無料ブログはココログ

« 2019年5月 | トップページ | 2019年7月 »

2019年6月25日 (火)

未知との遭遇

 スティーブン・スピルバーグの有名作「未知との遭遇」を40年ぶりに観ました。40周年アニバーサリー・エディション、スチールブック仕様というブルーレイで、ファイナルカット版(の中古品)を購入したのです。

 _new_20190625085601 実は、この作品、最初の劇場公開当時、ジョーズを撮った若手の新鋭監督のSF映画として期待しすぎたせいか、全く面白くないと断じて以来、VHSもLDも観ていません。まあ、あの最後のどでかいシャンデリアのような宇宙船がひっくり返るシーンだけは、文字通り最後のどんでん返し(笑)として記憶に残っています。で今回、魔が差したのか、暇なのか、セールス品だったのかはともかく、久々に観ました。

 冒頭の砂漠のシーンは全く記憶にございませんでしたし、主人公がだんだんおかしくなっていく過程など結構シビアなのですねえ。宇宙人の誘拐のお話であると同時に家庭崩壊のドラマなのです、驚きましたねえ。主人公の気持ちも理解できませんが、残される奥さんらの人生には何の思い入れもありません。薄情な主人公ですねえ。

 それにしても、この宇宙人が本当に”良い宇宙人”なのでしょうか。多数の飛行士を誘拐し、幼児を連れ去り、主人公を洗脳(?)するなど、まるで某国の様なやり口です。拉致しても後日帰したからいいだろう、というのはいかがでしょうか。”悪い宇宙人”としかいいようがありません。しかも、あの5音のメロディーで何がわかるのでしょう。前半では全く正体を知らなかったはずのフランス人監督が指揮する政府の秘密チームが、どうしてあんな歓迎セレモニーを用意できるのか、まったく理解不能です。どうやって事前にわかったのか、なんとも脚本のつじつまが合わないような気がします。観客受けする”宇宙人との遭遇”を無理やりリアルっぽい映画にしたような気がします。まあ、政府による大掛かりな隠蔽工作はなんともありそうな話でしたが(笑)。どうにも居心地が悪くていけません。

 結論から言えば、この作品は、やっぱり私の好みに合わないようです。改めてそのことを確認した137分でした。そして、時代的にしかたないことですが、特撮技術が稚拙ですねえ。丁度、スター・ウォーズの公開と製作時期が同時でしたが、この映画は従前からのアナログ技術の世界です。初見当時は、道路を飛ぶUFOのサーチライトに感心したような記憶がありましたが、今の目で再見すると、そんな思いは木っ端みじんです。合成が透けているのです。加えてあの巨大宇宙船もデビルス・タワーと比較すれば縮尺がおかしいのではないでしょうか?そうそう、あんなにシャンデリア仕様で輝いている宇宙船なのに、地面にあれほど宇宙船の影が移動して来るのはおかしくない?そんな公開当時の疑問まで思い出しました。地下鉄の漫才ではないですが、どうも気になります。・・・古いネタですねえ、これも40年ぶりでしょうか(笑)。

2019年6月19日 (水)

プロメア

 アニメ・声優好きの娘から絶賛・推薦されたアニメ映画「プロメア」を観て来ました。内容は近未来を描くSFコミックなのですが、驚いたことに声優陣が凄いのです。まず、主人公の火消し・レスキュー隊員ガロに松山ケンイチ、敵対する謎の発火人間達のリーダー・リオに早乙女太一(ご存知、大衆演劇の女形出身)、そして、未来都市プロメポリスの司令官になんと堺雅人を配役し、ゲスト的に古田新太が出ています。

_new_9  映画は、完全なアメコミの画風であり、冒頭の発火人間によるテロと消火活動を行うレスキューチームの戦いは、そのポップな絵柄とあまりに素早い動作や要所要所に挿入される横文字とかな文字(大文字)の説明には、動体視力も衰えた老眼にはほとんど追随することができず、合体ロボットさながらの消防マシンや物体化する炎、矢継ぎ早のギャグの連発などのあれよあれよの展開に圧倒されていました。しかも、炎、爆発、飛び散る破片が幾何学的に単純化されているものですから、ロボットなどとの区別もつかない有様でした。

 どうやら、こうした斬新な画風が、監督した今石洋之という作家の持ち味らしいのです。TVアニメシリーズで一躍名をなしたようで、今回が初のオリジナル長編アニメーションというから驚きです。とにかく今まで見たことがない、プレビズのような画面と美しい色彩には圧倒されます。ダメ押しで、エンドロールの色彩センスの良さに、なんでもないようなシンプルなイエローの背景なのですが、ホントに感心しました。

 しかも、そうした映像への当初の戸惑いも、そのプロポリスの社会や発火人間達の状況が徐々にわかるにつれて、一気に面白くなります。さすが、脚本が劇団☆新感線の座付き作家だった中島かずきと納得していたら、後半から一気に予想をはるかに超えたラストになります。いやあ、最近何度もこのセリフを使いますが、どうやったら、こんな突飛な設定を思いつくのでしょう。脱帽です。

 また、俳優がアテレコするのを嫌う声優ファンの娘でさえ絶賛した堺雅人の演技も凄いですが、なんとも火消し馬鹿の主人公役に溶け込み、松山ケンイチと悟らせないのもさすが演技派ですねえ。これも見事でした。

 こうしてみると、日本のアニメは、さすがクールジャパンと言われるだけあって、進化が止まらないような気がしますし、デザインなどは、ゲッターロボなどの伝統アニメへのリスペクトもしっかり入っていますし、さりげなく(?)江戸の火消しの日本固有の文化も発信するところが、今時の世界戦略なのでしょうかねえ。いやはや感心します。実写版も世界を市場に製作してほしいものです。ないものねだりですか(笑)。

 

2019年6月14日 (金)

アラジン

 予告編を見て、ただの青いウィル・ス三スじゃないか、という印象をもっていたので、実写版「アラジン」は今回パスしようと思っていたのですが、一寸くさくさすることがあったので気分転換に劇場で観て来ました。これが大当たり、なかなかの傑作じゃないか、と感心しました。

_new_8  もともとアラビアンナイト系のファンタジーは、東映映画「シンドバットの大冒険」をはじめ、レイ・ハリーハウゼンのダイナメーション「シンバット」シリーズでもお気に入りの分野ですので、アラビア風音楽に乗って、古き良き時代のアラビアの砂漠の世界に入りこむ冒頭シーンからもうはまり込みました。

 ただ、主人公のアラジンがオチャラケなコソ泥というのが少し気に入りませんが、勝ち気なジャスミン姫がなんとも良いじゃないか。この女優さんは静止画より動く動画の方が何倍も魅力的です。そして、ランプの精の青いジーニーですが、これはもうウィル・スミス以外は演じられないほどの適役です。実は、私、原作のディズニー・アニメを見ていないのですが、アニメ版のロビン・ウィリアムズの芸達者ぶりが有名ですので、演じるに当たってはなかなか大変だったのではないかと思います。しかし、最新のCG技術の効果もあって完全に役になりきっています。歌も踊りも見事です。何度も言いますが、あっちの国の俳優さんは本当に凄いですねえ。おまけで言えば、CG製の魔法の絨毯の演技も気に入りました(笑)。

 そして、一番感心したのがその物語です。誰もが知っているお伽噺ですが、飛んだり跳ねたり軽妙なアクションと主人公たちの揺れ動く心理描写を含めて、細部にわたって辻綱が合うよう練られたストーリー展開は、観客をハラハラドキドキ笑わせながら退屈させません。しかも、女性の地位の向上まで訴えるのですから、なんとも見事な脚本です。これのオリジナルはアニメかな?今度一度是非アニメも見なければなりませんね。

 以上、さすがにディズニー映画でした、SWやぞうさんの失敗を見事にリカバリーして、私も大いに憂さ晴らしになりました。こういう観客を幸せな気分にしてくれるのが”映画”ですよねえ。100円上がった料金を払った価値がありました(笑)。

2019年6月 5日 (水)

姿三四郎(1965年版)

 お待ちかねの隔週刊「黒澤明DVDコレクション」の第37号「姿三四郎」が発売されました。表紙カバーには、”初DVD化 黒澤明監督デビュー作のリメイク版”と謳っています。黒澤明(プロダクション)が製作し、再脚本化・編集まで行った1965年の作品です。それこそ、VHSでも発売されず、数十年前に名画座で観ただけの幻の作品でした。当時、岡本喜八版と誤解するほど面白かった記憶を確かめるべく、早速DVDを観始めたのですが、この作品はなんと158分という長尺ものでした。実はデビュー作の「姿三四郎」と続編「続姿三四郎」を一本化した作品だったのです。いやあ、これには驚きました、当時の興行主には不評だったでしょうねえ。でも黒澤印の威光でつくれたのでしょうねえ、多分。

_new_7   姿三四郎のストーリーは有名ですのでご紹介はしませんが、主人公の姿三四郎を加山雄三、師匠の矢野正五郎を三船敏郎が演じています。なんと前月公開の名作「赤ひげ」コンビなのです。また、敵役の桧垣源之助を意外なことにニ枚目俳優の岡田英次が扮しています。さらに驚いたのはヒロイン小夜をあのコメットさんこと九重佑三子が演じており、当時の彼女の人気を思い出しますが、やっぱり和風美人というイメージには合いませんね。そのほかの脇役陣は、伊藤雄之助、加東大介、山崎努、志村喬と黒澤好みの常連たちで安心して観られます。特に和尚役の左卜全の持ち味を生かした演技には感心しました(笑)。

 さて、観終わった感想としては、見事に”黒澤明の世界”になっていました。戦前のデビュー作は、やっぱりフィルムの質のせいか、解像度が悪いのですが、このリメイク作品はメリハリの利いたモノクロ画面が見事です。しかも、セットの長屋や寺の池なども実にリアルに作りこまれており、黒澤得意のぎゅっと詰め込んだような凝った画面構成になっています。特に、捨てられた下駄の変化による時間の経過を表すシーンなどは丁寧に再現されており、当時はこのシーンからまだ見たことがなかった黒澤映画を思い描いたものでした。逆に、後日オリジナルを見て案外あっさりしていたことに驚いたこともあります。

 それにしても、黒澤明の脚本は、デビュー作品を検閲で削除された恨みがあるのか、かなり丁寧に書き込んでいます。特に試合で死んだ門馬三郎の娘のエピソードなどは結構膨らましていますし、蓮の花もポンポンと開きます(笑)。とにかく全体的にわかりやすく面白い作品に仕上がっています。少なくても岡本喜八版よりは面白いのは間違いがないなあ。

 このコレクションの解説パンフレットによると、監督を務めた内川清一郎は、編集をしている黒澤明から何度も撮り直しを命じられ、直立不動でフィルムを渡していたそうです。なにしろ黒澤明監督は天皇と呼ばれていた人ですから、雇われ監督としてはなんとも大変だったことでしょうねえ。よく頑張りました。ちなみに、この監督さんは以前溝口健二監督の「西鶴一代女」のチーフを務めていた時、巨匠に反論して撮影中にクビになったことがあるそうです。いやはや一流の芸術家の下はやっぱりハードですよねえ。いや誠にご苦労様でした。 

2019年6月 2日 (日)

ゴジラ/キング・オブ・モンスターズ

「ゴジラ/キング・オブ・モンスターズ」の字幕版の公開初日の初回放映は、平日(金曜日)のお昼前というのに、客席は私のような中高年のおっさん達で結構埋まっていました。どうやら往年の”怪獣少年”達です。やっぱり、けっこういるんですねえ(笑)。

_new_6  さて、このハリウッド版の最新ゴジラ映画は、マイケル・ドハティという監督が本気で作った本格的怪獣映画でした。なにしろ監督自身が”ゴジラ映画が大好き”と広言しているだけあって、過去の日本の怪獣映画へのオマージュが半端ではありません。ゴジラ、ラドン、モスラ、キングギドラが登場した東宝映画「地球最大の決戦」や「怪獣大戦争」をベースにして、様々な特撮映画の小ネタを盛りこんでいます。ゴジラのテーマの伊福部昭の名曲はいうまでもなく、”モンスター・ゼロ”とか、チュン・ツイーが双子役、メキシコ火山のロダン、不発の様なオキシジェン・デストロイヤー、海底のムー帝国まで登場したのには驚きました。しかも、怪獣同士が話をしたことからお子様映画に堕ちたと批判された本家とは違って、テレバシーの代わりに”オルカ”という怪獣の生体音を解析・同調できるマシンを使って怪獣たちと意思疎通しようとする、科学的(?)なアプローチ(X星人かい?)には感心しました。また、ゴジラとモスラの協力関係を”動物界には異なる種の生物の共生関係がよくある”と科学的に説明しているのも笑えます。

 さらに、こうした過去の日本遺産を生かすだけでなく、人類誕生のはるか以前に、地球を支配していたタイタンズ(巨人)がゴジラをはじめとする怪獣だったという新たな神話世界を作りあげることに成功しています。この設定は、ギリシャ神話を基盤にする西洋人にもよく理解できる解釈ですし、病原菌のような人間の愚かさで地球環境が破壊される現在、地中に眠っていた怪獣たちがよみがえるというストーリーに説得力を持たせます。いやはや、ハリウッドの脚本の巧みさには本当に敬服します。ただ、よくよく考えると、ゴジラというより、平成ガメラシリーズの世界観によく似ています。もっと平成ガメラを高く評価しましょう。それにしても、最後の、王を称えるタイタンズの姿はやりすぎでしょう。

 なお、個人的に残念だったのが、メタボなゴジラ(象足は改善されています)、西洋ドラゴンと化したギドラ、身体に比して太すぎる鎌足のモスラ、尖がり帽子のラドンなどの怪獣のデザインです。年を重ね頭が固くなっているせいか、ゴジラ以外は、やっぱりオリジナルの方が好きですねえ。その他大勢の怪獣たちもあんまり良い造型とは思えません。しかも、CGによる戦いシーンは迫力十分ですが、暗い夜間や嵐の中での戦闘ばかりなのであんまりよく見えません。できましたら、かつての東宝特撮映画のように、晴れた青空の下で戦ってほしかったですねえ。

 次回作は「キングコング/髑髏島の巨神」のキングコングと戦うそうですが、今回の地球の守護神ともいえるゴジラが、単に巨大生物でしかないキングコングとどうやって対等に戦うのでしょうかねえ。「バットマンVSスーパーマン」かね?。そういえば、映画が幕を閉じた時、後ろの2人組のおっさんが「やっぱりハリウッドは違うなあ」とつぶやいたのが印象的でした。次回もあっと驚く内容に期待しましょう。でも、メカ・ギドラの登場は勘弁してください(笑)。

« 2019年5月 | トップページ | 2019年7月 »

2025年1月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31