥争いが描かれます。菅田将暉演じる主人公は、帝大で100年に一人と言われた数学の天才であり、巨大戦艦の少なすぎる見積額の不正を暴くために、山本五十六にスカウトされるのです。この天才ぶりが可笑しいというか、上手いのです。この若手の俳優さんは何を演じても違う人に見えます。やっぱり、こういう人が演技派なのですねえ。
 わずか2週間で、敵陣営からの嫌がらせや策略のせいで予算の見積をすることすら不可能な事態の中、天才ならではの彼の悪戦苦闘ぶりが面白可笑しく描かれ、すっかり引きこまれました。
 そして、見せ場である予算決定会議席上、得意の数学の方程式を用いて数字のからくりを暴くのですが、敵もさるものとんでもない論法で開き直ります。敵側の造船将校田中泯の言い分は実に凄い。しかし、主人公も設計上のミスを喝破し、土壇場で逆転するのですが、映画はさらなる予想もしなかった展開で戦艦大和の建造へとつながっていきます。

 この最後のしかけがなかなか興味深かったのです。よくこんなロジックを考え出したものと感心しました。原作の漫画にあるのでしょうか?なんかおかしいと思いつつ、日本人ならその位置付けと心情にすっかり騙されそうです。田中泯さんの重々しい演技が実に良く似合ってますし、ここがこのホンの最大の肝でした。いやはやなんとも・・あなどれませんねえ。

2019年8月29日 (木)

エアコンの静止する日

 今年のお盆休みに、ロバート・ワイズ監督の名作SF映画のタイトル風に言えば、”エアコン(地球)の静止する日”が訪れました。突然、最も暑くなる昼過ぎにエアコンの冷風が温風に変わったのです。たまらずスイッチを切り、室外機に冷水をかけるなど応急措置を施したのですが、全く効果はありません。
 丁度台風の接近もあったので、自然治癒に一縷の望みをかけて修理について少し様子を見ていたのですが、期待に反してエアコンは温風機のままで全く変化はありません。台風通過時は気温は下がりますので、なんとか扇風機だけでしのげたのですが、やっぱり夜間が暑くて熟睡できないのです。

 これは困ったものだと台風一過、早速電気店に出向いてエアコンを新規購入したのですが、なんと設置工事が早くても5日後になるとのことです。どうやら猛暑の影響で私の地域で1日75件ぐらいの工事があるそうです。とりあえず6日後の在宅日に工事を依頼したのですが、それからが地獄の日々でした。

 エアコンという文明の利器になれた体は、もう今の温暖化による異常な気温に耐えられないのです。昔は夏でももっと気温も低く過ごしやすかったですよねえ。昼間は窓を全開にすればまだ我慢できますが、夜がもう焦熱地獄です。熱気が顔や体に粘りつくような空気にはなんとも堪えがたいものがあります。扇風機ではなまあたたかい風という程度で焼け石に水ですねえ。

61jvtbwuysl_sl1500_  そこで、昔ながらの冷風扇なるものを使ったらどうかという妻のアイディアで電気店を探したものの、とっくに売り切れでした。あわてて大型通販サイトで探すと、1万円クラスの商品が残り1台という状況です。速攻で注文です(笑)。翌日に商品が到着するのでこんな場合は非常に便利です。しかし、その1晩の暑さの過酷だったこと本当に骨身にしみました。

 さて、その冷風扇ですが、原理は簡単です。水を入れたタンクで濡らしたロールを巻き上げて、それに風を当てて送るだけという、いたってシンプルな構造です。水に氷や蓄冷材を入れておけば短時間ですがより効果があります。
 実際に使ってみると、その効果は予想以上にあると文字通り肌で感じました。もっとも直接風が当たる部分だけですが、それでも地獄に仏というぐらいの効果はありましたねえ。

 結局、エアコンが設置できたのが、故障した日からいうとなんと9日後になってしまいました。いやあ、毎日、冷茶を飲んで、冷風扇を抱え込んでよく頑張りました。この思いを忘れないためのブログです(笑)。

 そして、エアコンが設置、稼働した日の感動は忘れられません。こんなに涼しかったのか、と改めて心底思いましたねえ。いやあ、あって当然のものが無くなった時は、そのありがたみがよくわかります。皆さん、エアコンに感謝しましょう。

 あれ、そういや、冷風扇はどこ行ったのかな?多分、冷房嫌いの女房が持って行ったのでしょう。ピンチヒッター、ご苦労様でした。以上です。

 余談ですが、前述の「地球の制止する日」をリメイクした「地球が静止する日」は駄作です。お間違えないようにお願いします。

 

2019年8月28日 (水)

とんでもない甲虫

 実は昆虫は私の興味の対象ではないのですが、ふと立ち寄った本屋の棚で「とんでもない甲虫」という”小図鑑”を見付けてしまいました。以前に、あまりに奇天烈な姿に感動して購入した「ツノゼミ」の兄弟本でした。この本のことは、以前拙ブログ(2014.3.4)で取り上げていましたので、詳しくはお話しませんが、とにかく、ツノゼミの多様な姿はもちろん、白い背景に小さな昆虫のコンピュータ加工した精密なツノゼミの写真がデザインよく並べられており、私の図鑑心を一発で射抜いたものです。

81mdgc8knml_ac_ul320_   今回の本も、タイトルが示すとおり、昆虫のなかでもとびぬけて姿形が異形の者を集めています。もうそれは、表紙を一瞥しただけで感動します。なんだ、あの襟巻をしたコガネムシは?あのろくろ首のような奴は何?ダンゴムシでもないのに丸くなっている虫は?と、年々薄れていくような気がする知識欲を猛烈に掻き立てます。もう衝動買いです。サイズも小さくソフトカバーの”小図鑑”だけにお値段も手ごろだったのが幸いでした。

 さて、中身をみても、なかなか興味が尽きません。種類ごとに、奇々怪々な昆虫たちの精緻を極めた写真が並んでいます。
 私の(興味の)専門外とはいえ、昆虫類は金属製の機械仕掛けのような気がします。特に背中の固い”前翅”が特徴の甲虫類はそう思えます。普通のカブトムシを見ても、あの背中の甲羅(=前翅)がパカッと割れて、中から折りたたんだ羽が広がって空を飛ぶなんてことは、よく考えるとやっぱり機械製のような気がします。神様が創造したロボットなのだ(笑)。子供たちが好きなはずですネ。

 この甲虫類は種類が多いそうで、昆虫100万種のうち約40%を占めているらしい。しかも全生物の約25%に当たるといいます。まさしく地球は昆虫の惑星なのです。そういえば、先日、NHKで食物連鎖の基礎になっている昆虫が絶滅すれば世界が滅ぶようなお話をしていましたが、それも納得です。でも、身近な血を吸う蚊は断固駆除します(笑)。

 お話が少しずれましたが、この自然の多様性を体現した甲虫には、ほんとうにとんでもなく驚くような姿をした者たちがおります。お馴染みの角をはじめ、装飾すぎる触覚、意味不明な棘など興味は尽きません。宝石のような色合いの甲虫は、別に「きらめく甲虫」という姉妹書があるそうですので、機会を見て買ってみましょう。
 この本に掲載されている279種のうちで、私の一番のおすすめが、マンマルコガネです。丸くなるタイプとそうでないタイプがありますが、なんとも体の丸みと色合いが艶やかで虫のくせに美味しそうなのです(笑)。
 それにオウサマミズスマシです。手足を腹部の溝にぴったりと収めて死んだふりをするそうですが、どうみても人工的な細工にしか見えません。そういえば、映画「ハムナプトラ」のピラミッドに棲む人食い黄金虫がそんな感じでした。でも、あれはフンコロガシの仲間だそうです(笑)。次いでにいえば、映画「インディ・ジョーンズ/魔球の伝説」に出て来る、洞窟でヒロインの手に乗った虫の名前は何なのでしょう。ネットを見ても”虫”としか紹介されていません。故牧野富太郎博士ではないですが、「名もない虫(雑草)」はありません。誰か詳しい方是非教えてください。

 それにしても、昆虫の名前(和名)は面白い。トゲアリトゲナシトゲトゲなんぞは冗談としか思えません。実は、トゲトゲの仲間で、トゲが一度退化したあと、再びトゲが進化した種類だそうです。由来を聞けば納得です。また、メクラチビゴミムシなどとPTA的禁止用語が並んだ和名ですが、心配したとおり見直しの動きも一部にあるようです。しかし、この本の著者も書いていますが、名前というのは先人の学者たちの苦慮の賜物なのです。言葉は時代によって変わるものです。一時代の差別意識の云々で勝手に変更してよいものではないでしょう。メナシのほうが余計酷い気もしますゾ。せめて歴史的な意味のある言葉についてはどうか、そっとしてやってほしいものです。映画「座頭市」のセリフもそうでしたが、タイトルのせいでDVDなどが発売されないような気がする「めくらのお市」シリーズも是非英断をお願いします。ボンカレーのお姉さんの殺陣は上手いのです(笑)。映画史の歴史的価値があるのです。  

2019年8月12日 (月)

ライオン・キング

 映画「ライオン・キング」は、ライオンなどのアフリカの野生動物が擬人的にミュージカルを歌うというディズニー・アニメの実写版というものですが、これはもう”超実写版”という宣伝文句より、すべてCG製ですから逆に”超アニメ版”とでもいいたくなります。とにかく、アフリカの自然の記録映画”野生の王国”といってよいぐらいのリアルさです。しかも、人間が美しいと感じるような心地よい自然です。
 随分昔に見た、南米のジャガーを記録した映画「ジャングル・キャット」を思い出しました。当時、評論家からはかなり擬人化していると批判されたようでしたが、子どもには実に面白かったものです。あれでジャングルに憧れました(笑)。

_new_20190812092601  実写としか思えないリアルな映像と素晴らしい音楽が見ものの作品です。なにしろ、観る前に心配していた動物がしゃべるのも人間的な動きも全く気になりません。正直、この一点に感心したというのがすべてですかねえ。
 特にイボイノシシとミーアキャットの凸凹コンビが絶品です。荒野で倒れたライオンの子に群がるハゲタカに向けて、一直線に突進するイボイノシシのシーンは、この映画で白眉の名場面です。ここだけでもこの映画を評価したいと思います。

 監督は、先日紹介した「シェフ」のジョン・ファブローなのですが、意外というより「アイアンマン」からあの実写版「ジャングル・ブック」を成功させた人ですから、実は、こちらのジャンルが本職なのでしょう。

 でも、やっぱり、人間が一人も登場しないドラマなのに”ここまでやる必要があるのか”という気持ちがぬぐい切れません。見事な映像に圧倒されますが、良く考えると、やっぱりストーリーが雑です。
 主人公の子ライオンは、どう考えても王者の資質はないような気がします。他に雄ライオンがいないのが幸いでした(笑)。
 それに、王殺しの悪事がバレるきっかけが、王弟ライオンの不用意な一言というのも取ってつけたような解決策です。ストーリー的にもう少し他の手立てがなかったか残念です。アニメ原作も同じなのかな?
 しかも、ライオンから狩られる立場の草食動物までもライオン王国の民というのはやっぱり無理がありますねえ。手塚治虫の「ジャングル大帝」のように肉食を止めなければ王国は成り立ちませんゾ。ひょっとしたら、ラストに再生した新王国では、ライオン一家は虫ばかり食べるのでしょうか?心配します。

 いやいや、こんなことを考えてはいけない映画なのです。ひたすらリアルな動物達と現実には決してありえないジャングルや草原の風景を楽しむ作品なのです。CG技術の粋を純粋に存分に楽しんでください。撮影技術の進歩を体感しましょう。 

2019年8月11日 (日)

ワイルド・スピード/スーパーコンボ

 ヴィン・ディーゼル主演のカー・アクション映画「ワイルド・スピード」は、第5作「ワイルド・スピード/MEGA MAX」からハマって毎回楽しみにしています。実は第5作でドウェイン・ジョンソンがFBI特別捜査官として加入して、一気に面白くなったのです。以前のしょぼい車窃盗団から巨大金庫の大暴走映画(笑)に大化けです。そして、第6作では、戦車まで登場するカーアクションの後、犯人役の兄としてジェイソン・ステイサムがラストに登場します。そして、最高の興行収入をあげた第7作は「アクアマン」監督による車が空を飛ぶというとんでもない一大活劇です。ここで、ステイサムがドウェインを病院送りにするのですが、第8作では、シャーリーズ・ソロン扮するサーバーテロリストに対して恩讐を超えて共闘するという展開です。とにかく、敵が次々”ファミリー”になるのですから、馬鹿馬鹿しくも楽しいシリーズでした。

 しかし、ネット情報によると、実際は出演者の間柄は非常に険悪らしいのです。嘘かホントか、従来の仲間、特におしゃべりで小心な黒人役の俳優がドウエインを嫌っているほか、撮影中でも出演俳優たちは出番以外顔を合わさないそうです。ロック様はやっぱり外様なのでしょうかねえ。この人がいなくなったら、ポール・ウォーカーは本当に死んじゃったし、”ワンダーウーマン”も退場していますから、本編はどうするんだと心配になります。

_new_20190811083001  まあ、今回のスピンオフ映画「ワイルドスピード/スーパーコンボ」を観ると、その噂は本当かなあと実感します。なにしろ、主演2人以外の連中が全く姿を見せないのです。いや、話にも一切出てきません。まったく別の映画と言う雰囲気です。
 敵役がサイボーグですから、かなりSFっぽくなっていますし、ヴィン・ディーゼルのうざくなるほど繰り返す”ファミリー”というセリフと、姉御役の女優さんとのベタベタ・アイラブユーが無いだけで凄くスッキリしています(笑)。彼女なんで生き返ったのかな?

 さて、お話は、新たなアクション・シリーズが生みだそうとするかのように、科学技術を駆使する007映画のスペクターのような謎の組織が出現します。主演2人がかりで対抗しなければならない最強の敵がイドルス・エルバ扮するサイボーグです。スーパーマン並の強靭なボディに電子制御の銃やオートバイを駆使します。最初は、3人の人間離れしたアクションとSF色の強さにかなり違和感がありましたが、その分、ヴァネッサ・カービー扮するステイサムの妹役が体を張って頑張ります。この美人の女優さんが良いのですねえ。やっぱり「映画は女優」です。どっかで観たとおもったら、直近の「ミッション・インポッシブル」に出演していましたねえ。

 なお、今回も、お約束のヘレン・ミレンのこわいお母さんも登場するのですが、さらに、サモアに住むドウェインの肝っ玉母さん一家が登場しますからサービス満点です。本当の家族を登場させたのは、あのウザいセリフへの脚本家の抵抗(笑)かもしれません。

 この映画で一番の見せ場は、後半のドウェインの故郷サモアでの戦いにあります。最新鋭の銃器等で武装した敵の来襲に際して、ドウェイン一家(大人数の巨漢の兄弟がいます)は、伝統の槍や金棒しかありません。しかし、敵の武器をハッキングして無効化にして、昔ながらの肉弾戦に持ち込んだ脚本に座布団をあげたいと思います。アクションは、やはりSF的アクロバットより史劇風ぶちかましです。ホントに上手い設定と思いますし、ドウェインの母方の国サモアへの愛と誇りをハリウッドでこれだけ見事に描いたことはないのではと感心します。しかも今はやりの人種問題への製作陣の心意気まで感じます。お見事でした。

 そして、映画は、謎の敵のラスボスの不気味な予告を残し、次回作へ意欲を示します。それにしても、プロローグとエピローグにライアン・レイノズが登場するのは、監督が「デッドプール2」のデビット・リーチだからのようです。そういえば、顔アップの毒舌の独白セリフが多かったような・・・。まあ、そういうことです、”ファミリー”がどうのこうのとグチャグチャ言わず、ヘリコプタ―と数珠つなぎのトラックとの綱引きなど、カラッと明るく笑って人類の敵を倒すのを楽しんでください。

 

2019年8月10日 (土)

シェフ

 最近、”良い映画”とは何だろうかとつくづく思います。若い頃にかなり入れ込んでいた映画でも、今となってはどうも観返す気にならない作品があります。気に入って購入したはずのDVDのコレクションの棚を眺めていてもケースを手に取るまでに至りません。頭の中で場面を思い浮かべると再見する意欲がなくなることが多いのです。一つには、年令による好みの変化もあるでしょうし、作品自体の時代的な価値の変化ということもあるのでしょう。
 その一方で、そんなに大した作品ではないと評価していたはずのものが、何故か1年に1回ぐらいは無性に観たくなる映画もあります。また、劇場で観ないままレンタルでおざなりに見た作品になぜか心惹かれる場合もあります。こんな場合、バーゲン品をついつい買ってしまうのですねえ。もちろん、その後、完全なお蔵入りの仲間に入ってしまうものも多いのですが(笑)。

 というように、私のとっては、こうして手元に置いて何度も観たくなる作品が”良い映画”なのです。
 そんな作品は、総じて言えば、基本的に後味の良いもの、現実にはありえなくとも、希望のあるものが主流ですねえ。辛気臭いのはダメです。こんな世知辛い先行き不安な世の中では、せめて映画ぐらいは楽しくスカッといきましょう(笑)。

81badgwdpnl_sx342_  映画「シェフ」もそうした作品の一つです。レンタルで観た時は、変なおっさんが主演のフードトラック映画というような軽い印象だったのですが、何故か、サンドイッチの料理場面が断片的に記憶に甦ったり、あのスモーク肉をもう一度見たいなあと思ったりしていたのです。気になり始めると止まりません。ということで、先日ブルーレイのバーゲン品をお買い上げです。

 今回、じっくり再見して、”やっぱり面白い”と思いましたから、間違いありません。主演の変なおっさんは、どっかで見たことがあると思っていたら、アベンジャーに出演しているアイアンマンの運転手なのです。見かけによらず(失礼!)大した人だったようです。解説を読むと、実は「アイアンマン」第1作の監督で、当時誰も当たるとは思っていなかったマーベル作品を大成功に導いた立役者なのです。私も「アイアンマン」をDVDコレクションしていますが、当時はアメコミ作品の監督までは全く興味ありませんでしたので、全然知りませんでした。大いに反省です。しかも、アイアンマン3の監督を降りて、この作品を製作・監督・脚本・主演したというから大したものです。立派です。

 劇中、有名レストランの名シェフだった主人公がオーナーの命令に納得できず、店を辞めてしまうシーンがありますが、まさしく監督自身の思いを描いているような気もします。この監督が本当に作りたかったというストーリーは、フードトラック1台で一から出直す主人公が疎遠だったわが子と一緒にマイアミからロスまで販売しながら旅するというロードムービーであり、しかも、主人公が店を辞めるきっかけとなったツイッターを逆手にとって宣伝に活かすというのが小さなわが子という設定ですから、実に巧みな構成と演出です。

 そのほか、メキシコ風のサンドイッチなど映画に出て来る食い物(この言い方が実に合っている)が本当に美味しそうです。料理場面では、主人公の達者な包丁さばきに驚きますが、メイキングを見ると、主演のジョン・ファバローは猛特訓したそうです。さすがです。観光地案内や子供と食い物の”鉄板”セットに加え、本当に楽しい心温まる(ハートフル)コメディという見事な作品でした。

 それにしても、今回初めて気が付きましたのが、同僚のソムリエが”ブラックウイドウ”であり、分かれている妻の元夫が”アイアンマン”でした。きっと友情出演なのでしょうねえ。ほかにも、イヤミなオーナーがダスティン・ホフマンであり、陽気な相棒が”ジョン・ウィックの修理屋”なのもうまいキャスティングです。名前は知りませんがよく見かける毒舌評論家の俳優がいかにもという適役でしたねえ。オチまで御馳走さまでした。 

2019年8月 9日 (金)

天気の子

 新海誠監督の新作で大ヒット中の「天気の子」を観て来ました。いま丁度、動画配信サービスで簡単に手軽に観ることができるせいか、様々なアニメ作品にどっぷりつかっており、最近のアニメの映像のきれいなことに感心しているところですが、さすが、映像美に定評のある新海作品は、一味も二味も違います。雨ばかりの都市の風景はお見事です。特に、窓ガラスや道路に当たる雨粒の美しさなどは尋常ではありません。実写版では、黒澤明でさえ苦慮した雨足表現ではとても成し得ない幻想美です。

_new_20190809174401 一方、物語は、一言で言えば「世界の形を変えてしまった」というオチは文字通り”竜頭蛇尾”です。いやあ拍子抜けしましたねえ。もうひと捻りのドラマチックな展開が欲しいものです。

 肌感覚から言って、雨ごいならぬ”晴れ女”の悲劇は、日本の”伝承”にはそぐわない気がしますし、その3年後の世界の状態もあんな甘いものではすまないでしょう。
 やっぱり、一人の家出少年の行動範囲内でのドラマ仕立てが問題なのです。普通のお話としては面白くないことはないのですが、ファンタジックな映像が凄いだけになんともしょぼく感じますねえ。特に、女性の年齢設定(オチ)についてはアニメ表現を使った詐欺のような気までもします。
 

 総括すれば、奇想天外な出だしによるファンタジーへの興味とスリルが、写真のような東京の風景と法治社会の現実をリアルに描く中でどんどん失われてしまうことがなんとも残念なのです。世にあらざる者への期待と感動が、まさしく”神隠し”のように消えてしまうのですから、あとに何も残らなかった・・・・。

 以上、期待が大きかったゆえの辛口になりました。次回は、もっと胸躍る大胆で骨太のストーリーをお願いします。

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