雨に唄えば
最近、ハリウッドで流行になっているミュージカル映画の影響か、名作と誉れの高い「雨に唄えば」のブルーレイを見ました。実は、「サウンド・オブ・ミュージック」以外は、ミュージカル映画には興味がなかったので、この作品についても、あの雨の中でダンスを踊る有名なシーン以外は内容をほとんど知りませんでした。
全身をそのまま長回しで撮っているのですが、アクション映画以上に血湧き、肉踊ります。人間の肉体が生み出す技の素晴らしさが堪能できるのです。まさに、”ザッツ、エンターティメント”です。いままで無視していたのを恥じるばかりです。
しかも、ブルーレイ特典の現在のトップ・ミュージカルスター達のインタビューを見ると、主演のジーン・ケリーは、この映画で彼らの子供のころからの憧れのスターであって、彼のステップは、超難しい技を簡単そうに演じており、雨のダンスシーンなどは、そのまま”通し”ではとても踊れないそうです。
また共演の女優さんや道化役の男優のダンスもなかなか難しいようで、その舞台裏は大変な努力があっただろうと言います。素人が見ても言葉が無い位感動しますから、本当にそうなんでしょうねえ。今も昔も一流どころはやっぱり違います。
加えて、こうした歌やダンスの他に、そのストーリーにも感心しました。サイレント映画からトーキーに移行する時期のハリウッドの内幕を描いています。当時としては画期的だったのでしょうねえ。まったく古臭さを感じさせません。
全体としては喜劇風で皮肉も効いたラブロマンスなのですが、よくよく考えると、容姿だけで人気を得ていた、サイレントの大女優が、その金切り声の故に人気を失うという残酷な物語でもあるのです。しかし、性格の悪さと意地悪で新人女優のヒロインをいじめる悪役ぶりから観客から見たらまったく同情できないという、見事な(笑)構成になっていますので、安心してご覧ください。
それにしてもトーキーへの移行時には、日本でもいろいろあったようですねえ。坂東妻三郎や大河内伝次郎などの発声練習の逸話は有名ですねえ。なにしろ、無声時代の剣豪の声を初めて聴いた観客は仰け反ったそうですから、時代の流れを生き抜くのは大変です。
また、歌のシーンなどもドラマと良くマッチしています。違和感は全くありません。もともとミュージカル映画が苦手になったのは、某フランス映画で唐突に歌い出すシーンに嫌気がさしたからでしたので、やっぱり演出の巧拙ですねえ。この辺は、後に「シャレード」も撮った共同監督のスターリン・ドーネン監督のうまさではないでしょうか(推察ですが・・)。
とにかく、傑作という名は伊達ではありません。本当に感動しました。いまではこんな生(長回しでいう意味)のミュージカルは決して作れないというお話はそうだろうと思います。
やっぱり、温故知新、古典に親しむのはどの分野でも大事です、改めて思いました。いやあ、映画って本当に楽しいものですねえ。
« アリータ/バトル・エンジェル | トップページ | サウンド・オブ・ミュージック »
コメント