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2018年12月31日 (月)

ラオ博士の7つの顔

 2018年の最後の日に「ラオ博士の7つの顔」のDVDが届きました。
81a4kdytckl_sy445_  このジョージ・パルのファンタジー映画は、VHSは商品化されていたものの、今回、初めてDVD化が実現したものです。しかも、当初12月25日の発売予定がどういうわけか遅れてしまい、もう年内は無理だろうと諦めていたものでした。
 早速再見してみると、1964年の公開作品だけに、人形アニメーションやメイクアップ技術はそれなりですが、中国人のラオ博士とそのサーカスの見せ物がユニークでのんびりとしたお伽噺になっています。
 しかも、主演のトニー・ランドールが、白人でありながら中国人をはじめ、牧神パンやメドューサ、魔法使いマーリンなどに扮して、見事な七変化を見せます。素顔は1回だけ観客席に居たのを発見しました。
 子ども向けのお話なのに、パンの神に惑わされた美人の未亡人の煩悩など、どこまで理解できるのでしょうねえ。金魚鉢のナマズも笑います。
 まだVHSもない時代、映画雑誌などで知った幻の作品だった頃を思い出して、感慨深いものがあります。
 今回も「復刻シネマライブラリー」様、ありがとうございました。
_new  ちなみに、DVD化で一挙に価値が下がった私のVHSコレクションが左図の写真です。
 ついでにいえば、VHSは発売されているものの、DVD化されていない作品もまだまだあります。以下、まだ保有しているVHSコレクションからSF/ファンタジー映画を中心にご紹介します。
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「凸凹フランケンシュタインの巻」、「ドラキュラ都へ行く」は、ホラー・コメディの傑作です。最近英語版を入手しましたが、セリフがわからないので面白さが全く伝わりませんでした。
「フライトナイト2バンパイアの逆襲」は、あの名作「フライトナイト」の正当な続編です。同じタイトルの別作品にまんまと騙されました。
 「ドラゴンスレイヤー」は、CG以前の傑作ドラゴンが有名ですし、「惑星アルカナル」は原作が「神様はつらい」の映画化なのです。
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「星に願いを」は、個人的に好きなお伽話ですが、最後の「探偵スルース」は、まぎれもない傑作です。なぜ、いまだにDVD化すらされないのか、不思議でなりません。
いずれにしても、神様、仏様、「復刻シネマライブラリー」様、新しい年には是非DVD化、できたらブルーレイ化をよろしくお願いします(笑)。

2018年12月24日 (月)

ルームロンダリング

 「ルームロンダリング」は、なんともいえない味がある映画です。まず、タイトルがうまいし、幽霊物の喜劇であることがうれしい。そして出演者のメンバーも丁度塩梅がいい感じです。レンタルで借りて見たのに、なぜかDVDを買ってしまったというのも、ひとえにストーリーの心地良さの証左でしょう(笑)。
 もともと欧米に多くある幽霊喜劇が好きなのです。「幽霊と未亡人」、「幽霊西へ行く」、「陽気な幽霊」などのクラシックをはじめ、「ゴースト」や「天国から来たチャンピオン(リメイク)」なども実に楽しいお話です。ディズニーの「黒ひげ大旋風」もありました(笑)。
 自殺や他殺のあった曰く付きの部屋をお祓いする意味で、一度誰かが住んでみせて、履歴を上書するというのは、日本ではよくありそうなお話ですし、それをマネーロンダリングならぬルームロンダリングと命名したのは、映画のオリジナルらしいのですが、これには本当に感心しました。
_new  主演の池田エライザという女優さんは全く知りませんが、幽霊が見える根暗な主人公をよく演じています。それに久しぶりに変な髪形のオダギリ・ジョーを良いと思いました(笑)。パンクロッカーの幽霊役の渋川清彦(この人も顔は知っていますが・・・)が笑えます。
 ともかく、現在の社会を映したシリアスな要素などもありますが、サメに見立てた背中に突っ立った包丁や切れた手首のギャグのほか、変な中華屋のおっさんや意外なオチのある展開の喜劇がなんともうれしいのです。
 もともとジャパニーズ・ホラー以前の怪談物は情緒もあって結構好きなのですが、最近の救いのない血まみれのハード・ホラー映画は苦手なのです。
 それに比較して、この作品は、決して平穏でない現実の中で「泣くな、笑え!」というメッセージが心優しく、生きることに希望が持てるファンタジーなのです。あの飛行機飛ばしをしてみたくなります。
 今回は、誠に拾い物の佳作です。片桐健滋という新人監督さんらしいので、今後に注目していきましょう。
 

2018年12月23日 (日)

ビリケン商会のカネゴン

  先日、オークションで大失敗をしてしまいました。入札にはじっくり商品を見定めることが肝要と、改めて反省しております。
 実は、今回ビリケン商会の「カネゴン」の模型キットをゲットしたのですが、その商品は、彩色版(最初の写真)の発売前に売り出された無彩色のキットでして、既に絶版となって久しく、このところオークションでも全く見かけていませんでした。実際、自分で塗装を楽しむには当然ですが未塗装品に限ります。
Img_38081  その商品が箱なし、取説なし、汚れ、破損アリという条件で出品されていたので、思わず飛びつき、速攻で入札、その後、商品写真を見て後頭部の棘の部品がないことに気が付きましたが、競合相手が出現したため、おもわず熱が入ってしまい、想定予算を超えて落札してしまったのです。
 数日後、届いた商品を見て驚きました。部品の欠品が棘どころか、下あご、触覚(・・口のジッパーのヒモ?)、靴のボンボン(何かわかりませんが4つの玉です。)もありません。これには本当に参りました。
 商品写真にそれらの部品が失われていることがしっかり写っていますし、当初は確かにジャンク品相応の値段でしたので、クレームも付けられません。まったく、熱くなって見過ごした自分が悪いのです。加えて、落札後、完品がかなりお安く出品されています。・・・バカヤロー!!
 ただ、今回縁があって届いたこの不満足なキットに罪はありません。なんとか完品に甦えらせよう、そうじゃないとキットが可哀想じゃないか。逆境で模型魂が燃えます(笑)。
 とはいうものの、その工程はなかなか手間がかかりました。
Img_37371  まず、失われた部品の再生です。やむなく、彩色版のキットを複製しました。最近、流行りの青いシリコン粘土を使って型取りし、その型にレジンを注入します。このシリコン粘土は非常に便利なのですが、少し苦労したのが細長い棒状の触覚2本です。レジン液に空気が入り、良い形に固まらなかったのですが、最終的には、粘り気のある瞬間接着剤を使って強引に形を修正しました。
 なお、ここで、今更ながらですが、使い捨てスポイドが少量の液注入に威力を発揮することを再発見しました。これでレジン液への苦手意識(笑)が克服できそうです。
 Img_37381 次にモデルを自立させるため、二本足にレジン液を注入し、重心をとる工程なのですが、ここでも失敗。もともと素材の経年変化により自立できなかったキットなのですが、この作業途中で腰の尻尾部分にレジン液が漏れてしまい、重心が後方寄りになってしまったのです。このため、下腹や頭部の前方部分にレジン液を入れたほか、足首を切断し角度を変えて接着、全体のバランスを取りました。その工夫の結果、一応自立しているものの、依然として微妙に重心が後ろ寄りになっているので、置き場所は水平な場所に限ります。
Img_37521  その次は、複製した棘や下あごなどの部品を取りつけた体全体にグレー色のサーフェイサーのスプレーを塗布する下地作りです。
Img_37581 そのうえで、ラッカー塗料のつや消しブラックをエアブラシで吹きつけます。この黒地の下塗りが上塗りのカラー塗料の発色を抑えて深みのある色になる(筈な)のです。
 ”カネゴン”は、一般的にはゴールドと思われていますが、これはイベント用だったそうで、実際は彩色版の表紙絵のようにブラウン系ということです。
 今回は、ラッカー塗料のブラウンにフラットベースを混ぜて、エアブラシで塗布します。
 ここで、第2の失敗です。混ぜるフラットベースが少量かつ混ぜ方不足だった上に、影をつけるつや消しブラックが予想以上に多くなって、テカリのある暗い焦げ茶色の体表となりました。なんとも随分イメージが違いました。
Img_37711  やむなく、薄めにしたつや消しホワイトのエアブラシ塗装で、全体をぼかしたうえで、ダークイエローで再塗装です。ここで、テカリを極力消すためにフラットベースをラッカーで十分攪拌したものをダークイエローに混色しました。これは一定効果がありました。
 なお、体表にはエアブラシから飛散した粒子が見える仕上がりとなっていたので、エナメル塗料の薄いつや消しでブラックで体表のぶつぶつ(細かな穴)を筆塗りする際、自然に見えるように調整しました。
Img_37891  最後は、目や口のジッパー(ゴールド)、靴のボンボンをエナメルで筆塗りし、完成です。色合いは、当初の計画とは少し異なりますが、まあ、”カネゴン”のイメージに近いので、これで良しとしましょう。
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Img_37861_2  Img_37851_2 完成写真を見ていただけるとわかると思いますが、後ろに突き出た尻尾がアンバランスの原因なのです。
 このキット製作をもって、ビリケン商会関係(ウルトラQ)はとりあえず最後にいたしましょう。
 実は、老後の楽しみに秘蔵している貴重なキットがまだまだありますので、そのお蔵出しを楽しみにお待ちください。
Img_37891_2<追記>
 どうも、室内灯で撮影したせいか、写真の色がいずれも青みがかっていますので、画像のデジタル加工してみました。最後の写真が、実際の色合いに近いものです。

2018年12月18日 (火)

おとなの恋は、まわり道 

 キアヌ・リーブス主演の「おとなの恋は、まわり道」は、どういう作品なのでしょう、評価に困っています。
 お話は、”偏屈男”と”毒舌女”が同じ結婚式に招待され、行く道中から帰途までのやりとりだけなのです。
 とにかく、共演のウィナ・ライダー(老けた?)と二人しか”セリフ”がありません。しかも、各シーンの画面は、カメラはほとんど固定しており、まるで漫才を劇場中継している雰囲気です。
 加えて、会話は、まさしく偏屈と毒舌の応酬であり、字幕を見るだけでは全く面白くもおかしくもありません。ひょっとすると、英語ではユーモアたっぷりなのかもしれませんが、しゃべるスピードも速く、文字数限定の字幕ではまったくその片りんも感じられません。こういった舞台劇は、名優の吹き替えに期待したいところです。
 結局、山場は、突然、ピューマに襲われ、ハプニング的に野外でセックスをしてしまう場面でしょう。青い空の広がるカルフォルニアの野山で、なんとも、あっけからんでやけに即物的な行為と会話で、とりわけパンツの脱ぎっぷりと大きな声が笑えます。
 ちなみに、二人がはた迷惑と毒づく”リゾート婚”の場所は、アメリカで最も幸せな都市と呼ばれるカルフォルニア南部のサンルイスオビスポというところだそうです。でも、ロケ地のホテルなどを見るかぎり、リゾートというような立派な感じではありませんでしたねえ。
 そして、二人は帰っても仲良くなるのですが、どうもその過程がよくわかりませんでした(笑)。結局、”できちゃった恋愛(?)”ということでしょうか。なんか観客は狐に騙されたようです。いや、カルフォルニアですから、ピューマでしょうか(笑)。レビューの評価の低いのもわかります。
 
 ところで、このラブ・ストーリーはキアヌ・リーブスが主演した殺し屋「ジョン・ウイック」の前日譚だったのか、というレビュー意見には本当に笑ってしまいました。確かに、父親から銃で撃たれたので、殴り返して7階から落としたあげく、自殺に至ったなんていうような体験談は、セリフだけにしても殺し屋になってもおかしくありません。第一、容貌もジョン・ウィックそのまんまなのです。・・・みんな、キアヌ・リーブス主演ということに騙されたのですねえ(笑)。来年公開の「ジョン・ウィック3」に期待しましょう。
 
 

2018年12月17日 (月)

ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生

  いま、大ヒットと宣伝されている「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」を観て来ました。
 ファンタジー映画は、私の好きなジャンルの一つなのですが、どうも前作の「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」に今一つ乗り切れなかったことや、もともと「ハリー・ポッター」の陰湿な魔法世界になんとなく馴染めないせいか、躊躇していました。
 
 まあ、でも、これだけ世間の評判がいいのですから、と重い腰をあげたのですが、結局、やっぱり、物語が暗すぎてイケません。
  ドタバタのギャグもふんだんにあるのですが、なんか、全体的に湿っぽくて楽しめません。だいたい主人公の魔法動物学者のニュート・スキャマンダーが暗い(笑)。ジョニー・デップ演じる悪役のグリンデンバルトも気持ち悪いですが、魔法省の役人たちもタチが悪すぎます(笑)し、登場人物の因果関係が重すぎです。
 なんとも現実の暗い世相や救いのない世界を反映しているようで、見ていて”しんどく”なります。その意味では”今時の映画”かもしれませんが、今の若い人たちに、この因縁話のどこら辺が受けるのか、本当によくわかりません。
 ただ、映像は最後の青白い炎(色の好み(笑い)です)のシーンを除いて、なんとも素晴らしい。魔法街や魔法省のバーチャル・セット(?)はCGのお金がかかっているのがよくわかります。 
 もっとも、あいかわらずビーストのデザインが良くありません。中国の獅子舞はともかく、日本の河童の扱いは哀れなものです。全国河童連盟(実在するか知りません)からは今なおなんの声もあがらないのですが、どうしたことでしょう(笑)。
 以上、今回はパンフレットもチラシもありません。

2018年12月13日 (木)

静かなる男(ブルーレイ版)

  ジョン・フォードの名作「静かなる男」のブルーレイがやっと日本でも発売されました。
 アイルランド系の監督が、ジョン・ウエインなどの仲間を集めて、自分たちの故郷を郷愁たっぷりに製作したこの作品は、なんといっても1952年の製作ですから、発売されていたVHSやDVDはいずれも画質まで”古典”となっていました。アカデミー賞の撮影賞(監督賞も)まで取ったテクニカラー作品なのに、色がにじみ、輪郭がぼやけている上、全体が赤っ茶けている代物ですので、画質の真っ当な映像を切望しておりました。
 今回のブルーレイの映像は、アイルランドの美しい緑の田園風景がクラシカルな色調で見事に再現されています。それにしても、赤毛(というのは、ブロンド系なの?)のモーリン・オハラが圧倒的に美しい。アイルランドの勝ち気な女の役はつくづく見惚れます。昔の女優さんはまさしく美女という名にふさわしい。とにかく、映像を見るだけでも再見の価値があります。
_new  さらにうれいしいことに、28分のメイキング映像と10ページぐらいの小冊子が付録でついており、当時の映像や関係者の証言による撮影裏話がなんとも愉しいものになっています。
 例えば、きれいに見える草原は、実はヒツジの放牧場で、ジョン・ウエインに引き摺られるモーリン・オハラは、身体中痣とヒツジの糞だらけになったとのことです。
 また、スタジオ撮影が主で海外での長期ロケなど全くなかった時代でのアイルランドでの撮影は、題材がヒットしないと思われていたため、資金がなかなか集まらなく苦労したそうです。しかし結果は大ヒット、あのコミカルで楽しい内容なら当然です(笑)。
 それにしても、撮影隊が到着するまでロケ地の村には電気も無かったようですから、あのノスタルジックな土地柄は、エキストラを含めてみな本物なのです。くわえて、俳優やスタッフ達は、多くがアイルランド系で、ジョン・ウエインの子供たちは家族旅行のかたわら映画に端役で出演したそうです。
 いやあ、こういう逸話がなんとも愉しいのです。このブルーレイは資料的にもまことに価値があります。発売元の「復刻シネマライブラリー」にはただただ感謝です。未見の方は、是非、当ブルーレイ商品(価格税抜き3000円)をお買い上げの上、ご覧ください。 
 

2018年12月11日 (火)

ヨーク軍曹

 最近は、劇場に行く機会も減って(見たい映画が余りない・・)、自宅でDVDを見るのが日課になっています。
 新作のレンタルでは「ワンダー/君は太陽」に感心しました。けっこう重いテーマなのに明るく希望に満ちた演出が心地良い。ハリウッドの良心を感じます。
 しかし、「それはまた別のお話」ということで、今回は古典「ヨーク軍曹」について少しご紹介します。VHSを所有しているのですが、先日DVDの中古品を安く購入したので、久しぶりに観たのです。
 
_new  内容は、第一次大戦のヨーロッパ戦線でたった一人で120人余を捕虜にしたという実在の軍曹の伝記です。
  監督は、ご贔屓の名匠ハワード・ホークスで、主演のゲーリー・クーパーはアカデミー賞の主演男優賞を獲得しています。いわば、その年の傑作と評価された作品なのです。
 物語は、テネシー州の田舎の貧農の長男で、飲んだくれの暴れん坊という嫌われ者が、ある日、雷に打たれて、奇跡的に助かったことから、敬虔なキリスト教徒に生まれ変わる前半から、徴兵されて送り込まれたヨーロッパ戦線で、持ち前の銃の腕前をいかして、大活躍をする後半までホークスの手堅い演出で見せます。
 モノクロで絵のようなセットをはじめ、主演のゲーリー・クーパーの朴訥さや恋人の生き生きした表情がなんとも味があります。厳格なお母さんも、気のいい牧師さんもいいねえ。お話としては、実に面白いのです。
 しかし、この作品の肝は「汝殺すことなかれ」という教えを守る主人公が、いかに「国を守るため」に戦ったのか、がテーマになっています。
 出兵前、悩む主人公が裏山に登り啓示を受ける場面など、モーゼの十戒になぞらえた宗教映画の様相も呈しますが、製作が1941年という、太平洋戦争が開始される時期ですので、実際は、戦意高揚映画であり、第二次世界大戦への参戦のためのプロパガンダ映画なのでした。
 しかも、ホークス監督の演出があまりに見事なので知らぬ間に引き込まれます。戦場のシーンは、大規模で迫力満点の映像なのですが、七面鳥猟のようにドイツ軍の兵士を次々と射殺していく場面は後で考えるとなかなか恐ろしいものがあります。
 結局、主人公は戦場では仲間の死に怒り悲しむ一方、仲間を守るために敵には容赦しません。また、映画の中では良心の呵責も描かれません。
 まさしく国を、同胞を守る大義が高らかに描かれています。当時の世相を反映したものでしょうねえ。 ”良心的兵役拒否者”に対する回答なのかもしれません。(最近の映画でもありましたが・・。)
 まあ、さすがに職人といわれるハワード・ホークス監督だけあって、スタジオのどのような要求にも見事に応じる仕事をしました、というべきでしょうか。
 それにしても、名声を得た人間には富(誘惑も)が自然に集まってくるというのは、アメリカらしいというか、寄付パーティー文化なのでしょうか、向こうのタニマチは凄いですねえ(笑)。結局、主人公が数ある都会の誘惑をものともせず、田舎での家族たちとのまっとうな暮らしを選んだのは何よりほっとするラストです。

2018年12月 8日 (土)

ビリケン商会のケムール人

 伝説のTVドラマ「ウルトラQ」の第19話「2020年の挑戦」に登場する宇宙人をご存知でしょうか。その名を「ケムール人」といいます。非常にマイナーな存在ですが、実はファンの間では大変人気がある怪獣(?)です。
 そのせいか、ビリケン商会のケムール人のキットは、オークションなどでも馬鹿げたような高値が付いており、いつも全く手が出ません。他の怪獣キットとは一桁違う価格なものですから正直あきれて、もう、これは高嶺の花と諦めていたのですが、待てば海路の日和あり(笑)ということで、いつものように、箱なし、取説なし、組み立て途中品という出品物を比較的安価に購入することができました。ありがとうございました。
 
 ということで、以下、模型づくりの備忘録となりますが、その前に、この”ケムール人”の物語を少しだけ振り返りたいと思います。
 発達しすぎて肉体を失ったケムール人が、人間の肉体を奪うため、2020年の未来からやってくるという、当時流行った人間蒸発事件などの世情を背景にした、きちんとしたSFドラマなのです。
 もっとも、ケムール人というネーミングは、当時の大伴昌司の紹介記事によると、神出鬼没で煙のように人間が消えたりすることから、そのまんま付けたようです。これは、多分バルタン星人が歌手から名付けたというようなガセではないでしょう(笑)。
Img_3664_21  さて、そのケムール人のデザインは、人間型で手足は細長く(後年のウルトラマン役者が入っているのでスタイルはスマートです。)、頭にじょうろの様な突起物が付いていますし、目玉が3つ、後頭部にもある、誠に不気味な容姿なのです。
 しかも、白黒画面で、当時のカラー写真なども全く残っていないため、その体色には諸説があり、よくわかりません。しかも、後年の「ウルトラマン」に再登場した際にギザギザ模様の淡色の体表に変わってしまったために一層混乱しています。また、DVDのカラー化でも暗く黒っぽい体という程度でよくわかりません。(足も爪のある裸足の説もありますが、これも画面では不明です。)が、やっぱり、ウルトラQ版のケムール人のイメージとしては、黒系でしょう。そう決めました(笑)。
 ところで、現物のキットのスタイルがどうにも前屈姿勢なのです。ネットでもこの形への不満や不評が見られますので、どうやら個々の製品の不具合ではないようです。グッドデザインが身上のビリケン商会の造形物にしては珍しいことです。
 
Img_36701  このため、今回は、下半身にレジンを注入し、自立できるようにした後、上半身を可能な限り上向きにしました。継ぎ目の部分を瞬間接着剤で止めたのち、丁度パテを切らしていたので、木材用ボンドを代用にして注入したのですが、これが大変でした。なかなか硬化しないのです。日中屋外に干して固まるまで4日間もかかりました。ネットの製作談をうのみにするのも考えモノです(笑い)。
 最終的には継ぎ目の表面を黒いパテで埋めて、サーフェイサーで全体を下塗りして下地が完成です。いやはや今回は継ぎ目消しのサンドペーパーがけに結構手を取られました。
 しかしまあ、ここまでくれば、単純なデザインなので後は簡単な作業のはずでしたが、どうにもエアブラシの調子が悪くてトラブルが続出し、ついに新品のエアブラシに交換しました。
Img_3702_21  塗装手順は、頭部の目玉の十字溝をラッカー塗料のイエローやオレンジで塗装、マスキングしたのち、ブラックで全身を塗ります。この段階で、あろうことか、ブラックは”つや消し”を、その上に塗るスカイブルーやオレンジの縞模様も、フラットベースの混色を忘れてしまい、あとでテカリ消しに苦労することになりました。
 また、白目や頭部の溝の周囲のラッカー筆塗りも予想以上に細かな作業で手間(目がキツイ)がかかりました。
 最後に、目玉や溝をエナメル塗料の筆塗りです。仕上げは、結局、水性のつや消しスプレーに頼りました。まあ、宇宙人ですので、多少のテカリも許容の範囲(笑)です。
 では、ご覧ください。Img_37261
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 Img_3727_2171dxsfumkql_sy445_ ところで、驚いたことに、実際、2020年も近づいたせいか、アマゾンによると、この「2020年の挑戦」についての特集DVDとブルーレイが来年2月20日に発売されるそうです。
 「ウルトラQ」シリーズの中から選ばれたアーカイブの第1弾だそうで、この1話だけについて、関係者のインタビューなどを集めた内容ということです。一体どんなものになるのだろうか、とも思いますが、いまの世の中こんなDVDまでが売り出されるのかと感心しますし、あらためて、ケムール人という物語の人気の高さを実感いたしました。結局今回は、誠に時宜を得た模型作りだったといってよいのかもしれません(笑)。
 
 しかし、こうなると2月に発売されたら買うしかないのかな?でも、ブルーレイでなく、リーズナブルなDVDにしよう(笑)。 

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