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2018年10月10日 (水)

隠蔽捜査

 今野敏の「隠蔽捜査」の第8弾が小説新潮の連載で開始されているそうです。
 このシリーズは、吉川英治賞などを受賞した傑作警察小説であり、私の大先輩からお墨付き(本も)をいただいたこともあって、妻も旅行に単行本を持参するほどのお気に入りの一冊になっています。久しぶりに私も再読し、やっぱりその面白さに改めて感心しました。
51n1ruhwg0l_sx336_bo1204203200_  主人公の警察官僚(キャリア)竜崎達也は、その国家公務員としての原理原則を、縦割りの警察機構の中にあって、本気で実行する”変人”であり、第1作で、警察庁長官官房総務課長というエリート職から警視庁の一所轄の警察署長に降格させられ、第2作から第7作までキャリアらしからぬ行動で様々な難事件を解決していくという内容です。
 この小説の面白さは、まず、警察組織の階級制や縦割(縄張とメンツ)の弊害、あるいは本庁と所轄、キャリアとノンキャリの溝、マスコミの商業主義の実態などをリアルに描き、その滑稽なほど凝り固まった組織風土の中で、主人公一人が国家公務員としての”原理原則”で様々な難題を解決して行くことです。
 もちろん、現実には、この小説のような破天荒な行動は不可能ですから、それを読者に納得させるだけの仕掛けが実に上手いのです。
 揺るぎない自分の原理原則を持つ唐変木な”変人と呼ばれるキャリア”の創造は秀逸ですし、我が国の日本的組織の”現実”を憂う読者(庶民)のうっぷんを晴らせてくれるエピソードも素晴らしい。
 竜崎署長をただの所轄の署長だと思って横柄な態度で対応する本庁の幹部たちが、実は、東大出のキャリアで身分は自分たちより上と知って狼狽する姿は、日本人の庶民が大好きな”水戸黄門”を思わせます。
 加えて、主人公の立場を支援するのが、同期の本庁の刑事部長伊丹俊太郎です。幼馴染ということもあって、個人的な交流もあります。この人物像も私立大という設定などなかなか面白い。ただ、以前、TBSのTV番組でこの役を演じた古田新太があまりに適役であったため、いまだに、本を読むと行間にあの顔が浮かんでしまうのには困っています(笑)。
 
 それにしても、作家というものは凄いですねえ。組織に属したこともないでしょうに、警察などの組織の実情をよく描いています。
 特に、これまでの警察小説ではなかった、マスコミ対応の部署やキャリアの出世競争や心情を見事に描いています。時々、マスコミや教育、組織のあり方に対する主人公の考え方が挿入されますが、それは著者自身の正直な思いでしょうし、言いたいことでしょう。私も思わず一票を投じたくなります。
 なお、既刊の7巻は、すべて面白いのですが、中でも特にお薦めの巻が、堅物の竜崎署長が美人な部下に想い惑う第3巻や当たり前と思っていた異動にうろたえる(この動揺を妻が人間的成長と喝破)第7巻ですねえ。 
 言い忘れていましたが、このシリーズは、主人公がだんだん変わっていく(成長)姿も魅力です。特に、家族の不祥事で出世をあきらめてからの主人公に好感が持てます。
 さて、最終巻では、竜崎署長は大森署を異動し、神奈川県警の刑事部長に栄転します。
 一日も早く、竜崎刑事部長の次なる活躍(第8巻)を読みたいものです。できましたら、出版社様には、 連載後の迅速な単行本の発売をお願いします。
 
 余談ですが、この著者の初期の格闘技小説「孤拳伝」を新装版(文庫)で知って、おもわず新書版を古本で揃えるほど嵌りました。実際に空手の有段者だけに武道とスポーツの違いなどには説得力があります。
 新装版も温故知新のためには有効なツールです。文芸作品だけでなく、娯楽エンターテメントの分野でも忘れられた良品の発掘をお願いします。

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