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2019年3月31日 (日)

響 HIBIKI

 映画「響 HIBIKI」の興行収入は”爆死”と呼ばれるほど伸びなかったらしい。内容は、同名の漫画が原作で、鮎食 響(あくい ひびき)という名の15歳の高校生の少女が小説家デビューし、芥川賞と直木賞を同時受賞するという、とんでもない天才物語です。

713alstvdzl_sy445_  しかし、”天才物語”には目のない私としては、先日やっと動画配信サービスでレンタルして観ました。それがどうでしょう、なんともとんでもない天才の設定ですが、私のツボにはまったのでしょう、実に単純明快で面白かったのです。つい、2回も観てしまいました(笑)。

 漫画原作だけにその天才ぶりは極端にわかりやすく誇張されており、気に入らないと即座に小指折りや顔面蹴りなどの暴力行為に及ぶなど、その何をしでかすかわからない雰囲気がなかなか良いのです。屋上から転落するのも線路の遮断機の中に立つのも全く平気な少女ですから・・・。地下鉄のホームで背後に立たれた若手小説家や自宅まであとを付けられた雑誌記者が感じる恐怖をなかなかうまく描いています。実際に居ればそれは本当に怖いと思いますが・・・。

 そして、「賞は関係ない、作品は作品」と言い放つ天才少女の存在は、芥川賞などを目指してこつこつ頑張る小説家志望の人間模様や部数第一の出版業界をしっかり風刺しているようにも思えます。さらに、大人の都合、大人の対応に鋭いツッコミ(蹴りも)を入れるのですが、その作品を読んだ自称天才や元天才たちの大人たちはその才能に平伏してしまい、彼女によって引き起こされた様々なトラブルはいとも簡単に解消されてしまうのです。もっとも小説の作品価値に興味がない俗物の編集長や三文記者には通じないのがまた笑えます。あと、欲を言えば学校の教師や親の動転振りのシーンが欲しかったというのは無いものねだりなのでしょうか。原作はどうなっているのでしょうか。

 それにしても、主人公役がアイドルで女優デビューという作品なのに脇役が凄いですねえ。端役の売れない小説家に小栗旬が扮しているのは”さすが”と思うし、柳楽優弥や北川景子も頑張りました。主演だけが役者じゃないですよねえ。”ホンが面白い”が第一です。

 結局、その後コレクション用にDVDを買ったのですが、画像配信の映像の方が随分鮮明だったのは計算違いでした。DVDの画像は色合いが滲んで見えます。とはいっても、邦画のブルーレイは安くなっても5千円超とはあまりに高額すぎませんか。ここは少し苦情を言いたい場面です。

 まあ、それはともかく未見の方は、興行成績など気にせず、是非ご覧ください、何度もいいますが、単純に面白いですから。ただし、そうは思わなかった場合でも「文句言うなら私にどうぞ」とは言えませんのでその辺は何卒ご勘弁ください(笑)。

 

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2019年3月30日 (土)

バンブルビー

 どうにも映画「トランスフォーマー」シリーズとは相性が良くないようです。それでも第1作から2作目までぐらいは楽しんでいたのですが、中国市場を意識し出したあたりから作品の出来が急降下しはじめたようで、前作のアーサー王伝説にはほとほと参ってしまい、もうこのシリーズからは撤退しようと固く決心していたのですが、新しい視点で「バンブルビー」のスピンオフ作品だという宣伝文句に誘われてしまいました。本当に節操がありません(笑)。

 内容は宇宙の彼方から敵に追われて地球に隠れた”バンブルビー”が最愛の父の死にやさぐれてしまった少女との出会いの物語です。中古の黄色いフォルクスワーゲンに化けたバンブルビーがその大きな図体ゆえに引き起こす様々なトラブルを描くコメディタッチの作品です。

 機械仕掛けのバンブルビーは実の父親譲りの機械いじりの好きな少女(冷たい金属との頬ずりにはなんとも違和感!!)には最高のお友達となっていくのですが、あまりに自分勝手な少女なので回りの家族らがひどく可哀そうでした。特に再婚した母の夫、つまり義父は結構良い人なのになんとも酷い扱いようで、最後の”花道”もあまりにも非現実的な取ってつけようです。ちなみに意地悪な女友達への復讐もやり過ぎです。もうあれは完全な犯罪です。金持ちならどんな損害を与えてもいいのか!!

 加えて一番気になったのが、バンブルビ-がアメリカン・ギャグ風に壊した少女の家の損害は誰が支払うのか?ということです。家具保険など掛けてなさそうな家庭なので、薄給(?)らしい世帯主のお義父さんがなんとも哀れです。貧乏性(?)だけに”そこ”がどうにも気になって、おちおち敵との戦いにも身が入りません(笑)。なんでも物を大げさに破壊すればウケるというものではないだろう、やっぱりそれなりのTPOがあるのだ。

 ハッピーエンドにするなら、最後は国防省が少女たちの味方になってあの貧乏な家族の損害をしっかり国が補填するというオチをつけてほしかった。あのままじゃ世界は救ったものの、少女の家庭は”物理的に”崩壊したままじゃないか。どうもすっきりしないのだ、もちろんパンフレットなどを買うゆとりはありません(笑)。 

 

 

2019年3月16日 (土)

キャプテン・マーベル

 アメリカン・コミックの出版元マーベル社のアメコミ映画化プロジェクト「マーベル・シネマチック・ユニバース」の取り組みにはつくづく感心します。その推進役のスタン・リーは、これまでの作品にヒチコック張りに必ずワン・シーン顔を出していましたが、その御大も先日お亡くなりになり、この「キャプテン・マーベル」では、冒頭のタイトルがお約束のアメコミ漫画の一コマの連写ではなく、スタン―の生前の姿が映し出され、”サンキュー、スタン”という文字でその偉業を称えています。

_new  なにしろ、当時は誰も当たるとは思わなかった「アイアンマン」を、スキャンダルで身を持ち崩していた主演俳優の復活と併せて大ヒットに結び付け、その後もアイアンマンをはじめとするソー、ハルクなどのアメコミ実写映画を次々と発表、あろうことかオールスター映画「アベンジャーズ」シリーズまで成功させて、それまであまり日本ではお馴染みではなかったマーベルお抱えのアメコミ・ヒーロー達をメジャーに押し上げたのです。
 そして、ついに元祖ヒーローのスーパーマンやバットマンを要するDCコミックの売り上げを抜いたということですから、大したものです。かつて日本で少年マガジンの販売部数を少年ジャンプが追い越したようなものでしょうか。・・・大昔の話ですが(笑)
 さて、今回の「キャプテン・マーベル」は、出版元のマーベルの名を冠したヒーローが主人公であり、当然ながらマーベル・コミック史上最強のヒーローだそうです。
 とはいっても、アメコミにはとんと弱い私には、女性のヒーローという程度しか情報を持っていなくて、冒頭は、宇宙の果てで主人公を含む”クリー星人”(とにかく、このマーベル世界には星の数ほどエイリアンが存在しているのです。)達が爬虫類顔のエイリアンと戦っているのをただ眺めているばかりだったのですが、主人公が敵の罠に陥って地球に飛来するところから俄然面白くなります。
 
 時代は、なんと1990年代で、”アベンジャーズ”どころかヒーロー達もおらず、異星人の存在が公になっていないという背景が新鮮です。しかも、出会ったサミエル・ジャクソン扮する秘密機関”シールズ”のニック・フューリーも若い捜査官でしかありませんし、当初エイリアンを全く信じないのがうまいですねえ。本来のSF映画の原点に立ち返ったような面白さです。
 そして、主人公の記憶がないという設定も見事です。敵との闘いの中で、断片的な記憶のピースが徐々につながっていきます。大げさなCG映像ではなく、きめ細かで丁寧な筋書きをユーモアあふれるセリフや小道具で綴っていき、そしてどんでん返し的なストーリー展開へと導くという、観客が謎を追いながらカタルシスを味わえる一流の演出でした。
 さらに、最後の最後には全宇宙の人口が半分になるという前作「アベンジャーズ」の次回・完結編へつながって終わります。いまになって、巨大な宇宙船を体当たりで木っ端みじんにできるような、DCのスーパーマン級の桁違いに強いヒーローを登場させるのは、後出しジャンケンのような気もしますが、まあ、それぐらいの思い切った手を講じないと、あの大風呂敷の後始末はできませんよねえと、逆に納得しました(笑)。結果、マーベル戦略、マーベル商法の壮大な戦略に改めて感心したのです。在庫のヒーローの総ざらいです(笑)。
 また、「ブラック・パンサー」では、黒人をメインとした人種問題をテーマとして、アカデミー賞のノミネートという快挙をなしとげたのですが、今回のテーマは女性問題を扱い、主人公は、”女だから”と何度も差別にあって、その都度立ちあがってきたというエピソードを記憶の断片で描きます。そのピースが形になったときに、"女性達よ、立ち上がれ"という主張を観客に畳みかけるようにアピールする演出は誠にあざといくらい見事です。
 このへんも、政治や社会に対するコミックならではの先進性としたたかな戦略なのでしょう。もっとも個人的には「ブラック・パンサー」の評価はよくわかりませんが、今回の作品には一票を入れたいと思います。それにしても、いまの世界の現実の姿を見ると”レディ・ファースト”という言葉のむなしさを改めて感じられますねえ。
 なお、余談ですが、880円もするパンフレットの輝く表紙の加工技術には驚きました。その分値段が高くなったような気がしますが、まあ、手に取って見てください、老眼には眩しすぎるほど輝いています(笑)。
 

2019年3月 9日 (土)

モータル・エンジン

  ピーター・ジャクソン製作の「モータル・エンジン」は、世評がよろしくなくて、あまり期待していなかったせいか、意外に面白い拾いものでした。

_new  もっとも、最初、巨大なキャタピラで移動するどでかいロンドンの町がその姿を現した時は、そのあまりに非現実的な情景に絶句しました。なにしろ、レトロな蒸気を噴き出すエンジンで動く、石づくりの大聖堂や城壁をそっくり載せた戦車なのです。しかもかなりなスピードを持って移動するのですから、大怪獣以上に現実味を欠いています。まず、直感的に、間違いなく地面にめり込んでしまうだろう、と思ってしまうのです。この観客の素朴な疑問、ギャップを払拭する仕掛けやセリフなどのフォローが無かったのです。ここが惜しまれます。
 しかし、そのむちゃくちゃな非常識な設定を”これもあり”と無理やり肯定すれば、意外にその後のストーリーは予想がつかない展開となって、これがなかなか楽しめました。
 それにトレーラー(予告編)で見たシーンは、だいたい冒頭の部分で終了しますので、観客を予備知識のない世界に導いてくれました。やっぱり、SF映画は見たこともないが、しかしリアルに思える世界と驚きの提供が肝なのです。
 そして、ピーター・ジャクソン製作らしく、しつこい演出です。絶対死ぬシチュエーションでもなかなか悪者が死なないのですから、感心さえします。
 また、ヒロインがかなり激しいアクションを演じるのは、今時の流行りなので文句はないのですが、個人的には、主演男優の目つき(笑)がなんとなくアイドルっぽくて気に入りません。キャスティングが弱いのかなあ。なにしろ知っている役者はエージェント・スミス役の悪役だけですから。
 まあ、昆虫型の戦車、人造人間、空賊たちの浮かぶ都市や赤い飛行機(笑)、ダムに守られたシャングリアじゃなくてシャングオ、そして究極の量子エネルギー兵器などをてんこ盛りに登場させ、さらにはロンドン都市への飛行船での特攻による奇襲などの見せ場も要所要所に作っています。さすがにピーター・ジャクソン印らしいサービスです。
 そういうことで全体的に言えば、2時間超、そのサービス満点な映像を十分楽しむことができましたので、合格といたしましょう(笑)。
 それにしても、現在のように公開前にあんまり予告編でハイライトを見せることは良くないですよねえ。内容を知らない方がお楽しみが倍増します。だから、お願いします、あんまりトレーラーで宣伝しないでください。なにしろ、予告映像があれば、映画ファンはどうしても観てしまいますものねえ、我慢できない哀しい性なのです(笑)。「アリータ」なんか、いいところ全部やっている、困ったものです。
 

2019年3月 5日 (火)

メリー・ポピンズ/リターンズ

  ディズニーは、何故、あの名作「メリー・ポピンズ」のリメイクを作ろうとしたのだろうかと、続編と位置付けられた「メリー・ポピンズ/リターンズ」を見て思いました。

_new  物語は、第1作目の子どもたちが親となった時に、再び、”ほぼ完璧な家庭教師”メリー・ポピンズがやって来ると云う設定です。まさしく続編”リターンズ”なのですが、同じ町並でお隣の提督などお馴染みの住民が揃っているのはともかく、銀行が悪者などストーリー展開をはじめ魔法の世界やダンスシーンまでもが前作とほぼそっくりなのです。ただ、演じる俳優が違い、歌や踊りが新しいという内容なのです。これは続編というよりリメイクという方が似合っています。既視感が半端ありません。
 最近のディズニーは、「くまのプーさん」の後日談や名作アニメの実写化を盛んに作っているのですが、その一環なのでしょうか、製作意図がどうもよくわかりません。
 俳優さん達は、よくガンバっています。主演のメリー・ポピンズを演じたエミリー・ブラントは素晴らしい。「オール・ユー・ニード・イズ・キル」の女軍人(押井守氏が著書で軍服姿を大絶賛)や「クワイエット・プレイス」の気丈な妊婦役など、なんでもこなします。歌も歌えるのですねえ。
 特別出演なのか、ポピンズの従姉役のメリル・ストリープも凄いですねえ。なにしろ、初め、誰だか判りませんでした(笑)。コリン・ファースもあんな敵役でよくやりますし、最新007の”Q”も気弱な父親をよく演じています。そして、なにより、初代の相手役だったディック=ヴァン・ダイク(93歳?)も元気な踊りを見せてくれます。前作で二役として演じた銀行会長と同じ扮装というのも笑えます。
 しかし、やっぱり肝心なストーリーの構成が前作とほとんど同じというのはまったくいただけません。前作では驚きの的となったチョークで描いた絵の中に入るシーンが陶器の壺の絵に変わっても、最新のCG技術で映像が円滑になっても、なんとも面白くありません。せめて、平面的な2Dのアニメを立体に見えるぐらいの挑戦はしてほしかったですねえ。
 それに、煙突掃除人をガス灯火人に換えたダンスシーンもまったく二番煎じです。前作の方が影絵風で斬新でしたねえ。
 さらに、天井に浮かぶシーンがさかさまの世界になってもまったく驚きや感動は生まれませんです。なんか、中途半端です。
 そして、これは言ってもセンないことですが、あのオリジナルの名曲でないのが、ミュージカルとしてはやっぱり物足りません。観ている間中、第1作の楽しさを思い出しました。
 「くまのプーさん」のようにもっと異なる土俵で勝負すべきでしたねえ。役者さんの頑張りが立派だけに残念でした。 
 
 蛇足ながら、これから公開される「ダンボ」や「アラジン」の実写映画は大丈夫でしょうか。アラジンなんか、ウイル・スミスのまんまの扮装ですよ。スター・ウォーズも作り過ぎが危惧されていますし、心配ですねえ。  

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